鳴女さんの令和ロック物語   作:ディヴァ子

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 奇しき赫耀のバルファルク強ェ……。


クエスト⑥:百竜夜行

「諸君! 遂にこの時が来た! 来てしまった! しかし、恐れる事は無い! 苦汁を舐めさせられたのも過去の話! 我々は万全の準備と対抗策を用意して来た! つまり、負ける要素など無い! 我々は勝てる! 絶対、確実にだ! 故に、立ち上がれ、同士たちよ! この百竜夜行を乗り切ろうぞ!」

「おーっ!」「やってやるぜぇ!」「汚物は消毒だぁ!」「ヒャッハー!」「漲るぁっ!」「ぶっ殺してやるぜ!」

 

 何だかギルドが盛り上がっている。里中の人間が集まり、武器と防具で身を固め、殺る気と熱気で溢れ返っていた。

 その中心に立つは、里長のコムリ。老いて尚力漲る姿は、里のハンターたちにも負けていない。

 

「……何だこれは?」

 

 まぁ、そんな狂気的なヒートアップに、私は付き合うつもりなど無いのだが。

 ――――――ごきげんよう、諸君。アデル・フォン・アスワングだ。

 今朝は寝起きが悪く、そもそも狩りに出掛ける気分でも無かったので、久々にお昼過ぎまで眠り扱けるという怠惰な時間を過ごしていたのだが、急に里が騒がしくなり、どうしたものかとやって来たら、この有様という訳である。

 ……イカンなぁ。これじゃあ、まるで鳴女じゃないか。流石に気を抜き過ぎているか?

 

「いや、何って……百竜夜行ですよ、アデルさん!」

 

 と、ドッタンバッタン大騒ぎに加わらなかった、この世界における私の相棒たるメラル女史が、呆れ半分で言って来た。

 いや、そんな事を言われても、私からすれば完全に他人事なんだけど。どいつもこいつもロクデナシの救いようのない人間ばかりだし、こんな里が幾ら滅ぼうがどうでも良い。むしろ消えた方が世の為、人の為だろう。

 一応、メラルはまだ真面なので、少しくらいは気に掛けるが、こいつもこいつで問題ありなので、命を懸けてまで守る気にはなれない。精々、逃げ道を確保してやるだけだ。

 異世界人に肩入れし過ぎるとロクな事にならないと、前回の転移で学んだんだよ。私にとって大事なのは、妹のアニエスだけである。

 しかし、今は鳴女たちが出払っているので、完全な他人事とは言えないだろう。少なくとも、奴らが信号弾を見て、クエストから帰って来るまでは持たせなければ。戦い方は適当で良いや、面倒臭いし、阿保らしいし。

 

「……滅茶苦茶やる気無さそうですね」

「実際に無いしな」

 

 ついでに義理も義務も無い。仕方なく少しだけ付き合うだけだ。

 そもそも、半分旅人のような外から来たハンターに、そこまで求める事自体が間違いだろう。何で赤の他人の為に命を張らなきゃならんのか。馬鹿馬鹿しいにも程がある。

 とは言え、真面目に戦わないとこちらも危ないので、殺る時は殺るさね。

 ――――――ここの砦、防衛箇所が一つだけで楽な分、途中で逃げ出そうとしてもモンスターに殺られるから、ある程度は敵を削らないとどん詰まりになるし。里長の性格の悪さが伺える。

 

「まぁ、やるだけの事はするさ」

 

 さぁて、一欠けらもやる気は無いけど、一丁やりますか、百竜夜行。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 コムリの里の砦。それは里の入り口をそのまま利用したもので、カラクリ式のバリスタや大砲を起動すれば、即ち砦の完成である。

 実に簡素というか手抜きな仕様だが、逆に言えば常日頃からモンスターの襲撃に備えているという事であり、この里独自の戦い方を考慮すれば、これでも遜色は無い。

 だが、そうは問屋が卸さないのがモンハンのにくい所。これだけ装備を整えても、失敗する時はあっさりと失敗するのだ。

 それに現れるモンスターの種類、という問題もある。ゲームだとバサルモスやヨツワミドウにフルフルが破砦役で、オサイズチなどの突撃部隊とアケノシルムら航空戦力が全力で邪魔をしてくるという、中々に厭らしい構成だったが、果たしてコムリの里を襲うチームは如何なるものか。

 そして、そんな化け物たち相手にどう立ち回るのか、とくと拝ませてもらうとしよう。

 

「来たぞぉ!」「百竜夜行の始まりだぁ!」

 

 と、さっそく百竜夜行開始の合図が出た。左右を断崖絶壁で塞がれた狭き門に、無数のモンスターが押し寄せる。

 ……で、肝心の構成メンバーはと言うと、

 

