そんな感じで、私たち3人はトゥハーデシティを目指して出発した訳だが、
「え、ポケモン? 必要無いよ。ボクには「ガリトラップ」があるからね」
何となしに『ポケモンは持たないのか?』と質問すると、ボブは当たり前のように首を捻った。
確かに、ガリトラップ(ネオ・ボランティア内での「ピクシーリング」の隠語)さえあれば大抵解決するが、それじゃあ旅に出た意味がないと思うんだけど。これはお前のトラウマ克服の旅でもあるんだぞ?
「というかキミたち、次の町まで歩いて行く気かい? 何事も無く進んだとしても、夜まで掛かるよ?」
『そうだな。私としてはライドポケモンが欲しい所だけど』
「なら、その辺でポケモンをキャプチャしよう。ここらには丁度良いポケモンが結構いるから、すぐに
『………………』
ポケモンを当然の如く道具扱いするボブ。台詞が完全に悪役のそれなんですが。過去の事があるとは言え、これは闇が深そうだなぁ……。
まぁ、それは追々何とかすれば良いさ。そんな事より乗り物である。こんな果て無き一本道を素直に徒歩で進む気は無い。
『モォオアアアンドォオオヴ!』
「お、さっそく「パイモンド」が現れたな! よく見ててね、ネオ・ボランティアの科学力を!」
すると、地面を突き破り、材質がダイヤモンドに変化して角が無くなったイワークっぽいポケモンが現れた。名前は「パイモンド」。種族値は、まさに防御と特防を入れ替えただけのイワークだ。
だが、ピカブイをプレイした事のある身としては、こいつの乗り物としての性能は何となく分かる。たぶん、三人乗っても疲れない、優秀なライドポケモンとして運用出来そうである。
「行け、ガリトラップ!」『ドワヴォッ!?』
旧神印のトラペゾヘドロンがパイモンドの周囲で光の軌跡を描き、あっという間にボブの支配下に置かれる。
うーん、この……。
『どう見ても悪の構成員です、本当にありがとうございました』「あんまり言わないであげて」
「どうしたの? それよりほら、早く背中に乗って。効果は昼間でしか持たないから、その前にトゥハーデシティに辿り着こう!」
という事で、私たちはライド化したパイモンドの背に揺られ、トゥハーデシティへ高速移動――――――、
「おっと待った! 目と目が合ったら勝負するのが礼儀だよ!」
しようとしたら、通りすがりの短パン小僧のルイに勝負を挑まれた。彼もエミューっぽいポケモンに跨っており、その名も「エミューン」というらしい。タイプはじめん/ひこうである。
『うるせぇガキだなぁ! 面倒臭いから死ねっ!』
「出会って早々それは酷くない!?」
『今まさに次の町へ行こうって時にタチフサグマするのが悪いんだよ! 行け、ハウボル!』『ボルボラァッ!』
「何か納得行かないけど、頼んだ、オニスズメ!」『ホォクゥウン!』
対戦カードはハウボル(Lv14)とオニスズメ(Lv9)。
『エミューン使わないのかよ!?』
「これはライドポケモンだから! 瀕死になったら僕が野垂れ死ぬから!」
『まぁいい、どっちにしろ殺す! 殺れ、ハウボル! 「ストーンロール」!』『ボルボルボル!』
「ギャース!」『オニォォン!!』
まぁ、やる事は変わらない。ストーンロール(威力60で、当たる毎に威力が上がるいわ物理技。効果は殆ど「ころがる」と一緒だが、「かくばる」「かたくなる」「まるくなる」のどれを使ったかによって追加効果が変化する)で轢殺してやるだけさ。完全に格下だし、さっさと経験値になれや!
