やぁ、諸君。芹沢博士に真っ向から喧嘩を売りに行くスタイルの、鳴女さんだ。
前回は深夜のコンビニ飯を買いに行くノリで化け狸料理を食べに穴場(洞窟)へ向かったのだが、通りすがりのチンピラ妖怪のせいで、まさかの大ピンチに陥ってしまった。おかげで色々成長出来たから結果オーライだけど、そういう事じゃないんだなぁ……。
つーかさ、
『結局、お前は何処でどうやってシンビオートと一体化して来たんだ?』
私はカルビを焼きながら、チャラトミ(ヴェノム)に尋ねた。ジュージュー。
《別にシンビオートは見付けてませんよ。そもそも、あの時は“俺たち”とか言っちゃいましたけど、別にもう一人の俺とかは居ません。単に
チャラトミがハツを引っくり返しつつ答える。ジュワジュワ。
『どういう事だ?』
《端的に言ってしまうなら、“同じ釜の飯を食い過ぎた”って感じですね》
『同じ釜の飯……ああ、そういう事か』
何となーく分かった。
おっと、ホルモンも育てておこう。内臓系は時間が掛かるからね。パチパチ。
『つまり、
ようするに、そういう事である。鬼殺隊にも似たような奴が居たしな。
よし、カルビは回収して、ホルモンの様子を見つつ、次はハラミでも焼くか。ジュワァアアッ!
《はい。俺もちょくちょく零余子食品や藤花オイルを使った料理を食べてましたし、鳴女さんの血を貰ったのがトリガーとなって、能力が固定化したんでしょう。言うなれば、“不死身の鬼蜘蛛”って所っスかね?》
ハツを皿に乗せ、新たにランプを焼き始めるチャラトミ。パチチチチ。
そう、実はこいつ、こっそりとカニバリズムをやらかしている。“私と同じ物を食べたい”という願いからしたらしいが、思い切った事をしたものだ。零余子肉は美味しいが、食い過ぎると身体が乗っ取られるので、かなり危険な行為である。藤花オイルに関しても、配分を間違えると硫酸を一気飲みするような物であり、普通はやらない。
だが、チャラトミは大分イカレている。私のような悪鬼羅刹とここまで上手く付き合って来れるような奴が、正気な訳がないだろう。初めから人間性を疑うような発言ばかりしていたが、私と関係を持つ事で、より悪化したようだ。
さらに、前回の死に際で私の血を受け入れた結果、今まで溜まっていた零余子や藤花の血肉と反応して一つとなり、チャラトミを守る盾としての機能を果たすようになった。彼の不足を補う能力と言ってもいい。
詳細は本人にも分からないみたいだけど。
つまり、ヴェノムを構成する黒い流動体はあくまで彼の一部であり、シンビオートのような意思がある訳ではなく、むしろ血鬼術に近い物である。もしくは「パワーを持った
しかし、シンビオートと同じで燃費が悪く、腹が空くとチャラトミ自身を侵食し始めるらしいので、完全な同一体とも言い難い。ある程度コントロールの利く癌細胞みたいな感じだろうか。その内マジで「俺たち」になっちゃうかも。
……内心、零余子の事を散々“動く癌細胞”呼ばわりしていたこいつが、自分の癌細胞で身を守るようになるとは、何とも皮肉である。文字通りに。
《別に、俺だけを守る為じゃないっスよ》
『そうかい』
嬉しい事を言ってくれるね。
『まぁ、絶好調なようで何より……あ、それ焦げるぞ』
《おっと、あざ~す》
「――――――って、コラァッ!」
《『おや、生首が何か言っているぞ』》
「お前らがそうしたんだろうがーっ!」
随分と元気が良いねぇ、何か良い事でもあったのかい?
「もういい加減にしてよ。本人の目の前で焼肉するとか、気が狂ってるわよ」
《『今更?』》
「今更だろうと何だろうと、何回だって言ってやるわよ!」
もぐもぐもぐもぐ。
「言ってる傍から食うな!」
《『あむほまも』》
「呑み込んでから言えや!」
まったく、しょうがないなぁ。通算で8零余子は食べたから、そろそろ勘弁してやるか。
『……そう言えば、槐の邪神は何であんな所に居たんだろうな?』
食器を重ねつつ、チャラトミに聞いてみる。
《単に休眠してたんじゃないスかね? 甲虫が居るなら、何処にでも発生し得るのが槐の邪神ですから》
触手を器用に使い、食器と七輪を全部持ち上げながら、チャラトミが答えた。
……嫌だなぁ、その設定。あんなのがそこら中に眠ってるとか、マジで御免被るんだけど。人殺しは大好きだが、自分が殺されるのは絶対にお断りだ。
やっぱり、まだまだ力不足だな、私も。前回の戦いで実感出来た。これからは破壊力に焦点を当てて強化するとしよう。食べる妖怪も多少は吟味した方が良いかもしれない。あんまり厳密にする気は無いけどね。
力不足と言えば、鬼太郎は今頃は何してるんだろう。案外、強化合宿とかしてたりして。
『まぁいいさ。食事も済んだし、寝るとしようか』
《そうっスねー》
ちなみに、お風呂にはもう入りました。今回の焼肉は風呂上りのおつまみです(笑)。
「……まったく、好き勝手にして」『ぴきゃー』
と、達磨モードに再生した零余子がブツブツと呟く。そんな彼女を必死に慰めているノームが何か可愛い。
だが、私は待ったを掛ける。
『いや、お前は来なくていい。ノームと遊んでろ。もしくは一緒にお寝んねしてな』《………………》
夜はまだまだこれからである。
◆無限城
上下左右があべこべな異空間。鳴女の旋律に合わせて自在に姿を変え、襖により現実世界と行き来する。この空間は鳴女の力その物であり、彼女が死ぬと諸共消える運命である。
本来の殺傷力は高くないが、今作では鳴女が色々と超進化している為、刃仕込みの襖に襲われたり、刺出しの壁に迫られたりと、イ○ディー・ジョーンズもビックリな攻撃力を有している。