鳴女さんの令和ロック物語   作:ディヴァ子

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 ギャンブルはいけまセン。


鳴女さん、賭け事に興じる

 それからそれから。

 

『とりあえず、カジノ行くかぁー』

「「その発想はおかしい」」

 

 ドロンゴルジムを見事にクリアしたのを記念してカジノに誘ったのだが、何故かアデルとボブに呆れられた。何処がおかしいんだよ?

 

『ポケモンと言えばスロット、スロットと言えばポケモンだろうに』

「それはカントー近郊の話だと思うけどなぁ……」

「そもそも、未成年じゃ入れないでしょうに……」

『いやいや、そんな事はないさ。な?』

 

 私はクルリと後ろを振り返った。

 

「そうですねぇ。大人として注意しておくべきなんでしょうが、ワタクシも子供の頃はよく忍び込んでましたからね、あまり固い事は言いませんよ」

 

 すると、そこには誂えたように、ディーラーの恰好をしたジェフリルが。ホント、こいつはよく働くな。過労で死ぬんじゃないのか?

 つーか、お前の場合は「闇」だの「地下」だのが付くだろ、アングラ系。

 

「ひゃぅ……!」「ボブくん……」

 

 ポケモンに続く第二のトラウマと再会してしまい、ボブがアデルの後ろでガクブルしている。一周回って可愛く見えて来るな。何なんだこいつは。

 

「でも、どうやって入るんです?」

「私は週末にここでカードディーラーをやっていましてね。その見習いという事で入場させますよ。オーナーとも親しいですし、多少の事は目を瞑って貰えるでしょう」

『へぇ……』

 

 ピエロにトレーナーにディーラーって、マジで多彩だな、この男。他の団員も似たような者なんだろうか?

 まぁいいや、私はゲームが出来ればそれで良いんだよ。という事で、カジノにGO!

 

「ここですよ」

「「『おおー』」」

 

 ジェフリルに案内されて辿り着いた先にあったのは、例え真夜中だろうとビカビカ光って浮き上がっていそうな、まるでテーマパークのようなカジノホテル「ザ☆スピードスター」。ドロンゴルシティでは唯一の賭博場だが、逆に言えば独壇場でもある。何でもあるし、揃っていない物は無い。

 

『……って、パンフレットに書いてある』

「自意識過剰な売り文句ですね」

『商売なんて、そんな物だろう』

 

 金に奇麗も汚いもないんだよ。使う奴が手を染めているか足を洗っているかの違いだけ。金は天下の周り物って言葉を知らんのかね。

 ま、私は借りっぱなしの金は要らんがな。ペリカはもっと要らん。

 そう、私たちは稼ぎに来たのだ。地下送りにされるんじゃなくて、する方なのさ。

 

「では、入場~♪」

「「『お邪魔しま~す』」」

 

 そして、私たちはジェフリルの先導の下、「ザ☆スピードスター」へ入場した。

 

「お客様、身分証を――――――って、あら、ジェフリルさんでしたか。何時も素晴らしいパフォーマンスをありがとうございます」

「いえいえ、こちらこそ、アリスとリデルがお世話になっております」

 

 当然ながら受付嬢に身分証を求めて来たが、ジェフリルのおかげで当たり前のように顔パスである。パフォーマンスって事は、ピエロの役もやってんのかな。パーティー会場には付き物だからね。居るのはパリピだけだし。

 

「凄い……!」

『凄いというより、臭いな』

「確かに……」

 

 ガヤガヤ、ジャラジャラ、ガチャガチャ。

 多種多様な機械とメダルの増減する音が四方八方から耳へ攻め入り、天下ならぬ人生を分ける眩い光が目を惑わす。

 それでなくとも、大勢の人間がごった返しているので、臭いだけでも酔ってしまう。“匂い”ではない“臭い”で、だ。そこら中に漂うきな臭いニオイが、人を路頭に迷わすのである。当人たちに言わせれば、アロマの香りなんだろうがね。

 まぁ、雰囲気に圧倒されているのは、内外共に子供のボブだけだが。

 

「さて、流石に最初から自由時間とは行かないので、30分くらいはワタクシの仕事振りでも見ておいてください」

 

 そりゃそうよね。

 という事で、ジェフリルのカード捌きを見ていたのだが……まぁ、プロだわね。ちょくちょくセカンドディールとかかましてるけど、傍目には全然分からないもん。視力が良いかどうかじゃなくて、見分けられるかがカギだからね。あそこまで自然体にイカサマをされちゃあ、お終いよ。

 

「ああ、クソッ! 1000万擦っちまったぜ!」

「あ~ら、だらしないわね」

「良いんだよ、どうせこんなの悪戯だからな。1000万くらいくれてやるさ」

「負け惜しみ~♪」

 

 うーん、参加者の会話に付いていけない。今のは敗けた側のバカップルだけど、金額がおかしいんだよね。何だ、1000万ぽっちって。勝った側も「まだまだだね」みたいな顔してるし。お金を湯水の如く使うとは、まさにこの事か。

 うーん、これは元貧乏人として物申したくなるわね。私のボンビー時代、マジで悲惨でしたよ。服が二着って。

 というか、このトリオは全員どん底からの叩き上げだから、あいつらの気持ちは理解出来んだろうなぁ……。

 実際に意味不明だもん。こんな事に金を使うなら、私らに一軒家を献上しろ。話はそれからだ。溝に捨てるくらいなら、全財産を寄こしやがれ。お前らに価値は無いが、お金は正直なんだよ。

 

「おや、その人たちは見習いかい?」

「はい。団長たってのお願いでしてね」

 

 常連と思われる恰幅の良いおっさんと笑顔(の仮面)で対話するジェフリル。ラ○アーゲームかな?

