鳴女さんの令和ロック物語   作:ディヴァ子

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 狩りの前の準備は大事。


クエスト①:拠点の確保

『お~ぷん、せさみぃ~♪』「何でや」

 

 さーて、いざ行かん、モンハン世界へ!

 

「おー……」

 

 襖を開けた先に待っていたのは、色濃い原生林でした。

 天を突くような巨木が並び、地面の殆どが落葉で埋まるか苔生している。そこかしこに流れる小川は水道水の数百倍は透き通り、匂い立つ程に美しい。今の日本じゃ絶対に見られん光景やな。あそこの岩とか、削ったら身体が徐々に部分欠損する呪いが掛けられそうだし。

 

「まさに「もののけ」って感じですね」『マジでいるけどね』『ピキピキ』『遠足で来たら楽しそうじゃのー』『……虫がウザい!』『外って素晴らしいわー』

 

 付いてきた鳴女一派(チャラトミ、零余子+ノーム、丸子、六部、姑獲鳥。他はお留守番)も感無量である。

 

『思わず焼き払いたくなっちゃうわね』『環境破壊は気持ち良いですもんね!』

 

 対するベア子とヴィクターは情緒の欠片もない台詞を吐いている。自重しろ。

 

『つーかさぁ、何でお前らまで来たんだよ?』

『アデルが心配で』『ベア子ちゃんが心配で』

 

 何て優しい世界なんだ。ウチだったら「知るか死ね」で終わりなのに……。

 余談だが、地下闘技場で瀕死に追い込んだ事を丸子は気にせず、六部も仕方なしとしたそうな。明らかに喧嘩売ってたもんな、あの時の丸子は。

 

「しかし、こんな森の中にいて、大丈夫なのか?」

『大丈夫だ、問題ない』

「うん、絶対ヤバいよね?」

 

 そりゃそうじゃ。モンスターの棲み処だもん。

 

『ギャアッ! ギャァッ!』『ギュィーギュィー!』

 

 さっそく、朱色の毛が生えたデイノニクスみたいな小型の鳥竜種――――――イズチの群れが現れた。動きもそれに近いが、尻尾がゼノモーフよろしく鎌状なっている為、尾撃も織り交ぜて来るのが厄介な奴だ。

 頭数は3。所謂「狩猟班」に相当するグループで、陽動+挟撃をするスリーマンセルになっている。

 

「おい、どうするんだよ? こっちは武器も防具も持ってないんだぞ?」

 

 明らかにこちらを襲う気満々のイズチグループを前に、アデルが渋い顔で言う。

 

『普通に殴り勝つさ』

 

 という事で、私は縮地走法で一気に距離を詰め、一番近いイズチの顎を撥ね上げ、打ち下ろし、タックルで吹っ飛ばした。それだけでイズチはくたばった。命とは儚い物である。

 

『私らは人間じゃないんだぞ? 大型ならまだしも、小型モンスターに苦戦する程弱くは無いだろうに』

「確かに……」

 

 そう、私たちは強い。人間ではないからだ。ゲームを見る限り、この世界の住人も充分に人間を辞めているが、それでも私たちには及ばないだろう。

 むろん、私たちとて、好き放題出来る訳ではない。“入界”にあたり、様々な制限が掛かるからである。

 先ず、魔法攻撃などの飛び道具は使えない。その世界における“世の理”が違う為か、放電が出来る条件が決まっているように、空気中をエネルギーが上手く伝導しないのだ。

 一応、オーラを放出するような事は可能だが、すぐに霧散してしまうので、妖気で押し潰すような真似は推奨出来ない。

 ただし、逆に言えば空気中でなければ問題無いので、武器や防具、己の拳などに宿して叩き込む事は可能。さっきの攻撃も、拳に妖気の爆弾を付与した状態で殴ったから二発で落ちたのである。

 さらに、私に関しては無限城の転移能力が使えない。世界間の繋がりを維持する為に、出入り口がその2つに固定されてしまうからだ。「モンハン世界←無限城→私たちの世界」みたいな感じ。扉の向こうはすぐブリガドーンなので、便利と言えば便利だが。無限城を退避所にするのも有りっちゃ有り。

 つまり、私たちは弓矢や銃弾以外の飛び道具が使えない、身体能力だけが頼りの超人みたいな状態なのである。

 

