鳴女さんの令和ロック物語   作:ディヴァ子

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????:「今回のハンターはレアだぜ!」


零余子ちゃんVSレアなハンター

「……って、絶望してる場合じゃないわね」『ぴきゅ!』

 

 しかし、何時までも呆けている場合ではない。ここがハンターの森ならば、いずれは遭遇する筈である。そうなったらお終いだ。今の私はノームくんたちとほぼ同じサイズだからね

 

「いや、大丈夫じゃないかしら?」

 

 だが、よく考えると不思議の森に迷い込んだ時もレディ一派を妖刀で迎撃出来たし、今回もワンチャン行けるのではなかろうか。

 

「――――――って、今の私丸腰じゃん!」

 

 何故か今回に限って妖刀が召喚出来ないし。呼ぼうとしても、謎の力で妨害されるのだ。

 そこまでやるのか、夢子ちゃん。“チートは使わせない”という強い意志を感じる。やめちくれー。

 一応、痣を浮かべて身体能力をブーストする事は可能だが、この大きさでボスキャラ相手に徒手空拳で勝つのは無理があるだろう。小人がどんなにパワーアップしても、巨人には敵わないのですよ。

 そうと決まれば、スニーキングである。万が一にも見付からないよう、ゆっくりこっそり歩を進めよう。小枝を踏んでエンカウントとか笑えないし。その前にトラバサミを踏まないよう気を付けなくちゃ。

 

『ウォオオオオッ!』

 

 と、ノームくんと協力しつつ、不気味な山小屋に辿り着いた辺りで、ハンターの声が聞こえて来た。

 えっ、何で……まだ家に入ってないのに!?

 

「あっ……」『ぴき……』

 

 何かおかしいと思い、家を回り込んで裏口の方へ向かうと、二人の小人がハンターに狙撃されているのが見えた。

 おいおいおい、あれってモノとシックスじゃん!

 という事は、私は二人の逃避行よりも後からやって来たのか。何で私たちまでテレビから出て来たのかは知らんけど。

 しかし、どうしたものか。私は結末を知ってるし、手助けした所で結果は変わらないだろう。モノは自らの殻に閉じこもり、シックスは見失った己を取り戻しに暴食を繰り返すだけ。救いなんて無い。

 

『ぴききー』

 

 だけど、ノームくんが助けてあげてって言ってるんだ……!

 

「ああっ、もう、しょうがないなぁっ!」

『ムォオオッ!?』

 

 突如背後から飛び出した私の姿に、ハンターが一瞬だけ気を取られる。

 だが、それで充分だ。その隙にモノとシックスは無事に逃げ果せたし、何よりハンターの標的がこちらに変わった。もはや二人を追う事は無いだろう。

 何せ、活きの良い獲物が、目の前にいるのだから。

 ――――――さぁ、どう出る?

 正面切って勝つのは体格差的に不可能だが、猟銃を躱す事ぐらいは出来るし、振り切れる自信もある。後はゲームのように、逃げた先で別の猟銃を使ってハンティングしてやるまでだ。

 

『フウォオオオッ!』

 

 しかし、ハンターは銃口を私に向ける事は無く、それどころか猟銃を何か別の物に変形させる。

 

「「決闘ディスク」!?」

 

 それはどう見ても決闘に使うアレだった。何でやねん。

 ……しまった、さっきまでリモートで決闘していたせいで頭が決闘脳になって、夢がごっちゃになったのか!?

 まぁ、猟銃で殺り合うより数倍はマシである。ならば、こちらもカードで応えよう、

 

「……って、だから私、丸腰じゃん!」

 

 ディスクどころかカードも持ってねぇよ!

 ど、どうしよう、カードが無くちゃ、決闘もクソも――――――、

 

『ぴきーっ!』

 

 すると、ノームくんが空を見上げるよう手を引いてくる。こんな時に何を……?

 

 ――――――ザシュッ!

