鳴女さんの令和ロック物語   作:ディヴァ子

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ようやくこの人が出て来マス。


いもうと

『行け、「松明丸」!』

『ギュヴァアアアッ!』

『くそっ、効かない! ……ぐぁあああああっ!』

 

 また1羽、烏天狗が墜ちた。「松明丸」を撃ったは良い物の、リオレウスに殆ど通じず、逆に火球で反撃されてしまったのだ。

 

『飛竜たちに「松明丸」はあまり意味がない! 「水龍丸」で撃ち落とせ!』

『了解!』『てやぁっ!』『そりゃそりゃそりゃ!』

『ギギャッ!? ……ギュガァアアアアッ!』

 

 一応、黒鴉の的確な指揮により幾つかは墜とし返してはいるが、1体に付き数羽掛かりと、明らかに火力不足である。

 しかも、向こうにはリオレウスだけでなく、ライゼクスやセルレギオスなどの高機動な飛竜種が揃っており、彼らに守られる形でバゼルギウスがドンドン空爆している為、全く以て手が足りない。

 はてさて、どうした物か……。

 

「【雷撃(サンダー・ボルト)】」

『キェエエエエエエッ!?』

 

 すると、何処からともなく雷魔法が放たれ、使い魔のライダーごと、セルレギオスを一撃で仕留めた。

 

「ライゼクス以外は電気が弱点よ!」

『アニエス殿か!』

 

 放ち手は、バックベアード軍の裏切者にして、今は鬼太郎たちの味方となっている魔女、アニエス。かのアデル・フォン・アスワングの実妹だ。姉程の技巧は無いが、膨大過ぎる魔力を有しており、威力だけなら姉以上を誇る。

 

『助かったぞ』

「それはお互い様よ。……こんな私を受け入れてくれたんだからね、日本妖怪は」

 

 黒鴉の謝礼に、アニエスは首を振る。

 彼女は姉と違ってバックベアードの遣り方に前々から疑問を持っており、第1次世界最期の日の後、母親のザンビアがブリガドーンのコアにされた事を知ったのが決定打となって、完全に離反。バックベアードが弱っている隙に「アルカナの指輪」を盗み出し、再度の侵略を止めようとした。

 だが、正義感ばかりが先行する性格が災いして短絡的な行動をしがちだった上に、西洋妖怪の追撃や鳴女の出現により、亡命先の鬼太郎ファミリーに多大な迷惑を掛けてしまった。一時は険悪な関係になったものの、真名が取りなしてくれたおかげで和解し、日本妖怪と協力して戦う事を決意したのである。

 そう言った経緯がある為、アニエスは協力的ではある物の、少しばかり自虐的なのだ。

 

『鬼太郎殿は、君の事も大切な仲間だと思っているよ』

「……ありがとう。じゃあ、ジャンジャン行くわよ!」

 

 しかし、今は戦いの最中。感傷に浸っている暇は無いし、呆けている場合でもない。せっかく弱点を共有したのだから、とにかく眼前の敵を斃す事が優先である。

 

「【雷撃】【雷撃】【雷撃】!」

『第壱隊は天狗風でアニエス殿を援護! 他の者は、「水龍丸」に「松明丸」を当てて、爆発させろ!』

 

 そして、アニエスを中心として反撃を開始する。【雷撃】でダメージを与え、「水龍丸」と「松明丸」による水蒸気爆発により、次々と飛竜を墜とす。電気の通じないライゼクスに【氷弾(アイスバーン)】を当てる事も忘れない。

 

《――――――入電! 「ブリガドーン」より高魔力反応検知!》

 

 だが、それも長く続かなかった。

 

『主砲か!?』

《いえ、移動しています! おそらく敵機の増援です!》

『数は!?』

《……一機です!》

『何だと……!?』

「まさか……!」

 

 「宝船」からの報告に、アニエスは嫌な予感を覚える。

 

 

 ――――――ズドドドドド……ドゴォオオオンッ!

