鳴女さんの令和ロック物語   作:ディヴァ子

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???:『始まりがある物には何時か終わりが来る』


始まりの終わり

『キャォオオオッ!』

 

 猫娘が怒涛の攻めを展開する。

 先ずは翼脚による上下のダブルウィング、振り下ろした翼脚を軸にして蹴たぐりの二連撃、それから尻尾を突き出して地面に突き刺し、ビシュテンゴの如く大回転。

 さらに、散魂鉄爪の乱れ引っ掻きからのサマーソルト、最後は翼脚と尻尾によるウルトラハイメガキャノンを発射した。

 

《アヒャヒャヒャヒャヒャッ!》

 

 だが、そのどれもがナイラーアには通じなかった。上手く躱し、往なし、防いでしまったのだ。伝説のポケモンの癖に守るを覚えてるとか渋い。

 

《ギヒヒヒヒ、イヒョハハハハハハハハッ!》

 

 と、今度はこちらの番だと言わんばかりに、ナイラーアが鐘を鳴らすように頭を揺らしたかと思うと、顔面から無数の鉄面皮を生み出して、嵐の如く撃ち出して来た。

 これぞナイラーアの専用じめん技「せんのむぼう」。千を超す無貌を発射してダメージを与える、連続攻撃系の技である。一発一発が40も威力があるので、ゲームで言えば真面に食らうと自爆くらいのダメージを受けてしまう。

 むろん、じめんタイプである関係上、高速飛行を可能とするひこうタイプには当たらない。射程は長いが、低空を這うように発射する為、上空は範囲外なのだ。

 しかし、ここはゲームではないので、完全な無効化もまた不可能であり、もしも羽休め=着陸でもしていたらどう足掻いても避けられないし、飛んでいても避けられずに当たってしまえば普通にダメージを受ける。

 そして、飛翔しなければ当たってしまうという事は、逃げ道を潰され易いという意味でもある。

 

《ギャァハハハハハァ、ヴフハハハハハッ!》

 

 案の定、ナイラーアは第二の専用あくタイプ技「はいずるこんとん」で追撃して来た。こちらも混沌の闇が這いずるように追いかけて来るのだが、千の無貌と違い、攻撃は上に伸びる。闇の中から芽吹く暗黒の魔の手が、追い縋り、引き摺り下ろすように襲い掛かって来るのである。

 

『ぐっ!』

 

 これにはさしもの猫娘と言えども避け切れず、叩き落されてしまった。ダメージも相当な物だったようで、上手く起き上る事が出来ない。

 

《キャハハハハハッ!》

 

 さらに、ナイラーアが止めのシャドーボール十連打を放って来る。あれを真面に食らったら、命は無いだろう。

 

『……キィアアアッ!』

 

 だが、猫娘は力を振り絞り、翼を折り畳んで尻尾をピンと伸ばした突撃形態へ移行。バルファルクとマガイマガドの高機動振りっを再現した、凄まじきブレイブバードを繰り出した。それも5連続。ハンターだったらとっくに3乙している。

 

《グゥフヒヒヒ……!》

 

 しかし、そこは伝説のポケモン。たたらを踏みはしたが、倒れる事は無く、不気味に笑いながら継戦の構えを取った。まだまだイケるらしい。

 

『ハァッ!』

《ギヒヒ!?》

 

 すると、このままでは共倒れになると判断した猫娘が、“奥の手”を発動する。腕甲に仕込まれた、巨大な鈎爪――――――アイスボーンでお馴染みの「クラッチクロー」、その改良版だ。このクラッチクロー改、連結部が翔蟲の糸が使用されており、大型モンスターなら即座に操竜出来る他、小型であれば暫しの間だが完全に拘束する事も可能である。

 そして、ナイラーアはどちらかと言うと小型のモンスター。というか、ポケモンは大抵が拘束対象だ。

 

『はぁあああッ!』《ギヒャホハハヒヒッ!?》

 

 完全に身動きを封じられたナイラーアに、猫娘の容赦のない攻撃が浴びせられる。

 先ずは右ボディーブロー、続いて左と右の膝蹴り、頭突きと来て、翼脚と尻尾で串刺しにして、最後は全火力を零距離でフルバースト。

 

 

 

 ――――――ピィィィィィーッ……!

