鳴女さんの令和ロック物語   作:ディヴァ子

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 皆さんは友情と愛情、どっちが欲しいでスカ? 私はお金が欲しいデス。


鳴女さん、ママ活する

 フハハハハハ、おはよう諸君! 今日も元気溌剌、鳴女さんだ!

 前回の妖刀騒ぎから数日。丸子を仲間に据えたユニットで活動を始めたのだが、それが大いに受けたおかげで、日に万額を稼ぐ程の人気を得られた。大変喜ばしい事である。

 座敷童子のブーストを加味したとしても、驚異的な数字と言えよう。機材も充実し、血鬼術や身体能力の成長も目覚ましい。拠点は相変わらず手狭だが、広過ぎても結局は扱いに困るので、今は考えないでおく。三つ子の魂は百まで続くように、貧乏性は早々治らんのよ。

 ちなみに、ユニット名はチャラトミの提案で「鬼導隊(きどうたい)」になった。“鬼が導く音楽隊”みたいな意味が込められているらしい。ポエムやなぁ。

 個人的には「無惨サマーズ」のままでも良いかと思ったのだが、あれ以降も零余子が全力で食い下がってきたので、仕方なく変えてやった。うーむ、解せぬ。

 まぁ、それはそれとして、

 

『今日は「第一回:丸子ちゃんを考える会」を始めようと思う』

 

 無限城のど真ん中で、私は会議を開いた。参加者は当事者である丸子と零余子、それからチャラトミ。八時じゃないが、全員集合だ。

 

「何よ、その小学校の学級会みたいな議題ヴァー」

 

 ……よし、零余子ハンバーグは放っておいて、会議を進めよう。

 

『知っての通り、丸子は無限城に一人で常駐している。それはとても寂しい事だ』

「誰のせいバァーッ!」

 

 誰か零余子印のソーセージを冷蔵庫に仕舞っといて。

 

『そこで、そろそろ彼女の遊び相手を探しに行こうと思う』

『おお、わしのお願いを聞いてくれるのかえ!?』

『お前は色々と貢献しているからな。報酬を与えるのは当然だ。何処かの元貴族と一緒にされては困る』

「だったら私もォオオオオン!」

 

 とりあえず、零余子の叩きでも突き出しにしようか。

 

「えっと、零余子ちゃんじゃ駄目なんスか?」

『零余子は私の抱き枕だからな。手放せん』

「今はサンドバックみたいですけど……」

『兼用だ』

 

 後ろで「酷い話だ」という台詞が聞こえたので、望み通りにしてやった。零余子サンドって完全に食べ物だよなぁ。

 つーか、お前は少し反省しろ。大分やらかしたんだからな、前回。

 

「そうなると、人間じゃ駄目っスよね?」

『ああ。常駐して遊び相手になって貰う予定だからな』

 

 人間は弱い。すぐに死ぬ。簡単に裏切る。世界の中心は自分じゃないと気が済まない。一人じゃ大した事は出来ない癖に。今の世の中、そんな奴らばっかりだ。寝言は寝て言え。

 

「じゃあ、妖怪を勧誘するとして――――――どんなのが良いんスかね?」

『そこなんだよなぁ……』

 

 初めは同じ童子系の妖怪なら良いかと思ったが、奴らは本能レベルで縄張り争いをしてしまう為、全く以て適していない。子供はすぐ喧嘩するからね、仕方ないね。

 

『それを何とかするのが、お前の役目だ』

「また凄い無茶振りして来ますねー」

 

 だが、そこで投げ出さない辺り、流石はチャラトミである。チャラい癖に。

 

「……そもそも、丸子ちゃんは本当に遊び相手が欲しいんっスかね?」

『『はぁ?』』

 

 ふと呟いたチャラトミに、思わず間抜けな声が出る。丸子も同様だ。

 

『何じゃお主、私が耄碌しているとでも思っているのか!?』

「いや、年は食ってるでしょ、座敷童子なんだから。だからこそ違和感があるんスよ」

『んん~!?』

 

 すっかりメダパニ状態の丸子。無理もない。それくらい、チャラトミの発言は意味不明だった。働かせ過ぎて頭がおかしくなったか?

