鳴女さんの令和ロック物語   作:ディヴァ子

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 久々の更新。疲れてるのよモ○ダー。


終わる世界

 ――――――東京都、渋谷区。

 

「おねぇちゃん、あれかって~!」

「あのなァ……花魁道中なんて、もっと年食ってから言えよ」

 

 袖をクイクイと引っ張り、割と無茶な事を言って来る阿呆な妹に、俺は溜息を吐いた。

 俺の名前は梅田(うめだ) 六花(りっか)今はな(・・・)

 今の俺になるずっと前……「鬼」だった頃の俺は、妓夫太郎(ぎゅうたろう)と名乗っていた。上弦の陸という、かなり上位の「鬼」だったのだが、吉原へ潜入捜査に来ていた音柱とその部下たちとの戦いに敗れ、妹共々殺された。

 その後、俺たちは地獄の業火に巻かれ、永遠の苦しみを味わう――――――筈だった。

 しかし、何の因果か、妹と一緒に新たな生を受けた。要するに、人間として生まれ変わったのである。何故か俺だけ性別が変わってしまったが。

 

「駄目だよ、姫花(ひめか)。姉さんにそんな金がある筈ないじゃないか。君は本当に馬鹿だなぁ~」

「ばかじゃないもん! ひめかはてんさいだもん!」

「ハッハッハッハッ、面白い事を言うね。俺より天才な奴がいる筈ないじゃないか。やっぱり姫花は馬鹿だなぁ~」

 

 その上、要らん奴まで付いて来た。

 そう、今世の俺には妹が2人いる。1人は梅だった姫花(ひめか)。もう1人は、かつて上弦の弐の位に居た「鬼」……即ち童磨(どうま)だった円花(まどか)。こいつもまた何故だか女になっている。

 ちなみに、姫花は前世の記憶を持っていない。丸っきり全てを忘れている。俺を慕ってくれる事に変わりはないが。

 円花の方は……よく分からん。口振りからして覚えていそうなものだが、肝心要の自身の名前は忘れていたりと、中途半端に継承されている。こいつの場合、元から感情が死んでる奴だから、単に興味が無くて忘れたのかもしれんけど。

 ともかく、俺は2人の姉であり、例えそれがあんぽんたんと性格破綻者だとしても、大事な妹である事は変わりない。今は俺しか、こいつらを養ってやれないからな。

 両親はとっくに他界した。俺の親にしては珍しく真面で優しい人たちだったが、交通事故で呆気無く死んだ。良い奴程早死にするって、本当なんだな。

 そして、天涯孤独の身となった俺たちだったが、幸いにも俺は成人出来ていたので、どうにかこうにか3人で慎ましく暮らしている。

 まぁ、円花がこっそり投資で稼いでいたおかげでもあるのだが。こいつ、性格は別として、人間として無駄にハイスペックなんだよな。自他共に認める天才であり、本物の神童なのだ。頼むから妖しい宗教とか始めないでくれよ。

 さて、そんなズッコケ三姉妹である俺たちが、何故渋谷にいるのかと言うと、単純に服を買う為である。今月は先月の頑張りのおかげで、割と羽振りが良いんでね。せっかくだから、偶には良い服を買ってみよう、という事になったのだ。

 ――――――前世では、こんな平和な事、全然出来なかったからな。人間時代も、「鬼」になってからも。

 

「……おねぇちゃん、おねぇちゃん」

 

 と、またしても姫花が袖を引っ張って来る。今度は何を強請る気だと身構えた俺だったが、

 

「あそこにぴかちゅうがいるー」

「は?」

 

 続く言葉に、思わず呆けてしまう。こいつ、とうとう頭が……、

 

「姉さん、俺、疲れてるのかな~? そこにあの有名な電気ネズミが居るんだけど?」

 

 だが、おかしいのは現実の方であるらしい。何せ、あの童磨だった円花が引き攣った笑みを浮かべているのだ。

 

『ピカチュ?』

「嘘ぉ!?」

 

 果たして、妹たちの指差す先には、確かにピカチュウが居た。実写映画で見た、あの毛玉っぽいあれである。

 

「まめぱとだぁ」『ポルッポー!』

「おわっ、木からケムッソが降って来たよ!?」『ケム~ル』

 

 さらに、周りを見渡してみれば、至る所にポケモンの姿が。一体何時の間に。というか、そもそもこれは何がどうなってるんだよ!?

 

「ぽっぽっぽ、まめぱっと~♪」『クルポッポ~♪』

 

 能天気な奴だな、お前は!

