???:『「DESTINY」!』
何もない。
何も見えないし、何も聞こえない。感じられる物が何一つない。
……久し振りだなぁ、
――――――嗚呼、敗けたんだな、私は。
まさか、「THE WORLD」で3ターンスキップKILLされるとは思わなかった。出目で敗けたあの瞬間から、私の運命は決まっていたのか。ちょっと理不尽過ぎませんかね。
くそぅ、絶対にこの悪夢から抜け出すって決めてたのに、こんな所で躓くとは。私はともかく、取り残されたノームくんはどうなるんだよ。あんな小さくて優しい子が、この不条理な世界で生き延びられる訳がない。
だから、私が必ず外の世界へ連れて行く、その筈だったのに……チクショウ……。
………………。
「――――――はっ!?」
だが、私は目を覚ました。死の闇から、悪夢の世界へ。一体どうして……!?
『きゅ……』
「ノームくん!?」
しかし、すぐに分かってしまった。目の前で腹部から血を流して倒れている、ノームくんの姿を見て。私の唇に付いている血と、舌に残る鉄の味。間違いない。
そう、彼は自分の命を私に捧げたのである。
「そんな……嫌だよ、こんなのって……」
だが、幾ら後悔しても、もう遅い。彼は、このまま死ぬ――――――、
「駄目だぁあああああっ!」
そんなの絶対に認めないぞ!
「……応えろ、私の細胞! 生かせぇえええええっ!」
私は村正で切腹してから、その傷口へ押し付けるように、ノームくんを抱き締めた。強く強く、命が零れないように、血を交わらせる。肉体だけなら不死身の私なら、ノームくんの傷くらい癒せる筈だ。そう思わないと、やってられない。
……これまでの人生で、誰かの為に命を懸けようなど、考えた事も無かった。前世の継母も今世の両親も結局は掌を返したし、周囲の人々も大体同じだった。
だけど、ノームくんは違う。私の為に、私なんかの命を救う為に、自らの命を差し出した。まるで、お伽話の白い兎だ。ここまで自己犠牲を実行出来る者など、これまでもこれからもいないだろう。
だから、私は自分の命をあげる。魂を分かち合って、運命共同体になる。
『うっ……』「………………!」
私が心の底から願ったからか、奇跡が起きた。ノームくんは傷が塞がったばかりか、人としての姿を取り戻した。
そう、彼は
さらに、その胸元には私たちにしか見えない、お互いを繋ぐ赤い糸が伸びている。二人で一人になった証拠だ。死がふたりを分かつまで、ずっと一緒である。
「行こう!」『うん!』
さぁ、いい加減にこの
モノは恐らく電波塔までの一本道へ到達しているだろうし、魂が五分になったせいで体力が恐ろしく減っているし、色々な意味で時間が無い。早く現実の肉体へ戻らなければ。
『また貴様か』
「それはこっちの台詞だ」
まぁ、居ますよねぇ。何気にちょっと向こうでモノがシンマンとタイマンしてるし。いよいよクライマックスって感じだ。
『何度やっても無駄だ。最後に勝つのは、このDIOなのだ!』
『「それはどうかな。やってみなくちゃ分からないっ!」』
そう、私はノームくんと二人で一人。運命共同体となった私たちは、無敵だ。負ける気が全然しないぜぇ!
『「運命のダイスロール!」』
まずは先攻・後攻、決めるべし。
『む……』
「だから言ったでしょう。やってみなくちゃ、分からないってね」
結果は「6」のゾロ目。次はジャンケンである。
『ジャンケン……』『ポン!』『何ィ!? チョキだとぉ!?』
ジャンケンに弱い私に代わり、ノームくんがチョキを出して、偽DIOから先攻をもぎ取った。私たちは二人で一人だから、全く問題ないわね、うん。
しかし、これも仕方のない事。どうせ卑怯な運命力で「THE WORLD」するだろうし、先攻は渡せないなぁ!
という事で、メインフェイズ!
「「闇の誘惑」を発動! カードを2枚引き、「A・O・J D.D.チェッカー」を除外! 更にモンスター1体とカードを1枚セットして、ターンエンド!」
とりあえず、場を整える。消極的と思われるかもしれないが、布石は打った。後は畳み掛けるのみ。
『「
「あんたあのギャルゲープレイしたのかよ……」
よっぽど暇だったんだろうなぁ、
『私のターン! まずは「ヘカテリス」をコストに「神の居城-ヴァルハラ」をサーチして発動し――――――』
その動き……やっぱり握ってたか。
「その瞬間、リバース罠発動「闇次元の解放」! 帰還せよ、「D.D.チェッカー」!」
『何ッ、我が「THE WORLD」を封じるだと……!?』
「THE WORLD」を出そうとしていた偽DIOの動きを止める。「D.D.チェッカー」は“光属性モンスターの特殊召喚を封じる”対
『だったらこうするまでだ! 出でよ、「アルカナフォースI-THE MAGICIAN」! 当然、正位置! 更に「天空の聖水」で「創造の代行者ヴィーナス」をサーチし、攻撃力を倍加させる!』
だが、偽DIOは焦らず、冷静に「アルカナフォースI-THE MAGICIAN」を召喚し正位置の効果を得て、「聖水」で「ヴィーナス」をサーチする事で元々の攻撃を倍にした。直接殴り倒しに来たか。
しかし、「MAGICIAN」を通常召喚した以上、このターンは「THE WORLD」を展開する事は出来ない。最低限の役目は果たしたと言える。
「……「銃砲撃」を発動!」
『だからどうしたのだ! 消えろ、ガラクタめ! 「アルカナ・マジック」!』
こうして、可愛いホタル型ロボットは破壊され、次元の闇へ追放されたが、
「……その瞬間、「デスペラード・リボルバー・ドラゴン」を特殊召喚! 「ロシアン・ルーレット」! 消え失せろ、破滅の使者と神の居城よ!」
『ぬぅ……ターン終了だ!』
おかげで、手札の「デスペラード・リボルバー・ドラゴン」を呼ばせて貰った。結果は、当然大当たり。「MAGICIAN」と「ヴァルハラ」を蜂の巣にしてやった。
ついでにカードを1枚ドローし、偽DIOのヴィーナスを墓地へ叩き落して、LPに500ダメージを食らわせる。
つーか、こいつ「THE WORLD」だけじゃなくて、「THE DARK RULER」まで握ってやがった。「DARK RULERだッ!」ってか。やらせねぇよ?
