「うわっ、酷い雨だ」『ぴきー』
――――――で、ボコボコに歪んだダクトを抜けて、いざ外に出てみれば、凄まじい土砂降りだった。建物は歪んでるし、そこら中がゴミだらけの穴だらけだしで、非常に歩き難い。
分かってはいたけど、これは堪える。本当に小汚いな、
「ノームくんは、私の服の中に隠れててねー」『きゃっきゃっ♪』
まぁ、最初からレインコートを着ている私には何の問題も無いがな。学校を出る前に空へ注文したら、ハラリと落ちて来ましたよ。今回私、裸のままだったからね。その辺の布切れで誤魔化してたけど、いい加減に寒いし、恥ずかしい。
一応、シックスと間違えられないように、赤い物を選んだ……のは良いけど、何か殺し屋みたいだな。
それはそれとして、シックスたちは何処まで進んだんだろうか。「病院」に突入したかな?
「おお……」『ぴきー』
と思ったら、意外とすぐそこに居た。丁度シックスが廃屋でアイデンティティーの黄色いレインコートを着用している場面である。ここプレイヤーとしてはビックリだよね、色んな意味で。
さて、作中の名シーンを拝んだ事だし、顔合わせと行こうかね。
「やぁやぁ、お二人さん。さっき振り」『ぴきゅー』
「………………!」「………………」
私が声を掛けると、モノはあからさまに警戒し、シックスは振り向きもしなかった。
うーん、温度差が凄いな。モノが“物語の主人公を気取っている”のに対して、シックスは“歪んだヒロイン兼もう一人の主人公”だからね。
互いに噛み合ってるようで、何処かズレている。手を繋いでいるのに、きちんと向き合っていない。
……これじゃあ、あの結果も仕方ないわよね。
ま、どう思われても良いさ。私は私とノームくんの為に動くまで。この悪夢の街から脱出するには、物語を終わらせるしかない。例えどんな結末が待っていようと。
それには、この二人と付かず離れずの距離を保って、行動を共にするのが一番である。
だが、実行するにはモノをどうにかしなくてはならない。こうも警戒されちゃあね。
「ぐっ……!」「甘いよ、坊ちゃん」
勢い任せに殴り掛かって来たモノを、一瞬で制圧。力を抑圧した君じゃ、私には勝てないよ。シックスにも勝てないけど。というか、彼が素手で勝てる奴はいるんだろうか……。
「――――――とまぁ、私はそれなりにやれる。そして、私はさっさとこの街を抜け出したい。一緒に居た方が、便利だと思うよ?」
「………………」
モノには言うまでも無いので、シックスに尋ねてみる。答えは沈黙だった。なら、勝手に了承と見做そう。
「それじゃあ、しばらくの間だけ、よろしく」
「「………………」」
何も言ってくれなーい。いいよ、もう……。
そんな感じで、私たちは服屋だったと思われる廃屋を抜け、ドクターの待つ第三ステージ「病院」へ裏窓から突入する。
ここはドクターが天井を這い回り、闇の中では彼の患者たちが救いを求めて彷徨っている、学校に負けず劣らずに不気味な場所だ。患者が光で固まるという特性上、物凄く暗くて超絶に見難いのが特徴である。
というか、私懐中電灯持ってないんだけど。
いやでも、モノだって途中でライトを拾うんだし、私も適当に何か回収して使うか。ともかく進もう。
「「「ごくごくごく」」」『ぴきゅん』
自販機で喉を潤してからね。ゲームではシステム的に飲めなかったけど、この世界では普通にイケるよ!
その後はサクサクと抜け、怪電波イベントを熟しながら、レントゲン撮影でぬいぐるみの中にある鍵を確認。皆で透けてみました(笑)。シックス、尾てい骨長いね。あと、ノームくんのシルエットが……うん、良そうか。
さらに、鍵を取り出し、腕や脚のマネキンがタップリぶら下がっている気色悪い場所へ入り、走るお手々をあしらいつつ、エレベーターの起動に必要なヒューズの一つ目をゲット。
「ほら、行くよ」「………………」
時間が掛かりそうなので、二つ目はモノと二人で取りに行く事にした。どう見てもシックスとペアが良かったようだけど、知らんがな。
「「………………」」
会話は無い。お互いに自分と相方の事ばかり考えているからね。
「おら、こっちだこっち! そいつは頼りないぞぉ!」「………………(怒)」
ただし、連携は完璧だ。たぶんシックス以上の身体能力を持つ私が患者を引き寄せ、その隙に貧弱なモノがヒューズを回収する。それぞれの役割をきちんと熟せば、こんなにも早く進むんですよ。ここのだるまさんが転んだにはイライラさせられたから、スンゴイ爽快。実に晴れやかな気分だわー。
それにしても、こいつらもヤバいビジュアルしてるよなぁ。クチビルゲみたいな奴おるし。どういう“治療”を施したらこうなるんですか、ドクター。
さぁて、患者たちとの握手会や鬼ごっこも乗り越えた事だし、そろそろかな。
『ホォォォン!』
エレベーターを降りた先――――――最後のマネキンハンドたちを叩き潰し、突入した闇の中に、そいつは居た。
芋虫を思わせるパツンパツンのボディを持つ、上だけ禿げてるおっさんが、蜘蛛のように天井を這いずり回っている。彼こそが病院の支配者、「ドクター」である。
うーん、何時見てもキモイですね。たぶん、貴方がリトルナイトメア2で一番気色悪いボスだと思いますよ。
そして、出遭ってしまったという事は、始まるのだ……決闘の時間が。
『ホギャォン!』
案の定、ドクターは(逆さのまま)患者だったであろうガラクタを決闘ディスクに組み替えて、私を見下ろした。焦点合って無いけどね。
「……行って!」
「「………………!」」
とりあえず、二人を先に行かせ、私も村正を決闘ディスクに変形させて対峙する。所謂“後から追い掛ける”って奴だ。
普通なら死亡フラグだが、私は死なないぞぉ!
という事で決闘だぁ~!
《……楽しい?》
「楽しくねぇよ!」
とにもかくにも、決闘だぁっ!
◆シックスとモノ
それぞれ「1」と「2」の主人公。ハンターの居る死の森で二人は出会い、ペイルシティの電波塔で永遠に別れた。二人が互いをどう思っていたのかは不明。作中の描写から、「1」のラスボス「レディ」の若かりし姿がシックス、「2」の元凶「シンマン」がモノと考えられるものの、やはり詳細は明かされない。そもそも過去の自分が未来の自分と同時に存在している事になるので、時間を遡行したか、それこそ悪夢の世界の“ナニカ”が本体に取って代わろうとしたのかもしれない。
何れにしろ、無限の闇に囚われてしまった二人に救いはなく、モノは延々と過去の己に殺され続け、シックスは未来の自分を食ってでも生き残ろうとして本来の彼女を見失った。
果たして、零余子が見たこの小さな悪夢では、一体どんな過程を経て、あの結末に至ったのだろうか……。