「はぁあああああっ!」
『クォォォォ……ッ!』
鬼殺隊の一般隊士が一人――――――
とは言え、防御が馬鹿高いクレベースのHPを削るのは、効果抜群でも至難の業だ。さっきから何度も型を叩き込んでいるのだが、一向に弱る様子が無い事がそれを示しているだろう。
しかし、退く訳にはいかない。
「ひぅぅぅ……!」
「大丈夫よ! お姉ちゃんが、絶対に守ってあげるから!」
彼女の後ろには、親と逸れた子供がいるのだから。
『カォオオオオッ!』
そんな二人目掛けて、クレベースが「スターゲイジー」という水の魚群を放つ技を繰り出して来た。ロックブラストなどと同じ連続攻撃であり、威力もそこそこある。ポケモンの相性は一方的ではなく相対的なので、炎の呼吸を使う尾崎にとっては手痛い攻撃である。
「炎の呼吸、肆ノ型「盛炎のうねり」!」
通す訳にはいかないので、尾崎は炎の壁のような剣技で攻撃を防いだ。それでもやはり弱点なので防ぎ切れず、何発か当たってしまっている。今まで蓄積したダメージも含めて、尾崎は思わず膝を着いた。
『コォオッ!』
「くっ……!?」
と、動けぬ尾崎に向かって、クレベースが圧し掛かりを仕掛けて来た。麻痺状態云々の前に、あれを食らったらぺっちゃんこカン・カンだろう。今すぐ避けねば死ぬ……が、身体は動かない。全長6メートルの巨体が、影を差しながらゆっくりと落ちて来る。これは向こうが遅いのではなく、尾崎の身体が死を覚悟してしまったからだろう。
「アカネちゃん、「コズミックパンチ」!」『オリャーッ!』
『カォオオオオッ!?』
だが、クレベースの巨体が着弾する事はなかった。横から割り込んで来た、やたら強そうなピッピ(♀)に殴り飛ばされたからだ。
「大丈夫?」
「あ、ハイ」
さらに、彼女のトレーナーと思しき少女が登場。見た目はピカブイの女主人公だが、髪が青く、瞳が赤い。まるで綾波 レイちゃんである。
「私はアオイ。よろしくね」
「は、はぁ……とにかく、どうもありがとう」
「良いって良いって。困った時はお互い様だからさ。それはそれとして――――――」
『コァアアアアアッ!』
そして、ポケモントレーナーのアオイは、未だに倒れないどころか再び圧し掛かりを繰り出して来たクレベースを睨み付け、
「それ!」『コァッ!?』
プレミアボールを投げ付けた。直ぐに抜け出されてしまうが、真の狙いはボールinによる空白時間。
「はぁっ!」『カオッ!』
元に戻った瞬間を狙って、アオイが顔面パンチを食らわせる。鋼より硬いという氷が砕けた。
『クォオオオオオオッ!』
「うぬぅ……つぇあっ!」
『カギャアアアアアッ!?』
さらに、怒ったクレベースの捨て身タックルを正面から受け止め、パワーリフトを決めた。あの巨大な氷塊を持ち上げて投げ飛ばすとは、流石は超マサラ人。地力が違い過ぎる。
「さて、あなたはその子を守ってあげて。私が“元凶”をブッ飛ばしてやるからさ」
「う、うん、分かった……!」
この世界における鬼殺隊は「無理せず生き延びる」事がモットー。クレベース以前にもバンギラスやゴローニャなど、相性の悪いポケモンと連戦が続き、体力的にも限界に近い事は分かっていたので、尾崎は素直にアオイの提案に乗った。
「まだ行ける」は「もう危ない」。戦場において、足手纏いは最大の敵なのだ。
「さてと……」
尾崎が子供を連れて撤退したのを見届けたアオイは、“元凶”の佇むスカイツリーの方を見上げ、
「行くよ、ハヤテ!」『ホォグルドォッ!』
オニドリルの特異進化形態であるオニステルに跨り、飛翔するのだった。
◆◆◆◆◆◆
やぁ、皆、こんばんにちは。
私の名前はアオイ・シズナ。でも名前で呼ばれるのは嫌だから苗字のアオイで呼んでね。
ちなみに、見た目はピカブイの女主人公の色違いだけど、中身は転移者かつ憑依者で、本職はロケット団の裏番長(工作員とも言う)だよ。胸に輝く「トキワ・コンツェルン(TK)」のバッチを見たまえ。
実はこれ、ロケット団の「R」を捩った物なんだよね。内部に廉価版のグリーンバッチが仕込んでるから、奪ったポケモンもコントロール出来る、ロケット団員の必須アイテムなんだよねぇ。
さて、そんな悪の女主人公である私だが――――――何なんだろうね、この状況?
確か一番新しい記憶では、あの性根の腐り切ったポリゴンZのダークバージョンのせいで致命傷を負い、意識を失った筈なんだけど。ここはもしかして死後の世界とかだろうか?
