《幾星霜……待ちに待ったこの日が、遂に来た! 私を完成させる、この時が! この幼き命は生贄であり、貴様らは歴史的瞬間の目撃者なのだ! さぁ、私に殺される事を光栄に思い、雪花のように散るが良い!》
「
それは永遠の未完成にして、HODシリーズを代表するボスキャラである。所々が欠けた白銀の装甲に身を包み、トランザムの如く空中を高速移動しながら、赤の魔術師よろしく火球を叩き付けて来る姿は、まさしくスタイリッシュ。見た目もサイバネティックな悪魔だし、BGMもカッコ良いし、初見のプレイヤーは誰もが「お前のようなゾンビがいるか」と思った事だろう。実際、彼はミュータントなので、ゾンビではないのだが……。
そんなMagician閣下が、目の前に浮いている。たぶんHOD4SP時くらいの流暢な言葉を並べて。
これはもう、
「《サイン下さい》」
《何故そうなる。初対面だろう、貴様らは》
そう言われましても。閣下は閣下してるんですよ!
《知るか、死ねぃ!》
しかし、そんなの関係ないMagician閣下は、当た有り前のようにトランザムを仕掛けて来た。相変わらず速いし、カッコ良い。
……って、言うてる場合か。Magician閣下がお相手して下さるんだから、全力で応えねば!
「行くぞ、カミーラ!」『えっ、あっ、ハイ!』
私はクイーンレガリアを手に、カミーラは火球を両手に、襲い来るMagician閣下へ飛び掛かった。
「喰らえっ!」《喰らわん!》
私の空中攻撃は、物の見事に躱された。本当に素早い。残像すら質量を持っているから、多方向から攻撃されているような物だ。
だが、私は1人じゃない。頼もしい部下が居る。鳴女と違って、信用も信頼も出来る、素晴らしき吸血鬼が!
『調子に乗るなよ、欠陥品!』《貴様に言われたくはない!》
紫色の鬼火と、真っ赤に燃え上がる火球が入り乱れ、打ち消し合う。目まぐるしい化学反応によってポンポンと弾ける様は、まるで花火の打ち上げである。食らったら魂ごと蒸発しそうだが。
ちなみに、同じ場に居合わせている筈のドミトレスク一家はと言うと、
『『『『ローズ返せゴラァッ!』』』』
《貴様らの相手はこっちだッ!》《フフフ!》《フハハハッ!》《ハッハッハッ!》《ハーッハッハッ!》
『『『『複製品が出て来た!?』』』』
Magician閣下の複製品と戦っていた。そう言えば、HOD4SPでそんな事してたわね。この閣下も自らのレプリカントを製造出来るというのか。システムそのものが黒幕っぽいしね。これは助力に期待するのは無理かな。
まぁ良いさ。せっかくの閣下との晴れ舞台だ。しっかりバッチリと地獄へクーリングオフしてやろう!
「カミーラ!」『了解!』
《グォオオオオオオッ!?》
と言う事で、コンビネーションアタックをかましてみました。伊達に上下関係を積んではいないのよ。
そして、見事に弱点である筋肉部分を焼き貫かれまくった閣下は、何時ものように自爆オチ――――――、
「『やったか!?』」
《馬鹿め! それは死亡フラグだ! 祝福されし完成を、とくと見よ!》
――――――しなかった。
ローズを取り込んだ機械から何か(たぶんローズの神血)を吸収し、その姿を変えていく。爛れた筋肉が蘇り、その上に白金色の装甲が形成され、背後に後光のような巨大なリングが顕現する。
さらに、そのリングに青白い炎が灯り、6枚(正確に言うと翼の先から翼が生えているので12枚)の焔翼を差す、神々しくも禍々しい姿となった。
これぞMagician閣下の完成形。本来在るべき姿なのだろう。その名は、
◆『識別コード:Type ∞ Devil』
◆『弱点:なし』
「《『おおー!』》」
《拍手をしている場合か!?》
いや、だって、こんな姿を見せられたら……ねぇ?
良く出来ましたねぇ~って言いたくもなるでしょ?
《フン、おふざけはここまでだ。塵も残らず消えるがいい! ハァアアアアアッ!》
「『うわぁっ!?』」《さらばー!》←※1人だけテレポートで逃げた
Magician閣下改めDevil閣下が天を仰ぐと、四方八方にゲートが現れ、そこから蒼い焔が噴き出した。鋼鉄も一瞬で蒸発する、完全燃焼系の業火である。
「このっ!」『閣下の分際で!』
《無駄無駄無駄なのだァーッ!》
「『瞬間移動を連発するな!』」
しかも、高速移動どころか空間転移を自由自在に使い熟し、全ての攻撃を回避しつつ、あらゆる方向から攻撃を仕掛けて来る。
《時よ止まれ!
