今までは第三者視点での展開となっておりましたが今回のみ、今回のみは
あと下手ですが挿絵付きです。自作ですね。
これからも本編をお楽しみ頂けますと幸いです。
それでは、どうぞ。
7.伝説の最期と最恐の開幕
オレは、マスターニャーダとともにあるモノの調査に行っていた。いや、「呼ばれた」と言ったほうが正しいか。
そいつの名前は、ウィルオーウィスプ……戦闘の際、奴は自らを“始まりの妖怪”と称していたが、その意図はわからない。
事の始まりと言えば、奴がバスターズ協会に複数個の極玉を送ったことだ。それだけで異常だ。知っているだろう、極玉はそうひょいひょい手に入るものじゃないんだ。それに同封されていた地図には、人間界のそよ風ヒルズと言う場所の北西部にあるもののけ道から続く山中にある、どんこ池の中央に印と時間が書かれている。ここは頻繁に濃い妖気が満ちていることでも有名だ。
書かれていた時間ピッタリに、そよ風ヒルズで鬼時間が発生した。高級住宅街の並ぶそよ風ヒルズでの鬼時間と言うのは全くない、とは言えないものの珍しいことだった。
その事を知ったマスターニャーダは、自身の足で行く決意をしたと言う。だがご老体のマスターニャーダ1人には任せられないと思って、オレも同行することになったんだ。
目的地で待っていたそいつは、しょぼい人魂だった。少しの風で揺らめき、今にも消えそうなくらいに。
だが、その中身は違った。
異様だったんだ、妖力の全てが。
皮膚で感じられるような、目で見えてしまえそうなほど高密度な妖力がそいつから溢れ出していた。今まで、オレは数多くのビッグボスと対峙してきたつもりだ。赤猫団や白犬隊とともに最強と言われるビッグボスとも戦った。彼らとともに、エンマ大王から与えられた試練も乗り越えた。ビッグボスの王と名高い最凶のビッグボスも倒した。
もう、これ以上の強敵はないと思えるくらいの奴らと戦ったんだ。なのに、それらを簡単に跳び越えられる。小さなため息をつくくらい一瞬の時間で、今まで培った経験が無駄だと思えちまったんだ。
マスターニャーダも同じことを思ったのか、地獄の底に落とされたような、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
あの時、「最悪だ」と思えた。いや、正直今でもそう思っている。あんな奴が存在していたら世界が乱れてしまう。鶏の群れに空腹のライオンを放つって貧相な例えを思い付いたが、それより酷い。
奴は肉体を型取り変化させることができた。存在が気持ち悪いくらいだったが、変化後はさらに気持ち悪い。肉体における全ての要素が限界まで裂けた、少し失礼だがトカゲ型のウィスパーとかウィスパゲリヲンとかと思ってくれると良いかもしれない。あれは妖怪として認められない、ただの異形の物体と思いたい。あれが妖怪なら、オレたちはなんなんだってくらいだ。いや、逆か? オレたちが妖怪で、あれはなんなんだ。
気づいたときには、マスターニャーダは奴に攻撃を仕掛けていた。
「ホァタタタ! アイーン!!」
よくわからないが力のある掛け声を出しながら、限界である10秒のうちに倒そうと本気で動いていた。オレは参加できない……いや、それ以前に目でも追えなかったんだ。1秒が10分、30分、1時間のように感じられる光景。誇張表現だと思うだろ? だが本当に、そうとしか思えなかった。
だが10秒ってのは長いようで結局短かった。長く感じたが、終わってみれば一瞬だった。池の、1人乗れるかって程度の小さな岩の上で、いつの間にかマスターニャーダは息を整えてたよ。今思えば、限界以上戦うつもりだったんだろう。疲労はあれど、傷はなかった。そして奴は、疲労も傷も、なにひとつない。もしかすると触れれてもいなかったのかもしれない。
池の上を当然のように4足で歩くそいつが、マスターニャーダの首を喰い千切ろうとするような気がして、反射的にオレの体は動いた。
「くそ! 行くぜ《ど根性ストレート肉球》ッ!!」
この瞬間、もしオレが動かなければ2人して殺されていたかもしれない。オレは本当の、最大の一撃を入れた。 はずだった。
その拳は、確かに命中した。あの異常な肉体に渾身の一撃を放ち、奴の頬にめり込ませ貫通させる勢いでかました感覚があった。触れた感覚が確かにあった。
なのに受けた奴の目下、頬には、痕のひとつも残っちゃいない。
ありえない動きをする奴の紅い瞳の奥にはオレが映っていた。その中のオレは、全身が深い傷にまみれた状態で光のない目をどこか遠くに向けている、そんなように見えた。
