『いやー、大変だったわ。何か生産プラントっぽい所にさぁ、怠けないナマケモノみたいな奴が居たのよ。スッゴイ動くし、滅茶苦茶跳んで来てビックリしたわ』
『こっちはミミズドラゴンのクインテットだったわ。硬い上に一斉攻撃を仕掛けて来るから、マジヤバかったわよー』
『私の所は歌う蛸が居たわね。アレ絶対にクトゥルフ神話の出身よ』
……どうやら、3姉妹は各々でボス戦を経験して来たらしい。何故かHOD4のボスとは交戦していないようだが、何か意味があるのだろうか?
意味と言えば、そもそもどうしてローズは攫われたのだろう。アスワングでありマンババランでもあり、ヴァンパイアの血も引いているという稀有な血統なのは認めるが、逆に言えばそれだけである。わざわざドミトレスク一家を総出で敵に回すリスクを冒してまで実行する意義は薄い。
そうだ、考えろ、私。自棄っぱちのトリガーハッピーになってる場合じゃ無いのよ。私は未だに最高司令官なんだ。己を鼓舞しろ。頑張れ私、頑張れ。私は今までよくやって来た。私は出来る子なんだよ。今日も、これからも、疲れていても、俺が挫ける事は絶対にない、たぶん。
《炭治郎かお前は》
「ペガサス・J・クロフォードか貴様は」
嗚呼もう、やんなっちゃう。プライバシーって物が無いのか。
《そんな事より、地下への秘密通路があるみたいだぞ》
「出たなサイコメトリー。ズルいんだよ」
《いや、別にズルくても良いだろ。最終的に勝てば良かろうなのだ》
ウィ~ンウィンウィ~ンと無惨が地下への隠し通路を発見した。
ちなみに、入り口の場所であるが、
「……って、何でトイレなんだよ?」
『《秘密の部屋だからじゃない?》』
「そういう問題か……?」
トイレの中だった。それも水洗のレバーがスイッチである。隠す気あんのかと言いたくなるが、一応はギミックが設けられており、蓋を閉めた上でレバーを前に引っ張り、丁度3回転半してから押し込むと開くようになっている。地味に面倒な仕掛けだ。
「ともかく、入ってみようか」
『『『えー、嫌なんだけどー』』』
「ローズがどうなっても良いのか」
『『『さぁ、急ぎましょう!』』』
相変わらずのシスコン振りね、君たち。
さぁ、そろそろこの馬鹿騒ぎも終わらせようか。
◆◆◆◆◆◆
微妙に汚い便器が動き、スルスルとせり上がって来た螺旋階段を下りて行くと、
『グヴェエエエイッ!』
『わきゃーっ!?』
スチームパンクな壁を叩き壊して、巨大な手がベイラを掴んだ。
むろん、すぐに分裂して脱出したのだが、この汚い薄紫色の手は、もしかして――――――、
『グヴェァィィ!』
「《出たな
野太い4本の腕を持つ、死斑に爛れた巨人のゾンビ、
◆『識別コード:Type 0053 Justice』
◆『弱点:舌』
とは言え、クソ雑魚ナメクジだったHermitでさえ魔改造が成されていたのだから、油断せずに行こう。事前知識なんて大して役に立たないと今回の戦いで思い知ったからね。私はデータを捨てる!
『『『食らい尽くせ、「カドゥボルス」!』』』
『グヴェエエエッ!?』
まぁ、私が手を出すまでも無い気がするけど。3姉妹の「
『『『ベホマラァアアアアッ!?』』』
と思ったら、3姉妹が苦しみ始めた。元々悪い顔色が更に悪化し、Justiceと殆ど同じ紫色になっている。
『ど、どうしたんだい!?』
『『『お、お腹が痛い……!』』』
『トイレの中で?』
「……食中りしてんじゃねぇよ」
どうやら、Justiceのお肉は妖怪にも通じる程の猛毒だったらしい。不死身に近い吸血鬼が腹を下すとは驚きだが、とりあえずは回復魔法を――――――、
バチィイイイン!
ええっ、魔法が跳ね返された!?
何だ、このマホカンタみたいな毒は。Justiceの能力は、ナノサイズの魔法反射装甲を敵に取り込ませる事で、内部から破壊する事だったのか!?