 こうして見ると、スマイル団って本当にティアーザ各地の生活に根付いてるよね。団長は千の貌を持つ女らしいし、色んな所で様々な職業に根差しているのだろう。文字通り仮面を使い分けている訳だ。

 そもそもスマイル団って、下っ端も含めて何人くらい所属してるんだろうね?

 

「幹部だけで7人は居ますね。全員合わせれば、22人くらいでしょうか」

『めっちゃ少ないな……』

 

 少数精鋭過ぎません?

 ――――――と、そんなこんなで半時間。

 

「お疲れ様です。それでは、しばらく休憩時間としましょう。このスマイル団バッチを持っていれば、よっぽどアレなゲームでもない限り遊ばせてくれる筈です」

「「『はーい』」」

 

 アレなゲームって何だろうね。「勇者達の道(ブレイブ・メン・ロード)」とかかな。負けたら「焼き土下座」みたいなね?

 まぁ、冗談はさておき、さっそく豪遊させてもらおうとしよう。とは言え、所詮は子供の小遣いレベルだろうけどな。

 だが、私にはそれで充分過ぎる。

 

『「777(ジャックポット)」だオラァッ!』

 

 先ずはスロットで荒稼ぎ。これは純粋に身体能力が物を言うので、普通に勝てる。流石にこの身体じゃスタープラチナみたいな真似は出来ないので、GOODなイカサマを仕掛けられない内にメダルを集めないとね。

 

「わーい、10倍だぁ~♪」

 

 ボブはビギナーズラックで、そこそこ稼いでいる。楽しいよね、ルーレット。

 

「ストレートフラッシュ」

「……ロイヤルストレートフラッシュです」

「チッ……持ってけドロボー」

「どうも~♪」

 

 アデルは大人顔負けでカードゲームを愉しんでいた。「楽」ではなく「愉」である。平然とイカサマし掛けてるし。流石は悪の組織の最高幹部。あくタイプ技はお手の物か。

 

「そこの可愛いお客様たち」「少し良いかしら?」

 

 すると、何処からともなく、仮面を被ったフリフリドレス姿の少女が2人、現れた。

 

『何だお前ら?』

「わたしはアリス」「あたしはリデル」「何時も仲良し双子姉妹」「そして、このカジノの番人でもあるわ」

『ふーん……』

 

 悪目立ちし過ぎたかな。そんで、見兼ねたカジノ側が仕掛けて来た、と。これは“裏側”に連れていかれるかもしれないな。

 

「さて、ここで質問なのだけれど」「随分とお楽しみのようだけど」「「もっと面白い事、してみない?」」

 

 やっぱりね。

 

「……どうします?」

『せっかくだから受けてみようぜ。面白そうだしよ』「えー」『「えー」じゃないの、お子様。お前も来るんだよ』「いや~!」

 

 こうして、私たちはジェフリルの許可もなく、「ザ☆スピードスター」の裏側へご案内される事と相成った。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

《ハッハッハッハッ! 子供が裏カジノって、マジで痺れて憧れるわ、鳴女さん!》

『悪い子供じゃのー』『ほんにのー』

『でも、ある意味彼女らしいわねぇ』『泡銭にも程がある』

『ぴきゅー』「「………………」」『楽しそうだわね……』

 

 画面の向こうで裏カジノへ突き進む鳴女(児童版)の姿を見て、鳴女一派(inしている零余子以外)が指を差して笑っている。他人事のように軽々しく。

 

(つーか、何時の間にこんなに集まったのよ!)

 

 そんな彼らを見て、ベア子が内心で歯噛みした。後ろめたい真似をしている自覚はあるので、こんな大っぴらに盛り上がられると、色々と思う所はある。

 

「……ふぁーあ」

 

 と、ソファーで文字通り夢中になっていた零余子が目を覚ました。その頭には鳴女やアデルの使用している物よりも簡易なヘッドギアが装着されている。簡易なのは見た目だけではなく性能も同じで、本当に一時的にしか夢に干渉出来ない。だから、さっさと弾き出されてしまったのだ。

 まぁ、本人としては非常に危ない状況だったから、文句は無いのだろうが。

 

『ぴきー』「あ、おはよう、ノームくん」

 

 嬉しそうに近寄って来たノームに、零余子が笑顔で応える。

 

《おや、お目覚めっスか。いやぁ、見事な負け犬っぷりでしたねぇ(笑)》

「うっさいなぁ。良いじゃん、別に。育てる時間が無かったんだよーだ!」

 