 

 

 

《ギッ……》

 

 この怒涛の連撃には、流石のナイラーアも反り返るようにしな垂れ、命の鼓動を止めた。

 

 

 

 ――――――ドクン……ドクン……ドクドクドク……ドッドッドッドッドッ!

 

 

 

《ギャフハハハハハッ! ヒャッホッハッハッハッハッハッハッ!》『なっ!?』

 

 ……かに思われたが、白銀に輝く人型ボディに巨大な腕のような一対の翼と骨格を思わせる後光を差し、黒いゲル状物質で全身が覆われた、天使とも悪魔とも付かない不気味なオリジンフォルムに形態変化して、クラッチクローの拘束を力尽くで引き千切った。

 

《キヒャホホホホホッ!》

『ギィィ!?』『ガヴォォ!』『ギゲェッ!』

 

 さらに、自らが呼び寄せ、敗退して瀕死となったウルトラビーストたちを、這いずる混沌で次々と取り込み、エレボリアル状態へ移行。迸る邪悪なオーラを無数のシャドーボールとして手当たり次第に発射し、既に瓦礫の山同然の東京都を更地にし始める。

 

『このぉっ!』「ふざけた真似を……!」「やったれハヤテ!」「頼むよ、ユルングルム!」「この穢らわしい化け物がぁ!」

『あぶぅうう!』『ホグルドァッ!』『ジュラアアッ!』

 

 もちろん、猫娘たちも一斉に攻撃を仕掛けるが、

 

《イィッヒッヒッヒッハッハッハッ!》

 

 全然堪えないどころか、千の無貌をレボリアル化させた「悪しき煌めきのトラペゾヘドロン」を発動。目や口、手足に耳、鼻など、あらゆる人体の部位を蓮コラ状態にした、混沌極まる凧形二十四面体が津波となって押し寄せる技である。

 その圧倒的な威力により、結晶塔は崩壊、猫娘たちは投げ出された。

 

『ぐっ……!』「ぐぅっ……!」『あぶぅ……!』

 

 これは効く。レボリアルは能力が全て一段階上昇した状態で巨大化する上に、吸収したウルトラビーストたちにより、今のナイラーアは全能力がMAXまで上がっている。攻撃力も大きさも段違いだ。

 

「デカくなるのは!」「そっちだけじゃない!」

「ユルングルム、エレボリアル!」「戻れハヤテ! そして、アカネちゃん、ダイマックス!」

『ジュドラァアアアッ!』『ミュヴスリィダッピィィ!』

 

 だが、ポケモンの力で素早く退避していたボブとアオイはまだ健在であり、それぞれユルングルムと相棒ピッピを巨大化させて対抗した。三つ首となり翼の生えたユルングルムがナイラーアに絡み付いてハイドロポンプを零距離で浴びせ、どこか人間めいた姿の相棒ピッピが強化された拳で力任せにぶん殴る。

 

《ギェァホォオオオオオッ!》

『ジュラッ!』『ドピーッ!』

 

 しかし、ナイラーアはそれでも倒れず、這いずる混沌でユルングルムを無理矢理引き剥がし、シャドーボールを拳に込めたデンプシーロールで相棒ピッピごと殴り飛ばして、千の無貌で追撃した。

 そして、止めに特大のシャドーボールを放つ。光さえ無に帰す暗黒空間の塊である。食らえば禁止伝説だろうと即死するだろう。

 

「――――――宙の呼吸、肆ノ型! 「降着円盤」!」

 

