鳴女さんの令和ロック物語   作:ディヴァ子

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何だかんだで100話。ここまで続くとは思わなかったナァ……。


それぞれの戦い

『ガヴォルァアアアッ!』『ヒュルリリリリッ!』『ギシャアアアアヴォッ!』

 

 マッシブーンとフェローチェが地上から、アーゴヨンが空中からアオイを攻め立てる。

 

「行くよ皆!」

『オリャッピ!』『ブイ!』『ホグルドォッ!』『フラァリリリッ!』『クァアアン!』『ブゥゥウウン!』

 

 しかし、アオイは慌てず騒がず、全ての手持ちポケモン(相棒ピッピ(NN:アカネ)、相棒イーブイ(NN:ユウキ)、オニステル(NN:ハヤテ)、オーレン種のラフレシア(NN:ヒナゲシ)、オーレン種のニドクイン(NN:アンズ)、メガスピアー(NN:アキト))を繰り出した。

 彼女は超マサラ人にして憑依転生者(しゅじんこう)。潜り抜けて来た修羅場の数も質も違う。伝説のポケモンとの連戦や多勢に無勢だった事も、これが初めてではない。突如飛来したガラルフリーザーに殺され掛け、マサラ人の紅一点に何度も勝負を挑まれ、通常色の超獣(ウルトラビースト)軍団に袋叩きにされた経験は、常人では得難い物だ。

 だからこそ、アオイは自信を持って全力をぶつけられる。6体同時運用という人間離れした業も、自分であれば可能だと確信して、全てのポケモンを繰り出したのである。

 そもそも、全員が漏れなくレベル90台なので、伝説とは言え、ぽっと出の野生ポケモンに負ける理由が無かろう。

 

「ヒナゲシちゃん、「ムーンフォース」! アンズちゃん、「りゅうのはどう」!」

『フラワーッ!』『クィインン!』

『ヒュルリリリッ……!』

 

 先ずは動きの素早いフェローチェを遠距離攻撃で牽制し、

 

「ハヤテ、「ねこにこばん」! アキト、「げきりん」!」

『ホグルォッ!』『キキュィイイッ!』

『ギギャアアアッ!?』

 

 空を飛び回るアーゴヨンに目晦ましをしつつ的確に弱点を突き、

 

「ユウキ、「めらめらバーン」! アカネちゃん、「ゆびをふる」!」

『ブッブゥイ!』『スラァアアシュ!』

『ガヴォルァアアアッ!』

 

 力任せに突っ込んで来るマッシブーンを炎の壁と空気の刃(指を振るで発動した「エアスラッシュ」)で逆に押し返した。

 だが、それくらいで終わる程、伝説のポケモンは生易しくは無い。

 

『ギシャアアアアッ!』

『ヒュルリリリリッ!』

『ガヴォオオオオッ!』

 

 アーゴヨンはヘドロウェーブや大文字を撒き散らし、フェローチェが華麗な飛び膝蹴りを披露して、マッシブーンは吸血で体力の回復を図る。この反撃でメガスピアー、オーレンラフレシアが落とされ、相棒イーブイは瀕死寸前の大ダメージを負った。

 しかし、これは庇ったり、流れ弾が偶然当たってしまった結果によるもの。一気に不利になった、とは言い難い。

 何故なら、しなければいけない指示の数が実質半分になったのだから。

 

『ヒュルリィッ!』

「ハヤテ、「ステルスバード」からの「ねこにこばん」!」

『ホグルドォァ!』『ビギャッ!?』

 

 アーゴヨンの猛攻から逃れる為に影に潜んだオニステルが、突如フェローチェの前に現れ、再び飛び膝蹴りを放とうとしていた彼女の目を眩ませた。

 当然、技は失敗し、フェローチェは自爆する形で大ダメージを受け、

 

「アンズちゃん、「だいちのちから」!」

『クァアアン!』『ビュリリリリィッ!』

 

 オーレンニドクインの大地の力による突き上げにより、止めを刺された。

 そこへ図らずも手隙となったアーゴヨンが龍星群で狙撃しようとするが、

 

「フン!」

『ギッ!? ……ゴァアアアッ!』

「甘い! アカネちゃん、「コズミックパンチ」!」

『オラーッピ!』『ゴギャアアアッ!』

 

 ボールゲットキャンセルで動きを止められ、出た瞬間を相棒ピッピにぶん殴られて、あえなく再起不能(リタイア)に。

 

「ユウキ、「ブイブイブレイク」!」

『ブッブゥ……イイイッ!』『グヴォォォ……ガヴォオオッ!』

「させるかぁっ!」『ヴソォオオオッ!?』

 

 さらに、最後の力を振り絞った相棒イーブイのブイブイブレイクがマッシブーンを襲い、反撃する前にアオイの拳でKOされた。

 そう、トレーナーがトリを飾るのだ。

 いや、その流れはおかしい……かもしれないが、それこそが超マサラ人である。ポケモン世界の田舎者は化け物か。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

