そして、最初の町「ナイラーアタウン」から旅立ち、道路に沿って歩き始める事、1時間。
『一本道だな』「一本道ですね」
何処にも辿り着かなかった。見渡す限り、鬱蒼とした森に両脇を挟まれた一本道があるのみ。
いや、広過ぎるだろう。そこまで原典に従う必要無いから。こんなんじゃ日が暮れても街に着かないだろうが。
「本来は定期便のバスか、ライドポケモンで移動するんですが」
『最初からそれに乗れよ。しっかりしてくれよ、最高司令官殿』
「いやぁ、もうお譲りしたので、ヒッチハイク頼みますよ先輩」
『お前ふざけんじゃねぇぞ。都合の良い時だけ後輩面するなよ』
だが、背に腹は代えられない。車かポケモンが通りすがるのを信じて、ヒッチハイクだっ!
『よし、脱ぐぞ!』
「止めましょう!? 夢と冒険の世界だっつってんだろ! それより脇道に入って、ポケモン捕まえましょうよ。そもそも「たいせつなもの」に「キャンプセット」が入ってるんだから、じっくり野宿しながら行きましょうよ」
『むぅ、仕方ないな……』
まぁ、冒険に野宿は付き物か。それに手持ち1匹で次のジムに挑むのは無謀過ぎるか。
『じゃあ、ちょっと寄り道してくか』
「はい。81番道路には所謂「序盤ポケモン」が沢山出ますよ」
『お、良いね。私、序盤ポケモンを最低1匹は最後まで使う主義なんだよねー』
という事で、81番道路の両サイドに広がる森の中へ。ファー・ノース・クイーンズランドを参考にしただけあり、熱帯雨林が広がっている。
マップを見る限り単に90度回転しただけに思えるが、実際はこの付近が赤道に来るくらいに大陸全土が北上しているのだろう。あるいはポケモン世界の不思議な力で気候だけは変化していないのか。
何れにしろ、ここが深い森だというのなら好都合である。それだけポケモンの種類も多いだろうからな。
『ヤムヤム』
『おっ、さっそく何か出たぞ』
と、木の枝を移動する、自然薯みたいな芋虫を発見。
「「やむいもポケモン」の「ヨルウィ」ですね。所謂「序盤むしタイプ」のポケモンです」
アデルのゲンガー図鑑(この地方は何故かロトムではなくゲンガーを使っている)によると、むし/くさタイプの序盤虫の一種らしい。タイプの組み合わせとしては最悪だが、特性が「だっぴ/さいせいりょく(隠れ特性)」なのでそこそこ使えるポケモンである。
ちなみに、この形態は蛹を兼任しているようで、成長すると三種類の蝶に分岐進化するそうな。これは捕まえるしかないっしょー。
『行け、ハウボル! 「たいあたり」だ!』『ボルボル!』
『ユキュゥケェン!』
ハウボルの体当たりを受けたヨルウィが意味不明な悲鳴を上げたが、気にせずモンスターボールを投げるぜ!
――――――コロ、コロ、コロン、カチッ☆!
『よし、ヨルウィ(♀)をゲットだぜ!』
流石は序盤ポケモン、面白いくらい簡単に捕まるな。
『ボルルル!』『おっ、「ころがる」を覚えたか』
さらに、レベルが7になった事でハウボルが転がるを習得。ようやく真面ないわ技を手に入れた。
「タイプが偏ってません?」
『良いんだよ、進化させればタイプが変わるんだから。つーか、お前こそ何か捕まえないのか?』
「そうですねぇ。ほのおとみずが揃ってるし、くさかじめんタイプが欲しい所で……おっと!」『ハッパーッ!』
すると、今度はアデルの前に、葉っぱがシダ植物になったナゾノクサみたいな奴が現れた。名前は「シダッパ」とそのまんまで、タイプもくさ単体だ。
しかし、種族値はどちらかと言うとハネッコに近く、そこそこ素早いのが特徴。将来的にワタッコみたいな子になるのだろうか。くさ/ひこうは厳しいなぁ……。
もちろん、大した苦労なくゲットである。
「ちなみに、この子は進化するとドラゴンタイプが付くんですよ」『マジか』
メガジュカインかよ。もしくはアローラナッシーか。どちらにせよ可愛い姿は期待出来そうもないな。要らん。
『おや、こっちの鳥は何だ?』『ハッピー♪』
