鳴女さんの令和ロック物語   作:ディヴァ子

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 鬼滅の刃に登場する妖怪染みた鬼たちの姿を見ていルト、この作品では「妖怪というニッチ」に無惨系の鬼が割り込んだ形で成り立ってるんだろうナァ、とちょこちょこ考えていまシタ。


鳴女さん、夜釣りをする

 おはよう諸君、音川(おとかわ) 鳴女(なきめ)だ。

 今時は苗字が無いのは変らしいので、とりあえず音川という姓を名乗ってみる事にした。何か音柱みたいで嫌だが、妙案が浮かぶ訳でもないので、このまま行くとしよう。どうせ偽名だし適当で良いでしょ。

 そんな事より妖怪である。

 チャラトミ曰く、この世界には物の怪が本当に存在するらしい。そんなの無惨様だけかと思ってたわ。話を聞く限り、栄養価は人間よりも高そうだし、手っ取り早く力を高められそうなので、積極的に狙っていこう。

 さぁ、いざ妖怪ウォッチ――――――と言いたい所だが、今は朝。既に日が昇っている。日光に弱いのは相変わらずのようなので、探索は夜まで待とう。

 とりあえず寝るかー。本来、鬼に睡眠は必要ないけど、暇な時は寝るに限る。寝る子は育つって言うし、起きてるとチャラトミを食べちゃいそうだし。

 

『私は夜まで寝る。お前は今の内に準備を進めろ』

「分かりました!」

 

 という事で、ロフトの布団に横たわり、目を瞑る。

 この部屋は日照権はどうなっているんだと言わんばかりに日差しが入らないので、連れ出されでもしない限り寝首を掻かれる心配はない。

 本当は無限城に避難するのが一番安全なのだが、高が人間とは言え手の内を明かし過ぎるのもアレなので、今は使わないでおく。流石に触られれば気付くので、何の問題も無いしね。

 ついでに、今後ついても考えを纏めよう。

 私たち「鬼」は、チャラトミに言わせれば「吸血鬼」らしい。血を媒介に増殖し、親が死ぬと眷属も死ぬなどと言った特徴が、まさにそうなんだとか。

 うん、確かに納得の答えだ。書物に載っている“地獄の鬼”とは全く違うし。無惨様は吸血鬼だった?

 ま、そんな事はどうでも良い。重要なのは私が“真祖”になれるかどうかである。

 吸血鬼の従僕が自由になる条件は、主が死ぬか下克上を果たす事。私は少なくとも前者の条件は満たしている。

 だが、それだけでは“野良”になっただけで、無敵の存在になったとは言い難い。弱点はそのままであり、何かの間違いで無惨様が復活したら再び支配されてしまう。

 それを回避するには、私自身が真祖となる事だ。全ての始まりとなる事で、自己完結するのである。その為には己の力を高め、無惨様以上の鬼とならなければならない。

 幸い、吸血鬼は同族も食えるし、食えば食う程力が上がる事も分かってる。本質的には無惨様の血が必要なのだが、本人が居ない以上、私の血を濃くするしかないだろう。

 だから、私は妖怪を喰ってやるのだ。人間を餌にする者同士、カロリーが高いに違いない。

 

 ……と、そんなこんなで数時間経過し、夜。

 

「おはようございます、鳴女様ぁ!」

『おはよう』

 

 うーん、良く寝た。ここまで安眠出来たのは久し振りだな。

 ……何も仕掛けて来なかったのは、正直意外だな。覗き見はされたようだけど、触りもしなかった。

 まぁ、もし仮にお触りされたら、慰謝料として命を貰っていたけどね。

 

『それで、目星は付いたのか?』

 

 本当は探知の使い魔でも事足りるが、夜でも明るい今の世の中では悪目立ちする可能性が高く、何より力を使うのが面倒臭い。結構疲れるのよ、アレ。

 だからこそ、こいつを使うのである。木を隠すなら森の中。どんなに頭がアレな奴でも、人である以上、人間社会に紛れ込ませれば、幾らでも誤魔化しが利く。鬼である私には出来ない事だ。

 

「ハイ! 俺の調べによると、この辺りに――――――」

 

 ――――――さぁ、鬼狩りならぬ、妖怪狩りにでも行こうか。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 草木も眠る丑三つ時。

 俺と鳴女さんは、自宅から程近い公園に来ていた。最近ここの池にお化けが出ると言う。何でも人の顔をした魚なんだとか。所謂「人面魚」である。

 

『……魚は食えないと言った筈だが?』

「人食いの妖怪なら別でしょ? ……まぁ、胃が受け付けない可能性もありますけど、逆に食べられれば何人、何十人分の栄養になりますよ」

 

 噂話によれば、池を覗き込む人間を人面で驚かせ、怯んだ隙を突いて食ってしまうらしい。

 それを信じるなら、この人面魚は子供騙しなアレではなく、本物の化け物という事になる。人の血肉が混じった実体のある妖怪であれば、人食いの鬼でも消化出来る筈。出来なくても知らん、それは俺の管轄外だ。だって、人間だもの。

