鳴女さんの令和ロック物語   作:ディヴァ子

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 シックスちゃんの可愛さと理不尽さは異常だと思うンダ。


不思議の夢の零余子

 枯れた木々と岩肌が何処までも広がる、不毛の土地。常に霧が掛かっており、一寸先は白い闇である。

 

「……あー、これ夢だわ。明晰夢って奴ね!」

 

 私はそう思う事にした。何故なら有り得ないからだ。

 無限城は鳴女のテリトリーであり、そこには座敷童子の丸子ちゃんまでいる。全ては彼女らの思うがままで、閉じ込められたが最後、二度と陽の目は拝めないだろう。元下弦の壱のように。

 仮に寝てる間にチャラ男先生の部屋へ移動していたとしても、鳴女が外敵の侵入を許す筈がない。彼女が健在である限り、あの手狭な部屋は安全地帯である。

 まぁ、私を一番傷物にしているのは、その鳴女なのだが。

 まぁまぁ、そんな事はどうでも良い。分かり切っている事に悩んでも仕方ないだろう。

 それより、ここが夢の中だというなら、探検しない手はない。どうせ何時かは目覚めるんだし、それまではこの夢幻の大地を冒険するとしよう。さっきの実況で「不思議の国のアリスが好き」とか心の中で呟いてたけど、まさか自分がワンダーランドに入場するとは思わなかった。

 さーて、この先にどんなワクワクが待ってるのかな~?

 

「何もないね……」

 

 五分くらいブラブラして気付いた。ついさっき、自分で不毛の大地って言ってたじゃん。荒野にはイース○ウッドしかいないんだよ。

 というか、いるならサイン欲しい。「零余子ちゃんへ、愛を込めて」って書いて。

 私、あの人のビジュアル好きなのよねー。漢らしさとイケメンぶりが絶妙にミックスされているというか、単純にお嫁さんにして欲しいと思った。鳴女に頼めば鬼にして貰えるかもしれないし、何の問題も無いよね?

 つーか、いい加減何かあって欲しいんだけど。イベントの一つや二つ、起こってくれないとつまらないよー。

 

「いや、待てよ」

 

 ここが夢の中だというのなら、強く思い描けば反映されるんじゃないのか?

 よしよし、そうと決まれば――――――、

 

「いざ行かん、不思議の国へ!」

 

 アリス・イン・ワンダーランドだっ!

 

「おおー」

 

 すると、枯れ木ばかりだった不毛な大地が、奇妙な場所が点在する鬱蒼とした七色の森へ早変わり。海や山に昼と夜が同じ領域に同居し、動物が人のようにお喋りして、草花が楽しそうに歌う。物が意思を持って動いたりもしていた。

 まさに不思議の国。お伽話の世界である。

 そうだよ、私は昔から、何なら鬼になる前から、こういう夢いっぱいの世界を探検したかったんだよ!

 ウフフフ、まずは何処から行こうかな~?

 

『ぴきゅぅ~』「……ん?」

 

 何か目の前を通って行ったな。気のせいでなければ、つい最近君の姿を見た事があるぞ?

 

『ぴきっ!』「ノームだぁ♪」

 

 間違いない、このトンガリコーンは小さな悪夢のノームくんだ!

 可愛いなぁ。悪戯好きなだけで何の害も無いし、すぐに懐いてくれる。まるでピク○ンみたいね。私だけに付いて来て良いのよ~?

 

「よ~しよし」『ぴきー?』

 

 ゲームよろしく、後ろから抱っこしてみる。

 

『ぴきゅきゅっ♪』

 

 思った通り、懐いてくれた。私と一緒にピョンピョンしてくれるんじゃ~♪

 でも、何で不思議の国のアリスにノームがインしてるんだろう?

 さっきまで実況してたから、世界観がごっちゃになったのかも。雰囲気が似てたからね。

 

「……あれ?」

 

 という事は、この先に待ち構えているのって、ドードー提督とかチェシャ猫みたいな可愛い系のキャラクターじゃなくて、管理人やゲストとかの化け物系だったりする?

 いきなり行きたくなくなったんだけど。何で夢の中に来てまで食べられなきゃいけないんだよ!

