鳴女さんの令和ロック物語   作:ディヴァ子

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 苛める側はその事実をすぐ忘れるガ、苛められた側は一生忘れナイ。


鳴女さん、対話する

『さて、そろそろ本格的に話し合いをするとしよう……と言いたい所だが、アデル』

「はい」

『私は一度こやつと二人きりで話がしたい。実物を目の当たりにして、少し興味が湧いた。会合はその後にしようと思う』

「承知致しました。それでは皆様方、スミマセンが……」

 

 と、バックベアードが私以外の面子を退出させた。残るは私とバックベアード、両陣営のトップだけ。腹を割って話したいのか、それとも腹を括れという事か。

 何れにせよ、やる事に変わりはない。面と向かって話すだけだ。

 しかし、こんな駄々っ広い部屋に二人きりとは――――――さてはて、何を話すつもりやら。

 

『……お前は、我々が何の為に戦っているのか、知っているか?』

 

 すると、バックベアードが今更過ぎる事を尋ねてくる。つまりは、そういう意味(・・・・・・)ではないのだろう。アデルが語っていた、“日本の地獄を滅ぼし来訪者を斃す”という表面的な物ではない、彼が抱く根本的な問題……それが分かっているか、という事である。

 

『知らないね』

 

 だが、私はそれに対する答えを持ち合わせていない。チャラトミ曰く「宿願の為に戦っている」らしいが、それが何かすら知らないのだ。動画作りの最中にした世間話だったから、大して興味が湧かなかったしね。

 

『そもそも、私はあんたの事をよく知らんしな。チャラトミ曰く、妖怪としての歴史は浅いんだろ?』

 

 そう、バックベアードはごく最近に生まれた妖怪である。「最近」とは言っても100年以上前の話だが、それでも下手すると千年単位で存在する妖怪から見れば、明らかに新米の部類だ。

 しかし、西洋妖怪の誰もが彼を大統領と認めている。

 もちろん、心の底では認めていない者もいるだろうが、表立って逆らう者は無い。横槍を入れる奴さえいないのである。

 これは、流石におかしいだろう。単に腕っぷしだけで伸し上がった独裁者なら、必ず何かしらの反発がある筈だ。

 だが、バックベアードにはそれが無い。一体どういう事なのか……それを今夜、本人の口から聞けるのを期待している。飯時の世間話のタネにはなるでしょ。

 

『確かに、私は歴史の浅い妖怪だ。……しかし、私は西洋妖怪の全てなのだ』

 

 と、バックベアードが力強く言い切る。そこだけは譲れないと。

 

『まるで意味が分からんのだが?』

『そうだな。順を追って説明しよう。……「地底人」の知識はあるか? 悪魔族との関係は?』

『とりあえず、“今の人類とは別系統の知的生命体で、かつて地上の悪魔族を滅亡させた”とだけ』

 

 と言うか、ホモ・サピエンスどころか妖怪や悪魔が誕生する以前から存在しているので、正確には最古の先住民である。

 姿こそ人間そっくりだが、不老不死の肉体と共有意識を持つ、バ○タン星人みたいな連中であり、UFOを建造する程の科学力と亡者を蘇らせる神秘の力を有している。はっきり言って、“実は宇宙人です”と言われた方が納得出来る奴らだ。

 

『そう、彼らは人間どころか妖怪や悪魔とも違う、地球最古の知的生命体――――――つまり、「神」だ』

『は?』

『正確には、地球へ降り立った神々が大地より生み出した「神人」と呼ばれる者たち。ようは「最初の人間」だよ』

『ええぇ……』

 

 今聞かされた、衝撃の真実ゥ。

 ようするに、彼ら地底人は「最初の人間」という事である。流石にそれは知らんかった。

 さらに、バックベアードは滔々と語る。誰も知る由もない、“神話以前の歴史”を……。

 

『神は元々、何処とも知らぬ銀河系より飛来した地球外生命体だ。彼らの文明は何らかの事故で滅び去り、結果的に放浪の民とならざるを得なかった。だから、天より舞い降りた神々は、水と緑に溢れたこの楽園に、自分たちの足跡を残そうとした。同じ過ちを繰り返さず、繁栄して欲しいと願って』

『それが「最初の人間」か』

『そうだ。神々はそれぞれが各々の好みで「最初の人間」を創った。大いに趣味が反映されているから、一応は人型だが姿も多種多様だった。不老不死の者もいたし、環境に合わせて姿を変える者もいた。その両方を持ち合わせた者も、もちろんいたさ』

『なるほどね……』

 

 それが今の「地底人」や、後の悪魔や妖怪の祖先となる「ナニカ」だった訳か。

 

『西洋妖怪の祖先たる悪魔族は、「地底人」と同じ時期に生まれた。姿形は同じだが、悪魔族は変化を、「地底人」は不変を願った。だからこそ、彼らは種族レベルで相容れる事が無かった。最初こそ地上と地下とで棲み分けていたが、諍いが絶えなかった。しかも、同じような事が世界全土で頻発した。そこで神々は、より自分たちに似せつつ、有限の命しかない“知恵のある”存在を、現生する動物の中から意図的に生み出し、それ以外の知的生命体を駆逐しようと考えた』