・破砦役:グラビモス、バサルモス、アンジャナフ

・突撃隊:ジンオウガ、イビルジョー、リオレイア、ラージャンetc

・機動隊:バゼルギウス、リオレウス

 

 いやいやいやいやいや、ふざけてんのか。

 破砦役は何となく納得出来るが、イビルジョーとラージャンを同居させるなよ。空はバゼルギウスがカバーしてるし。滅茶苦茶やり難いじゃん、これ。

 

「皆の者、モンスターを解き放て!」

「「「「「「「了解!」」」」」」」

 

 しかし、里長以下コムリの住民たちは慌てる事無く、自らの僕たちをけし掛けた。弱い物はクルルヤックルから強い物はディノバルドまで、様々なモンスターが戦場へ投入される。どいつもこいつもヌシモンスターのように狂走し、百竜夜行の魔物たちへ襲い掛かった。

 

「ひゃはははは!」「汚物は消毒だぁ!」「死んだモンスターだけが良いモンスターだぜぇ!」

 

 さらに、乱戦の最中へ放たれる、ハンターたちのバリスタ攻撃。中には大砲や速射砲も混じっている。

 なるほど、上手いやり方である。ある意味、里が一丸となって戦っていると言ってもいい。高みの見物と言われれば、それまでだが。

 だが、それが何時までも通じる程、世の中甘くは無かろう。

 

『ガヴォオオオッ!』『グラヴォッ!』

 

 さっそく、押し合いへし合いをすり抜けた破砦役が、関門へ向かって突進して来た。面子はアンジャナフとグラビモス。相手に取って、不足は無い。

 

「メラル!」「了解です!」

 

 先ずはメラルの仕掛けた痺れ罠で拘束。動きを止めた所に、Gタル爆弾をお見舞いして部位破壊を行う。

 

「いざ参る! せやぁっ!」

『ギャオォッ!』『グヴォッ!?』

 

 そして、私はここでようやく武器を構えた。特製のクイーンレガリア(操虫棍)を手に宙を舞い踊る。操虫棍は空中戦が得意な機動兵器だ。矛先から相手の体液を吸い取り、武器に様々なスキルを付与しながら戦うのである。

 だが、エキスを取れないと火力が出ず、ガードも出来ないので、戦闘中の管理が大変な、玄人向きの武器でもある。実に私好みの武器だ。双剣とどちらにしようか迷ったが、丸子が使っていたので止めた。戦力の幅を出す意味でも、被りは避けたい。

 

『グヴォオオッ!』

 

 おっと、グラビモスが復活したか。アンジャナフはメラルとオトモたちに任せて、私はこいつを仕留めるとしよう。拘束中にエキスはたっぷり吸わせて貰ったので、最早遠慮はいらない。

 死ぬまで叩きのめしてやる!

 

「ハッ! フッ! トァッ!」

『グヴォォオオォン……ッ!』

 

 突きから始まる舞空棍術を喰らわせ、反撃を砦の壁走りで躱しつつ背後へ回り、再び空へ駆け上がり降竜でぶっ叩き、グラビモスを倒した。

 百竜夜行に参加するモンスターは、見た目程の強さは無い。恐怖に駆られ、及び腰のモンスターなど、化け物でも何でもない。ただの木偶の坊である。

 そんな感じで、大半のモンスターを同士討ちで減らし、討ち漏らしを私たちハンターが狩り、砦を守り続けたのだが、

 

『グルヴォオオオッ!』

「来たか……」

 

 ここでまさかのマガイマガドが乱入。

 ジンオウガと同じ牙竜種で、落ち武者と猛虎を掛け合わせたような姿をしており、鬼火纏というライズ初出の特性を利用して、回復の暇を与えない猛攻を仕掛けて来る。飛竜種どころか古龍にすら平気で喧嘩を売る、とんでもないモンスターだ。

 さらに、モンスターを食えば食う程に体力が無尽蔵に増えていくという特殊能力を持っていて、百竜夜行に便乗して現れる事が多いのだという。それによりカムラの里は一度半壊の憂き目にあった模様。

 

「だが、最早貴様など敵ではない! 殺れぇっ!」

 

 しかし、里長はマガイマガドが闖入してくる事は予想済みだったようで、次なる一手に出た。残ったモンスターたちを残らず突撃させ、ダメージを与えつつ、わざと食わせる(・・・・・・・)

 

『グヴゥゥ……!』

 

 目に見えて動きが鈍るマガイマガド。モンスターたちを縛り付ける毒は、この時の為の物だったらしい。

 なるほど、上手いな。相手の特性をそのまま利用して弱らせるとは。流石は里の長を務めるだけの事はある。

 だが、このまま高みの見物を続けられる程、大型モンスターは甘くない。

 

