鳴女さんの令和ロック物語   作:ディヴァ子

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 鳴女さん以外だと零余子と朱紗丸、姉蜘蛛辺りが好きデス。敵ばっかりヤン。


鳴女さん、新居を得る

『ここがお前の家か』

「ハ、ハイ……汚い所ですが……」

『掃除しろ』

「はいぃいいいいいいいいいい!」

 

 という事で、私はチャラトミの家に来た。やもめ暮らしが汚い事は分かり切っていたので、まずは掃除をさせる。少しでも私をイラつかせたらゲームオーバーの、無惨式クイックルだ。暴力は全てを解決するって、ハッキリ分かんだね。

 そのおかげなのか何なのか、チャラトミは物の一時間で新築同然の部屋に磨き上げて見せた。凄いなお前。意外と家政婦の才能あるよ。

 それにしても、狭いなぁ。玄関と台所が直結してて、居間(客間兼任)が六畳しかないとは。

 一応、ロフトなる一段高い開けた屋根裏みたいな場所が二畳分くらいある(下は納戸になっている)が、それでもこれは狭いぞ。

 いや、確実に私の人間時代より良い生活してるけど、このチャラい男と一つ屋根の下で暮らすのはちょっとねぇ……。

 

『よし、今日からお前の部屋ここな』

「え、ここ押し入れじゃ……」

『返事は?』

「はい」

 

 さて、部屋割りも決まった事だし、さっそく模様替えをしよう。

 まずは琵琶を置く場所を確保して、布団はロフトの上で、居間には机と座布団を敷いてっと……。

 

『フム、中々の出来栄えだな』

 

 何と言う事でしょう。手狭で圧迫感しかない小さな居間が、あっという間に質素で落ち着いた感じに様変わり。こうしてみると、狭いのは狭いので有りかもな。大体の物が手の届く範囲にあるし、掃除も簡単。プロも(納戸に)いるしね。

 

『おい、チャラ男』

「ハイ! な、何でしょうか!?」

『まずはパソコンとやらの使い方を教えろ。それから“動画”の作り方もだ』

「了解であります!」

 

 身辺整理が出来た所で、私はさっそくチャラトミにパソコン講座を命じた。ウーチューバーの時もそうだが、こいつの説明は案外分かり易い。講師でもやればいいのに……と思ったけど、チャラ過ぎて駄目か。

 まぁ、これからは精々私の為に扱き使わせてもらおう。よろしくねぇ、先生?

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 やぁ、皆!

 俺だよ俺、皆の主役チャラトミさんだよ!

 さっそくだけど、運命って言葉に付いて、皆の意見を聞きたいんだ。

 ――――――友達と大和撫子をナンパしようとしたら、彼女は一つ目の化け物で、友達を殺された上に奴隷にされたんだけど、俺はどうしたらいいんだろう。誰か助けて。

 だが、俺は知っている。こういう時に限って、誰も助けてくれないって事を。

 だから、俺は素直に鳴女とかいうこの化け物に付き従う道を選んだ。逆らっても殺されるだけだし。何より一つ目以外の見た目はド直球で俺の好みだし。

 正直、かなり興奮する。今思うと、一つ目ってのもアバンギャルドな感じがして、逆に良いかもしれない。何時かヤらせてくんないかなぁー。

 ま、それは置いておいて。

 どうもこの鳴女さん、「鬼」という種族であるらしい。もう何百年も生きていて、今はネットアイドルを目指しているんだとか。アグレッシブ過ぎませんかね?

 というか、本人は鬼って言ってるけど、話を聞く限り、俺的には“和風の吸血鬼”って印象なんだよな。だって血を媒介にして増えるし、日光に弱いし。銀や十字架が効くのかは知らないが、少なくとも本人はニンニクが嫌いなようである。商売柄、強い臭いは駄目なんだとか。ただの好き嫌いじゃん。

 それを鳴女さんに伝えてみた所、“なるほど”と納得して、器用にネットを使い調べ始めた。結構適当に教えたのに、よく使い熟せるな。本当に大正時代で知識ストップしてんのか?

 それから、動画についての説明を交えながら、鳴女さんは己の種族に対して仮説を立てていく。曰く「今の自分は支配を逃れた従僕鬼。絶対の安心を得るには、力を高めなければならない」んだとか。現代に蘇って間もないのに、お疲れ様です。

 しかし、ここで人間をオススメすると真っ先に俺が食われるので、俺は代案を用意した。

 

『……「妖怪」だと?』

 

 そう、妖怪だ。目に見えないが、確かに存在する化け物。

 何時だったか、ノリで「のびあがり」とかいう奴の封印を解いたらえらい目に遭ったので、まず間違いなくいる。その類の連中が、今もこの世の何処かに。

 

「鬼は人間しか食えないって話ですけど、あくまで“人間の食い物”が食えないだけなんですよね? 妖怪も人間を喰う、謂わば同類。食うならそっちの方が栄養あるんじゃないんですかね?」

 

 おお、冴えてるぞ、俺。何の根拠もないけど、ファンタジーによくある設定を引っ張り出して、それっぽい説明が出来てる。人間、命が懸れば何だってやれんだね。

 

『フム、確かにその通りかもな。吸血鬼の特性を鑑みれば、食事の質を上げるに越した事はない』

 

 よいよし、上手く矛先が人間以外に向いてくれた。東京でグールみたいな真似されちゃ敵わないよ、いやマジで。

 ともかく、これでヘマさえしなければ、俺の生活は安泰――――――。

 

『よし、まずは自己強化から始めるか。お前詳しそうだし、案内しろ』

「え?」

『そして、良い感じで囮になれ。安心しろ、一応は殺される前に妖怪の方を殺してやるから。間に合わなかったら知らんけど』

「………………」

 

 オーノーッ!

 ――――――こうして、俺の日常は一気に様変わりした挙句、命の危機が付き纏う毎日を送る破目になったのだった。口は災いの元……。




◆チャラトミ

 ゲゲゲ世界の住人にして、鳴女が一番最初に接触した人間。
 名前通りにチャラい上に渋谷のスクランブル交差点のど真ん中で自撮り中継したり、ノリで「のびあがり」の封印を解いたりなど、傍迷惑な行為ばかりしている阿保。まさに“モラルの無い今時の人間”そのもの。
 そんな事ばかりしていた報いなのか、目の前で鳴女に友人(ゴミ)のカスパーを食われた挙句、奴隷生活を強いられるようになる。
 しかし、一つ目である以外、鳴女は結構好みのタイプである為、密かに彼女へ欲情してたりする。

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