「『……ドペェーッ!?』」
そして、この時間停止能力だ。たった数秒間だが、戦闘中に無防備かつ無意識状態に持ち込むとか、卑怯にも程がある。
《フハハハハハッ! これぞ完成した私だ! 最早誰にも止められぬ! 世界よ、今こそ全ての命の時を止めよ!》
クソッ、魔王ムーヴかましやがって!
しかし、勝ち目がまるで無いのも事実。世界すら御する力の持ち主を相手に、私たちは無意味――――――、
「『なぁんて言うと思うかぁっ! 【
《何ィッ!? 時を止め返しただとぉ!? う、動けぬぅ!》
古代魔法を舐めるなよ。初見ならまだしも、時間停止なんて使い古された能力が、今更通じると思うか!
ラスボスなんてな、破壊力以外を追求すれば大抵時間関係の能力に落ち着くのは、周知の事実なんだよ!
敵を知り、己を知れば、百戦危うからず。世界中に知れ渡ってるような
所詮、貴様は井の中の蛙。お前より理不尽な奴、私はとっくに見て来た。世界は閣下が思うより、ずっと広いんですよぉっ!
「喰らいやがれッ!」『ワタシの未来、返して貰うわ!』
「『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!』」
《馬鹿な!? ……くっ、何時の日か、必ず復活し――――――》
「『続きはWEBで!』」
《グワバァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!》
最後は私とカミーラの魔法を込めた拳が多段ヒット。ピクリとも動けぬDevil閣下を速やかに爆散せしめた。南無三!
『終わりましたね……』「そうだな……」
『『『『こっちも終わったわよー』』』』
《ウム、大儀であった》
『『『『『「死ね、このクソ赤子」』』』』』
奇妙な夜祭も、これで終わり。後はローズを物言わぬガラクタと化した機械から取り出して、帰るだけである。
それにしても、一体どうして今更、こんな事が起きてしまったのだろうか。意味不明な事続きで気にしている暇が無かったが、流石に原因を追究しない訳にもいくまい。
『その答え、私がくれてやろう!』
「……は?」
すると、何処からともなく襖が現れ、鳴女がピシャッと登場した。
おい、お前まさか……「サプライズ」だとか言わないだろうなぁ?
『サプラ~イズ♪』
本当に言いやがったぁ!
「――――――ストリウム光線!」
『危なッ!? いきなり何をしやがる!』
「それはこっちの台詞だぁ! どういう事か説明しろぉ!」
幾ら貴様とて許し難い物はあるぞ!
《ああ、なるほど、そういう事か》
「おう、何だ無惨。ノコノコ戻って来やがって。何が言いたい?」
すると、無惨がポンと何かを閃いたようで、したり顔を浮かべる。幼児虐待してやろうかクソが。
《
「『はぁ!?』」
《あと、おそらくだが、一部始終を動画にしている筈だ。“アデルとカミーラがてぇてぇ過ぎる”とか、そんなタイトルで》
『おー、よく分かりましたね。流石は我が子』
さらに、今明かされた衝撃の事実。カミーラが居なくなってから今に至るまでの全てが、文字通りの茶番劇だったのである。無限城ちっちゃい物倶楽部の奴らは、ガヤよろしく拍手までしてやがるし。
だが、そう考えると納得の行く部分も多い。カミーラを夢現にしたのは姑獲鳥だろうし、magician閣下を完成させたのは鳴女だろう。情報提供者はチャラトミ辺りか。ハイスペックな連中が揃ってるからな、
まぁ、それはそれとして、
「『ゲッタービームッ!』」
《『だから危ないって!?』》
「喧しいわ! ドミトレスク家まで巻き込んでおいて、何を言ってるんだ貴様!」『そうですよ! 人の過去にまで踏み込んで!』
『『『『やーっておしまい!』』』』『あぶー』
プライベートって言葉を知らんのか、貴様らは。
「まぁまぁ、お二方、ドミトレスク家の皆さんも落ち着いて下さいな」
「チャラトミぃ……!」
「これはロイ・キュリアンが死後に発動するよう仕掛けておいたプログラム。遅かれ早かれこうなっていたでしょうし、俺らが介入しなかったら、ローズは跡形もなかったと思いますけど? 一応、あれでも弱体化はさせてたんですからねぇ」
「ぬぅ……」
そう言われると、強く出られない。
「……ちなみに、何時から気付いてたんだ?」
「旅行に出る少し前ですかね。何か俺の組んだシステムにクラッキングしようとしてた奴が居たから、逆にハッキングしてやって、そうしたら発信源が分かったんで、新婚旅行のついでに解決しちゃおうかなと。世界最後の日が近いのに、余計な真似はされたく無かったっスからね~」
「あっ、そう……」
嗚呼もう、やんなっちゃう。
「――――――という事で、ウチの阿呆が済まないな」
『別に良いわよ。何だかんだで楽しめたし、ローズを取り戻せたのなら万々歳だわ。……行くよ、お前たち』
『『『ハァ~イ♪』』』『あぶぅ~♪』
私が謝罪すると、オルチーナはそこまで怒る事なく、娘たちを連れて帰って行った。器の大きい奴だわ、ホント。私だったら絶対に許さないけどな。
『それはそれとして、どうするよ?』
「あ?」
『今ここでプロポーズとかしないの?』
「あのなぁ……!」
たった1人でも最終戦争してやるぞ、私はぁ!
