鳴女さんの令和ロック物語   作:ディヴァ子

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 そう言えば零余子や朱紗丸って何歳で鬼になったんでしょウネ?


鳴女さん、悪戯に行く

 やぁ、諸君。皆大好き(?)鳴女さんだ。

 この時代にやって来て早半月。何だかんだで楽しく人間社会を生きている。

 とりあえず、ウーチュブでは「鳴女さん」名義で活動している。主に琵琶の演奏をしており、他の楽器を使ったり、ゲーム実況をしたりもしている。音楽関連が「鳴女さんの「奏」の呼吸」、実況系が「鳴女さんの「操」の呼吸」で別れているから、観たい方を見てくれると良い。

 ちなみに、今はファンタジーな世界でモンスターを狩るゲームに嵌まっている。筐体共々チャラトミに買って貰った。余談だが、彼と零余子は狩り仲間である。

 ――――――って、おいコラ、ブレス吐くなこの野郎。大人しく部位破壊させろ。上手に焼かれたいのか。

 

『……フム、今日はここまでだな。それでは諸君、また会おう』

 

《ラジャラジャー》《今日も素敵です鳴女様》《流石は操の呼吸の使い手》《奏の呼吸の方も待ってます》《初見ですけど楽しめました》《これからも頑張ってください》

 

 ウムウム、初見さんも常連の諸君も楽しんで頂けたようで何より。再生数はまだまだだが、固定ファンが出来たのは素直に嬉しいな。投げ銭(スパチャ)して貰えるように頑張ろう。

 

「今日も盛況だったみたいっスねー」

 

 と、録画の休憩中なのか、チャラトミが声を掛けて来た。

 こいつは既に単独でチャンネルを持って活動しており、しっかりスパチャも貰えている。一番人気は「チャラトミさんの妖怪講座」だそうだ。お前、本当にチャラい癖に頭は良いよな。

 

『ああ。収益化達成までもう少しだ』

「この短期間でそこまで登録者増やせるのは、素直に凄いと思うっスよ。やっぱり、あの曲……えっと……紅蓮……ラガン?」

『ガンメンじゃなくて華だ華』

 

 まぁ、人気は天元突破したいけどねぇ。

 

「ああ、そうそう、それが受けたんスね。デビュー曲ですもんねー」

『琵琶版もギター版も大人気だったぞ。ここまで人気が出るとは思わなかったがな』

 

 蛇足だが、この曲は昔に無惨様が口遊んでいた鼻歌をモチーフにした物である。色々な趣味を持つ人だったが、音楽の才能まであるのはビックリしたなぁ。

 しかし、イントロしか知らなかった鼻歌を、きちんとした唄に出来たのは、他でもない零余子のおかげだ。どんなに頭をかち割っても死なない彼女が、“何度でも立ち上がる人間の強さ”を連想させてくれたのである。本人は凄い泣き叫んでいたけど。

 そうか、泣く程嬉しかったかぁ。後で可愛がってやろう。

 

『しかし、ここまで人気が出るとなると、せっかくだから歌声を付けたいな』

「……一応言っときますけど、俺かなり音痴っスよ?」

『大丈夫だ、頼む相手は決まっている』

 

 という事で、

 

『ちょっと歌ってみないか?』

「いきなり何を言い出すのよ」

 

 湯船に浮かぶ零余子へ尋ねてみる。

 彼女とはお風呂もご飯も布団も一緒だ。最初は抱き枕にするだけだったが、何度も作曲の糧になって貰っている内に愛着が湧いてきた。普通に可愛い顔してるしな。

 達磨だからスペースも取らないし、何なら世話をする楽しみもある。実に素晴らしい抱き枕である。

 

『ほら、お前のおかげで完成した、あの曲を歌って欲しいんだよ』

「ああ、文字通り私の血と涙の結晶ね……」

『そうだ。お前をイメージして作ったから、是非ともお前の声を吹き込みたいんだよ』

「………………」

 

 しばし、零余子は「マジかこいつ」という表情を浮かべていたが、やがて「どうせ断れないんでしょ」と了承してくれた。

 うんうん、頷いてくれて何より。もし断られたら、とっても上手に焼いてやる所だったぜ。

 

『はい、あーん』「……あーん」

 

 そんな可愛いお前はめいっぱい愛でてあげる。お風呂上がりの零余子ご飯は美味しいだろう?

