「食らえ! 風の呼吸、伍ノ型「木枯らし颪」!」
『グギャッ!』『ギギィィッ!』『ギャヴォッ!?』
「鬼殺隊」一般隊士:
「くっ……はぁ……はぁ……!」
しかし、その息は絶え絶えで、最早立っているのがやっとの状態である。戦い始めて既に1時間は経過しているのだから、当然だろう。
『ウォオオオオオ!』
『セァアアアアッ!』
「ぐぅ……このっ!」
だが、敵は待ってくれない。妖怪は次から次へと湧いてくるし、使い魔もドンドン投入されてくる。
特に厄介なのが、使い魔側だ。どいつもこいつも飛び道具ばかり使ってきて、刀剣類は本当に寄り付かれた時にしか抜かない。徹して近接戦を対策している。鳴女が齎したであろう武器もそうだが、何より「鬼殺隊」に対する戦い方が上手過ぎるのである。相当な修練を積んだのだろう。
かと言って、日本妖怪が弱いという訳ではない。基本的な身体能力が高いし、使い魔と違って生命力も高く、相当な深手を負わせなければ、倒しても倒しても襲って来る。鬼太郎ファミリーに隠れがちで陰が薄いが、その底力は油断ならないと言える。
『チョアアアッ!』
さらに、泣きっ面に鉢と言わんばかりに、地を裂き現れた「妖怪城」から無数の「兵馬妖」が出陣してきた。
兵馬妖は、竜のような馬「竜馬」や黒い麒麟「角端獣」に跨った、傀儡人形の兵団だ。黒雲坊が秘密裏に九尾姉弟へ提供した、「天狗傀儡」の技術を応用した物であり、材料が尽きるまでは延々と増産出来る。言ってしまえば、
日本妖怪や使い魔たちに加えて、こんな連中まで投入されては、人の身で抗う事は不可能だろう。日輪刀も折れてしまったし、まさしく絶体絶命。
そう、
「くっそぉ……! 鬼札、「ストライク」!」
追い詰められた颪は、「鬼札」を切る事にした。
鬼札とは、予め殺しておいた化け物……彼の場合はポケモンのストライクの魂を封じた呪符で、これを破る事により“呪い”を受けて、その力を行使出来るのだ。
しかし、あくまで一時的な物であり、破れた札は二度と使えない上に身体への負担も莫大な為、本当に危険な場合以外に使うのは自殺行為である。
まぁ、現状がバリバリに鬼気迫っているので、鬼札を切る以外の選択肢はないのだが……。
『……しゃらぁああああああああああっ!』
『ぐぉっ!?』『グゲッ!?』『ギギギ……!』
両腕が鎌になった颪が、山から吹き下ろす強風のように、妖怪や使い魔、兵馬妖を屠っていく。その俊足は音の速さを超えており、衝撃波すら生みながら、眼前の敵を葬り去る。
『くはっ……!」
だが、そこまでだ。限界に限界を重ねた颪の体力は底を突き破り、命が零れ落ちている。鬼札が解けた彼は、最早立ち上がる事さえ不可能だった。
『ガガギギガガ!』
そんな颪を殺そうと、自律行動中の傀儡が迫る。
「せぇい!」「あ……」
『ギゴ……ガガ……!』
もう駄目だ、お終いだ、と思ったその時、誰かが彼の命を救った。同じ「鬼殺隊」の
「まったく、世話が焼けるわね!」
そう言って、マリモが手を差し出してきた。顔が少しだけ赤い。
「ハハハ、相変わらずキツい……」
こんな状況にも関わらず、何時もの強気な彼女の姿に、颪は思わず「やれやれ」と苦笑いを浮かべる。一瞬閉じた瞼の裏には、今までの思い出が走馬灯となって駆け抜けていた。
『グルルル……』
「……え?」
そして、再び目を開けた時、彼の目に飛び込んで来たのは、超帯電状態のジンオウガと――――――顎から上を失い、脳漿を撒き散らしつつ倒れ伏すマリモの姿。彼女は雷狼竜に頭を噛み砕かれ、生命活動を停止……死んだのだ。文字通り迅雷の如く迫ってきたジンオウガに不意を突かれたのであろう。あまりにも呆気ない最期である。
『アヴォオオオン!』
「うぁ……びぃっ!?」
さらに、物理的にも精神的にも動けぬ颪もまた、ジンオウガのライジングお手付きにより上半身を潰され、地面の染みとなった。砕けた骨や破裂した臓器が混じり合った、斑模様のミートソースの出来上がりだ。不味そう。
しかし、この惨劇も戦場で起こった一場面に過ぎず、同じようなシチュエーションが秒単位で量産されていく。そこに人間や化け物という括りは存在しない。死は平等に訪れる。
そう、これが戦争……世界最期の日である。
◆赤甲 颪と潤衣 マリモ
「鬼殺隊」のモブ隊員。2人揃って入隊し、最初こそお互いに反目し合っていたが、任務を熟す内に打ち解け、今では将来を誓い合う仲となっている。この戦いを生き延びられたら結婚するつもりだった。死んだけど。