次は私の番らしく、ピンクみの強いハチドリのようなポケモンが現れた。名前は「ハービィ」。ハッピーな鳴き声に違わず、フェアリー/ひこうの複合タイプという、実にファンシーな奴だ。
「だけど、そいつ進化すると、どく/ひこうになりますよ」
『そこが良いんじゃないか』『ハッピ~?』
図鑑によれば、進化すると「ヒドクーイ」という「しちょうポケモン」になるそうな。ニューギニアに帰れ。
そんなこんなで、森のポケモンをしこたまゲットした。その内の何匹かはレギュラー入りを果たした。面子はこんな感じ。
《私のメンバー》
◆ハウボル(いわ/くさ) Lv14(♀):「ストーンロール」「まるくなる」「このは」「ころがる」
◆ヨルウィ(むし/くさ) Lv9(♂):「いとをはく」「たいあたり」「かたくなる」「このは」
◆ハービィ(フェアリー/ひこう) Lv9(♀):「うたう」「なきごえ」「つつく」「チャームボイス」
◆アズレーン(くさ/みず) Lv13(♀):「みずでっぽう」「すいとる」「せいちょう」「あまごい」
◆ムコニャ(あく/どく) Lv10(♀):「なきごえ」「ひっかく」「どくが」「ちょうはつ」
◆ティアーザレディパ(むし/かくとう) Lv6(♀):「たいあたり」「マッハパンチ」「みきり」
《アデルのメンバー》
◆ウルフル(いわ/ほのお) Lv13(♂):「アクセルロック」「すなかけ」「ひのこ」「いわおとし」
◆クラトン(いわ/みず) Lv10(♀):「たいあたり」「からにこもる」「みずでっぽう」「アクアジェット」
◆シダッパ(くさ) Lv12(♂):「ひっかく」「このは」「たくわえる」「みずでっぽう」
◆イオーム(エスパー/ひこう) Lv8(♀):「ねんりき」「チャームボイス」「かぜおこし」「うたう」
◆ティアーザイトマル(むし/あく) Lv4(♂):「どくばり」「とどめばり」「いとをはく」
◆ジャカロップ(フェアリー) Lv6(♀):「たいあたり」「おねだり」「チャームボイス」
まぁ、こいつらを最後まで使うかは未定だが。少なくともヨルウィ、ハービィ、ムコニャはレギュラーにしたい。余談だが、ムコニャは黒い猫又といった感じで、ニャースに近い種族値になっている。
――――――さて、とりあえず手持ちを6匹揃えた所で、そろそろ現実と向き合おうか。
『おい、日が暮れたぞ』
「奇麗ですねぇ……♪」
『よーし、折るかなー』
「ごめんなさいぃっ!」
調子こいてポケモンを捕まえまくったせいで、バッチリ日が暮れてしまった。夕陽が地平線に半ば沈んでいる。夜目はそこそこ利くが、あくまで人の身だから、このまま暗くなられると困るぞ。
『よし、こうなったら、やっぱり脱いで……』
「止めろってのに! SNSにアップすんぞ!」
『望む所だ!』
「露出狂か!」
と、駄弁りながら、どうにか81番道路に戻った時、
「おや、こんな所に子供が二人で……迷子かなぁ?」
何かエーテル財団っぽい服装の少年に声を掛けられた。
「『お前も子供だろ』」
「う、うるさいな! これでもボクは、「ネオ・ボランティア」の隊員なんぞ!」
思わず突っ込んだら、所属を明かされてしまった。
『……おい、アデル。確かネオ・ボランティアって、悪の組織じゃなかったっけ?』
「はい。エーテル財団と似通ったポジションですね。下は真面だけど、上の一部がヤバい系というか。この子は下っ端だから、たぶん大丈夫ですよ」
『フーン……』
服装だけでなく、役割も似ているのか。本当に大丈夫なのか、こいつ。
「何をコソコソ話しているのかは知らないけど、キミたち迷子なんでしょ? なら、ボクに付いて来なよ。近くに本部があるから、そこで保護して貰おうよ」
『え……』「あ、そう言えば、ネオ・ボランティアの本部が近いんだった」
おい、そういう事は早く言えと何度言えば――――――というか、悪の組織の総本山が近くにあるのか。このゲーム、ハードル高過ぎない?