 

『……さて、お楽しみはこれくらいにしておこう』

「おっ、もしかして“ご飯”っスか?」

『そうだな。頼むぞ、チャラ男wiki』

 

 零余子の餌やりも終わったし、そろそろ私も食事にあり付くとしようか。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

『「座敷童子」だと?』

 

 無表情で首を傾げる鳴女さん。下弦の月をバックにする姿は実にふつくしい。

 さてさて、夜の街からこんばんは、チャラトミさんだよ。

 今、俺たちは、とある呉服屋さんの前にいる。もちろん、鳴女さんの食事の為だ。

 

『座敷童子ってアレだろ? 居ると儲かって、出てくと破産する、有難迷惑な子供妖怪』

「はい、それで合ってるっス」

『そんなのが、ここに居るのか? 都会のど真ん中だぞ?』

「ファンからの情報提供もあったし、間違いないっス」

 

 ここ最近、この呉服屋の売り上げが異常なまでに伸びている。少し前までかなり傾いていたのに。

 さらに、“訪れた買い物客が子供のような人影を見た”という噂も流れている。実際に来店したファンが確かめたから、まず間違いない。確実に居る。

 と言うか、座敷童子は基本的に商家に憑く妖怪だから、都会か田舎かは関係ない。そこに家があれば、何処にでも湧いて出る可能性がある。

 

『ファンの情報なんて当てになるのか?』

「俺のチャンネルでは、“ファンからの情報を基に妖怪の分布図を作ろう”って企画をやってるんスよ。だから、黙っていても常に情報が入って来ます。再生数も増えて一石二鳥っスよ」

『お前、チャラい癖に凄いな』

 

 それは褒めてるんですか、貶してるんですか。

 と言うか、このシステムを立ち上げたのはカスパーだから、本当に凄いのはあいつなんだよなぁ。

 むろん、俺のアレンジも加えられているけどね。将来エンジニアでもやってけそうな気がする。

 

『まぁ、お前の情報は基本的に外れが無いからな。さっそく頂きに行くとしよう』

「了解っス」

 

 そして、俺たちはとっくに営業時間を過ぎているであろう呉服屋にお邪魔した。無限城の座標転移でね。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 こんばんは、零余子です。

 生前は下弦の鬼、今世では不死身の人間、今現在は鳴女の抱き枕やってます。誰か助けてぇ。

 ちなみに、鳴女と拠点の家主であるチャラ男は二人でお出掛けしている。手頃な妖怪をご飯にする為に。前菜代わりに私のお肉を少し食われたのは内緒。再生するから良いけどさ。

 ……で、今の私はお留守番。部屋ではなく、無限城の中で。そこでは手足を生やして良いので、四肢を再生しつつ外の様子を見ている。例の使い魔のおかげで、何時でもライブ配信状態である。

 フム、今回の獲物は座敷童子か。いきなり奥座敷に転移して接敵とか、本当にズルい血鬼術だなぁ。向こうもビックリ仰天してるよ。

 ――――――って言うか、あの座敷童子、朱紗丸(すさまる)ちゃんに似てない?

 確か、十二鬼月に成る事を夢見ていた、鞠使いの女鬼だ。あんまり会話をした事は無いし、割とあっさり死んじゃったから、どんな性格だったかまでは知らないけど。

 ほら、あれよ。名前と顔は知ってるけど、接点の無い同僚、みたいな感じ。

 まぁ、あれが本当に彼女の生まれ変わりなのかは知らないけど、私ばりに運が悪い。腕を増やして鞠をぶん投げるという生前そのまんまの戦法を使ってるけど、たぶん勝ち目は無いでしょうねぇ。

 

『おお、カ○リキーだ。どこかにモンスターボールは無い物か……チラッ』

「俺の股間見ながら言うの止めてもらえます?」

 

 チャラトミの金の玉だからねってか。せめて真面目に戦ってやれよ。

 つーか、鳴女パワーアップしてない?

 無限城に転送して無力化するならまだしも、音速で飛んで来る鞠をキャッチして握り潰すとか、そんなアグレッシブな鬼だったっけ?

 私の記憶では寡黙な仕事人って感じだったんだが……アレか、生まれ変わって弾けたのか。

 あるいは無惨様(・・・・・・・)という最大の(・・・・・・)ストッパーが(・・・・・・)居なくなった影響か(・・・・・・・・・)

 何れにしろロクでも無い。誰かあいつを止めろ。

 

『くっ……だが、ここは私の領域! 家の中で座敷童子に敵うと思うでない!』

『ほほぅ、ならば我が城にご案内しよう。そこでもまだ同じ事が言えるかな?』

 

 そうこうしている内に、朱紗丸ちゃんが転送されてきた。裸の私と目が合う。何とも言えない空気が流れた。

 

「……えっと、久し振り?」

『いや、何の話じゃ……?』

 

 とりあえず、前世の記憶はない模様。記憶以外は不死性ぐらいしか引き継いでいない私とは対照的である。

 さーて、この子はどうなる事やら……。




◆座敷童子

 東北地方を中心に伝承される子供の妖怪。商家の奥座敷などを好んで住み、彼らが家にいる間は栄えるが、出て行くと途端に没落するという。
 正体は所説あるが、口減らしで死んだ子供が守護神化したというのが一般的。
 その為、居るだけで何もしない奴や、そもそも子供の姿ですらない者、幸福どころか呪いを振り撒く「たたりもっけ」という亜種までいる。河童や天狗と同じく、意外と多種多様な連中なのだ。
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