「シバイヌキ、「リーフブレード」!」『イヌキライィッ!』

『フォォォ……キャアアアアアッ!』

「……っ、「まもる」だ、シバイヌキ! そして戻れ! ……頼むよ、パイちゃん!」『ダイパァアアアッ!』

 

 一方、ボブはそんな器用な真似は出来ないので、ツンデツンデをユルングルムに任せつつ、高速かつ不規則に飛び回るウツロイドにシングルバトルを挑んでいた。

 幾ら改心し、ポケモンにも懐かれているが、最近まで“一緒に戦う”という事を知らずに生きて来たボブでは、ポケモンたちのポテンシャルを十全に発揮出来ているとは言えなかった。致命的なまでに経験不足なのだ。

 

「……ごめん、パイちゃん! 止めだ、ガニマスター! 「アクアブレイク」!」

『ガニマータァッ!』『キキャアアアアアアアアッ!?』

 

 だが、未熟者なりに一生懸命頑張っているのが分かっているからこそ、ポケモンたちは共に戦うのである。今のボブであれば、命を懸けても良いと。その心意気になら従えると。

 

『ジュラァアアアアッ!』『バディルバディル……!』

 

 そして、ユルングルムとツンデツンデに至っては、勝負にすらなっていない。ユルングルムはディアルガやパルキアと同格の禁止伝説級であるのに対して、ツンデツンデは準伝説系だ。ついでに言えば、みず/ドラゴンの特殊アタッカーに、特殊方面が大して硬くない奴が勝てる筈もなかろう。

 結果は蹂躙。分離と合体を繰り返すツンデツンデの変則的な攻撃も、蛇のように素早くドラゴンのように硬いユルングルムには大して通じていなかった。流石は破壊と創造の神。

 むろん、無傷とは言えないが、自己再生でどうにでもなるので、ダメージレース的に最初から勝ち目は無かったと言える。まさしく種族値の暴力……。

 「もうこいつ1人で良いんじゃない?」は禁句。

 

「ありがとね、皆! ユルングルムも!」

 

 ともあれ、ボブが素直にお礼を言える良い子に育ったのは、素晴らしい事である。おめでとう。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

『デンショォオオオクゥッ!』

 

 デンジュモクが金平糖のような頭部が火花を散らせながら発光し、断線したコンセントを思わせる手から稲妻を放つ。完全な興奮状態であり、特攻173にブーストが掛かった放電攻撃は、控えめに言っても雷を連打されているのと変わり無い。着弾点は凶悪な電圧により弾け、痕跡ごと消失する。生身の生き物が喰らえば一溜りもないだろう。

 

『おぎゃああああっ!』

 

 しかし、四ツ目の赤ん坊は、ちょっと嫌そうな顔をするだけで、大したダメージは受けていなかった。精々煤が付くぐらいにしか効いていない。

 まぁ、これも当然の結果だろう。彼は名無し本来の姿にして、偉大なる魔女の加護を受けた、人でも妖怪でもないモノ。鳴女に火達磨にされていた頃とは違うのだ。

 

『あぶっ!』「ありがとね」

 

 そんな事よりも、彼にとっては母なる魔女――――――犬山 真名に類が及ばないかが大事である。

 絶望に打ちひしがれ、独り泣いていた所に現れて、救いの手を差し伸べてくれたのは、己が呪った彼女だった。

 だが、真名は伝説の悪魔王と恐ろしき黒魔女に師事を得て、自分では到底抗えぬ強大な魔法少女となっており、誘われるがまま、その手を取った。

 そして、息子としての(・・・・・・)名を授かり(・・・・・)、身も心も魂さえも彼女に捧げる事で、この世に実体を持って顕現する事が出来た。

 それを“切れる事のない絆で結ばれた親子(かぞく)”と取るか“契約に縛られた使い魔(どれい)”と取るかは人それぞれだが、少なくとも彼にとっては前者であった。何故なら、二人は零余子とノームと同じく、文字通りの一心同体なのだから。

 

『カヴォォオオッ!』『シュキィイイッ!』『コァアアアアアン!』

 

 しかし、そんなの関係ねぇウルトラビーストたちは、容赦なく一斉に攻撃を仕掛けて来た。デンジュモクの雷が、カミツルギのリーフブレードが、テッカグヤのヘビーボンバーが、二人を襲う。

 

「エロイムエロッサイム、我は訴え求めたり……来たれ、リリス、ベルゼブブ」

『呼ばれて飛び出て!』『ブンブブン!』

 

 そんなウルトラビーストたちに対して、真名は使い魔を召喚して対応した。使い魔と言っても、彼女が使役するのは師匠のような「白悪魔」ではなく、いざとなったらこちらを裏切り兼ねない「黒悪魔」の類であり、もう1人の師匠の影響か、七大魔王やソロモン72などのキリスト教系統の物が多い。

 だが、有効範囲が狭い分、顕現した個体は師匠が呼び出す者よりも強力で、魔術頼りで身体能力はさっぱりだったリリスやベルゼブブも、超獣相手に肉弾戦を行える程度にはパワーアップしている。

 