『ワ、ワタシは何時でもOKですよ……?』
「あのねぇ……」
『アデル様はワタシの憧れであり、
「………………」
だが、カミーラまでもが勢いで押し通そうとしている。……何なのよ、この状況は。
『良いじゃん、応えてやんなよー。どうせ魔女と吸血鬼なんだから、性別なんて有って無いような物だし。後悔は後先立たないって言うよ? 私だって、チャラトミが蒸発し掛けた時は、マジで頭がグチャグチャになったからな。なぁなぁにするのも良いけど、何時かはそのツケを払わなきゃいけないくなるんだぜ?』
「鳴女……」
だけど、私にどうしろってんだよ。
『ようは素直になれって事。別に嫌いじゃないんだろ、そいつの事。断るにしろ受け入れるにしろ、1度はきちんと話すべきだと、私は思うがね』
クソッ、鳴女の分際で真面な事を言いやがって!
……しかし、素直になれ、か。私はカミーラをどう思ってるんだろうね。最初に出会った時は、小汚い格好で泣きべそを掻く哀れな子供くらいにしか感じなかったし、殆ど気紛れで保護したような物だったが――――――。
『アデル様! 今日は何処へ行きましょうか!?』
「フム、そうだな。レニングラードの方へ攻めてみるか。あそこは今、パーティーの真っ最中だからな。魂も集めやすい」
『ハイ、頑張りましょう!』
それでもカミーラは文句1つ言わず、健気に付いて回って、
「……今日の予定は?」
『ロンドンへ向かいます。ヴィクター・フランケンシュタインの忘れ形見が舞い戻って来たようですよ』
「それは中々に面白いわね」
『はい、ベアード様もそのように仰っていました』
「なるほどな……頼りにしてるぞ」
何時しか、どんな者よりも信頼できる部下になり、
『アデル様、この店なんてどうでしょう? 人間にしては腕が立つようですよ?』
「アナタは良いの?」
『ワタシはアデル様を見ているだけでお腹いっぱいです』
「どういう事なの?」
『そういう事です♪』
「なぁに馬鹿な事を言ってるのよ」
「『あははははは』」
偶に2人で出かけてみたりして。
「――――――そうか」
……何だ、私ってば、誰よりもカミーラと一緒にいるし、心も開いてるじゃないか。それこそ、実の妹よりも。
「私の何処がそんなに良いの?」
『全てですよ。素直になれない所が、特に』
「そう。……なら、不束者だけど、これからも宜しくね」
『……ッ、ハイ♪』
そう答えるカミーラの笑顔は、キーエフだった頃から変わらない、素朴で素敵な物だった。
『うーん、いやー、てぇてぇね!』
『「お前はムカつくから死ね!」』
『うぉおおおおおおおおおおお!?』
黙ってろや、この鬼!
――――――こうして、私とカミーラは晴れてパートナーとなったのであった。めでたしめでたし?