 

「姉さん、これ、どう思う?」

「どうって言われてもなァ……」

 

 ゲーム風に言うなら、「野生のポケモンが現れた」ってなるんだろうが、ここは現実だ。電脳世界じゃない。いや、転生がある時点で充分に非現実的ではあるんだけども。

 そんな事より、今は状況整理である。

 

「うひゃーっ!? ウチのポチがご立派様にぃ!?」『グラァゥ!』

「……鯉って、こんなたい焼きみたいな姿だったっけ?」『ゴイゴイィ!』

「何この可愛い生き物~?」『ギエピーッ!』「……やっぱ可愛くないわ」

 

 周りの雑音を聞く限り、渋谷各所で同時多発的に、既存の生き物が(・・・・・・・)ポケモンに変質し(・・・・・・・・)始めているらしい(・・・・・・・・)。二次創作とかで偶に見るパターンだ。

 現実がポケモンの世界(・・・・・・・・・・)に侵食される(・・・・・・)、みたいな感じである。俄かには信じ難いが、現実として目の前にストライクが飛んでいるので、受け入れるしかないのだろう。

 問題は何が原因でこうなったか、だ。理由も無く世界が書き換わる筈もない。

 

『ギャヴォオオッ!』

「………………っ!」

 

 しかし、悠長に考えている暇は無さそうである。変質したポケモンの一部が進化し始めたのだ。

 ポケモンは進化すると、大抵は凶暴になる種族が殆どであり、今し方に水路から飛び出して来た凶悪ポケモンのギャラドスは、その筆頭と言える。怒ると大都市1つを丸ごと滅ぼすモンスターなんて、友達になれる気がしねぇよ。

 

「おい、2人共逃げ――――――」

「きゃあっ!?」「うわぉっ!?」

『グギャアアアアアアアアアア!』

 

 一目散に逃げてしまいたかったが、そうは問屋が卸さなかった。陸に上がったギャラドスが暴れ始めたのである。自身の急激な変化に驚き、暴走しているのかもしれない。

 

『グルァアアッ!』『ギャヴォオオン!』『ギギャアアアッ!』

 

 しかも、それに触発されたのか、仲間のコイキングが次々と進化して暴れ出した。ヤバいぞ、このままじゃ……!

 

「姉さん、姉さん」

 

 すると、円花が俺の肩を叩いて、

 

「赤ギャラ!」「うるせぇよ!?」

 

 確かに色違いが混じってるけど、何ならちょっとゲットしてみたいけど、そんな事言ってる場合じゃ無いんだわ!

 

「あっ、「ぽっぽー」が!」

 

 と、あろう事か、姫花がその渦中に向かって走り出した。

 

『クルポ……』

 

 どうやら、さっき遊んでいたマメパトが巻き込まれ、深手を負って倒れているらしく、それを助けるつもりなのだ。出会って数秒でニックネームを付けるんじゃねぇ!

 

「馬鹿戻れ!」

「やだーっ!」

 

 クソッタレがぁ!

 

「ぽっぽー!」『クルル……!』

『ギャヴォオオオオオオオオ!』

「ひぅ……!」

 

 チクショウ、マメパトは抱きかかえられたようだが、このままじゃ諸共捻り潰される。出だしが遅れたせいで、俺や円花の足でもギリギリ救出が間に合わない。

 やめろ、ふざけるんじゃねぇぞ!

 

「世界を跨いでまで、俺から取り立てるなァアアアアアっ!」「うわ、こりゃ無理だねぇ。バイバ~イ」

 

 ギャラドスの暴れる攻撃が姫花を挽肉に変えようとする様に、俺は雄叫び、円花は普通に諦めた。この薄情者!

 

『ギャヴォッ!?』

 

 だが、その尾撃が姫花たちを捉える事は無かった。

 

『こんな小さい子に、何してんのよアンタはぁっ!』

 

 突如、空から降って来た、奇抜な鎧に身を包んだ誰かさんが、ギャラドスをぶっ飛ばしたからだ。それも1匹だけでなく、共に暴れていた奴らを一網打尽シュートである。マジかよ。

 

『もう大丈夫よ。お姉さんの所に行きなさい』

「ふぇえええん、ありがどぉおおおおおお!」

 

 無事を確かめ、姫花を俺たちの下へ退かせる、謎の誰かさん。目元以外は完全にアーマー化しているので素顔は不明だが、只者では無いだろう。

 ……何せ、バイザー越しに見えた目が、「鬼」と同じだったからな。

 それよりも、気になるのはその鎧だ。銀と紫、龍と虎が入り混じった奇抜なデザインをしており、背中には三叉鉾のような翼が、尻には十文字槍を思わせる尾が生えている。

 そして、俺はそれらの要素に見覚えがあった。

 

「バルファルクとマガイマガドの魔改造装備だとぉ!?」

 

 そう、天彗龍バルファルクと怨虎竜マガイマガドの特徴を取り入れた、オリジナルのハンター装備だったのである。ポケモンの次はモンハンかよ!

