はーい、皆おはよう食。まだ目覚めの時じゃないけど、零余子ちゃんだよー。
と言うかね、正直今は挨拶している場合じゃないんだわ。
「うひゃああああああ!」『ぴきゅきゅ~♪』
『グヴォァッ!』『ホワァッ!』『ノォオン!』『ハァァアアアッ!』
だって、モウの住人とゲストの皆様に追い掛けられてるんだもの。居るとは思ってたけど、勢揃いするなよ。まるで、何処かの大運動会みたいじゃないか。あと、ノームが楽しそうなのが、そこ傍となくムカつく。
《デデデ~ンデデデ~ンデデデデデ~ン♪》
「しまった、余計な事を考えちゃったぁっ!」
お前らの相手は迷子の七五三さん(二十代)だろぉ!
マズいマズい、どうするどうする!?
最早、夢を楽しんでいる暇はない。こんな悪夢の世界、さっさと抜け出すに限る。
だが、一体どうやって乗り切れば……、
「――――――そうだ!」
ここが夢の世界なら、失くした物も取り戻せる筈。私が呼び出すのは、これだ!
『うっしゃあああああっ!』
鳴女やチャラ男先生から伝え聞いた、あの妖刀。これさえあれば、どんな化け物も膾切りよ。痣者舐めんじゃねぇ! 食らえ、ヒノカミ神楽ぁっ!
『ハァ……ハァ……ふぅ」
危ない所だった。透き通る世界のおかげで、ほぼ一方的に殲滅出来たけど、見たくもない中身まで確認出来てしまった。とりあえず、無理すんなよ婆とだけ言っておく。
つーか、自分の夢で殺されるとか、洒落にならねぇんだよ、チクショウめぇーっ!
『きゃっきゃっきゃ♪』
楽しそうだね。
「それにしても、これからどうしたもんか……」
一先ず、状況を整理しよう。
ここは夢の世界であり、私はそれを夢と認識出来ているから、ある程度コントロール出来る。
だが、一度生み出した物は無くならず、襲われれば殺されてしまうかもしれない。夢で死ぬと現実でも死ぬとかいう俗信があるけど、もし本当にそうだとしたら、今の状況はかなり危険である。
そもそも、ここが自分の夢とも限らない。夢の世界は集合的無意識の産物だという話もあるし、誰かの夢に飛び込んでしまった可能性がある。だから微妙に不自由なのかも。
ともかく、早く脱出しないとヤバい。人の夢に閉じ込められるなんて、それこそ悪夢だ。私の夢は私だけの物なんだよ!
『……さい! 止めて下さい!』
「うん?」『ぴきゅ?』
森の奥から、声が聞こえる。可愛らしい女の子の声である。台詞から察するに、誰かに襲われているらしい。
正直、自分の事で手一杯だから無視を決め込みたいけど、夢の中では何が幸いするか分からないので、とりあえず助けよう。
『良いよ、君! 実に良い! もっと見たい、調べたい! 君、ボクと一緒に来ておくれよ!』『嫌ぁ! わたしはずっとここに居るのぉ!』
「うーわー」『ぴーきゃー』
ズンズン進んだ先に待っていたのは、継ぎ接ぎだらけの死体を思わせるマッドサイエンティストが、シニョンで着物というキュートな幼女に迫る、事案しかない光景だった。何しとんねん。
「止めんか」『ぐはぁっ!』
一先ず、一線を越える前にドロップキックを食らわせる。見た目より重量はあったが、それでも超強化状態である私の敵ではなかった。科学者なら、大人しく引き籠ってろよ。
『い、いきなり何をするんだ! このボクの優秀な頭脳に傷が付いたらどうする! ボクはヴィクター・フランケンシュタインだぞぉ!』
「黙れ、ロリコンめ」
こんな可愛い女の子に鼻の下を伸ばして手を出すような奴に慈悲は無いんだよ。
それにしても、フランケンシュタインか。
確かに頭に螺子刺さってるし、継ぎ接ぎだし、完全に動く死体だけど、ヴィクター・フランケンシュタインは制作者であって、怪物自体に名前は無いんじゃなかったっけ。創造主を殺した時に名前まで乗っ取った、とか?
