鳴女さんの令和ロック物語   作:ディヴァ子

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 今回より物語が段々と加速しマス。


鳴女さん、会談する

 やぁやぁ、諸君。今人気沸騰中のネットアイドル、鳴女さんだよ。

 いやー、世間一般的には、そろそろランチタイムかな?

 だが、そんな真昼間だというのに、来客が二人もいるんだ。それも人間じゃない。魔女と女吸血鬼という、西洋妖怪の組み合わせである。

 しかも、こいつらは結構な身分らしく、「ベアード軍」とかいう軍隊の最高司令官と幹部の一人らしい。チャラトミwiki曰く「バックベアード率いる西洋妖怪軍団」だか何だか。

 バックベアード自体がかなり有名な妖怪みたいで、「西洋妖怪の大統領」なんて呼ばれているそうだ。“大統領”とは、また大層な肩書である。さては米国出身だな?

 ま、それは一先ず置いておいて、

 

『粗茶ですが……』

「あ、どうもありがとうございます」

 

 お茶くらい出すよ、姑獲鳥(メイド)がな。

 そんな感じで、私たちは無限城の大広間で向かい合っている。胡坐も掛けるように大きな卓袱台を挟んでね。座ってるのは私とアデルだけで、他の面子は脇に控えて突っ立ってるけど。

 

『それじゃあ、改めて自己紹介をしようか。私は鳴女。琵琶が趣味の「鬼」だ。で、こっちがチャラトミ。本名は控えさせてもらおう』

「どうも~♪」

 

 ウム、相変わらずチャラい感じで何より。

 

『このチビ助が、我が陣営の食糧事情を一手に担っている、零余子だ。一応は人間だ。実質化け物だけど』

「説明に悪意を感じるんだけど」

『事実だろ』

 

 今では無惨様を遥かに超える不死性を得ておきながら何を言うか。

 

『そんで、こっちのちんちくりんが丸子。見ての通りの座敷童子だ』

『よろしくなのじゃー』

 

 ウムウム、マスコットらしい溌剌とした笑顔がよろしい。

 

「………………」

 

 と、僅かだが、アデルの“興味の視線”が強くなった気がする。私に対する“警戒心の表れ”とはまた別の感情だ。

 ははぁん、なるほどね。本命は丸子(こいつ)か。何がそんなに気になってるのかは知らんがね。

 まぁいい、紹介を続けよう。

 

『その隣が、「手の目」の六部。丸子の彼氏くんね』

『『//////』』

 

 本当に初心だね君ら。もうヤッちゃいなよー。

 

『それから、こいつらは「無限城ちっちゃいものクラブ」。それぞれ、藤花、ノーム、シックス、モノ、夢子だ』

『よろしくお願いします』『ぴきゅー』「「………………」」『何でわたしまでその括り?』

 

 今更だけど、小っちゃい奴増え過ぎだろ。何時の間にこんなに増殖したんだか。

 ちなみに、会長は夢子にしてある。半数が夢の世界(そっちがわ)だからね、しょうがないね。

 

『以上が、今ここに居る全員だ』

 

 とまぁ、一頻り紹介をした訳だが、改めて見渡してみると、とんでもない面子だな。

 鬼だけでも上弦、下弦、(笑)がいるし、小っちゃい連中も半分くらい主人公だし。これ「鳴女一派」として通じるんじゃなかろうか。戦闘員は半分もいなけどね。

 

「ご丁寧にどうもありがとうございます」

 

 全員の顔と名前が一致した所で、アデルが奇麗な所作で頭を下げる。正座も様になっていたし、名前に「フォン」があるからには、ドイツ系の良い所出身なのだろう。貴族なら外国の礼儀も出来て当たり前って事か。

 控えているカミーラの方も身分が高そうだが、アデルとは生まれから主従関係なのかもしれない。そういうのって憧れちゃうよねー。カッコいいと言うか、何と言うか、単純に羨ましい。

 ……ウチの面子、悪友が屯しているだけっぽいからな。

 

『――――――さて、長話は好きじゃないし、そもそもお昼寝時だし、単刀直入に行こう。私に何を求める気だ?』

 

 いきなり最高司令官が幹部を連れ立って来たからには、重要案件なのだろう。流石に動画のファンとかじゃないだろうしなぁ……。

 

「分かりました。それでは、こちらも率直に。……鳴女殿。貴女に「ベアード軍」最高司令官の立場をお譲りしたい」

 

 おっと、これは大きく出たな。それを本人が言うからには、冗談では無いんだろうな。後ろのカミーラは結構驚いているようだけど。

 

『条件は?』

 

 そんな重役を只で譲る訳ないよね。

 そもそも、高がネットアイドルに最高司令官を任せて、「ベアード軍」……ひいてはバックベアードに何の得があるんだ?