 だが、発射直前にナイラーアの右腕に円盤状の闇が発生。輪の中心から光を放ちながら回転し、丸鋸の如く切断した。

 これぞ死を告げる肆ノ型。特異点の円盤を発生させ、切断した物同士の因果関係をも断ち切り、最初から無い事(・・・・・・・)が当たり前(・・・・・)にしてしまう大技だ。

 これを食らった部分はどうあっても再生出来ず、影響の及んでいない部分を抉り取って切り離さなければならないという鬼畜使用だが、“宙返りしながら放つ”という技の出だしがある関係上、そもそも隙を突かなければ当てられない、ハイリスクハイリターンな必殺技である。空間転移でこっそり近付いて不意を突いても尚、狙った頚を斬り落とす事が出来ないくらいには命中率が低い。

 とは言え、シャドーボールを中断させ、ナイラーアの内部に溜め込んだエネルギーを外へ漏れ出させるという快挙は成した。

 

 後は、それを利用出来る者(・・・・・・・・・)が扱うのみ(・・・・・)

 

『……キュァアアアアアアアッ!』

 

 猫娘が何度も息を吸い込むように、周囲のエネルギーを鎧に取り込んでいく。

 

「皆、ねこ姉さんに力を!」

『ばぶぅ!』『仕方ないわね!』『持ってけドロボー!』

 

 さらに、重体を引き摺ってでも呼び出した悪魔たちの力を、真名が搔き集めて譲渡する事で、その勢いは加速度的に増した。

 それに伴い猫娘の全身が赤紫色の炎で包まれ、やがてウルトラヴァイオレットな人型生命体へと身を変じる。

 この形態こそ、猫娘のファイナルモード「神霊現生」。バルファルクの龍気活性やマガイマガドの鬼火と同じような特性であり、自らを現象化(・・・・・・)させる能力だ。

 今の彼女に触れた者は一瞬にして蒸発するであろう。

 そう、生きるプラズマとして攻撃し、この世の全てを物質昇華させるという、ある意味で化け物らしさを突き詰めたような技なのである。まさに神霊、まさしく怪物。猫娘を阻める者は、最早存在しない。

 

『キィイイイイッ!』《ギヒヒャホォアッ!?》

 

 煌めく流星群の如く、猫娘がナイラーアを蜂の巣にしていく。宙の呼吸と同じく、触れた瞬間消滅するのだから、防ぎようが無かった。

 しかも、こちらはトリッキーさが無い分、純粋に速い。それも目で追えるような物ではなく、気付いた時には終わっていた、というくらいに。

 

『――――――ハァッ……はぁ……ふぅ……!』

 

 しかし、こんな大技がノーリスクで放てるはずも無く、猫娘は瞬く間に消耗し、ナイラーアをビークインにしたと同時に動きが止まり、輝きも失ってしまった。この技は命を削る技なのだ。

 だが、やり遂げた。ここまでされれば、幾ら何でもナイラーアが生き残れる道理は、

 

《……グフヒヒハハハハッ!》

『……ッ、クソがぁ……っ!』

 

 無かったのだが、死なば諸共とばかりに、ナイラーアが最後の這いずる混沌で猫娘の身体を絡め取った。どんなにジェット噴射をしても離れられそうにない。

 おそらく、ダイマックスやレボリアルしたポケモンが起こす爆発に巻き込んで、道連れにするつもりだろう。

 

『うぐ……!』

「頑張って、ねこ姉さん!」「往生際が悪過ぎる!」「いい加減にしろ!」「さっさとくたばれやゴラァッ!」

 

 口汚く罵倒しつつ真名たちが援護するが、最期の意地なのか、どうしても混沌の束が断ち切れない。くたばり損ないの往生際は何処までも最悪だった。

 と、その時。

 

 ――――――べべん!