 

「ズワォッ!?」

 

 見上げた瞬間、空から妖刀「村正」が降って来た。律儀に私と同じサイズに縮んでいる。

 さらに、柄の縁頭には、やたらとメカメカしい空のカードケースが括り付けられていた。

 

「おい、もしかして、これ……」

 

 試しに触れてみると、村正は禍々しい決闘ディスクに、カードケースには現実で私が持っているデッキの一つが召喚される。決闘ディスクって、盾じゃなかったっけ?

 ま、まぁいいや。デッキが揃い、ディスクも有り、敵が対峙しているというのなら、やる事は一つ。

 

「決闘だぁああああっ!」『ムォオオオオオッ!』

 

 そして、私とハンターの決闘が始まった。

 

《さぁ、闇のゲームの始まりだぁ!》

「テメェ、降りて来いこのヤロウ!」

 

 さらに、空に映る歌舞伎役者みたいなメイクを施した、夢子ちゃんのドアップ。お前、それは化粧が下手過ぎるだろう。

 とにかく、決闘だよ決闘!

 

「運命のダイスロール!」

 

 まずは先攻・後攻、決めるべし。私は「6」、ハンターは「5」。先攻は譲ってやるぜぇ!

 

『フォオオオッ!』

 

 そして、相手のメインフェイズ1。ハンターが繰り出したのは、

 

「「エクゾディアの右腕」!?」

 

 まさかのエクゾディアパーツだった。それはハンター違いだろ。レアになっちゃったよ。

 つーか、「予想GUY」でリクルートしたって事は、ビートダウン系の【エクゾディア】か!?

 一体どういうチョイスなんだよ!

 

『ファアアォッ!』

 

 さらに、「ジェスター・コンフィー」と「黒き森のウィッチ」を場に出し、「ウィッチ」を「聖魔の乙女(マギストス・メイデン)アルテミス」に変換する事で「召喚神エクゾディア」をサーチしてから、デッキの「究極召喚神エクゾディオス」をコストに「マジシャンズ・ソウルズ」を展開。

 その後「右腕」と「メイデン」を「魔界の警邏課デスポリス」に変え、「魔術師の再演」を発動して「右腕」を蘇生し、「ソウルズ」で「再演」をコストに「魔術師の右手」をサーチ。

 そして、「右腕」を「リンクリボー」に変換してから、「リンクリ」「警邏」「ソウルズ」をコストにして「ライトロード・ドミニオン キュリオス」をリンク召喚し、「Emトリック・クラウン」を墓地送り&1000LPで自己再生した後、デッキトップを3枚墓地へ送った。その中に「闇・道化師のペーテン」が混じっていたのか、別の「ペーテン」をリクルート。

 さらに、「ペーテン」と「コンフィー」で「トロイメア・フェニックス」をリンク召喚し、それから「キュリオス」と「クラウン」を素材に「トロイメア・グリフォン」を「フェニックス」と相互リンク状態で召喚して、「右手」をコストに墓地の「魔神火炎砲」をセットした上で1ドローし、それを伏せた所でようやくハンターはターンを終了した。

 

 ……って、回し過ぎだろ!?

 

 先攻1ターン目から完封殺する気満々じゃん。ビートダウンとは言え、【エクゾディア】で「トロイメア」を相互リンク状態で展開するな!

 こんな状況でどう戦えば良いんだ!? もっと腕にシルバーとか言ったら殺す!

 

「……私のターン、ドロー!」

 

 だが、相手は泣いても笑っても容赦はしてくれない。決闘には勝者と敗者しかいない。デッド・オア・アライブなんだよ!

 

『ぴきゅー』

 

 それに、私の肩には文字通りノームくんの命が懸っている。必ず勝ってみせる。ギャンブラーを舐めるなよ。

 やぁあああってやるぜぇえええっ!