『グルヴウウッ!』

「さ、里長! マガイマガドが動き始めましたよ!?」

 

 そう、大型モンスターには“これ”がある。少しずつだが耐性を得られてしまうのである。特にマガイマガドは大食らいかつ回復力が凄まじいので、毒によるスリップダメージが追い付いていないのだ。モンスターも派手に使い切ってしまった為、けし掛ける事も出来ない。

 しかし、弱っているのも事実。ここは一気に攻め滅ぼしたい所だが、

 

「ど、どうします、里長!?」

「全員、Gタル爆弾を抱えて突撃せよ」

「はぁ!? あいつに特攻しろと!?」

「その通り。里の為だ、喜んで死ぬがいい」

 

 すると、里長がまさかの桜花作戦を発令。ハンターたちに特攻を命じた。

 

「ふざけんなよ、このクソ爺! 楽に狩れるからって従って来たが、もう止めだ! 俺は抜ける!」

「そうはいかんな」

「げぶはぁっ!?」

 

 当然、従う者などいないのだが、里長が鈴をチリンと鳴らすと、掴み掛ろうとしたハンターの1人がもがき苦しみ、そのまま死亡した。くたばり方が下僕モンスターたちと全く一緒である。

 これは、まさか――――――、

 

「貴様らの装備には、下僕共と同じ毒が仕込んである。儂が一鈴鳴らすだけで、同じ末路を辿るのじゃ。苦しんで死ぬのも一思いに死ぬのも貴様らの勝手だが、逆らわん方が良いと思うがなぁ?」

「ぐっ……!」

「そもそも、この断崖絶壁の里に退路などある筈なかろう。貴様らは人の道を外れた落後者。元より生きておる価値など無い。せめて、一花咲かせてから散るがいい。はっはっはっはっはっ!」

 

 うーん、この。まさしく絵に描いたようなクソ爺だ。生きる価値が無いのはお前も同じだろうに。

 

「お、お爺ちゃん? まさか、ワタシにも……?」

「当然じゃ。孫なら少しは孝行せい、この役立たずが」

「………………!」

 

 さらに、実の孫――――――メラルに対してもこの態度。冷血にも程がある。確かにこいつは大して役に立たないが、それでも孫に言う台詞ではない。

 ……まったく、付き合ってられんな。

 

「いい加減にしろ、このクソ爺」

「がっ……!?」

 

 という事で、悦に入っている里長の胸に、クイーンレガリアの矛先をぶち込んでやった。血の泡ぶくを吐きながらも、必死に鈴を鳴らしているが、私には何の影響もない。

 

「き、貴様、何故、毒が……!」

「ウチには優秀な科学者がいるんでね」

 

 とっくに仕込みには気付いていたし、除去も既に完了している。だからやる気が無かったんだよ、私は。

 まぁ、流石に孫を含むハンター全員に仕掛けているとは思っていなかったが。

 とりあえず、王様気取りの老害は、とっとと死ね。

 

「諸君! 里長は私が討ち取った! だから、次が私の里長だ! 異論は無いな!?」

 

 ビクビクと未練がましく生にしがみ付く里長だったナニカを放り投げ、もちろん鈴も破壊し、ハンターたちに呼び掛ける。命の選択を。

 

「私はお前らに死ねとは言わない! だが、逃げ道が無いのは事実! だから、引っ込んで援護してろ! 奴は私が倒す!」

「………………!」

 

 フム、全員異論は無いようだな。死ぬ確率は高いが、前線に出るよりはマシだろう。

 

「む、無茶ですよ!」

 

 と、メラルが引き止めようとして来た。本当は行かせたい癖に。

 

「そうでもないさ。私たち(・・・)にとってはね」

 

 むろん、私も無謀な真似をする気は更々無い。崖っぷちに見えたのだ、あいつらの姿が。……遅いんだよ。

 

 さぁ、決着を付けようか、怨虎竜。




◆マガイマガド

 ライズのパッケージを飾る、「怨虎竜」とも呼ばれる牙竜種のモンスター。「鬼火纏」という特殊スキルと“虎”の名に恥じない凄まじい猛攻が特徴であり、縄張り争いでは飛竜種どころか古龍にも襲い掛かる恐ろしい化け物である。
 モンスターを食えば食う程、無尽蔵にパワーアップするというチート染みた能力が有り、スタンピードな百竜夜行に便乗して現れる事が確認されている。その特性により、カムラの里は過去に甚大な被害を被ったらしい。
 コムリの里にも百竜夜行で夜食フィーバーにし現れた……かに思われたが?
 ちなみに、モチーフが猫科なので、休憩中にはゴロゴロと毛繕いをする様も見られる。意外と可愛い。
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