鳴女さんの令和ロック物語   作:ディヴァ子

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 バトルガールが通うハイスクールが存在するらシイ。


ニャニャニャのバトルガール

 アタシ、猫娘。猫又と人間の合いの子なの。

 そして、鬼太郎のパートナーでもある……幼馴染とか、戦友止まり、だけどね。昔は「僕が貰ってやる!」とか言ってくれた時もあったけど、ユメコ(あのこ)が死んだ頃から大分変っちゃったわ、彼……。

 だが、奈落の谷へ行く時の鬼太郎は、何かが違った。帰ってくる頃には、かなり様変わりしている、と思う。

 ……嗚呼、こんな事を考えてしまうくらい、アタシは今とても混乱しているのね。この場に居ない彼を頼った所で仕方ないし、そんな調子ではまなを守る事も出来ないでしょうに。

 

《虚ろな器虚ろな器……五つ揃うのは何時の日か……》

 

 そう、例えばこいつから、とかね。

 

『………………!』「ねこ姉さん!?」

 

 アタシは迷わず、まなの前に立った。

 こいつが何なのかは分からないが、只者ではない事は感じ取れる。確実にヤバい奴である。声が良い仕事してますもの。勝てる気がしない。

 それでも、アタシは退かないわよ。鳴女の時に見せた無様な姿は、二度と晒さないわ。

 こんなアタシを、姉さんと呼んで慕ってくれる、まなを守る為に!

 

『――――――おーい、丸子。せっかく用意してやったのに忘れてるぞー、ゴム』

《ばぶぅふ》

「『ゑ?』」

 

 と、我ながら悲壮感のある覚悟を持って構えたのだが、突如現れた襖が仮面の男を跳ね返して、中からもっとヤバい奴が現れた。ついでに向こうから『わざと置いて行ったんじゃー!』という声が聞こえた気がする。

 オマエ、初日からゴム(それ)が必要って、爛れ過ぎじゃない!? 妖怪とは言え、子供に何を勧めてんだ!

 いや、しかし、今はそんな事を言っている場合じゃない。何てタイミングで現れるんだ、鳴女の奴……!

 

《うぅぅ……誰ぞ……?》

『いや、お前こそ誰だ?』

 

 おい、幾ら何でも、それは無いだろう。飛び出して来たのはオマエなんだよ。

 

《邪魔を……!》

『邪魔なのはお前だ』

《オオオォォ……!》

 

 だが、理不尽そのものな鳴女に、仮面の男の事情など知った事ではなかった。口から火砕流のような炎を吐いて、あっという間に仮面の男を火達磨にしてしまった。

 何時の間にそんな技を習得したのかも気になるが、どう見ても実体の無い幽霊みたいな奴にダメージを与えられるとか、そんなの有りかと言いたい。妖気でも混ぜているのだろうか?

 

《うぅぅぅ……ぁああああっ!》

 

 そんなこんなで、仮面の男は赤ん坊のように叫びながら消え去った。これで死んだのかどうかは分からないが、少なくとも撤退はしたものと思われる。結局、彼は一体何をしに来たんだろう?

 しかし、仮面の男が消えた所で、安心は全く出来ない。中ボスの代わりに裏ボスが現れたような物だからね。

 

『フーム、転移先を間違えたか。こんなランドの中心で花火をする破目になるとは。せっかく丸子が告白した辺りで背後から「チィーッス、保護者でーす」とか言ってやろうかと思ってたのに』

 

 鳴女が若干眩しそうに周囲を見渡しつつ、悪魔的な発言をしている。羞恥で泣くぞ、丸子が。

 え、というか、ちょっと待って!?

 

「『太陽はっ!?』」

『え、眩しいよ?』

「『知ってるよ、この世の誰もが!』」

 

 そんなの、お天道様が一番分かってるわ!