何れにしろ、生みの親と同様にイカレてるようだし、手を唇と舌に変えて幼女の味を確かめるような奴だから、ぶっ殺し確定だな。死ね、変態!
『うぅぅぅ……あァァァんまりだァアアアアアっ! HEEWYYYYY!』
すると、ヴィクターが突然、大声を上げて泣き出した。マジもんのギャン泣きだ。柱の男かお前は。家に柱の女みたいなの居るから、そんなに驚かないけど。
『怒る! ……ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!』
「うぇえええっ!?」『ぴきゃーっ!?』
だが、奴は弾けた。
スッキリするどころか、筋肉モリモリマッチョマンの変態になった。見た目は完全に色違いのハ○クである。どういう事だってばよ!?
『そいつは大泣きすると、フランケンシュタインの怪物としての本性を現わすの! とんでもなく我が強くて夢見がちだから、わたしの力も通じないし……ともかく、気を付けて!』
と、シニョンの幼女からナイスな助言が。お前、見た目幼女だけど実は相当年月重ねてるだろ。冷静に解説しやがって、このロリ婆め!
つーか、何をどう気を付ければ良いんだよォ~!?
『――――――「
『ガヴォオオオオオオッ!』
ともかく、迎撃しないと話にならないので、次々とヒノカミ神楽を叩き込んでいく。
しかし、ヴィクターは元々死体で継ぎ接ぎだからか、斬った傍から再生し、巨体に見合ったパワーでどんどん攻めて来る。その姿はまさしくバーサーカーだ。ドロー、モンスターカード!
ヤバいヤバいヤバい、このままじゃ押し負ける!
殺されても死なないけど、その分色々とアカン事をされてしまうかもしれない。くっころは勘弁なんだよぉ!
『うぉおおおおっ、私の純潔は絶対に、絶対に、絶ぇ~~~~~~~~ッ対に、渡さないんだよぉおおおっ!』
『グヴォオオオオオオッ!』
火事場の馬鹿力なのか、全身に痣が浮かんだ状態で日の呼吸・拾参の型を食らわせたら、ようやく大人しくなった。三千世界どころか万世極楽を教えてやったぜ!
『ヨグモォオオオッ! お前は絶対にゆ゛る゛さ゛ん゛!』
だが、許されなかった。瞬く間に再生した上に若干の理性まで取り戻してしまった。これもゴル○ムの仕業か。全部ドン・サ○ザンドって奴のせいなんだッ!
『行くぞ、ゲッターぁああああああっ!』
しかも、まさかのブラックゲッター(チェンゲ版)を召喚、自らパイロットを務める始末。どうしてこうなった。
『この幼女は素晴らしい! どんな夢も皆みんな叶えてくれる! まさしく“あの子”へのプレゼントに相応しい! 初めは潜入調査などという使いっパシリにされた事に腹が立ったが、“あの子”の夢を叶える為なら話は別だ! どんな事をしてでも手に入れてやるぞ! 愛でLOVEだぁ!』
そして、意味不明な事を口走りつつ、スパイク付きの鉄拳を振り下ろして来た。
「だ、誰か助けてぇえええええ!」『ぴっきゃーっ!』
悪夢の世界では、私の悲鳴は誰にも聞こえない……かと思われた、その時。
――――――ガキィイイン!
「ゑ?」『ぴ?』
何かがブラックゲッターの拳を受け止める。火花を散らす、赤鬼のようなそれは、
『何ッ、ゲッター1だとぉ!?』
世界最後の日からやって来た、ゲッター1だった。
◆ヴィクター・フランケンシュタイン
メアリー・シェリーの小説「フランケンシュタイン」に登場するマッドサイエンティスト。“新たな生命体”を創る事に固執しており、継ぎ接ぎの死体に「サンダー・ボルト」を発動して蘇生させたが、最後はその怪物に殺されてしまった。後年では、この名無しの怪物が「フランケンシュタイン」と呼ばれるようになった。
6期の彼は西洋妖怪の一員であり、創造主の名前と人格を完全に乗っ取った存在である。その為、大泣きする事をスイッチとして怪物の本性を現わす能力が有る。
アニメでは真名に一目惚れしていたが、今作の彼には既に“花嫁”がいるので、恋愛対象としては眼中に無い(研究対象にはするかもしれないが)。