まぁ、地獄絵図ではあるけれども。そこら中にポケモンやモンハンのモンスターが溢れ返ってるし、それに伴って東京は壊滅状態だし。
しかし、何か鬼太郎や鬼滅のキャラクターみたいなのもいるから、死に瀕して世界線を跨いで別の世界に転移してしまったのかもしれない。それなら何で傷まで癒えてるんだって話だが、気にしたら負けかも。
そんな事より、この騒動の元凶である。チラッと見えたが、あの人ロケット団に成りすましてた美人スパイの人じゃん。ついでにシルフカンパニーをロケット団の代わりに襲ったスマイル団の団長さんでもあるし。
あの時は特に何もせず撤退して行ったけど、世界を跨いで悪事を成すとは。まるでサカキ様じゃないか。
だが、それをしていいのはレインボーロケット団、つまり私たちのサカキ様のみ。お前なんぞお呼びじゃないんだよ、メタモン顔め!
という事で、さっそく空から強襲しようかと思ったのだが、
『マァントォオオオッ!』
『ドラァアアアアンッ!』
『ピジョォオヴァヴッ!』
前方からカイリュー、ヤドラン、ピジョンが向かって来た。ヤドランが飛んでいるのは違和感があるが、メガヤドラン状態だから、まぁ良いか。敵対するなら迎撃するのみ!
『ギュァアアアアアアアアアアアッ!』
『『『プギャーッ!』』』
だが、戦う前に退場してしまった。
「青電主、ライゼクス……!」
ヒクイドリを凶悪にしたような顔、昆虫の翅を思わせる翼、そして青白い電光。間違いない。「空の悪漢」にして「ライトニングリヴォルト」の異名を持つ特殊個体、「青電主ライゼクス」だ。只でさえ凶暴なライゼクスの中でも特に凶悪な能力を持つ、最強最悪の二つ名個体である。
おそらく、さっきカイリューたちを吹き飛ばしたのは、青電主の必殺技「ライトニングブレード」だろう。鶏冠に纏った電撃の大剣でぶった切る、ド派手な攻撃だ。流石は“影だけを残して消却される”威力。空棲系のモンスターや、でんきタイプが弱点や等倍のポケモンでは相手にならない。
それはつまり、今の私は超ピンチという事である。あれを使うって事は、既に「青電荷状態」になってるだろうからな。
『キュガァアアアアアッ!』
さっそくライゼクスが無数の電磁球を放って来る。あれを浴びるとライゼクスに引き寄せられ、その後に必殺のライトニングブレードを食らう破目になる。
「アキト、「まもる」! そしてメガシンカ!」
『ブゥゥゥン!』
なので、私はスピアーのアキトを繰り出して、守るで防ぎつつメガシンカさせた。
ライゼクスは元々リオレウス並みの飛行能力を持っている上に、青電主は鶏冠を破壊しないと目晦ましが効かない。だから、速攻アタッカーのメガアキトでゲキガンパンチを食らわせて叩き折ってやるのだ。
『ギャォオオオオッ!』『ブヴゥウウウウン!』
電磁球を放ち逃げ道を防ぎつつ激しい攻撃を仕掛けて来るライゼクスに対して、回避と守りを交互に繰り返して隙を伺い毒突きで頭を狙うアキト。大きさがあまりに違う為、完全に羽虫の抵抗だが、毒を伴う攻撃なので蜂の一刺しでもある。このまま毒状態まで持って行きたい所だが、
『ブブブブッ!』
『グゥゥ……キュガァアアアアッ!』
『ビィービィー!?』
鶏冠は破壊出来たものの、代わりに攻撃の終わり様に電磁球を食らってしまった。マズい。このままでは特に意味の無い暴力がアキトを襲う。ならば!
「アキト、「とんぼがえり」!」『ブゥウウン!』
何かされる前に攻撃するまでだ!
蜻蛉返りは高速で突撃し、その反動で手持ちに戻る交代技。あの巨体に突貫なんて自殺行為だが、ライトニングブレードを食らうよかマシである。それに鶏冠が壊れたのなら、最早遠慮はいらない。
「ハヤテ、「ねこにこばん」!」『ホグルドァッ!』
『ギャオッ!?』
ウチのハヤテが使う猫に小判は特別なのだ。何せフラッシュの効果も付いて来るからな。閃光を食らっても墜落しないのは凄いが、そういう問題ではない。
「ユウキ、「めらめらバーン」!」『ブッブイッ!』
『グギィィィッ!』
そして、ライゼクスの目が眩んでいる間に、アキトと交代で飛び出した相棒イーブイのユウキがめらめらバーンを食らわせる。確定で火傷(というか炎やられ)にさせる技。モンハン世界のモンスターは状態異常が時間経過で解除されるし、ライゼクスも既に解毒しているから、ある意味で丁度良いだろう。物理ダメージも軽減出来るし。
「よし、戻ってユウキ! 行け、アキト! 「どくづき」! ハヤテも「ねこにこばん」!」
さらに、ユウキが落下する前にアキトと交代し、ハヤテと協力しつつ攻め立てる。火傷が治癒したタイミングで上手く毒状態にも出来た。これは中々良い流れである。
『……グギャアヴォオオッ!』
すると、苛立ったライゼクスが、色々と行程をすっ飛ばしてライトニングブレードを放って来た。狙いなんぞ有って無いような物だが、偶然にも私とハヤテの方に振り下ろされる。こういう事故が怖いんだよ、モンハンのモンスターは!