『おのれぇ、よくも下衆なダメージを! よくもおのれぇええええっ!』
プークスクスクス、怒ってる怒ってる~♪
でも、もう遅い。手も足も出ない屈辱を、今度は貴様に味わわせてやる。
「私のターン、ドロー! そして、メインフェイズ! 手札を1枚捨て、「D・D・R」を発動! 再び帰還せよ、「D.D.チェッカー」! 更に「融合派兵」で「リボルバー・ドラゴン」をリクルートしてから、「BM-4ボム・スパイダー」を反転召喚し……行くぞ、「デスペラード」「リボルバー・ドラゴン」「D.D.チェッカー」「ボム・スパイダー」でダイレクトアタック!」
そして、私のターンに「デスペラード」「リボルバー」「D.D.チェッカー」の4体を展開し、荒ぶる偽DIOへ直接攻撃を決めた。この時ばかりは、私も悪魔のような顔をしていたかもしれない。
だが、私に死の恐怖を思い出させてくれた貴様に送る言葉は、たったの一つ。
「
そんなに
『このDIOが……このDIOがぁああああああああああああああ!』
こうして、偽DIOは闇へと還った。
丁度その時、シンマンもモノに敗北し、心半ばに膝を折り、光に消えた。ざまぁ見さらせ。
「かはっ……!」
と、またしても吐血。やはり無理をし過ぎたか。クソッ、モノの奴どんどん先に行きやがって……。
『零余子ちゃん』
すると、キッドくんが肩を貸してくれた。自分だって辛いだろうに。そんな事されたら、惚れてしまうやないか。
「キッドくん……」
『ノームで良いよ。人間としての僕は、とっくに死んでいるからね』
「なら、ノームズ・キッド・ランナウェイって事で」
『何か不思議とむず痒くなる名前だなぁ……』
そんな感じで、キッドくんは「ノーム」という愛称の「ノームズ・キッド・ランナウェイ」に決定した。
その後、私たちは互いを支え合いながら、音を頼りに電波塔を彷徨い、遂にモノへ追い付いたのだが、
『ウギャゥウウウウッ!』「うぅっ……!」
ビーストモードのシックスに滅茶苦茶殺されそうになってた。本当に情けない奴だなお前は!
「……ていやっ!」『オギャゥウウウッ!?』
という事で、モノを締め上げる捩じくれた長い腕にドロップキック。ダメージには繋がらなかったが、驚いたシックスはモノを手放した。
『グルルルルル……!』
獲物を取り上げられたシックスが威嚇してくるものの、そんなの知らんなぁ。
ここは私が見た悪夢の世界。最後に物を言うのは、
「………………」
と、ノームくんに肩を借りて立ち上がったモノが、黒い光の塊を差し出してくる。私が受け取ると、それは一つのデッキとなり、村正にセットされた。
なるほど、これがアンタなりの誠意って訳ね。今一信用ならない私に力を貸してでも、シックスを頼むと。本当に一途よね、君。
正直、ファンデッキも良い所なデッキ内容だけど、託されたからには、勝ってやるさ。
『ウギャアアアヴヴヴッ!』
それを見たシックスも、決闘をする態勢を取る。周囲の残骸や肉壁を強殖装甲して、金色のアンモナイトを思わせる外骨格を形成した。
さらに、崩れかかった地面を叩き壊して異次元への扉を開き、様々な玩具が飛び交う異空間へと私たちを呑み込む。不思議と見えない足場が存在し、空を歩いているような気分になる。
そうか、これがお前の決闘のバトルフィールドか。
ならば、私もそれに応えよう。
「決闘!」『ウキャォオオオオッ!』
これでフィナーレだ、シックス!
決闘開始ィイイイイイイイイイ!
【リトルナアイトメアーズ】VS【ザ・シックス・デイ】
◆R・D
1999年に放映されたロボットアニメ「THE ビッグオー」に登場する殺し屋のアンドロイド。物語のヒロインである「R・ドロシー・ウェインライト」と同型の機体で、まるで赤ずきんのような格好をしており、バケットに入れている拳銃が得物。名前は「赤い運命」を意味している。
己がメモリーに従い、忌むべき「40年前のメモリー」を思い出した人間を“雨の中差すくらいに当たり前”に次々と殺害し、“神の乗り物”を操る自覚に欠ける主人公の「ロジャー・スミス」を凄まじい顔芸を添えて抹殺しようとしたが、最後はドロシーと共に“勝手に動いた”ビッグオーに殴り潰された。
決め台詞は『good-bye、交渉人(ネゴシエーター)!』。