 

 

 さらに、凄まじい閃光と轟音と共に、果たしてそれは、現実の物と為った。

 

《十二番艦がやられました!》

『これが個人の力か!?』

 

 ブリガドーンから発進した敵機は物凄い勢いで上昇したかと思うと、瞬時に身を翻して急降下しつつ、擦り抜け様に「宝船」を蜂の巣にして撃沈した。

 その正体は、「クラリチェレガリア魔改」を中心に堕天使のような機械翼を取り付けた、特製のバックパックを背負う、バックベアード軍最強の魔女――――――、

 

「姉さん……!」

 

 即ち、アデル・フォン・アスワングその人だった。

 

《迎撃態勢! 撃ち落とせ!》

「………………」

 

 降下から再び上昇の軌道を取ったアデルに「宝船」たちは必死に防御弾幕を張るが、彼女の機動力は常軌を逸しており、全ての攻撃を躱した上でもう1艦を爆砕してしまう。まさに圧倒的だ。

 

「止めて!」

 

 次の「宝船」を墜とそうとしたアデルに、アニエスが魔法を放った。

 

「………………」

 

 アデルは簡単にそれを回避し、今度はアニエスへ襲い掛かる。

 

「くっ……!」

 

 真面にやり合ったら押し負けると本能的に察したアニエスは、アデルを引き離す意味も込めて、背を向けて上昇した。アデルもそれに追従する。光る雲を突き抜け、フライアウェイ。

 

「姉さん、もう止めてよ! どうしてそこまで戦争をしたがるの!?」

「……アニエス」

 

 そして、姉妹は対峙する。大気圏のその先で、地球を眼下に捉えながら。

 

「どうして、だと……? フフフ、ははは……」

 

 この期に及んで子供染みた事を抜かす妹に、アデルは思わず冷笑した。

 自分が一体何をしたのか、分かっていないのだろうか。手前勝手な正義感でバックベアード軍を掻き乱し、亡命先に迷惑を掛け、剰え「戦争なんて間違ってる」などとは……。

 

「ハッハッハッハッハッ!」

「ね、姉さん?」

 

 しかし、何より許せないのは、それを姉である自分に向けて言った事である。

 アデルはこれまでアニエスを守ろうと様々な努力をしてきた。バックベアードの不信を買ってまで鳴女たちと接触し、幾多の試練を乗り越え、遂にアニエスがブリガドーンのコアにされる事態を回避した。

 後はアニエスの身柄を確保し、説得するだけだったのだが――――――流石に、もう疲れた。

 最近、少しずつ思っていた事ではあるが、こいつは一体何様なのだろうか?

 何処までも自分勝手に振る舞い、悲劇のヒロインを気取って、自分を間違っていると宣う、このガキは何なのだろうか?

 これなら、何時もふざけてばかりだけど、理解を示してくれる、鳴女の方がよっぽどマシだ。

 

「何が、どうしてだ……ふざけるなよ!」

 

 アデルの堪忍袋の緒は、完全にブチ切れた。

 

「お前に……お前に、私の気持ちが分かってたまるかぁあああっ!」

「くっ……姉さぁあああん!」

 

 こうして、何処まで行っても擦れ違う、虚しい姉妹喧嘩が始まった。




◆アニエス

 ご存じアデルの妹で、膨大な魔力の持ち主。西洋妖怪の一派であり、彼女の一族は代々バックベアードに仕えてきたという。
 しかし、バックベアードの「ブリガドーン計画」に疑問を抱き、その要となる「アルカナの指輪」を盗み出し、日本へ逃れた事で、鬼太郎と関わる事となる。
 正義感が強いものの、それに振り回されてしまう事が多く、結果として西洋妖怪・日本妖怪共に多大な迷惑を掛けてしまった。元来は心優しい性格で、「追われる身」という状況が彼女の心を空回りさせてしまったのだろう。
 この世界でも基本的な部分は変わらないが、アデルを取り巻く環境が魔窟と化しており、正直、彼女が居ようが居まいが、物語にはあんまり影響が無かったりする(そもそも「アルカナの指輪」に予備がある上に、「ブリガドーン計画」の内容が異なっている)。精々、アデルの胃をスポンジ状にした事ぐらいだろうか?
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