「ハヤテ、「ステルスバード」! アキト、お願い!」『ブゥウウウン!』
騎乗状態では躱せないだろうから、私はハヤテにステルスバードを指示して、自分はアキトへ飛び付いた。ステルスバードはひこうタイプも加わった「ゴーストダイブ」で、異空間に回避しながら攻撃出来る素晴らしい技である。おかげでライトニングブレードを躱して、ライゼクスに手痛いダメージを与えた。
しかし、そこはG級の特殊個体。そう簡単には落とされない。ウチの面子、レベル90台の歴戦王ばっかりの筈なんだけど。二つ名個体は化け物か!?
『ギャォオオオオッ!』
と、怒り狂ったライゼクスが、半狂乱になりながら飛び掛かって来た。まだ目が見えてないので、普通に破れかぶれだけど、その巨体で自棄になられるのはヤバいって!
「このっ……!」
『ジュラァアアアア!』
『グギャッ!?』
だが、何処からともなく現れた何かが、怒れるライゼクスを吹き飛ばした。既にダメージが蓄積した事も相俟って、今度こそ墜落し、二度と飛翔して来る事は無かった。
「虹色の蛇……?」
そして、脇に目をやれば、ムゲンダイナを超える長大な身体と虹色の美しい鱗を持つ、空を舞う大蛇が。羽も空気袋も無いのに飛ぶとは、まるでハクリューのようだ。
さらに、日本昔ばなしよろしく、大蛇の上に跨る一人の子供。エーテル財団のそれと似ているが、より重厚な団員服に身を包む、私と同い年くらいの少年(?)。
この子は一体……?
「大丈夫?」
すると、その謎の子供が話し掛けて来た。声が妙に高いが――――――、
「えっと、君は?」
「ボクはボブ。「ネオ・ボランティア」のボブだよ」
まさかのボブだった。これは、
ただ、その虹色の大蛇は気になる。ポケモンなのか、それは?
「えっと、そのポケモンは?」
「この子は「ユルングルム」。ティアーザ地方の伝説のポケモンの1匹だよ。この子に導かれて、ボクはこの世界に来たんだ。キミもそうなの?」
「ええっと……」
待って、情報量が多い。
確かティアーザ地方って、現実でいう所のオーストラリア大陸の事だよね。何でも自然豊かで珍しいポケモンが沢山いるが、仄暗い歴史と前科持ちが蔓延る、意外とダークな地方なんだとか。別名も「暗黒大陸」だし。アポロさんがそんな事を言ってた気がする。
そんな犯罪天国みたいな地方の伝説のポケモンなのだから、当然凄まじい力をお持ちなのだろう。何かオセアニア神話の中に、似たような名前の蛇神がいたから、こいつは善玉寄りかな?
ともかく、伝説のポケモンに認められるような子が居るのは心強い。元凶の人は確実に強いだろうからね。さっきのライゼクス戦で思い知ったけど、やっぱり手数の多さは大事よ、うん。
「まぁ、そんな所ね。それより、君はどうするつもりなのかな?」
「――――――“あの人”を止めに行く。“あの人”には色々と言いたい事はあるけど、お世話になったのは確かだから」
そう言って、ボブはスカイツリーの方を複雑な表情で見据えた。ようするに、目的は同じって事か。ならばここは、
「なら、一緒に行かない? 私もあいつに用があるし」
「うん、分かった! よろしくね」
「あ、ハイ」
あーん、眩しい。その素直さは目に毒だわー。
「じゃあ、行きますか!」「おーっ!」
そして、この騒動を鎮めるべく、私たちは元凶の待つスカイツリーへ向かった。
「………………」
空を行く赫い凶星や、地を這いずる四つ目の赤子を横目に。
◆ギエピー
穴久保版ポケットモンスターの主役ポケモン。
色々とぶっ飛んだ内容の穴久保版ポケットモンスター出身なだけあって、こいつもかなりハッチャケており、下品で怪力で金に汚いという、ピッピにあるまじき特徴を持つ。
こいつのせいでピカチュウに続く「ピッピアイドル化計画」は頓挫したと言ってもいいが、この漫画のおかげでポケモンの認知度は上がったとも言える(何せアニポケが自粛させられた時も元気に連載していた)。ついでに、後の「タマゴグループ」や「コンテスト」、「まるころ」のコンボ攻撃など、先見の明とも言える概念を次々と叩き出したりもしている。
まぁ、ギエピーと言えば「ミュウスリー」という人が大半だろうが。顔だけピッピで身体はミュウツーのまま「これでボクもミュウスリーだッピ!」と言い放った1コマは、幼心に強烈な印象を植え付けた事だろう。
ちなみに、ポケモン版の両津勘吉みたいなキャラをしているだけあって、腕っぷしは確かであり、ポケモンリーグ制覇どころか伝説のポケモンすら倒すという、アニポケのピカチュウですら成し遂げられなかった偉業を打ち立てていたりする。流石はピッピだッピ。