 見事な負け犬の遠吠えである。

 というか、そう……この鳴女一派大集合は、彼女から始まったのだ。

 

「眠れなくて暇だから、次のコラボ企画について相談を――――――」

 

 チャラトミが事態を嗅ぎ付けて高笑いに来てから30分後くらいに、零余子が現れた。寝惚けたのか、素でそうなのかは不明だが、暇潰しを兼ねて企画相談に来たらしい。

 

「え、何コレ、どういう状況?」

《カクカクシキジカ》

「何それ面白そう! 皆呼んで来なきゃ!」

 

 さらに、彼から事情を聞くと、止める間もなく仲間を呼んでしまった。

 そして、今に至る。実に簡潔で、ベア子にとっては傍迷惑な話である。おかげで部屋が余計に手狭く感じられる。これでバックベアードが人型形態を解除したらどうなるんだろう。

 さて、そんな迷惑女子の零余子であるが、鳴女とアデルがポケモンの世界で冒険していると聞くや否や、日頃の恨みを晴らさんとログインして挑んだはいいものの、急ごしらえのパーティーではとても歯が立たず、見るも無残に負けてしまった。まさに負け犬、尻尾を巻いて逃げる駄犬だ。

 さらに、割と余計な事を言い残して来ている。かなり暈してはいるが、鳴女の頭脳だと最悪あの一言だけで気付てしまうかもしれない。ベア子は気が気ではなかった。

 アデルには真実を知って欲しいが、鳴女にはあまり知られたくない。その矛盾した状況が今のベア子の心情である。

 ちなみに、バックベアードは「フェアプレイの精神」で黙っているが、ヴィクターは真面目に気付いていなかったりする。研究に没頭してしまうと周りが見えなくなってしまうのだ。

 無理もない。彼の開発した「夢幻干渉装置(ドリームバンド)」は、集合的無意識に干渉する事で、“誰もが夢見た世界”――――――つまりは平行宇宙にアクセス出来るのだから。色々と条件はあるし、その世界線の本筋に関わる事は不可能だが、それでも研究する価値はあるだろう。

 人の数だけ、世界(ゆめ)があるのだから。

 

「次は誰行く~?」

 

 すると、あまりの負けっぷりに、もう夢の世界飽きてしまったのか、零余子が次なる多次元宇宙の冒険者(プレインズウォーカー)を誰にするか提案し出した。

 

(これ以上余計な事しないでよ!)

 

 そう叫びたいが、対等主義者のバックベアードの目がある為、ベア子は何も言えず、黙るしかない。悔しいでしょうねぇ。

 しかし、アデルもアデルである。ここまでお膳立てしているのに、呑気に賭け事に興ずるとは何事か。頼むからいい加減に気付いて欲しい。こちらでは2時間も経ってないが、そっちでは数十日は過ぎているだろうに。

 だが、悪い事とは続く物で、ここに来て更に面倒な事態が巻き起こる。

 

『次はわしが行くのじゃー』

「なっ……!」

 

 これには流石にベア子も声が出た。

 まさか、アデルが一番気にしている人物(意味深)が夢の世界へ旅立とうとするとは。想定外にも程がある。永遠の幼女枠である丸子では、うっかり真実を話してしまうかもしれない。

 というか、零余子は上手くいったから良いけど、何かの事故で丸子が夢に取り込まれてしまったら、それこそ取り返しが付かなくなってしまう。タイミング的にも問題しかなかった。

 しかし、その零余子が現状を配信呼ばわりしていまったせいで、“丸子の動画配信を見られる”と思うと、ついつい心躍ってしまうベア子は、やはりバックベアードの娘なのかもしれい。何だかなぁ……。

 

『それじゃあ、ポケモンGOじゃ!』

「あっ……」

 

 そして、またしても間髪入れずに丸子がヘッドギアを嵌め、夢の世界へ旅立ってしまった。その上、定位置は六部の膝枕。リア充爆発しろ。

 

(どうなっちゃうのよ、これ……)

 

 ベア子は考えるのを止めたくなったが、ギリギリで思い止まった。

 だが、本当にどうなってしまうのだろう。この物語が何処へ向かうのか、それは創造主にすら、もう分からない……。




◆ジャカロップ

・ティアーザ図鑑№032
・分類:おねだりポケモン
・タイプ:フェアリー
・性別:あり
・特性:メロメロボディ/てきおうりょく/フェアリースキン(隠れ特性)
・種族値
 HP:45
 こうげき:50
 ぼうぎょ:30
 とくこう:55
 とくぼう:30
 すばやさ:125 
・図鑑説明
 オドシシのように立派な二本角は見掛け倒しで、触ってみると軟らかく温かい。光合成に使っていると言われている。非常に警戒心が強く、敵と遭遇すると脱兎の如く逃げ出すが、焚火をする旅人には可愛い仕草で餌をおねだりする強かさも持っている。
 日中は光合成で栄養を蓄えているが、夜は月の光で進化のエネルギーを溜め込んでおり、石に反応して様々な形態へ進化するという。
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