 

『よし、さっそく餌になって来い』

「そうなりますよねー」

 

 チクショウ、分かってはいたけど、嫌な役回りだなぁ。

 でも、やるしかない。ここで逃げても殺される。前門の人面魚、後門の鳴女。嫌過ぎる……。

 

「こ、こんばんは~?」

 

 一先ず例の池を覗き込んでみる。公園のど真ん中にあるだけあって結構広く、ネッシーは無理だがピラルクぐらいなら余裕で棲めそうなくらいに大きい。アオコが張っていてお世辞にも奇麗とは言い難いけど。思わず掃除したくなる。

 

『ウフフフ……』

 

 と、その時。夜でも分かるくらいに緑色になった水面に女の子の顔が浮かび上がった。赤い黒目と銀のショートボブに二本角が特徴の、とびっきりのカワイ子ちゃんである。カスパーが好きそう。

 しかし、そんな感想は次の瞬間吹き飛んだ。

 

『キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!』

 

 一瞬、顔が引っ込んだかと思うと、金切り声を上げながら飛び出して来た。その姿は、頭だけが鬼っ娘に挿げ替わったギャ○ドスという不気味な物。雑コラ過ぎんだろ。

 しかも、よく見ると胴体も魚のそれとは言い難く、人間の手やら足やら胴やらが滅茶苦茶に混じり合った肉塊が数珠繋ぎになっているという、かなりグロい物となっている。クトゥルフ神話辺りに出て来そうだなぁ。

 だが、条件を照らし合わせてみると、こいつが紛れもない妖怪である事が分かる。角の生えた人面を持つ魚――――――和式の「人魚」だ。淡水産だから「髪魚」か。形態的には「神社姫」が一番近い気がするが、とても厄除けしてくれそうもないので、おそらく成長し過ぎただけなのだろう。一体どれ程の人間を食って来たんだか。普通に怖い。

 うーん、カスパーが神話や伝承(そういうこと)に詳しかったせいで、俺までドップリ染まっちまったよ、全く。

 

◆『分類及び種族名称:怪魚超獣=髪魚(はつぎょ)

◆『弱点:頭』

 

 ……って、棒立ちしている場合じゃない。早く逃げなきゃ!

 

「『ゑ?』」

 

 しかし、いざ後退しようとした瞬間、浮遊感に襲われた。

 否、浮いてるんじゃない。落ちている。

 下を見ると、足元が池の一区画ごと開けた襖になっていた。その先は歪な空間。上下左右が滅茶苦茶になった日本式の城内と言った感じで、その歪みの中心には琵琶を弾く鳴女さんが。

 たぶん、これが彼女の妖術なのだろう。空間系の使い手って所か。

 ホント、カスパーのせいで異能や超能力(そっちけい)にも詳しくなっちまったよ。

 というか、今思うとあいつ色んな事に精通してたよなぁ。オカルトの専門家と思いきや、歴史や科学にも詳しかったし。案外、死ぬには惜しい男だったのかも。キャラがアレだから別にいいけど。

 つーか、このままだと俺、落下死するんじゃ、

 

 ――――――べべん!

 

 と思ったら、いつの間にか鳴女さんの傍に座っていた。この空間は彼女の根城であり、自由自在なようだ。

 それじゃあ、髪魚は?

 

『ギャアアアアアアッ!』

 

 すると、目の前にバラバラになった髪魚がボトボトと落ちて来た。まるで見えないピアノ線で刻まれたように、奇麗な輪切りにされている。琵琶の弦でも使ったのだろうか。

 だが、これだけ切り刻まれても死なない辺り、やっぱり化け物である。

 

『なるほど、確かに生物だ。それに藤の花は効かないが、菖蒲の汁は毒になる(・・・・・・・・・)ようだし、私たちと似て非なる存在と見て良いだろう。言うなれば、人を生産者に(・・・・・・)見立てた(・・・・)食物連鎖の一員か(・・・・・・・・)。これは面白い。是非とも味わわせてもらおうか』

 

 それでも、所詮は魚。鬼の敵ではなく、あっという間に平らげられてしまった。食い方が柱の女って感じなんですが……。

 そして、鳴女さんが残る頭を丸呑みにしようとした、その時。

 

「復っ活ぅうううううっ!」

 

 頚の切り口から人間の胴体が生えてきた。




◆髪魚

 人魚の一種で水神の眷属。和式の人魚の仲間なので、頭だけが人間の人面魚形態である。こちらは基本的に淡水に棲んでいて、海の人魚にはある角が無い。たぶん、淡水魚と海水魚の違いみたいな物だろう。別に食べても不老不死にはならないし。
 ちなみに、「神社姫」はアマビエのように「自分の姿を描くと無病息災になる」という特徴がある。とりあえず「姫」という名は付くが、可愛くはない。
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