◆◆◆◆◆◆
後日、ガゼル半島(東ニューブリテン州)とニューアイルランド島の間の海に浮かぶ、名も無き孤島にて。
『アデルめ、マジで撃って来やがって。どういう事なの? ……そうか照れ隠しか! なら仕方ないね!』
私は人気の無い、森の奥にある広場で休憩していた。
やぁ諸君、私だ。つい先日、アデルとカミーラの石波ラブラブ天驚拳で吹き飛ばされ掛けた、鳴女さんだよ。あの女、何もあそこまで怒る事ないじゃん。高がドッキリ仕掛けたぐらいでさー。
ま、おかげで良い動画が撮れた訳だが。再生数も凄かったし、ウハウハでしたよ。今度また仕掛けてみようかなぁ。
それはそれとして、そろそろ私が一体どうしてこんな所に居るのか、諸君も気になって来たんじゃないか?
実を言うと、“これ”が今回の旅行における本命
『……鳴女!?』『何故ここに居やがるんだ!?』
と、森を抜けて、人影が2つ現れた。1つがもう片方に寄り掛かり、2人3脚でやっとこさ歩いている状態だ。言うまでも無く、鬼太郎と地獄童子である。地獄童子はそこまで変わりないが、鬼太郎の変貌振りが凄い。髪が全て白髪となり、生身は手に取れる程度しか残っていなかった。後は全部白骨で、呪物の義体により埋め合わせているような状態だ。それでも股間の物が残っているのは、男としての意地かねぇ?
まぁ、そんな事はどうでも良い。こいつら……否、鬼太郎の目的は分かり切ってるからな。
『久し振りだな。……そして遅かったじゃないか。メリー・エプペケルだったら、既に美味しく頂いたぞ』
『………………!』
私の言葉を聞いた途端、元々悪い顔色が一気に蒼白となる。
そう、“幸福の島”の女酋長「メリー」こそが私の目的である“品”であり、鬼太郎が求めた人物である。大方、修行を終えた後に手に入れたかったようだが、先を越させて貰ったよ。ざまぁ~♪
『……地獄童子、少し外してくれないか』
『おい!?』
『大丈夫だ。立って話すくらいは出来る』
『……分かったよ』
すると、鬼太郎は何故か人払いをして、私と2人きりになった。なぁに、秘密の会話でもしたい訳?
『――――――何が目的だ』
『人が欲しがる物を奪い取るって、最高に面白くない?』
『なるほど、お前らしい』
よく分かってるじゃないか。
『ならば、質問を変えよう。……メリーは
『ああ。しっかりと“解放”してやったよ』
『そうか……』
と、鬼太郎は何処か憑き物が落ちたような顔となり、
『それじゃあ、ここで決着を付けようか?』
男として、一肌脱いだ。
『そうかい。……前からお前の事、食べちゃいたいって思ってたんだよねぇ』
私もそれに応える。
――――――そして、幸福の島からまた1つ、命が消えた。
◆◆◆◆◆◆
……地獄の底、真・閻魔殿「大会議の間」。
『これは一体どういう事だ!?』
見た目は無骨な大男、役職は地獄の十三王が1人、五官王が叫ぶ。普段から威圧的ではあるが、ここまで取り乱した姿は早々拝めるものではない。
だが、無理もないだろう。「大逆の四将」の逃亡により、只でさえ混乱している地獄で、
『……地獄のそこかしこに、“こんな物”が設置されていました。それと“これ”も。何時からあったのか、この変生王の目を以てしても見抜けなんだ……』
そんな彼に、濃緑色の髪を持つエルフのような顔立ちの女性が答える。地獄における6番目の裁判官、変生王(もしくは「変成王」)だ。
地獄の王は13人おり、通常は閻魔大王(5番目)までに大まかな判決が下り、それ以降は精査や再審を行う。変生王は6番目なので、精査役の1番手を担っている。ある意味、本当の地獄はここから始まると言っていい。これ以降の裁判は、何処へ堕ちるかではなく、
そのトップバッターたる変生王が円卓に投げ入れたのは、摩訶不思議な機械と、緑色の毛皮に覆われた小悪魔「グレムリン」の死骸。
『具体的に、それはどういう代物なのかね~?』
眉毛の生えたサンショウウオの化け物みたいな顔をした、五動転輪王が質問する。どう見ても妖怪の類だが、これでも十三王の1人なのでご安心を。
ちなみに、役割は最後通告。彼の下に来る亡者は大抵極悪人なので、阿鼻地獄かそれに近い場所に堕ちる。
『……おそらく、転移装置のような物じゃろう。機械に詳しいグレムリンであれば、造作もあるまい』