 

「私は「融合派兵」を発動し、「時の魔術師」を特殊召喚!」

 

 まずはこのデッキの切り札、「時の魔術師」をリクルート。

 

『ムモォオオオッ!』

 

 当然、相手は「魔神火炎砲」で妨害しようとしてくる。

 しかし、それは甘いぞ!

 

「ならば、それにチェーン発動、「超融合」! 「時の魔術師」と「トロイメア・グリフォン」を素材に、「時の魔導士」を融合召喚!」

 

 私は「魔神火炎砲」の効果にチェーンして、「時の魔導士」を「超融合」した。これで「魔神火炎砲」はバウンズ効果を使えず、「グリフォン」は消え去り、「フェニックス」は耐性を失った。今がチャンスだ。

 

「行くぞ! 「セカンド・チャンス」を出してから、「時の魔導士」の効果を発動、「タイム・ルーレット」! ……成功だ! 「タイム・ソーサリー」! 1950のダメージを受けろ!」

『ムォオオオオッ!』

 

 さっそく、「時の魔導士」の効果で「フェニックス」を葬り、1950のダメージをハンターに与える。

 

「まだだ! 墓地の「時の魔導士」と「百年竜(ハンドレッド・ドラゴン)」を「円融魔術(マジカライズ・フュージョン)」して、「ミュステリオンの竜冠」を融合召喚! ダイレクトアタック!」

『ブムァアアアッ!』

 

 そして、「円融魔術」で呼び出した「ミュステリオンの竜冠」でダイレクトアタックを決めてやった。

 

「……これで終わりだ! 「簡易融合」を発動! 1000LPを支払い、もう1体の「時の魔導士」を召喚! 当然、成功! 「タイム・ソーサリー」!」

『グギャアアアォォッ!』

 

 さらに、「簡易融合」した2枚目の「時の魔導士」で「タイム・ソーサリー」を食らわせ、勝負を決めた。後攻1ターンKILLだぜぇ!

 

『ァ……ォ……』

 

 LPを失ったハンターは、どす黒い血を吐きながら倒れ、それきり動かなくなった。闇のゲームの敗者に待っているのは、「死」である。

 

「ほへぇ……」

 

 ヤバい、腰が抜けた。もはや夢子に文句を言う気も起きない。当の本人はテレビを消すようにフェードアウトしてしまったので、元より抗議のしようが無いけどね。

 それより、これからどうするかなぁ?

 

『ぴきゅきゅー』「……だよねー」

 

 ――――――ゲーム的にも、先に進むしかないよねぇ?




◆ハンター

 リトルナイトメア2において、死の森で狩りを続ける猟師。獲物は人間の子供(小人)。ズタ袋で顔を隠しており、片目しか見えていない為、索敵能力は若干低いが、狙撃力自体は高い。元は獲物である小人たちと同じ存在だったかのような描写があるが、詳細は不明。自宅に家族の剥製を作っている、執拗に小さな物を追い掛けるなど、何処か“寂しがりな子供”のような一面もある。
 森で出遭ったシックスを捕らえ、剥製作りをしていた所に、モノが自宅へ侵入。しつこいぐらいに猟銃で追撃し続けたが、最期は予備の猟銃で自分が撃ち殺された。同じ最初のボスである「1」の「管理人」よりはしつこくないので、まだマシな方である。
 零余子の小さな悪夢では、彼女が寝る前に動画撮りをしていた影響で、何故かレアなハンターになってしまった。
 使用デッキは、ビートダウン軸の【エクゾディア】。パーツの「低レベルの通常モンスター」と、派生モンスターの「高レベルかつ守備力0の闇属性:魔法使い族モンスター」という特性を生かし、序盤に「トロイメア」系モンスターと「魔神火炎砲」でロックを決め、準備が整い次第「超弩級砲塔列車」系統で砲撃する、案外とパワフルなデッキ……の筈だったが、零余子のコイントス軸の【ギャンブル】に後攻1ターンKILLされた。
 所詮はハンターの中でも最弱の男か……。

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