鳴女さんの令和ロック物語   作:ディヴァ子

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 ちょっと秘境で休憩。


鳴女さん、湯治する

 ドンタコヤッホーイ♪

 やぁ、諸君。皆の偶像の歌姫(アイドル)、鳴女さんだ。またしても久々になってしまったような気がするが、主人公をやっていくぞ。

 ……とは言え、今日は特に何かする気は無い。休憩だよ休憩。あれだけ落ちながら戦ったんだから、少しくらい良いだろう。危うく昇天し掛けたし。

 そんな感じで、私は今温泉に来ている。人里離れた山奥にある、秘湯中の秘湯である。

 まぁ、この私に掛かれば、距離など問題ではないのだがね。使い魔の目玉っちたちが頑張って見付けました。

 目的は当然ながら湯治だ。この温泉、龍脈の真上にあるのか、やたらと気に満ち溢れており、浸かっているだけで力が漲って来る。まさか、この世に本物の回復の泉的な場所があるとは思わなったが、探してみるもんだね。

 

『ふぅ……』

「良い湯ですねー」

 

 ちなみに、人目に付かない秘湯なので、当たり前のように混浴である。ヤッタネ!

 

『それにしても、今回は参ったわねー』

「そうっスねぇ。鳴女さん、シャインス○ークしそうでしたしね」

『そうだったか、とは言わねぇよ?』

 

 理解したら死ぬ系じゃん。ゲッターはクトゥルフとも仲良く出来るかもしれない。もしくは同属嫌悪して殺し愛しちゃうかも。

 ……って、そんな事はどうでも良いんだよ。

 

『鬼太郎の奴、馬鹿みたいに強くなってたなぁ……』

 

 ついこの間までは私にボッコボコにされてた癖に。一体どんな裏技使ったんだろう。

 

「でも、代償はあったんでしょう?」

『ああ。左目周辺が白骨化してたな』

 

 お化けは病気も何も無いんじゃなかったっけ?

 

「たぶん、「精神と時の部屋」みたいな物でも使ったんじゃないですか?」

『え、あれ実際に有るの?』

 

 何それ、私も欲しい。チートはイカンでしょー。

 

「いや、鳴女さんも充分チートだと思いますけど。何だかんだで鬼太郎もボロボロだったじゃないっスか」

『そうかなぁ~?』

 

 私は真っ当に動画投稿してるだけなんだが。皆、どうして私を殺そうとしてくるんだろう。まるで意味が分からないんですけど。

 

「……そう言えば、何か「大逆の四将」とか言うのが、地獄から抜け出したみたいっスよ」

『何だ、そのナントカ四天王みたいなキャラクターは。雑魚なの?』

「そんな訳無いでしょう。古代から現在に至る中で、トップ4に入る極悪妖怪たちの事ですよ。やらかし過ぎて地獄が直接動いたらしいですね」

『で、地獄に収監されていると?』

「未来永劫にね」

 

 うーん、それは退屈そう。ネットが繋がってれば別だけど、地獄じゃなぁ……。

 

『ちなみに、ラインナップは?』

「鵺、黒坊主、伊吹丸、玉藻の前、の四体です」

『割と大物が出て来たな』

 

 黒坊主と伊吹丸ってのはよく分からんけど、鵺と玉藻の前は知ってるぜ。日本版の合成獣(キメラ)と九尾の狐の事だろ。

 ……封神演義の妲己、良いキャラしてたなー。ライバルでラスボスでヒロインとか、てんこ盛り過ぎなのよん♡

 

「ただし、黒坊主と伊吹丸に関しては情報が錯綜していて、若干眉唾物ですね。伝承に出て来る本人なのか、そもそも地上まで逃げ延びたのかも不明です。鵺と玉藻の前に関しては本物でしょう。特に玉藻の前――――――というか、白面金毛九尾の狐が誰かと一緒にいるのが地上で目撃されてますからね」

『……前々から思ってたけど、どうやってそこまで正確に分かるんだ? ネットの書き込みだけじゃ無理があるよな?』

「企業秘密です♪」

『可愛く言うなよ』

 

 ある意味お前が一番のチートキャラだよ。あくまでも血鬼術みたいな物(・・・・・・・・)というだけで、身体は人間だからか、陽光に完全な耐性あるし。ズルいぞコラ。

 ――――――まぁ、彼のおかげで(・・・・・・)私も少しずつ陽光を(・・・・・・・・・)克服し始めてるから(・・・・・・・・・)、良いんだけどね、別に。

 

『それで……どういう問題があるんだ?』

「そりゃあ、色々と悪さをするんでしょうよ。地獄の指名手配犯みたいな物ですし。この中では玉藻の前が一番ヤバいんじゃないですかねー。元が華陽太后で、妲己ですし」

『三国伝来とはよく言った物だよなぁ……』

 

 インド、中国、日本と、バカンス気分で国を傾けて来たんだから、とんでもない話だよな。最後は蝉に化けてやり過ごそうとしたけど、水面に正体がバレバレに映ってたせいで殺されるという、中々面白いやられ方をした訳だが。殺生石になった後は玄翁で叩き割られるし。真面な死に方を出来んのか、お前は。

 

「そう言えば彼女、弟がいるらしいですよ。チーっていう、白面銀毛九尾の狐です。たぶん、地上で落ち合ってたのって、コイツなんじゃないですかねー」

『フーム、割と面倒そうな話だな、それ』

 

 姉が姉なら、弟も弟だろうし、組んだらロクな事にならない気がする。

 

「他にも、伊吹丸っぽい奴が鬼道衆の里を滅ぼしたり、鵺らしき妖怪が京都でコソコソ何かしてたり、かなり賑やかになって来ましたよ。黒坊主についてはよく分からないけど、今の所は静かみたいですね」

『なぁにそれぇ……』

 

 超面倒臭い事になってるじゃん。誰だよ、そいつら逃がした奴。

 

「それで、鳴女さんはどうします?」

 

 と、チャラトミが零余子印の血酒(零余子の血を日本酒に混ぜた物)をお猪口に注いで渡して来た。今日の夜に乾杯、という事だろう。喜んで受けようじゃないか。

 

『……そうだな』

 

 私はクイッと一気に煽った後、チャラトミに注ぎ返してやる。ウム、良い呑みっぷりだ。

 ならば、しっかりと応えてやらねばなるまい。

 

『いっその事、どれかに接触してみるかな。中立を受け入れるような連中でもないだろうしね。……そいつらを逃がした奴も気になるし』

「ま、そうなりますか」

『ウフフフ、そうだよ』

 

 だから、今夜は寝かせないぞん♪




◆秘境の温泉

 地下に野太い光脈筋が流れている温泉。妖怪やそれに纏わる職業の人たちが、よく訪れる場所の一つ。鬼太郎だって来るし、花子さんだって来る。
 浸かるだけで力が漲る回復の泉(温)であり、濾して寝かせると光る酒に早変わりする。これもやっぱり回復アイテムで、またの名をエリクサー(made in JAPAN)と言う。
 ちなみに、ここでの殺生沙汰は禁物であり、破ると生死を司るヌシ様(巨人サイズ)の天罰を喰らう。とりあえず、生きろ。
 温泉に入る時は、ちゃんとルールを守ろうね。

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