 

『私が何時までも日ノ本を歩けないとでも思っていたのか?』

 

 無表情なのにドヤってるのがよく分かる顔で宣う鳴女。とてもムカつく。

 それはつまり……どうしよう、勝てる気じゃなくて、生きて帰れる気がしないんだけど。

 ――――――いや、いや、違う、そうじゃない。誰が相手かどうかは関係ない。鬼太郎がこれまでそうして来たように、まなは……まなだけは、アタシが守る!

 

『フゥゥゥ……ッ!』

『何だ、邪魔だぞ野良猫。私はそこのお嬢ちゃんに用があるんだよ。一緒に食事がしたいんだ』

 

 アタシの威嚇など気にも留めず、悍ましい笑みを浮かべながら、鳴女が近付いて来る。言っている事が完全に変態な件について。一緒にって言うけど、アンタがしたいだけでしょ。

 

「ね、ねこ姉さん……!」『大丈夫、今度は守ってみせるから……!』

 

 それしか言えないのが悔しい。鬼太郎から戦力外通告される訳だ。

 でも、だけど、アタシは――――――、

 

『………………!』

 

 すると、上空から何かが飛んで来て、鳴女を後退させた。あれは、

 

『リモコン下駄!?』「という事は!?」

 

 まなと殆ど同時に空を見上げる。そこには、今一番見たかった彼の姿が。

 

『済まない、遅くなった!』

「『鬼太郎!』」

 

 力強い声で言いながら、アタシたちと鳴女の間に着地する鬼太郎。ここに彼がいるという事は、修行は終わったのだろうか。

 いいえ、言わなくても分かるわ。

 だって、前は砕かれていたリモコン下駄で、鳴女を下がらせたんだもの。これで弱い訳がない。

 

『……久し振りだなぁ、鬼太郎』

『そして初めましてだな、鳴女』

 

 互いに妖気を迸らせながら対峙する、鳴女と鬼太郎。両者共に以前とは全く違う雰囲気を纏っていた。覇気が違う、と言ってもいい。まだ一年も経ってないのに。

 

『わざわざこんなランドまで飛んで来るとは、またお仕置きされたいのかい?』

『まさか。そっちこそ、せっかく日光浴が出来るようになったのに、奈落の底(じごく)へ叩き落されるとは、可哀想だな』

 

 ……鬼太郎、ちょっとやさぐれた?

 

『じゃあ死ね』

 

 彼の態度が気に食わなかったのか、鳴女が琵琶を退避させ(動けたの!?)、両手の指先から刀を生やして構える。アダマンチウム製だろうか。

 

『お前が死ね』

 

 対する鬼太郎は、霊毛ちゃんちゃんこを棒状に纏めると、両端から霊力の光刃を形成、棒術の体勢を取った。平和を愛する騎士が暗黒卿に転職しちゃった。やっぱりグレてるよね?

 

『『………………!』』

 

 そして、殺る気満々の二人は大地を蹴り、宙を舞い、火花を散らせて激突した。




◆シスの暗黒卿

 調和を重んじるジェダイの騎士と対立する、フォースのダークサイドを操る者たち。
 暗黒面に触れて粋がっているだけのダーク・ジェダイと違い、きちんとした教義を掲げ、己の技を磨く「真面目な悪役」である。
 所謂「必要悪」のような物で、感情のまま暴れるような馬鹿ではなく、理性的に暴力を振るえてこそ、理想のシスと言える。ようするにフォースのバランスを保つ為の暴力装置である。
 とは言え、攻撃的な事に変わりはなく、フォースライトニングやフォースチョークなど、ジェダイじゃ絶対に思い付かない技も平然と使う。
 ついでに言えば、理想通りの暴力装置になれる者は早々おらず、一ヶ所に集まるとたちまち同士討ちを始めてしまうので、「二人の掟」が定められたりもした。
 ちなみに、ダースは「Dark Lord of the Sith(シスの暗黒卿)」の略なので、うっかり「ダース・ヴェイダー卿」とか言っちゃうと、元アナキンに締め上げられるので注意。

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