担当との打ち合わせの途中、岸辺露伴はとある男と出会う。
その男に興味を持った露伴は彼を本にするが…

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岸辺露伴は動かない 『     』

岸辺露伴はカフェドゥマゴで打ち合わせをしていた。

否、今の光景を見れば岸辺露伴は明らかに打ち合わせを出来ていない。かなり不機嫌な様子である。

暫くすると担当らしき人物がやって来た。

「スイませェ〜ん

遅れちゃいましてェ〜

チョット話し込んでたもんでねェ〜」

「君、打ち合わせの時間やら日付やら決めてイザ行こうって時に来ないってのは、担当としてどうなんだと思うよ?」

「ハァ…すいませェん」

「その話し方、やめてくれ

 凄くイラだってくる。」

「ところで露伴センセ、今回はどんな話を書く予定なんですか?」

「ハァ…ああ、今回書くのは…」

言いかけた直後だった。

ピリリリリリリリッ!

電話が鳴った。

露伴は『破産』してしまって携帯さえ持っていない。

つまり、それは担当の携帯から鳴らされたものだった。

「あッ!すいませんッ!ホントォ〜に忘れてたんです!」

「オイオイオイオイオイオイオイオイ、

 遅刻はするし、携帯は止めない。

 君、もう少し『マナー』を学んだ方がいいんじゃあないのか?」

担当らしき人物は口だけは謝りながら、電話に出ていた。

「オイ!もうかけてくるんじゃあねェって言ったじゃねェか!」

目の前にあからさまに怒っている人物がいるにもかかわらず、である。

それに対し文句を言おうとした露伴に興味深い内容が聞こえてきた。

『分からねェ…全く分からねェんだよ!

 [     ]の全容が!意味が!

 頼むよ!お前なら知ってるだろッ!

 知ってるって言ってくれよ!

 お前色んな人と知り合いだろッ!

 小耳に挟んだ程度でいいんだよ!』

 

露伴には[     ]という単語が上手く聞き取れなかった。

それでも受話器越しでもはっきり分かるような必死さで、

ここまで聞こえてくるほどの悲鳴のような声が、

露伴の興味を刺激した。

「…ナァ、その電話の相手って、ここに呼べるかい?」

「ハァ?え、えぇ、多分…」

「じゃあ呼んでくれ、大至急だ。」

「ハ、ハイ…おい、岸辺露伴って人がお前に聞きたいことがあるってよ、もしかしたらお前のその、よく聞き取れないなんかについても知ってるんじゃあないか?」

『ホントか!?スグ行くぜ!嘘ついてたらブチのめしてやっかんな〜』

さっきまでの追い詰められた声とは真逆のような

喜びに満ちた声だった。

「ああ、ありがとう。君は帰ってもいいゼ。

 打ち合わせはまた今度だ。」

 

そして彼は数分でやってきた。

「よォ!アンタが露伴先生かい?」

「確かに、僕は岸辺露伴だ。」

「じゃあアンタがあの『ピンクダークの少年』の連載してるッつーことか、意外と若いんだな!」

「そりゃ、どうも。」

「そんじゃ、本題に入るがね、

 アンタが知ってるんだろ?[     ]について!」

「…何?」

初め、露伴はただ単語が聞き取れなかっただけだと思っていた。

しかし、彼の口の動きは明確に何かを発しているのに一切音がしなかった。

「オイオイ、上手く聞こえなかったか?

 もう1回言うぜ?[     ]が知りたいんだ!」

やはり彼の口は虚無を吐き出すのみだった。

「……わかった。」

「本当か!?!?」

「ああ。ところで、チョットこの指先を見てくれないかな?」

 

「やはり『ヘブンズ・ドアー』を使った方が手っ取り早いし確実だな」

「さて…」

ペラペラとページをめくる露伴の手が止まる。

目に付いたのは1行の文だった。

『[     ]ってなんだ?』

「『空白』だと…?」

「これまで本にしてきた中には余白はあっても

 文章中に空白が生まれたことはなかったはずだ…」

ページをめくる。

今日は[家でテレビを見た。]

[独りだと椅子が空いている。相手が欲しい]

それにしても[     ]が気になる

一体どういう意味なんだ

 

「これはッ!文字を『喰って』いるのかッ!」

露伴の脳裏には、嫌な想像がよぎっていた。

(これはもしかして… くしゃがらと同じ存在なのかッ!言葉そのもの!

この世の禁止用語ッ!

 見えないし聞こえないが確かに存在するッ!)

「だが…既に対策は練ってあるんだ…」

『2日間の記憶を消す』

『2日間の記

『2日

 

「消えた…だと…」

「まさか!コイツがこの空白を知りたいと考え続ける限り、空白は侵食を続けるということかッ!?」

 

(書き込めない…侵食は続く…禁止用語…もうどうしようもない状況なんだろうな)

(だがッ!)

「『この岸辺露伴を舐めるなよ』ッ!」

 

露伴は彼の空白に『()()()()()』…

 

 

 

「ン?

 もしかして俺寝てた?」

目覚めた男は呑気に尋ねる。

 

「ああ、そうだな、グッスリと寝てたぜ。」

 

「おお、そうか!でも俺、[ピンクダークの少年]について聞いてねェー気もするんだよなァー…

 ン?アレェ?『ピンクダークの少年』なら知ってるぜ?

 単行本だって持ってるしアンタが書いてるってのも知ってるッ!」

 

「オイオイ、一人コントがしたいなら帰ってくれ。」

 

「ンンン〜?なんつーか、スゲーサッパリした気分なんだが、不思議な気分だぜェ〜。」

 

「ま、帰るわ!

 今日はありがとなッ!」

 

「…ああ、そうだな…」

 (…あの時咄嗟に空白の部分に書き込んだが…正解だったみたいだな…

 知るための欲望から動いてるんだから知ってしまったら動かないのも当然かもしれないがな…)

 

(それにしても…全く、不気味なヤツだった…)

 

人間の進化には知識欲や、探究心が深く関わってきた。

そうして進化したからこそ、彼は探究心に囚われ、何もかもを認知できなくなるところだった。

 

(今後は他人の知識欲にまでズカズカ入り込むのはよしておこうか)

 


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