鳴女さんの令和ロック物語   作:ディヴァ子

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勇壮

 ――――――「鬼殺隊」本部、という名の異空間「桃源郷」。

 

《カントー地方上空に「鳴女」出現》

《量産型エヴァ、各機戦闘態勢に突入、及び交戦開始》

《量産型エヴァ3号機、8号機、1号機、ロスト。自己再生機構、発動せず。まるで歯が立ちませんね》

 

 隊士(こども)たちから次々と入る報告に、大空 つばめが顔を顰める。発進させたエヴァ量産機は既に3体も失っており、残る機体も全く歯が立っていない。体格差を物ともしないパワーと、空間使い故の特殊性により、ATフィールドも自己再生機構も、まるで役に立っていないのだ。

 

「所詮は有り合わせね。……まぁ良いわ、目的は果たしたようだし」

 

 だが、つばめは焦らない。余裕綽々の表情で、戦場の一場面に目を向ける。そこでは、時空を転移して新たな乱入者が姿を現そうとしていた。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

「あの馬鹿、先走りやがって……」

 

 カントー地方で大暴れする鳴女を見て、アデルが溜息を吐いた。まさに「やりやがったよ」という感じ。傍に立つカミーラも「やれやれ」という顔をしている。

 

『中々に派手ではないか。篝火には丁度良い』

 

 しかし、バックベアードとしては、むしろ「良くやった」という事なのか、不敵に目を細めた。

 

『どうしますの、お父様?』

 

 そんなバックベアードに、彼の娘であるベア子が尋ねる。とは言え、答えは決まっているような物。鳴女が火種を撒いた以上、戦争は避けられない。避ける意味も無い。何故なら、それこそが目的なのだから。

 

『――――――諸君、戦争だ』

 

 バックベアードが強大な妖気を迸らせながら、開戦の狼煙を上げる。即ち、超時空要塞「ブリガドーン」の発進である。

 

《座標固定》《時空転移開始》《エネルギー充填率、40%……50、60、70、80、90……100%!》《「ブリガドーン」、発進!》

 

 こうして、時空の壁を突き破り、巨大戦艦がカントー地方に現出した。戦争の始まりだ。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 一方その頃、天狗ポリス鞍馬山総本部。

 

『カントー地方上空、新たな時空転移を確認!』

『……「ブリガドーン」、来ます!』

 

 遠目の術式「千里眼」にて、戦局を見守っていたカラス天狗たちから、聞き捨てならない報告が入る。完全なイレギュラーであるミラボレアスとバトラの出現には目を瞑っていたが、エヴァ量産機と鳴女の交戦、それに続く「ブリガドーン」の転移を見過ごす訳にはいかないだろう。彼女らが出て来た以上、被害がカントー地方(・・・・・・・・・)程度で済む筈がない(・・・・・・・・・)

 

『大天狗様、流石にこれ以上は……』

『……鬼太郎の方はどうなっている』

『まだ帰還の報告は受けていません』

『そうか……』

 

 黒鴉の質問に、大天狗は難しい表情を浮かべる。

 天狗ポリスが、今の今まで手を出していなかったのは、鬼太郎が未だに「幸福の島」から帰還していないからである。戦旗となる人物が不在のまま戦争を始めるのは士気に関わるが、同じくフィリピンに出向いていた鳴女が、カントー地方で好き勝手に暴れているという事は、そういう事(・・・・・)なのだろう。信じたくはないが、だからと言って何時までも手を拱いている場合ではない。

 戦争は――――――世界最期の日は、もう始まっているのだ。

 

『……仕方ない。我ら天狗ポリスは、これより死地へ飛び立つ。しかし、無謀も犬死も許さん。必ずや勝鬨を上げて、帰還しようぞ!』

 

 大天狗の言葉に、カラス天狗たちが『オオォーッ!』と拳を上げる。

 彼らはこの日の為に備えて来た。世界が終わり掛けた、あの日から。もう、あの悪夢を繰り返させはしない。カラス天狗たちの士気は、鬼太郎が居ずとも充分に高かった。

 

(鬼太郎。お主が戻ってくると、信じておるぞ)

(信じているぞ、鬼太郎殿)

 

 しかも、誰もが鬼太郎の帰還を諦めていなかった。開戦には間に合わなかったが、それでも必ず駆け付けて来ると信じて、戦場へ向かう。

 

『動力点火』

『炉心稼働率、九割を超えました!』

『帆を張れ!』

『了解! 帆船型飛行戦艦「宝船」、全艦発進!』

 

 さらに、鞍馬川や貴船川など、鞍馬山周辺の川底をモーセの如く割って、無数の宝舩が浮上する。見た目こそ帆船だが、その実態は妖力によって空を進む飛行船であり、様々な武器を満載にした機動戦艦である。全体の指揮は大天狗が執り、各艦のカラス天狗がそれを受けて舵を取る形になる。

 さぁ、世界の命運を賭けた、戦の時間だ。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 妖怪横丁、ゲゲゲの森。

 

『どうするんだい、親父さん?』

 

 「ブリガドーン」と「宝舩」の発艦を妖怪テレビで確認した蒼坊主が、目玉の親父に尋ねる。

 否、最早「目玉の」親父ではない。この日の為に用意した仮初の肉体に収まった、慎吾としての姿を取っている。本体とも言える赤い瞳の眼を持つ、銀髪の偉丈夫である。服も見た目だけだが当時の物を再現しているので、蒼坊主としては懐かしさを禁じ得ない。

 

『鬼太郎は必ず来る。儂らは儂らの戦いをしよう。……皆を集めてくれ』

『あいよ』

 

 ゲゲゲハウスを後にする蒼坊主を見送り、慎吾はちゃんちゃんこを着直す。正真正銘、彼にとっても最後の戦いが始まる。

 

『皆、よく集まってくれた。……この戦いで、全てが終わる。鬼太郎はまだ来ていないが、それでも儂らならやり遂げられると、信じておる。日本妖怪の意地を見せるのだ!』

 

 そして、蒼坊主の呼び掛けで集まった妖怪たちに向けてエールを送り、士気を高揚させる。悲壮感は、まるでない。皆、鬼太郎の不死身っぷりを良く知っているのだ。だからこそ、気後れする事無く戦いに臨める。

 

『さぁ、行くぞ!』

 

 終わりを、始めよう。




◆宝船

 七福神が乗っているアレ。作品によっては終末思想の狸や日本妖怪のやくざが乗ったりするが、今作では殺る気満々の天狗ポリスの皆さんが搭乗している。風が無くとも進めるし、何なら空も飛べる、摩訶不思議な機動戦艦であり、砲弾の代わりに松明丸や水龍丸をぶちかましてくる、とんでもない帆船である。
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