 

『ぴきっ!』

 

 だけど、ノームが行こうって言ってるんだ……進むしかないじゃな~い♪

 ま、これ夢だもんな。死ぬ事は無いだろうし、そもそも私、死ねないし。今更と言えば今更なのよねー。

 そうと決まれば、地底じゃないけど、GO! GO! GO!

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

「……この人は、本当に何かやらかさないと気が済まないんスかね?」

 

 もう三日もスヤスヤと眠る零余子ちゃんの姿に、俺は思わず溜め息を吐いた。

 ……はーい皆、チャラトミさんだよ~♪

 さっそくだけど、この寝坊助をどうにかして欲しいんだ。例のゲーム実況から今日まで、三日三晩眠り続けている。下の世話が大変だったわ。ベッドを汚すし、鳴女さん怒るし、「お前これ食え」とか言ってくるし。抱き枕が使えなくて癇癪を起した鳴女さんを宥めすかすのは苦労したぜ。

 それにしても、流石に眠り過ぎだろ。これには鳴女さんも大人しくなった。どう考えてもおかしいからね。丸子ちゃんも心配している。

 

『鳴女ー、零余子はまだ寝てるのかえ?』

『ああ。手足を食っても反応しないし。これじゃあ、抱いて寝る以外使い道が無いじゃないか』

『つまらんのー。いっそ頭をもいでみたらどうかの?』

『もうやったよ』

 

 ……訂正。単に愛想が尽き始めているだけだった。これはマズいんじゃないかな?

 

『おい、チャラwi(ウィ)。どう思うよ、これ?』

「いや、そんなチェケラみたいな略し方されても……」

 

 まーた、そうやって無茶振りするー。

 しかし、考えない訳にもいかないしなぁ。ここで考えるのを止めたら、零余子ちゃんが宇宙に投棄されちゃうし、夜のオカズを無くすのは俺も嫌だ。何とかしないと。

 

「――――――思うに、これは夢に囚われてるんじゃないかと」

『夢に囚われる?』

「はい。意外と多いんすよ、夢に干渉する妖怪って」

 

 夢は無防備である。魂が肉体から切り離され、剥き出しの精神がドリームランドを彷徨っている状態なので、心を守る物が何もない。干渉されたが最後、好き放題食い放題ないのだ。

 だので、夢の世界を狩場にする妖怪は、かなり多い。日本だけでも獏や枕返しがいるし、海外には夢魔という小悪魔がいる。人の夢は、妖怪にとってもドリームランドなのである。

 

『なら、お前ちょっと連れ戻して来い』

「いや、どうやってスか」

『そこの姑獲鳥に頼めばいい。そいつ、人を夢の世界に連れて行く能力を持ってるからな』

「ほへー」『………………』

 

 ちょっと特別感のある個体だとは思っていたけど、そんな能力まであるのか、この人。確かに良い夢(意味深)を見せてくれそうではあるけど。

 

「それじゃあ、一丁お願いします」『はいはい、横になってねー』

 

 さらに、その艶めかしい脚で膝枕までしてくれる!

 まさに夢心地だわ。良い匂いもするし。クンカクンカするだけで微睡める。何て心地良いんだ。

 嗚呼、ずっとこうしていたい……。

 

『今晩中に連れ戻せよ。じゃないと、お前と零余子を活造りにしてやるからな』

 

 早く連れ戻さなきゃ!




◆リトルナイトメア

 正式名称は「LITTLE NIGHTMARES-リトルナイトメア-」。胃袋の名を持つ巨大な船「モウ」の中を、黄色いレインコートを羽織った少女「シックス」が探索する、ホラーアクションゲーム。基本的に右へ進む横スクロールだが、キッチリと奥行きもあり、目測を誤ると落下死する(ある意味最大の死因)。操作も意外と難しく、「初見でそれは無理やろ」というフィールドギミックや敵も満載で、死んで覚えるしかないデスルーラ的なゲームである。
 様々な謎が随所に散りばめられており、製作者が明確な答えを用意していないのも相俟って、考察のし甲斐があるのが最大の特徴。モウの住人やお客様もさる事ながら、主人公であるシックスが一番謎だらけで不気味だったりする。マスコットキャラのノームだけが唯一の癒しだ。別のゲームに出て来る処刑人に似ている気がするのは内緒。「2」もあるよ!
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