 まるで意味が分からねぇぞぉ!?

 

「おい、あんた――――――」

『下がってて。まだ終わってない』

 

 しかし、質問は謎のハンターに遮られた。翼を変形させ、攻撃形態となる。

 

『ガルァアアアアア!』

 

 すると、完全に伸びているギャラドスたちを吹き飛ばし、その中心に埋もれていた赤いギャラドスが怒りの叫びをあげた。

 さらに、突然殻のような物に包まれたかと思うと、何とメガギャラドスにメガシンカしやがった。トレーナーとの絆も無いのにメガシンカとか、そんなの有りか。

 

『ギャヴォオオオン!』

 

 謎のハンターを噛み砕こうと、猛烈な勢いで襲い掛かるメガギャラドス。

 だが、小柄で動きの素早い謎のハンターは僅かなステップだけで牙を回避し、

 

『煩い』『ヴゴッ、グゲェッ!?』

 

 翼を変形させてワンツーパンチした。バルファルクの動きそのままですやん。

 

『フンッ!』『ギャヴォオオッ!?』

 

 今度はマガイマガドの尻尾から鬼火砲(オニビーム)を放つ。パンチというか、正拳突きを二連打ァされて怯んでいたメガギャラドスは避けられず、墜落した上で引っ繰り返る。頭がピヨってジタバタ藻掻く姿は、まるで進化前のコイキングだ。

 

『フッ、ハッ、シャアアッ!』『ウギャヴォッ!』

 

 そして、マガドっぽい腕による散魂鉄爪三連撃からの、奇しき赫耀式ハイメガキャノン+鬼火砲(オニビーム)というとんでもないオーバーKILLで、完全に瀕死状態へ追い込んでしまった。怖過ぎるだろ。これ絶対ハンターのする事じゃない。

 

「かっこいい~♪」『ポッポ~♪』

 

 平和だなお前らは!

 

「姉さん、俺にもあれ買ってくれよ」

 

 お前は完全に沈黙してろ!

 

『大丈夫?』

 

 謎のハンターがシャドー○ーンみたいな足音でこちらに戻って来る。ムーブがもうラスボスなんよ。

 

『……って、流石にこの恰好じゃ怖過ぎるか』

 

 そう言って、謎のハンターは鎧を脱いだ。脱いだと言うより、粒子化してダイマックスバンドらしき物に収納された、というのが正しい。

 果たして、その中身はというと――――――、

 

「お、女ァ?」

 

 まさかのおねいさんだった。紫髪のシニヨンに透き通るような白い肌、抜群のスタイルが目に眩しい。妙に高い声をしているとは思っていたが、まさか女だったとは。良い顔しやがって。目はやっぱり「鬼」のそれだけど。

 

『ええ、そうよ。悪い?』

「いや……」

 

 例え同性でも嫉妬してしまう美貌に思わず嫌な顔をしてしまったが、命の恩人にその態度は流石にあれなので、俺は素直に謝った。

 

「あんたは、強いからなァ。……妹たちを、助けて欲しい。頼むぜェ、おい」

 

 そう、この場において重要なのは、容姿ではなく強さである。大事変中の渋谷から生き延びるには、こいつに頼るしかない。

 

『もちろんよ。アタシ、そこまで薄情じゃないから』

 

 ……ウチの2番目にも見習ってほしいなぁ。

 

『さぁ、行くわよ。掴まって』

「わーい、おそらのたび~♪」「はっはー、楽しそー」「じゃあ、せめて感情込めろやァ」

 

 こうして、俺たちは謎の猫っぽい大人のおねいさんと一緒に、渋谷脱出を目指すのだった……。




◆バルファルク

 別名「天彗龍」。鈍い銀色の甲殻に覆われたドラゴンで、猛禽類のような顔と三叉鉾を思わせる一対の翼を持っている。
 とんでもない高度に存在する「遺群嶺」を生息地としており、きちんと目撃されるまでは単なる不吉の予兆としか見られていなかった。
 大気を体内で変換して発生させる「龍気」を使って様々な攻撃を仕掛けて来るのが特徴で、翼のジェットで空を飛んだり、可変式の翼で殴ったり、ブラスターやハイメガキャノンを放って来たりと、もはや生物というより「ドラゴン型のモビルアーマー」と言われた方が納得出来る有様である。
 謎のハンターの装備には奇しき赫耀の物が使用されており、改造も自分の手で行った。
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