 まさかとは思うが、「歌は世界を救う」とか言い出したりしないだろうな。

 

「「日本の地獄」を陥落するのに協力してい頂きたい」

『「日本の地獄」?』

 

 何故にそうなる。それを日本の妖怪に頼むとかどうなの?

 

「――――――鳴女殿は、「来訪者」をご存じでしょうか?」

『ああ。夢枕で聞いたよ』

 

 また「来訪者」か。無惨様の話を聞く限りマジで化け物だけど、古今東西どいつもこいつもビビり過ぎやろ。

 つーか、それが日本の地獄と何の関係があるんだよ?

 

「「来訪者」が噴火に乗じて封印を抜け出そうとしている事も?」

『それも聞いた』

「……ならば、その現象が(・・・・・)日本だけで(・・・・・)起きている事は(・・・・・・・)?」

『いや……?』

 

 そうなんだ。どうなの、チャラトミwiki?

 

「そうですね。確かにそういう傾向の噴火は、日本でしか起きていないようです」

『「………………!」』

 

 チャラトミがスマフォを操作してスラスラと答えるのを見て、アデルたちが目を見開いて驚いた。傍目にはただのチャラ男だからねぇ。これでも参謀役なんですよ、彼は。

 

「……と、とにかく、「来訪者」の“藻掻き”が日本でしか起きていないのは事実です。では、何故日本でしか起きていないのか?」

『日本で封印されたからじゃないの?』

「「来訪者」が封印されているのは下部マントルの中。日本で埋められようが、別の地域で起きないのは変ですよね?」

『それもそうだ』

 

 というか、未だにマントルの中を生きたまま漂っているとか、本当に化け物だなぁ。生物なら死んでおけよ、そこは。

 

『なら、どうしてだ?』

「――――――日本の地獄が、「来訪者」を繋ぎ止めているからですよ」

『はぁ?』

 

 まるで意味不明なんですけど。

 

「日本は狭い。なのに、人口だけはどんどん増えている。子育てはロクにしないのに。幾ら効率良く転生したとしても、最早パンパンなんですよ。無から有は生まれないですからね。……地獄にも、拡張した領土が必要だ」

『それって、もしかして……』

「その通り。地獄を広げ続ける為のエネルギー源として、「来訪者」を利用しているんですよ。資源として見るなら、実質的に永久機関のようなものですからね」

『………………』

 

 今明かされる、衝撃の真実ゥ。

 ――――――頭が悪いというか、頭痛が痛いというか。そりゃ攻められても、あんまり文句は言えんよな。一国だけ水爆を多量に保有しているような物だし。何時爆発するかも分からんようだしね。

 

『……つまり、日本地獄の代わりに、お前らが管理したいと?』

「というよりも、完全に滅ぼすのが目的ですね。利用するにはあまりにもリスクが大き過ぎる。……管理ミスに巻き込まれて死ぬのは、こっちとしても御免なんですよ」

『そりゃそうだわな』

 

 実にアメちゃんが考えそうな暴論だが、確かに地球破壊爆弾ばりにユルユルな管理状態じゃあ、安心は出来んわな。普通に怖いわ。足元に核弾頭が埋まってるよりおっかない。自分ではどうしようもないからね。

 

「鬼太郎ファミリーやぬらりひょん一派と違って愛国心や地獄への忠義がまるで無い、貴女だからこそ頼みたいのです」

『ぶっちゃけたな、お前も』

「率直に話すと申し上げたので」

 

 そういう失礼極まる態度、嫌いじゃないぜ。分かり易くていい。

 

「それで、返事の程は如何に?」

『………………』

 

 そして、私は答えた。




◆ちっちゃいものクラブ

 アニメ「おじゃる丸」に登場する会合。正式名称は「月光町ちっちゃいものクラブ」。おじゃる丸を会長とした、しみったれた愚痴会。他の面子は電ボ(蛍)、公子(ハムスター)、カタピー(エスカルゴ)、トメ&カメ(亀)、貧ちゃん(貧乏神)と、見事に人外ばっかり。彼らに憧れて(そんな要素あるか?)結成された、「月光町ちっちゃいちっちゃいものクラブ」も存在する。
 対する「無限城ちっちゃいものクラブ」は、夢子を会長として、藤花、ノーム、シックス&モノと、魑魅魍魎の類が集合している。ノーム以外の連中は自分の事しか考えていない。主に藤花が話題の起点となる事が多く、ノームやモノが付き合ってあげてる感じ。夢子は基本的に見ているだけである。意外と藤花とシックスは仲が良く、「鏡を見ろ」と言いたくなる関係を築いている。

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