殺されるのが前提のスキル止めて。月の兎かお前は。どっちかって言うと“獅子身中の虫”って感じだけど。
『ど、どうしよう、アデル!? このままじゃ、娘たちが……』
……って、言うとる場合か。魔法で解毒出来ないとなると、一体どうすれば――――――。
「あっ、そうだ!」
私たちには“アレ”がある!
《あっ、おいコラ!?》
「これを飲むんだ!」
私は知らんぷりをしていた無惨から哺乳瓶を奪い取り、苦しむ3姉妹に差し出した。
『『『何それ?』』』
「零余子印の苺ミルクだ」
『『『えぇ……』』』
納得し兼ねるのは認めるけど、効果は保証付きだから!
『す、凄い、本当に治ったわ』
『それに美味しいわね』
『良薬口に苦しって言うけど、これは別物ね』
すると、あーらら不思議。毒は奇麗さっぱり無くなった上に、体力と魔力まで全回復した。威力がヤバ過ぎるだろ、零余子のミルク。零余子は癒しの神だった……?
『あら、本当に美味しい』
お前も飲むなよ、オルチーナ。
いや、魔力がカツカツだったから、私も飲むべきなんだろうけど、
《………………》
無惨の視線がねぇ!
《私の食事を返せ》
「仕方ないでしょ」
《じゃあ出せ》
「無茶言うなよ」
《そうだな、生娘には無理だろうて》
「この……!」
煽りやがって、このお子様め!
フーンだ、飲んでやるもんね。お前の分ねぇから。牛乳でも絞ってろ。
それにしても、本当に何なんだ、この施設は。水面下で動いていたにしろ、魔法に詳し過ぎるだろ。錬金術師なのか、ここの主は。
――――――いやまぁ、何となく誰が取りを飾るのかは予測が付くけどね。HODの顔と言えば、あの人でしょ。
と、そんな感じでワチャワチャしながら、地下施設を攻略していたら、
「『あっ』」
カミーラとバッタリと鉢合わせした。怪我も洗脳の痕跡も見られず、五体満足のようだが……。
「一体今まで何をしていたんだ。心配して探しに来たんだぞ」
『す、すみません///』
おい、もじもじしてないで状況を説明しろ。
『それが、夢の中で父に呼ばれた気がして……気が付けばここに居ました。どうしてかは、よく分かりません』
しかし、カミーラ自身にも分かっていないようで、どうにも釈然としない。
「というか、アナタの父親は――――――」
『はい、既に亡くなっています。ワタシが生き埋めにされた、あの日に……』
この子がまだキーエフ・キュリアンであった頃、実兄のダニエル・キュリアン共々不治の病に侵されていた。父親であるロイ・キュリアンはそれを嘆き、研究するも叶わず、2人は死の淵にあった。
そして、己の無力に精神を病んだ彼は、オカルトに手を出すばかりか、恐ろしい生体実験をし始める……。
その後、初代カミーラの粉骨に侵されたキーエフは現代のカミーラとして蘇った末に暴走し、ダニエルはどうにか新薬が間に合い助かったものの、その頃にはロイはすっかり気が狂っており、生涯分かり合う事が無いまま天寿を全うする事となる。
さらに、カミーラは暴走の最中に“世界お化け旅行”をしていた鬼太郎たちに見付かり、死闘の果てにロイは死亡、カミーラは最後まで自分を取り戻せぬまま生き埋めとなった。
そして、時は経ち、地下の暗黒世界で悲しみの果てに覚醒したカミーラは、修行中の私に封印を解かれ、三度この世へ舞い戻った。
それが昔カミーラから聞いた、彼女が吸血鬼として生まれ変わり、私と出会うまでのあらましだ。カミーラの事以外、すっかり忘れていたよ。父親とか実兄の名前とかね。
そう、今回の騒動が起きるまでは。
だが、“ロイ・キュリアンが実は生きていた”なんて安直な展開は流石に無いだろうし(と言うか年齢的に無理)、オカルトに手を出していたからと言って、1個人でここまでの騒動は起こせないだろう。ゲーム本編宜しく、確実に裏で糸を引いている黒幕が居る。もしくは「HODⅢ」よろしく、「Wheel of Fate」みたいなプログラムが存在するのか。
「その答えは、この先にありそうね」
『そうですね』
カミーラのすぐ近くで、誰かを招き入れるかのように口を開いている、更なる地下へと続くエレベーター。ここまで来たら、意地でも正体を暴いてやろうじゃないの。
◆◆◆◆◆◆
そんなこんなでエレベーターを下って行くと、そこには初代HODの
『『『『ローズ!』』』』
その目の前には、カプセル㏌したローズの姿が。デザインがどう見てもオキシジェン・デストロイヤーの容器だが、そんな入れ物で大丈夫か。
――――――ジジジジッ!