ふと我に帰った瞬間、奴の口はオレの頭を喰おうと大きく開けていた。限界まで裂けた奴の口の可動域はこれまた異常で、常に浮かんでいるから足を使うことのないオレでも、「足がすくんで立てない」感覚を味わった気がした。蛇に睨まれた蛙の気持ちがわかる。
オレの首が胴体から独立しようとした直前に、全身が金色の激しいオーラに包まれているマスターニャーダが、愛用の木の杖で奴の右胸を突き刺した。その時、奴は初めて狼狽えたように見えた。
あれは『
「構えるのじゃ、フユニャン! 《無限のホースパワー》ー!!」
「はあ……ッ……行ける! もう一発! いや何度でもやる!! 《ど根性ストレート肉球》ーッ!!!」
マスターニャーダの、妖力を具現化して放つ同系統内でも特に高威力な必殺技《無限のホースパワー》はG化による強化とオレの拳による衝撃で回避不能になったのもあって、ついに奴に有効打を与えた。
動きの制止のため刺しっぱなしだった杖は駄目になったが、奴にダメージをようやく与えられたことを考えると安い代償かもしれない。
「――――――――――――!!」
奴の言葉にならない絶叫が池に、山に、街に轟く。
奴は地面を這うように歩いていた水面から滑り落ち、濁りきって見えない底に沈んだ。
「大丈夫なのか、マスターニャーダ……地面に一旦戻ろう、あれを倒せたという確証がない。水上は危険だ」
「奴はまだ生きとる……わしっちのG化が消えるまでは奴が死んでいようと攻撃をやめ────っ!?」
どうしたのか、と問おうとしたが、奴はオレたちに一時の勝利の余韻に浸る間すら与えてくれなかった。違うな。勝利なんてものすらくれなかった。
ゴポゴポ……と池の中から聞こえ、呼吸でもしているのかと思ったが、それは全くの的はずれだった。
池が、高熱で蒸発していたのだ。
高熱、その例えはやはり少し違うかもしれない。オレの赤いマント、マスターニャーダの緑のローブに火がついた。水上と言っても、浮いて6メートルは離れている。熱さを感じるならばともかく火がつくのは異常以外の何者でもない。高熱なんてレベルじゃなかった。
ものすごく速い速度で下から、なにかが跳んでくるような変な感覚があった。気づけたのは偶然だ。直感ってやつかもしれない。
真下から、オレたちに向かって垂直に向かってくるウィルオーウィスプ。全身の裂き傷が開き、見ていられないほど痛々しい状態だ。だが、そこから流れるのは血ではなく煮えたぎる池の水。
「まずい! マスターッ!」
「ぬぅおっ!?」
驚きながらも、妖力を風に変化させて放つ“妖術”《嵐の術》で微量のダメージを与えながら(効いているかは正直のところわからないが、効いていると思うことにした。)池に押し返すのはさすがと言えよう。もしマスターニャーダが対応できなければオレたちの下半身はお別れしていたかもしれない。と言うかしていただろう。オレも《嵐の術》の使用はできるがマスターニャーダほどの威力が出ないしわずかな隙ができてしまう。
「奴は危険じゃ……フユニャンは今すぐ逃げるの……ゴホッ」
「マスター……ニャーダ……?」
「わしっちがやる。やらなくてはいけん。だから退け」
だがそんなこと、オレには聞けなかった。聞けるはずがなかった。
「ガッツ仮面は……みんなのヒーローは『ゼンブ守る』と言った! それで今! オレが退いてどうするんだ! これじゃ“ケイゾウ”に合わせる顔もない!」
「
息をする度、ヒューヒューと鳴るような疲労困憊な状態のマスターニャーダを、オレは、オレは、オレが――――――
※ ※ ※ ※ ※
気がつけば、山の中間地点にある、おおもり神社の前で眠っていた。どうやら、別で救助が来たらしい。
マスターニャーダは、オレを庇って…………二度と会うことすらできなくなってしまった。その亡骸は見ることも躊躇うほどに凄惨だったが、オレは目を背けられなかった。背けてはいけないと思った。
告別式は、明日行われるそうだ。
マスターニャーダの最期、これだけは、オレから伝えるべきだと思って、ジバニャンたちに会いに来たんだ。
オレはマスターニャーダを守れなかった……護るべき存在に守られ、生き残ってしまった…………
なあ、ケイゾウ……これからオレはどうやって生きてたら良いんだ……?
教えてくれよ…………どんな顔して、お前の墓の前に――――――そしてマスターニャーダの墓の前にいれば良いんだよ…………!
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