鳴女さんの令和ロック物語   作:ディヴァ子

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※別にそういうお話ではありまセン。


アデルとカミーラ、初めての夜

「それで、どうして今になって結婚なんかしたんだ?」

 

 私は疑問をそのまま口にした。

 ……御機嫌よう、諸君。ベアード様に確認を取ったら、何故か未だにバックベアード軍最高司令官のままであるアデル・フォン・アスワングだ。

 まぁ、鳴女(あいつ)は個人では最強格だが指揮官には向いてないから、名義上だけの最高司令官である方が都合が良いんだろう、お互いに。面倒事を双方から押し付けられたとも言うが。

 嗚呼、誰か私の疲れ切った心を癒してくれ……。

 それはそれとして、さっきの疑問である。こいつ、何で急に結婚式なんて挙げたのだろう。しかも、こんな南方の発展途上国で。自国で充分に豪勢な挙式が出来ただろうに。

 ……何か狙いがあるのか?

 

『したいからした』

 

 このアマァ!

 恍けやがって、チクショウめぇーっ!

 

『別におかしくはないだろう。世界最後の日が近いんだから、遣りたい事は済ませておきたいだろう』

「お前がそんな玉かかよ」

『いや、アワビしかないよ?』

「そういう事じゃねぇよ!」

 

 カミーラも聞いてるんだから、下品な話は止しなさい!

 この子、普段は妖艶な美女を気取ってるけど、内心は小さな女の子なんだから!

 

『//////』

 

 ほら、顔面が紅潮しちゃってるからぁ!

 つーか、可愛いな君。そんな妙齢の女性って感じの見た目でモジモジするとか、ギャップが過ぎるよ。外見は成長していても、やっぱり中身は出会った頃のままだなぁ……。

 

『ま、その内分かるさ。具体的に言うと最後の七日間くらい』

「お前、どんだけ旅行する気なんだよ……」

『1ヵ月くらい?』

「いや、長過ぎだろ」

『イージャン、凄いジャン、長いジャ~ン♪』

「腹立つわぁ……!」

 

 というか、1ヶ月も海外に居る気かよ。

 いや、こいつは何時でも無限城で日本に帰れるし、何なら無限城が実家なくらいだから、実質的には日帰りか1拍2日の感覚で遊びに行っているような物か。便利な奴だな。

 ま、こいつが嘘吐きで腹黒なのは今更だから、考えるだけ無駄か。その時になれば明かされるだろう。否応無しにね。

 それよりも、私が考えるべきは世界最後の日をどう戦い、如何にしてアニエスを生き延びさせるか、だ。

 今の所、最終戦争「新生ブリガドーン計画」は上手く事が運んでいる。妖怪と人間の関係性は最悪な物となり、先程地獄の方でも動きがあったと連絡があった。

 しかし、こういう上手く行き過ぎている時程、何かしら問題が起きるもの。

 そして、この今更なタイミングでの新婚旅行。物凄く嫌な予感しかしない。絶対何かあるよ、この後。所謂フラグ成立である。

 

『さて、今日はもう遅いし、寝るかー』

「まだ7時にもなってないんだが……」

『夜更かしはお肌に悪いのよ?』

「ほぼ毎日動画配信してる奴に言われたくない」

『そうかい。なら、良い子はさっさとお寝んねしな。私はこれからヤる事があるんだよ』

「結局遊ぶんじゃん……」

 

 だが、その後は意外と何事も無く夜を迎えた……。

 

「何故同じ部屋なんだ?」

『鳴女さんの意向ですね』

「あのアマ……」

 

 と言うとでも思っていたのかぁ?

 ……何でだよ。どうしてカミーラと同じ部屋なんだよ。

 いや、ベアード組って事で分けたんだろうから、そこは良いんだけどさ、何故にダブルベッドにしたし。しかも色がピンクって。どう見ても狙ってます、本当にありがとうございました。

 

「まったく、どうしてどいつもこいつも……」

『あ、あの、ワタシは一向に構いませんよ?』

「いや、あのねぇ?」

 

 君はどうしてそう、私をそういう目(・・・・・)で見るのかな?

 いやね、私もそこまで朴念仁じゃないから、彼女の想いは気付いてるつもりだし、妖怪同士なら性別なんて大差ないんだろうけど……だからって、ねぇ?

 私の母親、元人間だからね。というかお前も元は人間だろ、キーエフ・キュリアン(現カミーラ)。

 ま、良いさ。どんなに大人ぶっても中身はキッズだから、1人で寝るのは寂しかろう。知ってるぞ、お前が何時も寝る時にぬいぐるみを抱っこしてるの。一々狙ってるよね、君。大きいお友達なら沢山出来るかもしれんが、それは本人の望む所では無いだろうしなぁ……。

 

『ま、先ずはシャワーで身を清めて来ますわね』

「準備万端じゃねぇか」

 

 どういう事なの?

 

「はいはい、とにかく寝るわよ」

『あぁっ、そんな強引に……♪』

「……いや、喜ぶなよ」

 

 その気になっている所を申し訳ないが、問答無用でカミーラをベッドへ放り込み、私も寝間着に着替えて床に就いた。良い子は早く眠りましょう。

 正直、私も日頃の疲れとストレスで疲れ切ってるから、ゆっくりじっくり眠りたいしね。

 それじゃあ、お休みなさい……。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 ――――――で、本当に爆睡してしまった私だったのだが。

 

「んぅ……?」

 

 何か寒くて目が覚めた。重い瞼を開け、擦りながら隣を見ると、何故かカミーラが居ない。お花を摘みにでも行ったのだろうか?