だが、野宿と宿屋のどちらが良いかと問われれば、間違いなく泊めて貰った方が良い。旅において一番大切な事は、如何に消費を抑え補給を怠らないかである。備蓄が無くなったら、野垂れ死ぬしか無いからな。
敵地だろうが何だろうが、有難くお世話になろうじゃないか。
『よし、今すぐ案内しろ、モブ』「失礼過ぎるだろ」
「誰がモブだよ!? ボクは「ボブ」だ! ……ほら、行くよ!」
という事で、私たちは次の町へ行く前に、ネオ・ボランティアの本部へお邪魔する事と相成った。
「ここがネオ・ボランティアの本部だよ」
『へぇ、ここが……』「早乙女研究所みたいですね」
81番道路とG1番道路の境目――――――丁度、森が少しずつ疎らになる辺りに、その建物は立っていた。誰がどう見ても早乙女研究所にしか思えない外観をしている。異論は認めない。だって、制作者がこう言ってるんだもの。理解したら同化する奴だ。
……とまぁ、冗談はさておき、ネオ・ボランティア本部の設備は素晴らしく充実している。
エーテル財団と同じくポケモンに関する研究施設はもちろん、食堂やお風呂、憩いの広場に娯楽施設と豊かな生活を支える基盤が整えられており、更には個室まで用意されている。
むろん、個室は階級差による広さの差はあるが、それでも1人につき二畳半は用意されている為、トイレと風呂が共同である事を除けば、生活するには充分だろう。所属人数の事を考えると、個室があるだけ贅沢と言える。普通は相部屋かタコ部屋だからね。
そんな人に優しい施設だからか、何の問題も無く受け入れてもらえた。
「……ここに来て、確信しました。この夢は「ライト版」のルートを辿っています」
『何だ、既定路線なのかよ。というか、「ダーク版」とはルートが違うのか?』
「はい。ライト版ではネオ・ボランティア本部で、ダーク版ではスマイル団の拠点で旅の必須アイテムを揃えるんです」
というか、寄らなければいけない基本ルートだったようである。博士の所では最初のポケモンと図鑑を、ここではキャンプセットや穴抜けの紐など、
『――――――って、キャンプセット無いじゃねぇかよ、コラァ!』
「す、すいませんでしたぁ! つい過去作のノリで考えてました!」
危ねぇ、もう少しで遭難する所だった。こいつ馬鹿じゃねぇのか。ぶっ殺すぞ、マジで。
「おい、そこで何をコソコソ喧嘩してるんだよ?」
『いや、喧嘩じゃない、処刑しようとしてるんだ』
「もっと駄目だよ!? それより、流石に個室は用意出来ないから、怪我人を収容する為の相部屋で我慢してくれよ?」
『いいや、構わんさ、サブよ』「そうですね。泊めて貰えるだけでも有難いです」
「……ボブだからな? 少しだけランクアップされでも余計にムカつくからな?」
という事で、今夜はネオ・ボランティア本部の病室的な場所に泊めてもらう事となった。部屋は割と広めであり、2人合わせて八畳くらいはある。これなら圧迫感も無いだろう。
『さて、これからどうするよ?』
そして、2人きりとなった所で、私は話を切り出した。
ちなみに、アデルは今、手持ちのポケモンと呑気に戯れている。お気に入りはクラトンのようだ。泣き虫で甘えん坊な所が、彼女の庇護欲を刺激しているのだろう。昔はアニエスもこんな感じで甘えてたっけ、みたいな?
ま、私もハウボルに背中を踏んでもらっているから、人の事は言えんがね。
「どうする、とは?」
すると、アデルはクラトンを撫でながら、小首を傾げた。可愛いな。
『ここは悪の組織なんだろう? そんな所から支給された品を使って大丈夫なのか?』
「たぶん、大丈夫だと思いますよ。設定的に問題ない筈です。……というか、ここでアイテムを揃えないと、マジで遭難する上に、時間が掛かりますから」
『さっきみたいに?』
「許して下さい……」
断りたいなぁ~。
『そもそも、この世界を素直にクリアする必要とかあるのか?』
「ええ、そこは守った方が良いと思いますよ。夢に囚われた場合、あまり横紙破りな事をすると、一生出られなくなります。最悪そのまま死ぬ可能性すらありますから」
『フム……』
正直、時間の概念が現実と異なるとは言え、バッチを8個も集めてリーグまで進むのは面倒だったんだけど、そう上手くは行かないか。こういう時にチャラトミが居てくれたらなぁ。
「大丈夫ですって! これでも制作者ですから!」
『そこ傍となく不安だなぁ……』
だが、考えても仕方ないのも事実。精々ストーリーから外れ過ぎないよう気を付けながら、物語を進めるしかないだろう。嗚呼、面倒臭い……。
◆◆◆◆◆◆
つぎのひ!
「へぇ、アナタたち、ポケモン図鑑を埋めてるの。まだ若いのに、頑張り屋さんね。なら、これは餞別の品よ。受け取って」
「『わーい』」
とりあえず、旅の必須アイテムは、中間管理職っぽいお姉さんから問題なく受け取れた。キャンプセット、穴抜けの紐、ポケモンボックス、レボリアルバンド――――――レボリアルバンド?
