鳴女さんの令和ロック物語   作:ディヴァ子

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???:『時よ止まれ!』


零余子ちゃんと運命の白い闇

「……っ、げほぁっ!」

 

 正規ルートを通るのが面倒だったので、力尽くで壁をぶち抜いて退院した直後、込み上げて来る物があって、私は思い切り血反吐を吹き出した。

 肉体的に死ぬ筈の無い私が吐血とは……これがもしかして、鳴女が言っていた“魂が死ぬ”という奴だろうか。闇のゲームにおけるダメージは、魂に直接傷を付けるらしい。

 魂の傷は、不死身の鬼太郎ですら死を刻む。

 やはり、闇のゲームの敗者に待っているのは「死」である。これは絶対に負けられないわね……。

 

『ぴきゅきゃー!』

「大丈夫だよ。ありがとね」

 

 ノームくんは誰よりも優しいなぁ。

 それにしても、シックスとモノは何処まで進んだのだろうか。ドクターが意外と手強くて、結構時間が掛かってしまった。

 確かこの後は、シンマンにシックスが攫われて、モノは彼女を救出しようとペイルシティを彷徨う事になる筈だが、問題は今どの時点かという事だ。タイミングによっては、未来のモノにして全ての元凶であるシンマンと鉢合わせしてしまう。彼は他のクリーチャーと違い、レディのような超能力持ちなので、正面切って戦っても勝ち目の無い相手だ。

 私としては、退治はモノに任せて、電波塔に入る辺りで合流したい所だが……。

 

「……あれは!」

 

 街を見渡す為、建物の屋上へ移動したのだが、少し離れた場所にある廃電車の中を駆け抜けるモノと、それを追うシンマンの姿が。もうそこまで進んでいたのか!

 どうする……待つべきか?

 

「いや……」

 

 シックスと違って彼は曲がりなりにも一途だし、そこまで嫌いじゃないから、少しくらい手助けしてやるか。ここで見て見ぬ振りをするのもアレだしね。

 

「………………!」

 

 しかし、モノの下へ駆け付けようと、屋根伝いに疾走する私の前に、霊体(スタンド)みたいな物が現れる。

 たぶん、シンマンの仕業だろうな。迫る敵意を感じ取り、足止めの分身を召喚したのだろう。あいつ、空間に干渉する能力があるみたいだからね。

 あくまで、過去の自分(モノ)の相手は今の自分(シンマン)という事か。

 良いだろう。予定調和だし、どうせお前は自分と向き合えない奴だからな。(シンマン)(モノ)に任せるとする。

 なら、私はこの分身体を蹴散らしてやる!

 さぁ、正体を表せ。実像を結んで、私の相手をしろ。何時までもモヤモヤしてるんじゃねぇ!

 

『フン、ドアくらい開けて出ていけ』

「何でDIO様!?」

 

 すると、それに応えるように、分身体はバリバリの存在感を放つ奴になった。どうしてそうなった。

 もしかして、リモート決闘の前に読んでいた第3部のせいか!?

 だが、所詮こいつは夢幻の偽物。本物の彼ではない。影DIOならぬ偽DIOである。遠慮なく粉砕玉砕してくれるわ!

 

《第3部、完!》

「勝手に終わらすな!」

 

 と言うか、チャプターはもう4に移っとるわ。

 ――――――コホン。それでは改めまして、

 

『「決闘!」』

 

 あ、ちゃんと言ってくれた。思えば、この世界で真面に喋る相手は初めてかも。

 

「運命のダイスロール!」

『当然「6」だ!』

「げっ、振り負けた!?」

 

 出目は私が「5」で偽DIOが「6」だった。流石はDIO、偽物でも運命力は健在か。声優同じだもんね。

 あれ、という事はもしかして?

 

『私の先攻。まずは「ヘカテリス」を捨て、「神の居城-ヴァルハラ」をサーチし、発動。更に「テラ・フォーミング」で「光の結界」を呼び出し――――――見せてやろう、我がスタンド「アルカナフォースXXI-THE WORLD」! 当然、正位置!』

「スタンドじゃねぇよ!」

 

 声と姿の時点で来るとは思ってたけど、やっぱり【アルカナフォース】かよ!

 何か、律儀に「THE WORLD」のコアがハートマークになってるしさぁ!

 と、というか、待って、ちょっと待って……このパターンは、もしかして!?

 

『更に、「創造の代行者ヴィーナス」を召喚し、効果を発動! 1500のLPと引き換えに「神聖なる球体」3体を特殊召喚し、時よ止まれ「THE WORLD」!』

「やっぱりかい!」

 

 「DIO」で「アルカナフォース」と来たら、絶対に出て来るわよねぇ。能力的にキング・クリムゾンとか言ってはいけない。

 つーか、言うてる場合か。このままじゃ、私は……!

 

『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!』

「ぐわばぁあああああああああああああああああっ!」

 

 そして、偽DIOの「THE WORLD」による“ずっと俺のターン”が発動した。

 まずは「球体」2体で先攻1ターン目をすっ飛ばし、ダイレクトアタックを決めてから「ヴィーナス」と「球体」で更に1ターンかっとビングして、「神秘の代行者アース」を召喚して「命の代行者ネプチューン」をサーチしてから「ヴィーナス」を蘇らせ、三連打ァを食らわせた後に再スキップ。最後は「THE WORLD」のダイレクトアタックで、私に止めを刺した。

 

『所詮、貴様が私に勝とうなど、無駄無駄無駄なのだ』

「かはっ……」

 

 こうして、私は手も足も出ないまま敗北し、生命活動を停止……死んだのだ。




◆シンマン

 「リアルナイトメア2」の舞台「怪電波街(ペイルシティ)」を支配する大ボス。あくまでラスボスではない。どう見てもスレンダーマンである。
 テレポートやサイコキネシスに加えて、時空を操る超能力が有るようで、周囲の建物すら歪める程の力がある。誰かを探して彷徨う時の旅人らしいが、詳細は不明。過去の自分(モノ)と自分を袖にした女(シックス)を探しているとも取れるが、やはり明確な答えはない。
 今作では直接的な決闘こそしないが、とんでもない分身を召喚して決闘を任せた。

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