こんにちは、零余子です。決して零余子印のサイコロステーキではありません。
……とまぁ、ご挨拶はこれくらいにするとして。
つい先日、無限城の住人が増えた。鳴女曰く「丸子の母親役」らしいが、どう見ても元下弦の壱なんだよなぁ。名前も姑獲鳥だし。こんな奴(代理ミュンヒハウゼン症候群)を母親に宛がうのはどうかと思うのだが。
『さぁ、次はメンコをしよう!』
『えっと、そろそろ寝た方が……』
『えー、もっと遊ぶのー!』
『……ええ、分かったわ。好きにして頂戴な』
『わーいわーい!』
『………………』
まぁ、無限城と丸子ちゃんの能力に囲われた状況では、何も出来ないだろうけどね。逃げられないし、逆らえない。何一つ自由は無く、飽きられたら文字通り終わりなので、常に“丸子ちゃんにとっての甘えられる相手”を演じざるを得ない。加虐趣味のあいつにとっては多大なストレスだろう。ざまぁ見ろって感じ。
ちなみに、無限城の主は何をしているのかと言うと、
《久し振りだな、AMS諸君! この傷の痛み、貴様らにも味わわせてやろう!》
『それはこっちのセリフだ。ここで決着を付けてやる。閣下の名は私が貰おう!』
《お、ラスボス戦か》《滅茶苦茶ノリノリで草》《鳴女閣下!》《でも、この超ハイスコア状態で勝てるのか?》《鳴女閣下なら大丈夫だ!》《総統閣下してるしな!》
……何だかなぁ。
確かにガンシューティングゲームは盛り上がる物だけど、あそこまでマジになれるもんかね。鬼ならハイスコア叩き出すくらい余裕だろうに。
とても鬼太郎を圧倒した女とは思えない、お気楽さだ。
――――――そう、何とこの女、かの有名な妖怪界のエース、ゲゲゲの鬼太郎をコテンパンに伸したのである。
それも内臓破裂と肋骨及び脊椎の粉砕骨折という、普通だったら即死レベルの重体に追い込むくらいのフルボッコだ。あの静かなる仕事人が、こんな化け物みたいな仕置人になるとはなぁ……。
まぁ、瀕死の重体程度なら、すぐに復活してしまうのが鬼太郎なのだけれど。噂によると溶かされたり食われたりしても死なないらしいので、こいつも大概化け物である。もう嫌だ、この世界。
……それにしても、あんなに目立つ真似して、大丈夫なんだろうか?
人気の無い場所だったから、当事者以外の目撃者はいないとして、鬼太郎ファミリーに目を付けられるのは良くない気がする。チャラ男先生曰く「妖怪界の任侠」らしいからね。
一応、その辺りは鳴女も考えて……無さそうだなぁ。「負け犬の遠吠えなんか興味無い。関心があるのは味だけだ」とか言いそうだもんね。自分以外の知的生命体を食材としてしか見てなさそうだし。
ま、考えても仕方ないか。なるようになるでしょ。
そんな事より、私は自分の配信をしないと。今日はソロでゲーム実況するんだよ。
「……あーあー、皆さんこんばんは。零余子のゲーム実況、始まるよー」
《こんばんわんこソバ》《今日も相変わらず気怠そうで草》《零余子はご飯のお供、異論は認めない》《何の話やw》《零余子の話に決まってるじゃないか!》《※零余子は地上部に形成される栄養繁殖器官の事です》《何それ美味しそう》《実際、結構美味いよ》《零余子入りのご飯がまた良いんだ、これが》
クソッ、毎回馬鹿にしやがって!
ご飯ネタはもう良いんだよ。何だ、「こんばんわんこソバ」って。日々の鬱憤をぼやかして呟いていたら、いつの間にかリスナーから「私=ご飯(またはオカズ)」みたいな扱いを受けるようになってしまった。解せぬ。
だが、リスナーはお客様だ。多少の事には目を瞑ってやろう。女性実況者の宿命みたいなもんだからね、これ。
余談だが、今回プレイするのは、小さな悪夢の世界を黄色いレインコートを着た小人ちゃんが探索する、ホラーアクションゲーム。不思議な世界観と不気味な演出が上手く組み合わさった良作との前情報があったので、ちょっとワクワクしている。こういう曖昧で幻想的な雰囲気って好きなのよ、不思議の国のアリスみたいで。個人的に大工とセイウチの話がお気に入りです。
「えっと、ここはこれを掴んで登ればいいのかな? ……よしよし、順調順調……って、わぁああああっ! 奥行きィイイイイイッ!」
《あーあ、やっちゃった》《流石は零余子や》《常に落ちが付く有能な女》《芸人だなぁ》《まぁ、あるあるだよね、奥行き感のズレ》《最大の敵は奥行きだからな、このゲーム》《言うて死にゲーやし》《落ちてこその零余子やし》《それな》
チクショウ、嗤いやがって!
判定がシビアなんだよ、このゲーム!
あと、やっぱり奥行きが一番キッツいィィィッ!
……そんなこんなで、意外と難しい操作に四苦八苦しつつも、監獄→隠れ家→台所→ゲストエリアとクリアしていく。
「――――――って、嘘でしょ!? おま、それは……やめたげてよぉ! ……ああー」
《遂にやっちゃったかー》《皆のトラウマ》《トンガリコーン美味しかった?》《トモダチはゴチソウなんだよ!》《それガ○ートや》
さらに、マジで夢に出て来そうな食事シーンを途中に挟みつつ、遂にラスボス戦へ。ラーじゃないけど、鏡で現実を6回くらい見せ付けてくれるわ!
「
《やったぜ!》《検食のお時間だぁ!》《まるで零余子のようだ!》《でも、中身婆さんらしいよ》《←ネタバレやめい》
クッソタレが、何で私は悪食に縁があるんだよぉおおおっ!
ああん、もう駄目ぇ……私の精神は272回は死んだ……もう、疲れたよ……何だかとっても眠いんだ……パトリック……いや、それ違う、コーラサワーや……。
「――――――はい、クリアです。もう駄目みたいなんで、今日はここまでにします。それでは、この動画を少しでも良いと思った方は、評価や登録をして頂けると幸いです。ではでは……」
《お疲れー》《いやー、零余子のホラゲー実況は良いなぁ》《尊い》《尊い》《お前ら絶対尊いの意味分かってないだろw》《またね、零余子ちゃ~ん♪》
ともかく、私はやり遂げた。主人公の少女が妙に鳴女臭い事もあって、かなり疲労はした物の、クリアしたったよ。ざまぁ見ろ、バン○イめ!
……はぁ、マジで疲れたから寝よ。今日はもう配信予定は無いし、鳴女の方もそろそろ終わりそうだし。
それじゃあ、今日の私は明日の私に任せて、お休みなさい……。
「……はにゃん?」
そして、私は謎の場所で目を覚ました。
◆零余子の実況チャンネル
正式タイトルは「おクスリ零余子の実況シリーズ」。リスナーからの挨拶は「おはよう食」「こんにちハンペン」「こんばんわんこソバ」の三種類。全部悪乗りから定着した。
主にRPGやSTGをやっているが、一番人気はホラゲーの実況動画。本人がヘタレでビビりな上にマウントを取りたがるので、突拍子もない事を言い出したり、奇想天外な行動に出たりと、混沌とした内容がウケている様子。特に絶叫が素晴らしく、凄まじいとの事。
他にも雑談配信や鳴女たちとのコラボ動画を上げたりしているので、皆も一度は登録しよう(笑)。