「くっそーっ、行け、ミロミス!」『ミロチュゥッ!』
お次はティアーザ地方の電気袋組のミロミス(Lv10)。交尾のし過ぎで絶滅必須な有袋類「アンテキヌス」を派手にしたような見た目で、タイプはデデンネと同じでんき/フェアリー。
ただし、能力はピカチュウ以上に尖がっており、攻撃面は進化前としては言う事ないが、耐久力が壊滅的に低い。何ならコラッタより脆い。流石は絶滅危惧種。ねずみ花火みたいな奴だな。
『だから何だぁ! そのまま「ストーンロール」!』『ボラァッ!』
「アッー!」『ミローン!』
結局は轢き潰すんだけどね。バイバイ、ミロミス。
『おっ、レベル上がったか』『ボルボル~ン♪』
と、ハウボルがレベル15にアップ。足止めされた割には合ってない気がするが、まぁ良いだろう。よし、今度こそは――――――、
「きゃっ! 貴女今アタシを厭らしい目で見たでしょ!」
「『ミニスカートォッ!』」「お、落ち着いて二人共!?」
……ヤバ~い、とっても殺る気が出て来たぞぉ~っ♪
◆◆◆◆◆◆
『ここがトゥハーデシティか』「緑がいっぱいコレクションって感じですね」
その後も何人かトレーナーに絡まれたが雑魚ばかりだったので、私とアデルで順調に撃破していき、何だかんだでお昼前くらいには、次なる町「トゥハーデシティ」に到着した。
現実で言えば「チャールビル」に相当する場所であり、周囲を疎らな森に囲まれている片田舎だ。とは言え「シティ」が付く程度には発展しており、公共施設やデパート類は一通り揃っているし、何なら小さな空港もある。この広過ぎるティアーザ地方では、空港が有るか無いかでシティとタウンが分かたれるので、どんなに田舎臭くても都市扱いなのである。アデルの受け売りだけど。
「じゃあね、パイモンド」『モンドォオオッ!』
パイモンドも無事解放され、野生へと帰っていく。別にポケモンだから大嫌いという訳では無いみたいだが、やはり手持ちにする気は無いようだ。捻くれてんなぁ。
まぁ、今は気にしても仕方ないか。一朝一夕でどうにかなる問題でもないからな。
そんな事よりもジム巡りだ、ジム巡り。時間も良い頃合いだし、せっかくだから昼食を祝勝会にしたいんだよ。あと邪魔された腹癒せがしたい。
「ここがそうだよ」
ボブに案内された場所に立っていたのは、炎のように燃え上がる意匠を施されたバトルスタジアム。規模はガラルの物と同じくらいだ。
言うまでもなく、ほのおタイプのジムなんだろうなぁ……。
「いいかい? ジム戦では「レボリアル」が使えるし、相手も使って来る。だから、ちゃんと使い方を予習しておくんだ」
「『ほーい』」
そんな訳で、レボリアルバンドに添えられた説明書に目を通す。
①レボリアルは1度のバトルで1回限り。持続時間は3回技を使う(3ターン経過する)まで。
②レボリアル中は全能力が1.5倍になる。怯む事は無いが状態異常は通用する。一部の技と道具を受け付けない。
③交代すると解除される。また、変化直後のみ「レボリアル技」以外のあらゆる技を受け付けない状態になる。
④覚えている技が全て必中になる。その内の1つを1度のみ「レボリアル技」に変換出来る。
仕様はダイマックスと殆ど同じだが、HPが倍加するのではなく全能力が1段階アップで固定されるのか。加えて、変身したターンは実質無敵状態だから、ダメージを通すなら自分もレボリアルするしかないと来た。これはダイマックス以上にタイミングを選ぶな。時には諦めて生贄を用意するのも一つの道。
だが、一番の違いはレボリアル技の仕様が「Z技」と同じであり、必殺以外の技が必中化するという事だろう。ダイマックス技のように一辺倒ではない代わりに威力が元のままなので、これまた使い方を考えないといけない。
総じて、初めから“切り札”を想定した運用をしないと宝の持ち腐れになってしまう、玄人向けの仕様である。
分かり易いのは、“確定状態異常を食らわせる不安定技”を使う事かな。特化する分、絶妙に痒い所へ手が届かないんだけどね。
ともかく、何となく使い方は分かった。後は実践するのみ。
「『頼もーっ!』」「いや、ドアを蹴るなよ!?」
そして、私たちは最初のジム――――――「トゥハーデジム」の門戸を叩いた。というより蹴りを入れた。ムカつくから。
さぁ、いよいよジム戦開始だぜぇっ!
◆ウルフル
・ティアーザ図鑑№004
・分類:ふくろいぬポケモン
・タイプ:いわ/ほのお
・性別:あり
・特性:もうか/もらいび(隠れ特性)
・種族値
HP:45
こうげき:50
ぼうぎょ:30
とくこう:60
とくぼう:30
すばやさ:65
・図鑑説明
尻尾の炎は命の証。消えると死んでしまう。子供ながらに気性が荒く、積極的に攻撃を仕掛ける凶暴な捕食者。
国際交流の過程で持ち込まれたイワンコに棲み処を追われるようになり、最終的に外国人たちに家畜を襲う害獣と勘違いされ、駆除され尽くして絶滅した。遥か太古の昔は、もっと大規模な群れを作り、大陸全土を縄張りとしていたらしい。