しかし、突如として壁から現れた“ナニカ”が立ちはだかる。
壁面を構成していたであろう銀色のナノマシンの集合体であり、悪魔を思わせる人型生命体の周りを、金属片で形作られた巨大なリング(よく観るとコロシアムみたいな形をしている)が土星輪のように回転しているという、若干シュールな姿をしている。特に飛行する為の機構は見当たらないが、激しく帯電している事を鑑みるに、電磁浮遊しているのかもしれない。
《ワタシハ、キュリアン。全テヲ治シ、取リ戻ソウ。アノ頃ノ、ワタシタチヲ》
「《まさかのお前かよ》」
どう見ても
しかし、書き換わり始めた壁面に“
◆『識別コード:Type 0000 Wheel of Fortune』
◆『弱点:不明』
《オオオォォォ……ッ!》
「このっ、問答無用か!」
と、Wheel of Fortuneが運命のルーレットを回し始めたので、急いでUNKNOWN(笑)な弱点である胸部の六芒星を撃つと、「β」の文字で止まった……「β」って?
《アアッ!》
いや、煩いよ。輪っかを変な物に作り変え始めやがって。
『ハヴォオオオォン!』
「《「World」だぁ!?》」『時は止まりそうもないですけどね』
いや、それはマズいよ!?
Worldと言えばHOD4のラスボスであり、何故かEXの方で本気を出した冷凍仮面ライダーである。全身が冷え冷えのクリスタルで構成されており、蜻蛉のような顔と翅(折り畳み式が6枚)に胸部の丸分かりなUNKNOWNが特徴で、見ての通り氷の魔法攻撃を得意としている。
そう、魔法だ。超能力の類かもしれないが、氷塊弾や氷の斧ならまだしも、氷龍を召喚して攻撃するなんて、魔法と変わんないでしょ。それは他のラスボスにも言える事だけど。
つーか、“ボスの姿を模した結晶体で攻撃する”ってEmperorだろ、それは。何で退化したし。
『コォオオオオオッ!』
ほーら、言ってる傍から、氷の龍が襲い掛かって来た!
「はい、これパス!」
『だから、何で私!?』
「いいから、あのUNKNOWN(笑)を撃て! 多分それで攻撃をキャンセル出来るから!」
『いや、ゲーム脳止めろ! あと、せめて多分じゃなくて絶対にして、お願いだから!』
「煩い、黙れ、早く撃て! 行くぞ、カミーラ!」『……ハイッ!』
とりあえず、ネコ獣砲ニャノンをオルチーナにパスして、私はクイーンレガリアを手に、カミーラを伴ってWorldに立ち向かった。HODのラスボスは必ず1つは「画面外攻撃」とかいう卑怯な技を持っているので、Wheel of Fortuneが生み出したWorldも似たような扱いなのだろう。そうだと良いな~。
だから、私たちは背後に隠れるWheel of Fortuneを攻撃するのだ。
『あの氷を砕くよ、お前たち!』
『『『Yes, Your Majesty Majesty!』』』
『真面目にやりなさい! お母さん怒るよ!』
もちろん、氷龍とWorldはオルチーナたち任せ。幸いWorldは単なる偶像なのか、魔法反射装甲や能力反射装甲みたいな卑怯極まるスキルは持ってないみたいだし、問題あるまい。
「はぁっ!」『てぁっ!』
――――――カキィィィンッ!
「お前は持ってんのかい!」『残念でしたね……』
だが、本体であるWheel of Fortuneには両方共が備わっているようで、物理的なダメージ以外は通らないようだった。その癖、向こうは電気魔法で遠距離攻撃をし放題。ズルいぞ貴様。
だったら、死ぬまで殴ってやらぁっ!