 しかし、次にチャラトミの放った言葉に、私は衝撃を受ける事になる。

 

「だって、座敷童子は派生も含めて“親に捨てられた子供”がなる妖怪なんスよ? “寂しさ”と“恨めしさ”の違いはあれど、本当に欲しいのは“親の愛”だと思うんスよねー」

 

 座敷童子は子供にしか見えないと言われている。それこそ遊び相手になってくれる、とも。

 だが、彼らが恩恵を齎すのは家――――――つまりは大人に対してだ。まるで、「もっと構って」「自分を見て」「頑張ったから褒めて」と言わんばかりに。

 

 子供が、親に甘えるように。

 

 そして、大人がそれを当たり前に感じ、見向きも感謝もしなくなった時、座敷童子は出て行くのである。“また捨てるのか”と……。

 ウムム、これは目から鱗滝だわ――――――って、何か嫌だなそれ。私は何を言ってるんだ?

 ま、それくらい驚いたって事で一つ。信じられるか、これあのチャラ男なんだぜ?

 

『………………!』

 

 丸子が固まる。とっくの昔に忘れ去った、何かを思い出しているのかもしれない。

 そう言えば、彼女が普通の遊びに使う鞠は“生涯の宝物(たいせつなもの)”なのだとか。

 つーかさ、

 

『お前、本当にチャラ男なのか?』

「いや、別にチャラ男のつもりは無いんですけど……」

『嘘だッ!』

「何でぇ!?」

 

 だったら、その見た目を何とかしろ。

 しかし、親の愛かぁ……全然分からん。借金の片に売られそうになったから、撥で八つ裂きにした(非力だったから殺せなかったけど、再起不能(リタイア)にはしたった)記憶しかないんだけど。玄上ちゃんや演奏用の着物も、その時の戦利品だし。

 だけどまぁ、子供はそういう物なのだろう。友情より愛情の方が欲しいのは、むしろ普通の事なのかも。微塵も理解出来んが。

 

『そうなると、“親役”が必要になるのか?』

 

 何処の下弦の伍かな?

 

『……流石にロクデナシは嫌じゃぞ?』

『安心しろ、私も普通に嫌だわ』

 

 それはあの旦那役だけで充分だ。

 

「だけど、そんな都合の良い妖怪いる訳――――――」

「いますよ。そういう都合の良い奴が、ね……」

 

 疑問を呈す零余子に、チャラトミがしたり顔で答える。凄いぞチャラトミwiki。

 

「一先ず、これを見て下さい」

 

 という事で、例の「チャラトミの妖怪講座」の「妖怪分布図(最新)」を皆で見てみる。そこには中々面白い情報が書かれていた。

 

「……どうスかね?」

『フム、良いだろう。今宵の獲物(・・・・・)はこいつで決まりだな』

 

 本当に便利な男だよ、お前は。

 

 ――――――さぁ、行こう。(トラツグミ)の鳴く頃に。




◆この世界の漫画事情

 大抵は存在しているが、物によっては「影も形もない」「漫画は無いがキャラクターのみが実在する」「どちらも存在する」の3パターンに分かれている。
 「ゲゲゲの鬼太郎」は「どちらも存在する」パターンであり、基本的に6期のアニメをベースにしているが、1~5期の要素や漫画のみの要素などがミックスされた独自の歴史を辿っている(6期第1話が令和から開始されている、地獄童子がいる、妖怪四十七士の概念があるetc)。
 「鬼滅の刃」は「どちらも存在しない」扱いで、ワニ先生は別のタイトルで連載し大成している。その為、鳴女さんは完全な異物である。
 しかし……。

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