『それが今の人類って訳だ』

『その通りだ。幾つかの猿の遺伝子に“言語”と“社会性”の情報を書き加え、見事それを物にしたのがホモ・サピエンスだ』

 

 原始人の中でも虚弱な部類だったホモ・サピエンスは、その分「言語能力」と「社会性」を発達させ、“集団戦”を挑む事で他の人類を絶滅させ、唯一の人となった。

 しかし、彼らは賢いが、とても弱い。悪魔族に対抗するなど、不可能に近い――――――かに思われた。

 

『人間は弱い。知恵は回るが、脆弱な肉体と有限の命しか持たない、神人としては失格の存在だ。だが、奴らは寿命が短い分、高等知的生命体にあるまじき速度で増える事が出来た。その上、知恵だけはあるから、狡賢く立ち回り、悪魔を神と崇めつつ勢力を増やし、魔法や超能力などの対抗策を練った上で袋叩きにして、地表から駆逐していった』

 

 つまり、とんでもない数の暴力で悪魔祓いをしたって話だ。幾ら個々の力が凄くとも、弱点を集団で突かれてはどうしようもない。しかも、“神の入れ知恵”があれば尚の事。

 だが、逃げた先の地下にいるのは「地底人」。受け入れて貰える筈もなく、多くの悪魔が異教の神として滅び、玉砕覚悟で挑んだ神々への戦争にも負け、西洋の悪魔はとうとう七柱を残すのみとなった。

 

『しかし、悪魔も滅びを甘んじて受け入れる気など無い。人間の遣り口を学び、狡猾さを覚え、後に地獄――――――つまりは「地底人」の地下世界を奪い、そこに自分の帝国を創った。……では、追い出された「地底人」は何処へ行ったと思う?』

『まさか……』

『そうだ。後にシルクロードと呼ばれる道筋を辿り、同じ境遇の仲間を集めながら、極東の島国へと渡った。そこに居た「地底人」――――――当時の幽霊族を駆逐してな。慎吾は何か勘違いしているようだが、幽霊族は確かに何度か地上で栄えはしたが、それは周囲の知的生命体に“持ち上げられた”だけに過ぎんのだよ』

『おいおいおいおいおいおい……』

 

 今の地獄の十王がどうかは知らないが、少なくとも日本にやって来た当時の地獄関係者って、ただの悪役じゃん。

 

『まぁ、「黄泉」の時代は法整備も何も無かったから、統治という意味では良かったんだろうがな』

『そうだけど、そうじゃねぇだろ』

『まったくだ……』

 

 「来訪者」の事を抜きにしても西洋妖怪の日本地獄への執着心は気になっていたが、それなら納得である。親の仇みたいなもんだからな。そりゃあ、恨み骨髄だわ。

 

『――――――そして、遺伝子レベルで刻み込まれた恨みと憎しみが、ある日偶然通り掛かった彗星が願い星となり、私が生まれた。“日本の地獄を滅ぼせ”“祖先の仇を討て”とな』

『だから、西洋妖怪……というか悪魔族の全て、という訳ね』

『そういう事になる』

 

 なるほど、歴史は浅いが根は深いって事か。ハレー彗星も、とんでもない願いを叶えたなぁ……。

 

『フムフム、為になったよ。確かにこんな黒歴史、そうそう他言は出来んわな』

 

 まぁ、それはそれとして――――――確かめる必要は、あるよなぁ?

 

『……その宿願を叶える為に、ウチの丸子を「ブリガドーン」の燃料に使いたいって訳だな、アデルは』




◆地底人

 文字通り地下に住む知的生命体。鬼太郎の世界では人類以前の「知恵ある人」で、不老不死の肉体と共有意識を持つ神に近い存在である。「他の文明との接触は滅びを招く」と考えており、かつて探りを入れようとした西洋妖怪や悪魔を滅亡させ、今は増え過ぎた地上人を駆逐しようとしているらしい。その詳しい正体は不明だが、少なくとも異星人ではない、純粋な地球の生物なのは確か。
 今作では「最初の人類」の一種族となっており、悪魔族の祖先とは同期で同じ故郷を持つ間柄。とは言え、上記の考えを持っている為に仲は最悪であり、後に人類と神々に嵌められて逃げ延びて来た悪魔族を地上へ追い返し、滅亡させてしまった。
 まぁ、後に「追放」という形で復讐される訳だが、それでもしぶとく生き残り、後に人間がシルクロードとして通る道のりを辿って渡日し、当時の日本の地底人=幽霊族を地下から追い出して居座るようになった。
 この時の幽霊族は一度人間により地下に駆逐され、地下帝国を作る事で何とか生き残っていたのだが、今度は生活基盤ごと奪われた上で地上に放り出された為、更なる衰退を余儀なくされた。切羽詰まった彼らは、目玉おやじが生まれた頃にもう一度地下暮らしを選択したものの時既に遅く、「来訪者」の出現が止めとなって、事実上の絶滅と相成った(純粋な女性の幽霊族が居ないので)。
 今の閻魔大王がやたらと幽霊族を贔屓するのは、祖先が過去にやらかした事を知っているからである(目玉おやじは誰にも教えられていないので知らない)。
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