 

 戦場に琵琶の音が鳴り響き、意固地に巻き付いていた這いずる混沌の闇が切り離された。

 

《………………!》

 

 急ぎ離れる猫娘の後姿を悔しそうに睨みつけながら、ナイラーアがゆっくりと仰向けに倒れ、たった独りで大爆発した。跡には何も残らなかった。

 何もかもが空っぽな存在であるナイラーアが、本当にこれで死んだかどうかは不明だが……。

 ともかく、今は琵琶の音の発生元だが――――――言うまでもないだろう。

 

 “彼女”である。

 

『いやぁ、派手にぶっ壊したねぇ。実に爽快、素晴らしい』

 

 何処からともなく、自然発生するように現れる鳴女。強大な魔王を倒した後に、何の前触れも無く悠然と現れるその姿は、まさしく大魔王や大邪神と表現するのが相応しい。

 

「……出て行くなと言われていただろう。不本意だが、お前は私たちにとっては大事な身なのだから」

 

 そして、鳴女を追うように転移して来たのは、ベアード軍の苦労人、アデル。どうやら、鳴女がここに現れるのは計画には無かった事のようだ。

 

『知らんなぁ~。私は行きたい時に、思うがままに赴く。私がルールだ』

「えぇ……」

 

 だが、鳴女は最高に自分勝手だった。自由気儘にも程がある。

 とは言え、悪い事ばかりではない(・・・・・・・・・・)

 

「――――――化け物共め! 私は宣告する! 鬼滅の刃の名の下に、鬼殺隊は貴様らと命ある限り戦うと!」

 

 と、重たい身体に鞭打って、つばめが切っ先を向けて宣戦布告した。ボロボロな姿で、それでも力の限り叫ぶ様は、強大な悪に立ち向かう勇者その物であった。非常に画になる(・・・・・・・)一枚である(・・・・・)

 

『フ~ン、勝手にすればぁ? 軽く捻ってあげるよ、おばさん』「お前なぁ……」

 

 しかし、鳴女はやっぱり鳴女だった。人間如きと真面に会話する気など、欠片も無かった。

 

『それじゃ、後片付けはよろしく~♪』「………………」

 

 その上、言うだけ言ったらあっさりと帰って行った。何しに来たんだ、こいつは。

 ともあれ、事態が収束したのも事実だし、“後片付け”が必要なのも真実。変質したポケモンたちが消える事は無いし、離散したモンハンのモンスターたちを呼び戻す術もない。何より更地と化した東京を首都として維持するのは不可能だ。

 まさに、やる事が山積み状態である。

 だが、ここには世界線を越えた、様々な人材が揃っている。もうすぐ鬼殺隊の面々も駆け付けるだろう。

 

「……悪いけど、復興を手伝ってくれないかしら、何処かの誰かさんたち?」

 

 クルリと振り返り、そう宣うつばめの笑顔は、全く以て悪びれていなかった。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 ――――――ここではない何処か、今ではない何時か。

 

『悪戯が過ぎるぞ』

『アナタの口からそんな言葉が出るとは思わなかったわ』

『いいから帰るぞ、詩織。どうせ、あの世界は終わりだ』

『……はいはい、分かりましたよーだ。いっしーには敵いませんねー』

『その名で呼ぶなアバズレ』

『何をぅ!?』

 

 闇は混沌とした大地へと還った。




◆平野 詩織

 ウルトラマンシリーズでも飛び抜けてハードな作風で有名な「ウルトラマンネクサス」に登場する女性。作中の防衛組織(というか実働部隊)「ナイトレイダー:Aユニット」に属する女戦士でもあり、日頃はコスメやスィーツに興ずる女子だが、いざとなれば命懸けで異星獣を蜂の巣に出来る凄い女。
 しかし、最大の特徴は男運の無さで、昔馴染みに何時の間にか彼女が出来ていたり、傷心を癒してくれた新しい彼氏が全ての元凶だったりと、枚挙に暇がない。せめて前作や次回作の防衛組織に入隊出来ていれば……。
 やっぱり「A」が付くと駄目なんか。
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