『「レボリアル」って何だよ?』
「あら、知らないの? ガラル地方のダイマックスみたいに、ポケモンを巨大化させる技術よ。まぁ、細部は結構違うんだけどね」
『へぇ……』
このゲーム、ダイマックスもあるのか。彼女の言葉を信じるなら、色々と違いはあるようだが、そこは後でアデルに聞きつつ、実際に体験してみればいい。聞くのと見るのでは、大分違うからな。
「それと、これも分けてあげるわ。これを使うと、野生のポケモンを鎮静化したり、協力して貰えたりと、かなり便利よ」、
さらに、「ピクシーリング」なる腕輪を頂いた。内部に「エルダーサイン」が描かれた「トラペゾヘドロン」を宝石代わりにくっ付けた金属製のリングという、何処までも不安になるデザインである。
使用する際は、ポケモンレンジャーのキャプチャーよろしく、トラペゾヘドロンの部分が光の軌跡を描きながらポケモンの周囲を飛び交い、同化すると一定期間だが服従させる事が出来るのだとか。
ネオ・ボランティアはこのピクシーリングでポケモンと人間の距離感を保ち、諍いや事故を無くすよう努めているらしい。考えが人間寄りのポケモンレンジャー、といった所か。
そう言えば、ネオ・ボランティアの隊服って、エーテル財団の物に似ているけど、手甲や足甲で防御を固め、マスクにバイザーで粉塵や毒への対策をしているなど、よりゴツくなっているんだっけな。
おそらく、ポケモンからの反撃を想定しているのだろう。何処まで効果があるかは知らないが、ピクシーリングで抑えてしまえるので、その間を持たせられれば良いのかもしれない。
何れにせよ、ポケモンレンジャーやエーテル財団の職員よりも命懸けなのは確かだ。装備が避けたり逃げたりする事を考えていないからな。下っ端たちが真面目というアデルの話も、信用出来るかもしれない。
まぁ、逆に言えば、上層部の怪しさもより強まったのだが。少なくとも話してみた感じ、中間管理職ぐらいなら大丈夫そうだが、その上にいる「三賢者」なる連中は胡散臭さMAXである。自分で「バルター」「カスパー」「メルキー」を名乗っちゃう辺り、頭の中が非常に心配だ。
――――――そんな奴に付き合わされる、このお姉さんやボブが可哀想だな。
根が真面目で、職務にも実直かつ誇りを持って臨んでいるだけ、余計にそう思う。何時だって、損をするのは正直者だ。
「……それと、これはお願いだなんだけど、ボブを一緒に連れて行ってくれないかしら?」
とか何とか考えていたら、お姉さんからボブをお願いされてしまった。何故そうなる。
「彼、真面目なのは良いんだけど、ちょっと根を詰め過ぎなのよ。……過去にポケモンの暴走で家族を失ってるから、仕方なくはあるだけどね」
いや、重いわ。何で鬼殺隊みたいな過去持ってるんだよ。どう見てもモブの癖に。
「でも、そんなやり方じゃ、何時か無理が出る。人間、そうなってからじゃ遅いのよ。だから、お願い」
『何で私たちに頼むんだよ?』
「……そうねぇ。“女の勘”かしら。アナタたちなら、あの子の心を救ってくれる気がするのよ」
お前はお前で、何で産屋敷みたいな勘を発揮してるんだよ。
しかし、ストーリー的に私は主人公であり、アデルはライバル。付いて来るだけで様々な冒険が待っているし、人生という名のドラマを彩る事だろう。人選は間違っていない。
『分かったよ。色々と貰ったからな』「そうですね」
「ありがとね♪ さっそく、ボブに準備させるわね」
仕方が無いので、ボブを旅の仲間に加えた。両手に華とは、羨ましい奴め。
「『という事でよろしく』」
「う、うん、よろしくね?」
その後、ボブと合流し挨拶を重ねたのだが、疑問符を浮かべられた。何でだよ。何処が不満なんだこの野郎。
まぁいいさ。こいつが組織の真実に気付いた時、どんな曇り顔を浮かべてくれるのか、楽しみではあるしね。
さぁ、チュートリアルはここまで。さっさとジム巡りを制覇して、夢から覚めてやるぞーっ!
◆ハウボル
・ティアーザ図鑑№001
・分類:しんりょくポケモン
・タイプ:いわ/くさ
・性別:あり
・特性:しんりょく/てきおうりょく(隠れ特性)
・種族値
HP:60
こうげき:50
ぼうぎょ:70
とくこう:55
とくぼう:65
すばやさ:10
・図鑑説明
草食性の大人しい性格。普段は木の葉に擬態しながらゆったりと暮らしているが、敵に襲われると腹部をしならせ、両腕を大きく広げて威嚇する。それでも逃げない相手には腹部から種爆弾を発射し、撃退する。
乱開発により絶滅したと思われていたが、つい最近とある小さな孤島に僅かながら生き残っている事が判明した。昔はもっと凶暴なポケモンだったと言われている。