鳴女さんの令和ロック物語   作:ディヴァ子

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 このニブチンガァ!


鳴女さんの悪意とアデルの決意

 アリス&リデルに案内されたそこは、

 

「うぉおおおっ!」「うがぁあああ!」

『イオラァッ!』『レディァアンッ!』

 

 ポケモンに使役された(・・・・・・・・・・)人間が死闘を繰り広げる(・・・・・・・・・・・)、地下闘技場でした。

 ハァ~イ、皆。ちっちゃなちっちゃな鳴女さんだよ~。

 いやぁ、二次創作とは言え、ポケモンの世界に迷い込んでから随分経つけど、バッチはまだ3個目だし、私たちは何時になったらクリア出来るんだろうね。正直、この展開に飽きている人も居ると思うんだ、結構な割合で。

 それでもね、冒険は途中で投げ出しちゃ……駄目なんだよ。

 あるいはプロットが路頭に迷っている、とも言える。そっちの方が普通に駄目だわ。

 まぁ、それはそれとして。

 双子姉妹のアリスとリデルの誘いに乗る形でやって来たが、この有様には驚いたね。ポケウッドの「タイムゲート トラベラー」じゃん。使役してるのレディアンとイオルブだし、使われてるのカラテオーとヤマオトコーだし。やっぱりヒューマンボールが使われてるのかな?

 ともかく、ここが真面な施設でない事は、よーく分かる。流石は裏カジノって所か。

 

『何なんだ、ここは?』

「見ての通り」「闘技場よ」「参加者は人間のみ」「生き残った者だけが出られる」「ここはそういう場所」「死の剣闘大会ね」

『ふーん……』

 

 あ、主役は人間なのね。口振りから察するに、参加者同士で殺し合い、最後の一人だけが脱出権(えいよ)を勝ち取れるって訳だ。マジで剣闘士じゃん。

 

『でも、どうやって人間同士で争わせてるんだ? 状況から察するに、指示を出すのはポケモンなんだろ?』

「その通り」「これを見て」

 

 と、アリスとリデルが手品の要領で“とあるボール”を見せてきた。

 

「これはわたしたちが開発した「ヒューマンボール」」「人間のみを対象とした(・・・・・・・・・・)唯一無二のボールよ」「これに囚われたが最後、ポケモンが許してくれるまで解放される事はない」「あとは何かの事故で死んだ時くらいかしらね」「指示系統はポケモンバトルと一緒」「その人間が可能な技(・・・・・・・・・)を最大4つまで駆使して戦うの」「瀕死になった方が負けね」「もちろん、ポケセンなんて便利な物は使えないから、大抵はそのまま死ぬけどね」

『へぇ……』

 

 やはり、ヒューマンボールなのか。それなら納得だな。

 

「な、何でこんな事を!?」

 

 しかし、理屈が納得出来ないというか、そもそも現状を受け入れられない奴が1人。むろん、お子供なボブである。

 

「それはどういう意味?」「どうしてこんな非人道的な真似をしているのかって事かしら?」

「そうだよ! この人たちが何したって言うんだ!」

 

 ま、初見じゃ驚くよな。

 だけど、よく考えれば分かる事だろうに。

 幹部か下っ端かは知らないが、こいつらはスマイル団の一員だ。仮面を付けてるし、ジェフリルもそれっぽい事を仄めかしている。凡そ間違いないだろう。

 そして、スマイル団はポケモンを傷付ける人間(・・・・・・・・・・・)を許さない。ようするに、こいつらは“それだけの事”を仕出かしているのである。

 

「こいつらは、所謂マフィアや密売人に当たる人間」「つまりは裏社会の住人よ」「その中でも、とびっきり質の悪い――――――ポケモンを使い捨てるように殺した奴らを集めたの」「自分がされる側になってもらう為にね」「部下はわたしたちが皆殺しにしているから逃げようは無いし」「そもそも生きて還すつもりもない」

「そんな……」

 

 おいおい、驚いてる場合か、ボブよ。私たちがここへ誘い込まれたって事は、つまりは“そういう事”なんだろう?