「そうと分かれば……オラァッ!」《ヴェィッ!》

『ギャア!?』『ギェッ!』

 

 もちろん、その程度なら小型モンスター程度では相手にならないのは実証済み。今度はアデルとチャラトミがそれぞれ残るイズチたちを殲滅した。

 

『さて、移動するか』

 

 しかし、何時までも留まっているのが良くないのも事実。何故なら、こいつらを含むデイノニクスタイプの鳥竜種は親玉を呼び寄せる習性があるからだ。流石に何の備えも無しに大型モンスターを相手にしたくはない。

 

「当てはあるの?」

『無けりゃ動かんよ』

 

 そう、私は1度だけモンハン世界に先行している。ゲートを作ったんだから当たり前だが。

 

『……イズチが群生しているという事は、「カムラの里」ですか?』

 

 と、ベア子が質問する。お前、さてはライズまでやってるな。ヘビーユーザーめ。

 

『いいや、「コムリの里」って場所だな。この先の谷間にある』

 

 だが、残念ながらカムラの里でエンジョイは出来ないんだなー。

 ここから一番近く、拠点として現実的なのは、少し進んだ所の大きな谷底にある小さな村「コムリの里」しかない。

 

『どんな所ですか?』

『盗賊村』

『将来的に滅びそうな名前ですね……』

 

 うん、私もそう思う。暗い未来で千年アイテムの材料に使われるビジョンしか浮かばない。

 一応、まだ遠目に見ただけだが、どいつもこいつもならず者って感じで、装備も職業:盗賊みたいな風体だし、カムラの里のような和気藹々さを期待すると、かなりガッカリすると思う。ノリで言えば、西部劇か世紀末を想像するとマシかもしれない。

 まぁ、侵略拠点にするつもりだし、別に馴れ合う必要はないだろう。その方が気楽である。

 

『という事で、ポケモンGO!』『行け、お前たち!』

『ギガァッ!』『ヒュヴィッ!』『ウルヴォッ!』『ジュラァッ!』

 

 だから、ポケモンに跨り、とっと拠点(候補)へGOだ。

 ちなみに、ボルデビサスには私とチャラトミ、ヒドクーイには零余子とノーム、ウルファングにはアデル一行、ジャラガンダーには丸子と六部が乗っている。ポケモンって、名前に反して割とデカい奴いるよねー。最大に関しては精々恐竜サイズだけど。

 そして、自前のオトモに跨り進む事しばらく。

 

「ここがコムリの里……なのか?」

『まぁ、何て言うか、だよね……』

 

 漸くコムリの里に辿り着いたが……本当に何と言うか、だよなぁ。

 建物の雰囲気はカムラの里と似ているが、暗色系かつ飾りがおどろおどろしく、何処かの狩猟民族の集落に迷い込んだ感が半端じゃない。住民が手に槍持って取り囲んで来てもおかしくなさそう。流石に住民はモンハンらしい格好だが、それでも漂う世紀末感が治安の悪さを臭わせる。

 連れてきた自分が言うのも何だが、大丈夫なのかここ?

 まぁ、詳しく知る必要性は皆無だから、さっさとハンターギルドに行こう。里で一番デカい建物がそれだから分かり易くていい。外観はギルドと言うよりシンジケードだけど。

 という事で、さっそくお邪魔しまーす。

 

『うーむ……』

 

 内部も大体想像通り。こいつら絶対に堅気じゃない。ジロジロ見られてるけど、目を合わせないようにしよう。関わると面倒臭そうだから。

 

「いらっしゃいませ~。外から来た方ですね~?」

 

 チンピラ共の波間をすり抜け、ギルドのカウンターまで辿り着くと、糸目な美人さんに歓迎された。雰囲気や喋り方も相俟って、何だか猫みたいな受付嬢である。個人的に“糸目キャラには何かある”と思ってるから、こいつには注意しておこう。

 

「えっと、ハンターに登録したいんですが」

 

 この中では一番真面目っぽいアデルが代表して、ハンター登録の手続きをする。

 

「はい、構いませんよ~。こちらの用紙に記入して下さ~い。あと、新人講習は必ず受けて下さいね~、受付は何時でもやっていますので~」

 

 間の抜けた声で記入用紙が渡されたので、とりあえず筆を走らせる。書き書き。……はい、お終い。

 