「出でよ、ケルベロス、アムドゥスキアス、マルコシアス――――――」

 

 さらに、膨大な魔力により、一度に最大で12体の悪魔を呼び出せる為、手数の多さに関しては真名の右に出る者はいないだろう(※鳴女一派は除く)。魔王や邪神の類が12体も現れるのだから、相手取る方は溜まった物ではない。デスタムーアやオルゴデミーラにダークドレアムなどのボスキャラに取り囲まれたような物である。

 

『シュキィイイン!』

「うるさい」

『キラレェエエエ!?』

 

 そして、ラスボスたちを力尽くで使役している真名本人も当然強い。少なくとも、隙を突いて辻斬りしようとしたカミツルギを、魔法のステッキ1本で伸してしまう程度には。

 

「ヤッチマイナー」

『『『ギャース!』』』

 

 こうして、ウルトラビーストたちは数の暴力に圧倒され、あっという間に完封されるのであった……。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

『フォフォフォフォ!』『ギィガァアアヴヴ!』

 

 一方、大空 つばめだけは、数の暴力に晒されていた。道化師のように不規則な特殊攻撃を繰り出してくるズガドーン、何でも飲み込む大口で只管に突っ込んで来るアクジキングという、中々に面倒な組み合わせだ。

 どちらかを攻撃しようとすると、片方に不意打ちされる。

 さらに、少しでも隙を晒すと挟撃までされる。これが怖い。

 

「……フン!」

 

 だが、つばめは焦ってはいなかった。

 住民の安否という後顧の憂いは、既に子供たち(・・・・)が排除している。後は殺されずに生き残るだけ、それだけである。何も気にせず戦える事の、何と喜ばしい事か。

 そもそも、魑魅魍魎の類と人間とでは、圧倒的な差がある。鬼しろ妖怪にしろポケモンにしろ、死ねばそれで終わりという脆弱な人間は、何時だって不利なのだ。

 しかし、化け物を殺すのもまた、何時だって人間である。

 例え我が身が名状し難い悍ましいナニカになっていたとしても、人間だと思っているのが自分一人なのだとしても、つばめは己が人間なのだと確信している。

 人間は魂の、心の、意志の生き物なのだから。

 

 ――――――自らを脅かす外敵を排除する。

 

 この果てしない恨みつらみがある限り、つばめは本当の悪魔(にんげん)でいられる。その為だったら、何だってやれる。

 だからこそ、

 

(そら)の呼吸、弐ノ型! 「虫食いの穴」!」

『ギガヴォッ!?』

 

 こんな人間離れした技も使える。

 宙の呼吸は空間の妙技。「虫食いの穴」は、文字通りワームホールとなって、つばめの“突き”を、空間転移によって送り出し、死角からの一撃として放つのである。

 

『フォフォフォフォフォ!』

「宙の呼吸、参ノ型! 「事象の地平面」!」

『ブフォッ!?』

 

 そして、怯んだアクジキングの穴を埋めようと襲い掛かって来たズガドーンには、「事象の地平面」を食らわせる。空間を一文字に切り裂き、光さえも脱出不可能な特異点を発生させ、崩壊と同時に“固体化した光”という有り得ない謎物質を散弾の如く放つ技だ。この物質はそれ自体が特異点であり、物理的に防ぐ不可能な現象のような物で、回避出来なければ確実に身体を切り裂かれる。

 

「これで終わりだ! 宙の呼吸、壱ノ型! 「宇宙の灯台」!」

 

 さらに、2匹がたたらを踏み、一直線に並んだ所で、つばめの壱ノ型が炸裂する。これは参ノ型とは逆に指向性を持たせた放射線を斬撃として飛ばす技で、謂わば“吐き出す”攻撃であり、軸線上の物体は分子を破壊されて崩壊してしまう。その様は虹色の灯台が立ったように(もしくはたなびくオーロラのように)見える為、この名が付いた。

 

『グヴヴヴ……』『ズガドド……』

 

 物理的というより概念的な攻撃には、流石の準伝説のポケモンと言えど耐え切れず、宙を見上げるように引っ繰り返った。

 まぁ、空間使いによる殺傷力マシマシの攻撃を食らって、原型を留めている方がおかしいのだが……。

 ともかく、これでウルトラビーストは全滅した。

 

『てぁあああああっ!』《ギャァハハハハァ、ヴフハハハハハッ!》

 

 しかし、まだ終わりではない。一番の大物が、未だに健在なのだから。




◆宙の呼吸

 大空 つばめの使用する呼吸という名のナニカ。空間使いというだけの事はあり、空間を繋げたり圧縮したり崩壊させたりと、やりたい放題やっている。これらの技は全て「特異点」扱いの為、物理的に防ぐのが不可能という特徴があり、殺されたくなくば避けるしかない。
 ちなみに、技名は相対性理論や天文学の用語が由来となっている(特にブラックホールやホワイトホールなどの空間関連が多い)。宇宙までも自由に羽ばたきたいという彼女の内なる願いと、化け物は絶対にぶっ殺してやるという純粋な殺意が反映された結果だろう。
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