それに対して、長い眉と髭が特徴的な、陰陽師を思わせる格好の御老人、泰山王が返す。四十九日に結審を行う王であり、翁とオカメが先っぽに付いた人面幢というアイテムで亡者を容赦なく裁く(嘘吐きをその場で火炙りにする)、割と怖い爺さんである。陰陽道の主祭神でもあり、鬼道衆とも関りが深い。
『そう、問題は誰が何の為に、グレムリンを地獄に潜ませたかって事ね』
と、素顔を布で殆ど覆い隠している不思議少女、蓮華王がピッと指を立てた。彼女は五動転輪王の後――――――つまり、死刑宣告をした亡者に追い打ちを掛ける係で、“二度と助からないよwww”とドヤ顔で言うのが役目。そこまで苛めなくても……。
余談だが、十三王は元々「十王」であり、彼女を含む残る3人は新参者だったりする。だからと言って、優しい訳では微塵も無いのだが。
『分からんものを議論しても仕方あるまい。閻魔大王様は崩壊寸前の地獄を支えるので手一杯だ。それよりも、これからどうするかを論じるべきだろう』
ある種不毛な討論に、五官王の相棒である宋帝王。黄色い狩衣に身を包む彼は堕淫を裁く王で、五官王と共に閻魔代理を認められている、特別な役職でもある。ようするにお偉いさんの中のお偉いさんだ。その為、特に蓮華王などは即座に黙り、彼の話に耳を傾ける。
『こうなれば、地表の妖怪たちの一掃も已むを得まい』
『正気か、宋帝王!?』
『正気だとも。現に彼らのせいで地獄のバランスは完全に崩れた。この辺で威厳を示さねば、余計に付け上がり、終いには手遅れとなるぞ』
『うぬぅ……』
宋帝王の過激な発言に違和感を覚える五官王だが、そう言われてしまうとぐうの音も出ない。かつて親交を結んだ鬼太郎ファミリーと敵対するのは心苦しいものの、事態は彼1個人の意見を通せる程、余裕のある物では無かった。
何せ閻魔大王は地獄を支える為に真・閻魔殿の奥で仮死状態に陥っているし、その彼が精魂尽き果ててしまえば、来訪者が解放されてしまうからだ。
『まぁ、それも仕方ありませんね』『そうだな』『流石に、彼らもやり過ぎた』『では、具体的な内容を詰めていきましょう』
さらに、閻魔大王が不在なのを良い事に、勝手に地上侵攻を企てる十三王たち(五官王は除く)。やはりトップが欠けた組織など、烏合の衆という事なのだろう。
(……計画通り)
(これで大願成就となる、か……)
そして、その渦中でこっそりとほくそ笑む人物がちらほらと。灯台下暗しとはよく言ったものだが、十三王の中に地上のスパイが紛れ込んでいるのだ。
だが、誰も気付かない。ここにはねずみ男のような、目敏い猜疑心の塊は居ないのだから……。
(順調ね……)
さらに、補佐官の中にもそれらしい人物が居た。今や閻魔大王の右腕とまで呼ばれるに至った、心優しき“筈”の亡者――――――天童 ユメコ、その人である。
(会議は任せます)
(心得た。君は後ろに下がっていたまえ。……後は頼むぞ)
(分かっています)
そして、スパイの1人とこっそりと目配せをし合い、会議室を後にする。
……
「待っててね、鬼太郎さん。……これで最後よ」
本当の終わりが、今始まる。
◆Magician
Dr.キュリアンの最高傑作の1つで、「Wheel of Fate」の対となる存在。所々が欠損した白銀の装甲に身を包んだ悪魔のような姿の生命体で、トランザム並みの高速移動で敵の視界から逃れながら、火球を撃ち付けて来る。
本来は全身が装甲化された無敵の存在であったが、出資者の嫌がらせでプログラムを書き換えられ、未完成である代わりに、生みの親であるキュリアンの命令さえ聞き入れない自由な生命体として世に解き放たれた。
しかし、恋人を助けに来たローガンと謎の男「G」により撃破され、「再臨」と「復讐」を捨て台詞として誓いながら爆発四散した。その後も宣言通り黒幕を変えながら何度も復活し、AMSの前に立ちはだかっている。
今作ではほぼ史実通りの末路を辿ったが、“キュリアンが保険の意味で残していたプログラム”が勝手に作動し、Magicianの完成品を作り続けていた。その結果、科学と魔術が融合した完全態「Devil」として、この世に降臨する事となる……が、やっぱり殺された。世界のインフレは、祝福されし完成を見た彼でさえ置き去りにしたのだ。