「はいはい、どうも~。……あらま、既にイズチを1匹ずつ討伐してますね~。武器をお持ちなので~?」

「はい、一応は。でも、ここで新たに買い替えようと考えています」

「なるほどなるほど~。分かりました~」

 

 うむ、上手いぞアデル。伊達に最高司令官はやってないって事か。何時もこうなら言う事ないんだけど……。

 その後の初心者講習兼里クエスト★1シリーズについては恙なくクリアした、とだけ言っておく。既に小型モンスターを倒してるから、納品だの採集だの操竜だの、ライズでお勉強済みの事ばっかりだったしね。

 ただ、1つだけ違う要素として、外伝作品の「ストーリーズ」における「オトモン」のように、野生のモンスターをオトモにする事が出来るようになっている点が上げられる。専用の道具を使い、モンスターの急所にスイッチ式の猛毒カプセルを移植する事で、“恐怖”により従わせる、というシステムのようだ。やってる事がネオ・ボランティアと一緒なんだよなぁ……。

 ま、私たちにはモンスターボールという、もっとずっと使い易く、オトモにも優しい道具があるから、何の問題も無いけどね。一先ず技術だけパクっちゃいましょう。

 

「随分と早かったですね~。しかも、一発で合格とは、驚きです~。……そんな貴女方にビッグチャ~ンス♪ つい最近、礼拝堂跡の付近にオサイズチが巣食っていて、とっても邪魔なんです~。退治してくれたら、ハンターランクを1つ上げちゃいますよ~」

 

 おお、さっそく来たか、緊急クエスト。これをクリアしないと何時までもロクなクエストを受けられないし、武具や装備の強化も出来ないので、これは受けるしかないよねー。

 

「はい、お願いします」

「……ちなみに、クエストは基本的にソロかツーマンセルなので、チーム分けをして下さ~い。別に全員で行っても良いですが、ロクな稼ぎになりませんよ~?」

 

 なるほど、そう言えばモンハンって基本はソロプレイだもんな。ターゲットは1匹しかいない訳だし、稼ぎが減るのも納得である。

 ならば、さっそく独断と偏見で振り分けるとしよう。オトモは貸し出しにするとして、なるべく戦い易いコンビにしないとな。

 ちなみに、組み合わせの結果はこんな感じ。

 

・チーム「マガイモノ」……ハンター:私+チャラトミ、オトモ:ボルデビサス、ラランテス

・チーム「ヒカゲモノ」……ハンター:零余子+姑獲鳥、オトモ:ヒドクーイ、ジャカロップ

・チーム「ソトナルモノ」……ハンター:ベア子+ヴィクター、オトモ:アズレーン、ムコニャル

・チーム「ヤッカイモノ」……ハンター:丸子+六部、オトモ:カロンダイト、イオーム

・チーム「ブライモノ」……ハンター:アデル+現地の人、オトモ:ジャラガンター、ウルファング

 

 ……1つだけ仲間外れがいるとか言ってはいけない。

 

『お前だけボッチだな(笑)』

「やかましいわ!」

 

 だから、代わりに私が言っておいた。やーいやーい。

 まぁ、現地の人と仲良くやってくれ。あわよくば情報を盗めるよう努力しろ。ガンバ!

 その後は各々が初期の装備を整え、里の出口に立った。真面なのが「ブライモノ」の連中しかいないな。

 

『それじゃ、行くとするか。また生きて会おう』

「勝手に殺すな」

 

 さぁ、それじゃあ、オサイズチを狩りに行きますかぁ!




◆コムリの里

 カムラの里から程近い、巨大な谷底に造られた小さな集落。立地条件の関係上、完全な自給自足であり、交易などはしていない。比較的最近出来た場所なので、まだまだ発展途上という感じ。
 里長のコムリは元々カムラの里の出身であり、フゲンたちと凌ぎを競っていたライバル関係だったが、50年前の百竜夜行でマガイマガドと交戦した際に心が折れ、荒んでしまい、誰も近寄らない谷底で新たな里を起こした。
 その為か、住人は訳アリな奴ばかりで、一応は真面なクエスト自体もしているが、他にも行商人や他のハンターを襲って身ぐるみ剥いでしまうなど、職業:山賊みたいな連中である。
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