 

「もちろん、あなたも例外じゃない」「団長やジェフリルは許したようだけど、あたしたちはそんなの知らない」「知った事じゃない」「ポケモン(トモダチ)を死なせた人間は、「死」以外の償いをさせる気が無いのよ」「だって……」

 

 絶句するボブに、アリスとリデルがピエロの恰好に早着替えして、仮面を半分だけ外してから宣告する。

 

「「()たしたち、人を殺すのが、大好きなんだもぉ~ん♪」」

「………………!」

 

 なるほどね。子供の心が純真だと思うのは、人間の大人だけって訳だ。どういう教育を施したら、こんな面白い人間になるんだか。

 それにしても、スマイル団に狙われ過ぎだろ、ボブ。団長の正体がアレだったから仕方ないとは言え、全力で命を刈り取られそうになっとるやん。

 

「「先ずは一投」」

 

 すると、有無を言わせずアリスとリデルがヒューマンボールをボブに投げ付けた。2つ同時に繰り出す事で、確実に捕獲する狙いがあったのだと思われる。

 

「ひっ!?」「……っ、させませんよ!」

 

 だが、すっかりヒーロー&ヒロインの関係になってしまったアデルが庇ったせいで失敗。代わりに彼女自身が捕獲されてしまった。

 ――――――って、あれ?

 

『何で私まで~!』

 

 ボサッと見てたら、残る流れ弾が私に飛んで来た。理不尽なり~。

 

「あらら、まさかの大失敗」「アデルは良いとして、ナキメまで収まっちゃうとは」「でもこれ、既にオッズが始まっちゃってるのよね」「仕方ない。ジェフリルのお気に入りならヒューマンバトルでも勝ち残れるだろうし、今は“こっち”を先に片付けてしまいましょう」「すぐに殺すのは勿体無いけど」「ここまで来て、逃がす方が馬鹿よね」

「ひぅぅ……!」

 

 ボールの外から、アリスとリデルの世間話が聞こえる。“あいつムカつくぶっ殺そうよ”という、悪ガキなら珍しくもない会話である。本当に殺してしまう事を除けば、だけど。

 あーらら、ボブも遂に年貢の納め時かー。

 

『パイモォンドォ!』『ガニマタァッ!』『チャバヌキィ!』

「「………………」」

 

 だが、奴の手持ちが自発的にボールから出て立ち塞がったらしく、流石にアリスとリデルも動きを止めたようだ。

 

『しゃらんら~♪』『ゑ?』

 

 さらに、何故か私までボールから繰り出された。後ろを見れば、そこには「してやったり」という顔のラランテスが。という事はつまり、

 

『お前、何時の間に賭けに参加してやがったんだ!?』

『しゃらんらら~♪』

『何ィ、前に使った事があるだとぉ!?』

 

 曰く、ここで“前のトレーナー”を処分したんだとか。お前も悪魔やないか。

 

『しゃらしゃら、しゃらららんが』

 

 しかし、私を始末するつもりは無いらしく、単に嫌な予感がしたから先回りしていたらしい。そりゃあ、見知った顔が死の裏舞台に案内しようとしてたら、嫌でも気付くよな。

 だけど、何でそんな事を?

 

『しゃららきー』

 

 ああ、十中八九ボブ狙いだろうけど、三人揃って連れて行こうとしたから、咄嗟に判断したのか。

 ちなみに、もう1個の方はアデルのカロンダイトが持ち主扱いになっているらしい。何気に凄いなあいつ。

 ……つーかさ、

 

『何で普通にポケモンと会話で来てる訳?』

「それがヒューマンボールの機能」「ポケモンの意思を言葉として伝える事が出来るのよ」「まぁ、わたしたちはそんな物がなくても話せるけどね」「友達だからね」

『ヤベェな、スマイル団……』

 

 Nの同類ばっかりじゃん。末恐ろしいクソガキ共だわ。

 