《グヴォオオオ……!》
プラズマ弾の迎撃をカミーラに託し、私はとにかくWheel of Fortuneの「六芒星の呪縛」を殴打し続けた。飛び交う流れ弾を避けながら接近するのは至難の業だが、元来より近接戦に難の有るWheel of Fortuneの反撃は懐に潜り込めば大して痛くないので、割と簡単に攻撃モードをキャンセル出来た。Emperor染みた電磁ソードを装備出来るようだが、だからどうした。
『『『カッチカチやぞー』』』
まぁ、そうこうしている内に、3姉妹は氷漬けにされてしまったが。相性が悪いから仕方ないけど、もう少し頑張ろうよ。君たちのお母さん、滅茶苦茶撃ってるよ?
《フォオオオッ!》
『ハァアアアッ!』
「《その日人類は思い出したぁ!?》」『祈った所で何も変わらない事をですか?』
さらに、Wheel of Fortuneが再びルーレットを回し、「Ω」で電極針が止まったかと思うと、HOD界の巨人ことMoon(完全体)が戦場にログインした。筋肉の繊維が丸出しな悪魔然とした巨人であり、超大型巨人よろしく高温と光熱を武器とするラスボスである。弱い癖に画面占有率が高いんだよ、お前は。
『『『解けました!』』』
「《さっさと働け》」『忙しい人たちですね……』
その馬鹿みたいな熱のおかげで3姉妹が解凍されたので、とりあえず結果オーライって事で。
「芸が無いなお前はぁ!」《やったれやったれー》
《グヴォオオッ!》
とは言え、やる事はさっきと変わらない。オルチーナたちが攻撃を食い止めて、私たちがダメージを稼ぎつつキャンセルさせるだけ。ラスボス級に有りがちな“作業”って奴だ。仕方の無い所は有るんだろうけどね。
そもそも、“ランダムに攻撃が変化する”って、一見すると厄介だけど、実際はお互いに面倒なだけなのよ。どっちもパターンが分からないから。欠陥品じゃねぇか。
「――――――という事で死ね!」
《ヴォオオオオオオオォォ……!?》
そんな流れ作業を通算で6回くらい繰り返した所で、Wheel of Fortuneは遂に力尽きた。MOTHERまで召喚しやがって。お母さん同士が小競り合うヘンテコな構図が生まれちゃったでしょうが。
《……ダニエル、キーエフ、君タチニハ、ワタシガ必要ダ。……ソウダロウ?》
『それはそっちの方でしょう、父さん』
崩れ行くWheel of Fortuneに対して、にべも無い答えを返すカミーラ。その表情は憎んでいるようでもあり、悲しんでいるようにも見えた。彼女の過去を鑑みると、こちらとしても何とも言い難い物がある。
ともかく、これで全てはハッピーエンド――――――となる筈も無く、
『『『『あっ、ローズが!』』』』
Wheel of Fortuneが消えるのと同時に、ローズの入ったカプセルが機械の中に取り込まれる。
さらに、不気味なピアノの音を奏でながら機械が展開し、
《久し振りだな、現世の諸君。地獄の底より、私は還って来た!》
中から白銀の悪魔が姿を現した。
◆『識別コード:Type 0 Magician』
◆『弱点:不明』
◆ローズマリー・ウィンターズ
ご存知「バイオハザード ヴィレッジ」に登場する、ウィンターズ夫妻の愛娘。究極完全態かびるんるん(特異菌の完全適合者)とアルティメットドキンちゃん(生物兵器「エヴリン」の力を引き継いだ適合者)が両親である為か、「7」のラスボスを鼻で嗤う潜在能力を秘めており、その力をマザー・ミランダに狙われる事となる。
具体的にどういう能力なのかは、今の所は不明。一方通行さんよりヤバいのかもしれない。少なくとも神にも等しいマザー・ミランダを“人が倒せる程度の存在”に弱体化出来るくらいに凄いのは確定である。
本作では「エヴリローズ・ドミトレスク」として登場。こちらでもヴァンパイアとアスワングのハイブリットなので、色々とヤバい能力を持っており、そこを閣下に狙われる事になる。今回は五体こそ満足ではあるものの、水中酸素破壊剤の容器に押し込められてしまったが、大丈夫なのだろうか……。