 私もちょっと催す物があるし、ついでに様子を見に行くか。

 

「……あれ?」

 

 居ない。部屋付きのトイレにはもちろん、廊下の共同トイレにも居なかった。

 ちなみに、他の部屋を尋ねてみようとしたのだが、

 

 ※しばらくお待ち下さい。

 

 チクショウ、どいつもこいつもお楽しみしやがって! 恥を知れ!

 

《恥を知れ!》

「うきゃぁおおおおっ!?」

 

 野生の赤ん坊が現れたッ!

 

 ……って、こいつは確か、鳴女の息子の「無惨」だっけ?

 もう言葉が話せるのかとも思ったが、単にテレパシーを使ってるだけだった。超能力を持っているのもどうかと思うが。

 暗がりから真っ白で目が赤い赤ん坊がフワフワと現れるとか、もうホラー映画の冒頭なのよ。止めてよ、意外とホラー系好きじゃないんだから。妖怪の癖にとか言われるかもしれないが、演出として明確に驚かしに来てるから、種族に関係なくビックリするんだよ。死角から急に何かが飛び出して来たら仰天するでしょう、君も!?

 ――――――いや、ちゃうねん。そないな事を気にしとる場合じゃ無いんよ。

 問題はカミーラが何処に行ってしまったのかって事だよ!

 ……心配し過ぎかなぁ? あの子も長い年月は生きてるし、流石に迷子になったりは――――――しそうな気がする!

 

「えっと、無惨……くん?」

『無惨様だ』

 

 えっ、何コイツ、可愛くないんだけど……鳴女にそっくりでムカつく。

 

「おい、頭無惨」

《何だと貴様ァーッ!》

「ちょっと聞きたいんだが、カミーラを見なかったか? 大人のお姉さんって感じの吸血鬼なんだが?」

 

 我ながら馬鹿な質問をしている気がするけど、他に口を挟めそうな奴が居ないから、このクソ生意気なガキに聞いてみるしかない。

 

《ああ、さっきホテルの外に出て行ったぞ。何か目が虚ろだったし、夢遊病にでも罹っているのかもな》

「確保ォーッ!」

 

 じゃあな、と飛び去ろうとした無惨を拉致した。貴重な情報源、それも鳴女の息子となれば、逃がす訳にはいかんよなぁ?

 

《は、放せ! 放せぇ!》

「そう言わずに奇妙な友情を感じようじゃないか」

《貴様、鳴女みたいな事を言うんじゃない!》

 

 ……やっぱり似て来てんのかな、私。やーだー。

 ともかく、この001みたいな超能力ベイビーが居れば、行方不明のカミーラもササッと探し出せる事だろう。

 さぁ、私たちの奇妙な冒険の始まりだぁ!

 

 ――――――なんて適当なノリでホテルの外へ出た私と無惨だったが、

 

「《ここは何処だ》」

 

 迷子になった。何時の間にか霧掛かった深い森の中に居た。駄目じゃん。

 

「おい、助清」

《誰が犬神家の一族だ。言っておくが、きちんと奴の気配を探った末に辿り着いたんだぞ、この森に》

「うーん……」

 

 こいつの能力は保証付きだろうし、道に迷ったというより、迷わされた(・・・・・)と言うべきか?

 と、その時。

 

『ガブガブ』

 

 霧の中から、一つ目で毛むくじゃらのゴリラ型モンスターが、ぬぅっと顔を出した。

 

「お前……あの時のブソか?」

 

 ブソ。ミンダナオ島に伝わる、人の腐肉を好んで喰らう食屍鬼。姿は見ての通りで、人を罠に掛けて殺そうとする邪悪な妖怪だが、基本的に脳筋の馬鹿なので逆に騙し返されて痛い目に遭う事が多いという、ちょっとバカワイイ奴。

 この子はその中でも、私が幼い頃に出遭った個体だ。あの時はお互いに子供だったが、こんなに大きくなっているとは。とても海を跨いで迷子になった阿保の子と同一個体とは思えない。

 

『ウンガウガ、アガヴヴヴ!』

「……私を探していただと?」

 

 しかし、懐かしい与太話に花咲かせるかと思いきや、逼迫した様子で私を探していた旨を伝えて来た。一体何が起きていると言うんだ?

 

『ウギャウガーン!』

「最近、森が騒がしい? アスワングの一族やマンババランたちが動いているって?」

 

 何それ、結構な大事じゃない?

 だけど、やっぱり要領を得ないな。森がどう騒がしいと言うのだろう。

 

『ウガガウガァン!』

「……カミーラっぽい奴が森の奥に行ったのを見た!?」

 

 それを早く言ってくれよ!

 こうなっては仕方ない、

 

「行くぞ、無惨!」

《様を付けろデコ助!》

「無惨サマーズ!」

《だからそれ鳴女の考え方!》

 

 そういう事になった。

 そんなこんなで、私たちはブソに導かれるまま森の奥へ向かって行ったのだが、そこに待っていたのは、

 

「《ええぇ……》」

 

 如何にも出ますって感じの、古びた洋館が物々しく聳え立っているのだった……。




◆ブソ

 フィリピンのミンダナオ島に潜む、毛むくじゃらの魔物。アスワングの一族やマンババランなどの魔女族とは関係ない、現地の生物が変化した系統の妖怪。今では絶滅したとも、僅かながらも生き残っているとも言われているが、真実は定かではない。一説では、こいつもアスワングの一種だとも言われている。
 腐肉を食らうスカベンジャーであり、特に人の死体が好み。その為罠を張ったりもするのだが、おつむが足りない頭無惨な奴なので、よく騙し返される憎めない奴。たぶん、仲良くなればおすそ分けしてくれそう。
 ちなみに、アデルと知り合いの個体は、故郷のミンダナオ島で遊んでいたら海に落っこちて、そのままマクタン島に流れ着いた、飛び抜けて阿保の子だったりする。
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