「それはそれとして、出て来たのなら丁度良い」「ナキメはどうする? 参加自体は強制だけど、別に“降参”という形で棄権しても良いし、その場合でもペナルティとかは負わせないわ」「そのまま出られるし、何なら慰謝料とかも払うけど?」

『うーん……』

 

 確かに美味しい話ではあるんだけど……、

 

「………………!」

 

 チラリとボブの方を見ると、怯え切った目で助けを求めて来ていた。

 

 ――――――ニヤリ。

 

『いや、参加しよう。アデルも一緒にな』

「「ゑ?」」

『そんで、アデルが優勝したらボブを含む全員で地上へ生還して、私が優勝したら私だけが生還って事にしよう』

「「ああ、なるほどね……」」

 

 私の魅力的な提案(・・・・・・)に、アリスとリデルが顔を綻ばせる。

 いやねぇ、私もいい加減付き合いきれなくなってきてるのよ、アデルやボブ(おまえら)との友情ごっこ。ここいらでそろそろ白黒ハッキリ付けようや。

 私だけが(・・・・)楽しめるようにねぇ(・・・・・・・・・)

 

『カロォオン』「……良いでしょう、受けて立ちます」

 

 と、影の中から現れたカロンダイトに呼び出され、アデルが憤懣遣る方ない表情でこちらを睨み付けて来る。良い度胸じゃねぇか、このニブチン女が。

 言っとくけど、怒って良いのは私だけだよ?

 ……何せ、もう知ってるからな(・・・・・・・・・)

 

『それじゃあ、ちょっくら殺し合いと行こうか』「望む所です」「あわわわ……」

 

 こうして、私たちは闇のゲームへと身を投じるのであった。

 とりあえず、“私の為に争わないで”みたいな顔止めろ、ボブ。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 アデルは激怒した。

 かの邪知暴虐の女王を除かねばならぬと決意した。

 アデルには本当の悪魔(ニンゲン)が分からぬ。

 アデルはベアード軍の最高司令官である。常に敵と戦い、蹂躙して来た。

 けれども、底知れぬ悪意に対しては、人一倍に鈍感であった……。

 

 ――――――冗長が過ぎたか。

 皆さんご機嫌よう、アデル・フォン・アスワングだ。この世界ではポケモントレーナーをやっている。どうしてこうなった……。

 さらに、今は自分の手持ちポケモンに使われる魔法少女になっている。本当に、何がどうしてこうなったのか、さっぱり分からない。

 だが、これだけ(・・・・)は分かる。鳴女は一貫して敵なのだと。

 私は油断していた。安心しきっていた。大敵がすぐ傍に居るというのに。

 そう、鳴女は最初から(・・・・・・・)私に協力するつもりなど(・・・・・・・・・・・)無かったのである(・・・・・・・・)。この地下闘技場で行われるヒューマンバトルに託けて、自分だけ助かろうとしているのが、その良い証拠だ。それどころか、この瞬間を迎えるまで内心で嘲笑い、後は存分に嬲りものにしようとしている。これを邪悪と言わずに何と言うのか。

 ……正直なところ、私は彼女と分かり合いたいと思っていた。友人関係は無理かもしれないが、仲間意識くらいは共有出来れば、と願っていた。この夢の旅路で、少しでも距離が縮まって欲しかった。

 ベアード軍の最高司令官として在り続けてきた身として、自由奔放・唯我独尊に今を生きる鳴女が羨ましかったのかもしれない。

 しかし、それは叶わぬ夢、虚しい妄想だった。

 鳴女は私を仲間だと思っていないし、何なら生き物として見ていない。彼女にとって、アデル・フォン・アスワングという女は、叩けば踊り狂う玩具でしかないのである。

 そんな鳴女が、私の為に丸子を差し出す訳が無かった。

 事実、あの会議でもベアード軍に協力するとは言ったものの、丸子の事柄に関してははぐらかしていたような気がする。

 なのに、彼女の最終選別試験(むちゃぶり)や大会議を乗り越え、宴の席を共に過ごし、この世界を共に歩んで来た事で、すっかりその気になってしまっていた。今思うと滑稽な話だ。

