妖怪ウォッチバスターズ『FUTURES!』   作:妖怪紳士奴

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9.72時間の仕事

 ゲンシャのその一言から、今日は始まった。

 

 

 

「赤猫団の仲間って今どこにいるの?」

 

 

「……ニャニャ、そーいえば…………あれぇ……?」

 

 

 

 仲間。砂でできた素直なヒーラー妖怪“砂夫”、すべて否定する城壁のタンク妖怪“ムリカベ”、常に引き籠もる蝙蝠(こうもり)のレンジャー妖怪“ヒキコウモリ”。ジバニャンと長く苦楽を共にした初期メンバーの3人だ。

 

 

 バスターズには、個々に役割というものがある。攻めて攻めて攻めまくる攻撃役、アタッカー。敵の注意を引いて攻撃を受け付ける防御役、タンク。傷ついた仲間を癒したり強化系取り憑きで援護する回復役、ヒーラー。弱体化系取り憑きや罠などで相手を翻弄する邪魔役、レンジャー。この4種の役割で補い合いながら、強力なビッグボスと戦うのだ。

 

 

 ビッグボスの王と呼ばれる妖怪を撃破した後、みんなどこかへ言ったのだ。そしてそれを、彼らは今の今までそのことを忘れていた。不審な程に。

 

 

 

「これはまさしく妖怪の仕業!」

 

 

 

 ウィスパーがそう言うが、ゲンシャには少し違和感があった。「忘れた」と言うよりは「知らない」に近い雰囲気だからだ。記憶が抜けたような、そんな感じではない。どちらかと言えば元からない感じの、理解し難い感覚であった。

 

 

 そんな時だ、ブリー隊長は現状でありえない言葉を吐き出した。

 

 

 

「ジバニャン、ウィスパー。お前らには1週間――いや、3日だ。3日間の休暇を与える」

 

 

「うぃっすぅ〜〜〜!?」

 

 

「どどどっどういうことニャ!? それも今!」

 

 

 

 3日間の休暇。まあ普通だったら問題ないだろうが、現在、謎の妖怪ウィルオーウィスプの出現、バスターズ協会会長の殉職等の問題があり、そして依頼者である、ゲンシャの前で言うことではないのは確かだ。

 

 

 

「いーんじゃない? せっかくなんだしさ。休みも仕事よ?」

 

 

 

 受付嬢の氷姫ふぶきちゃんは呑気にそう言うが、その目には何らかの意志が込められているように感じられる。それを読んだのか、ウィスパーが率先して誘導する。

 

 

 

「…………そぅれではワタクシたちはオヤスミしますかぁー……せっかくですしゲンシャさんも一緒に行きましょう、さあさあ」

 

 

 

 ぶーぶー文句を言うジバニャンの背中を押してそそくさと外へ出る。

 

 

 

「ゲンシャさん、なにか思うことがあればバスターズ協会に行ってくれ。そこならヒントがあるかもしれん」

 

 

 

 ゲンシャは軽く頭を下げ、先に出たウィスパーたちを追いかける。

 3人が外へ出た後、彼らは動き出す。

 

 

 

「ありがとな、ウィスパー…………さて、動くぞ。マスターをやったウィルオーウィスプを、捜索する。深追いはするな、調べ尽くし万全を期して奴を潰す! 行くぞ野郎ども! 特攻野郎Bチームとして仇を討つッ!」

 

 

「りょーかい」

 

 

「まずは“親方”を探し出す(・・・・)ことからボーノ」

 

 

「ああ……店長、店長ー?」

 

 

 

 ブリー隊長は2階のショップ/トレーニングルームに降りながらショップカウンター内に立つ忍風の影の妖怪のことを呼ぶ。

 

 

 

「店長! “ジミー店長”!」

 

 

「はっはい……地味に気付かなくてごめんなさい…………」

 

 

 

 彼はジミー。街や人混みに出ても誰も気付かないほど、影の薄い妖怪で、自分のことを地味で駄目な奴だと思っている。『影が薄い』、たしかに地味な能力だが、“取り憑いた”相手は誰にも全く存在を気付かれなくなる、と効果は意外にも強力である。

 

 

 取り憑く、全妖怪がもれなく持つ能力だ。対象は人から物まで基本どんなものにでも効果を発する。妖怪によって、良かったり悪かったりその内容は様々だ。

 

 

 その彼はここのショップで多くの物を売買してくれる。大体の消耗品はここで揃う。武器や使い捨ての罠、装備品などをオリジナルで造り発売・強化をしてくれる“でんじん親方”とはコンビで商売をしている。そのでんじん親方はBチームメンバー最後の一人であり、現在は行方不明(・・・・)である。

 

 

 先週の鬼時間直前に、「バスターズ協会に行く」と言って出たきり今もまだ帰らず、なぜか誰も姿を見ていないのだ。

 

 

 

  ※  ※  ※

 

 

 

 ジバニャンとウィスパーはゲンシャを連れ、ある人間の住む家へ行く。その表札には『天野(あまの)』と刻まれている。

 

 

 

「ただいまニャー」

 

 

「うぃっすぅー帰ってきましたよケータきゅ〜ん! もンの凄ぉ〜いお客さんを連れてきたでウィスよー? ケータきゅ……ん……あれ…………? ケータ…………くん……? ケータくんがいないでうぃすぅーっ!?」

 

 

 

 素早く2階の部屋へ登る。手前の部屋では天野両親が寝ているようだ。そこに違和感はない。

 

 

 奥の部屋。三人は言葉も出ないほど驚愕した。

 

 

 そこはベッドのカバーがぐちゃぐちゃに丸まり、机の周辺には小物が散乱、クローゼットの扉は倒れ、バルコニー窓は開き、荒れに荒れていた。何かが、起きたのだ。

 

 

 明日は月曜で学校があり、現時刻は23時25分。その部屋に、天野 景太(けいた)――ケータはいなくなっていた。

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