 そう……そうだとも。世の中、結局は騙される奴が悪い。幾ら嘆こうが、訴えようが、負け犬には遠吠えしか出来ず、負け組は枕を濡らすしかない。

 だが、私はそんな事は認めないぞ。

 私はアデル・フォン・アスワング。ベアード軍の最高司令官。

 しかし、今はただの人間、子供のアデルちゃんである。地位も名誉も、ベアード様の思惑や鳴女の事情など知った事か。何で私ばっかりこんな目に遭わなきゃいけないんだ。

 以心伝心? 何それ、美味しいの?

 誰がこの夢の舞台を(・・・・・・・・・)用意した(・・・・)のかは知らないが、そもそも何でそんな回りくどい事をするんだよ。

 これでも若干脳筋な自覚はあるから、言われなきゃわからないし、それを分かって黙っていた奴らの全員がムカつく。鳴女はもちろん、ベアード様も、ベア子様も、その他大勢も、皆同類だよ。

 もう知らない。頼みもしない。我慢ばかりの中間管理職なんて、もううんざりである。この危機的状況に置かれて、自分の本音が分かったような気がする。

 皆死ね。私の邪魔をする奴は皆殺しにしてやる。倫理観だの忠誠心だの、そんな物クソ喰らえだ。もうやーだ、やーめた。

 こうなったら、力尽くで私に従わせてやる!

 

「うぉおおおおおっ!」

「………………」

 

 ああ、そう言えば今は対戦中だっけ。カロンダイトは「ガンガンいこうぜ」としか言って来ないし、この如何にもあくどい社長閣下様みたいな野郎はスットロいしで、全然気付かなかった。

 つーかさぁ、

 

「ウザい」「ボゲェ!?」

 

 私は八つ当たり同然に、男の腹を貫いた。トレーナーポケモンのコロトックが悔しがっているが、割とどうでも良い。私は今、このムシャクシャを誰かをグシャグシャにして晴らしたいんだよ。

 だから、死ね。

 そして、早く次の生贄を寄こせ。

 鳴女とは決勝まで行かないと殺し合えないようだから、サクサク殺したいんだよ。

 

「……どうした、来ないのか?」

「ひっ……」

「来ないなら、こっちから行くぞ!」

「うぎょあああああああああああ!」

 

 私は次なる対戦相手――――――小規模なマフィアのボスっぽい男の股間を掴み、握り潰しながらもぎ取った。それだけでもう、男は海老のように跳ね回り、やがて息絶えた。あまりにも呆気ないので、死体を雑巾絞りにして血の雨を降らせてやった。トレーナーポケモンのバタフリーが絶句している。いい気味である。

 嗚呼、だけど足りない。この煮え滾るマグマのような怒りは、こんな“お遊び”じゃ収まらない。もっと、もっとだ。Hurry!! Hurry!! Hurry!!

 

「や、止めろ、来るなぁあああっ!」

「悲鳴を上げろ! 豚のようなぁ!」

「プギィイイイイイイイイイイッ!」

 

 また一つ、命が散った。薄汚い花火だ。何の価値もない。

 

 ――――――嗚呼、何て卑しいんだ、私は……。




◆イオーム

・ティアーザ図鑑№024
・分類:おかめポケモン
・タイプ:エスパー/ひこう
・性別:あり
・特性:マイペース/びびり(隠れ特性)
・種族値
 HP:75
 こうげき:35
 ぼうぎょ:52
 とくこう:102
 とくぼう:51
 すばやさ:92 
・図鑑説明
 とてもマイペースなポケモン。飛ぶのはあまり好きではなく、枝に止まってボーっとしている事が多い。おかめ模様のポッチャリ顔が可愛らしいと人気のポケモン。
 その一方で物真似が上手くお喋りであり、ペラップと仲良くお話している姿が度々目撃されている。そこがまた可愛いと、両方手持ちに入れるトレーナーも結構いる。
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