なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
オベロンについての考察は一先ず横に置いておいて。
いい加減、『気温調節炉』の稼働をその目で見て確かめる作業に移るべきだろう。
そんなわけで、ケット・シー達があちこち動き回っているのを横目に、低く唸るような音を上げている炉に視線を向ける私達である。
「にゃ。おべろんさまがどこにいかれたかはふめいですが、このぶんだとそろそろきどうのおじかんですにゃー」
「ふむ……ところで一つ、つかぬことをお伺いしても?」
「なんですかにゃ?」
「周囲の彼らは、この場ではどういう役目をお持ちなので?」
そんな中、ジェイドさんがホワイト君に一つ質問を投げ掛ける。
言われてみれば、こうして屯している猫妖精達、なんのためにいるのかがよくわからないな?
みんなうろちょろしてるけど、それぞれなにか仕事らしきことをしているようには見えないし。
というか、結局オベロンが炉を起動しないと意味がない、というのであれば彼らの必要性ってなんなのさ?
「にゃ。じつのところ、われわれはべつになにかをしているわけではないのですにゃ」
「……ふむ?」
「よりせいかくなことをいうと、
「…………???」
そんなこちらの疑問は、続くホワイト君の言葉によって肯定される。
……のだけれど、同時に新たな疑問も湧き上がってしまった。
そこにいるだけで十分、とはこれ如何に?
「うにゃ。そもそもこのろはしゅつりょくぶそくなのですにゃ」
「出力不足?」
「にゃ。なにせひだねはかるしふぁーさまだけですからにゃー」
そうして詳しく聞いたところ、判明したのは次のような事実であった。
まず始めに、この『気温調節炉』はあくまで象徴のようなものである、ということ。
郷の全土に熱を送り込むに足る出力なんて、端から出せないような骨董品なのだそうな。
だが実際に、この炉を起点として郷内の気温は保たれている……。
それを可能にするのが、彼ら猫妖精の
「われわれがこうしてあつまることで、このあたりはちょっとふしぎなことがおきやすいじょうたいになっているのですにゃ」
「あー……妖精さん的な?」*1
「うにゃっ」
頷くホワイト君に、なるほどと納得する私達。
……ビッグビワの眷属として生み出されたビワが、時折
彼女達は(人退の)妖精さんそのものというわけではないため、あくまでそれは顔だけ真似したもの……ということになるわけだけど。
ここにいる猫妖精達の場合は、実際にその妖精さんたちの要素が混じっている、ということになるのだとか。
それゆえ、彼らがいっぱい集まると元々の妖精さん達の特性に合わせ、その一帯が荒唐無稽なことが起きやすい状態になる……と。
それだけなら単にトラブルの温床になるだけで終わるのだが、
「……ん?でもちょっと待って、仮に君らが妖精さんと同一だとすると、同じ場所に十五人以上いるのはおかしくない?」*2
「にゃっ。あくまでかれらのようそをもつ、そちらふうにいうと『ぱっちわーく』であるというだけですので、もっているせいしつもちょっとかわってるのですにゃ。あとここらのりきば?をすみずみにはんえいするひつようもありますのでにゃ」
「あー、わかるようなわからんような……」
ただ、そうだとすると十五匹以上いることが
子供のよく言う『いっぱい』みたいなもので、十五以上の数字には意味がない……みたいなことになるはずなのだけれど。
そんな私の疑問にも、ホワイト君は丁寧に答えてくれる。
どうやら彼らは【顕象】でありつつ【継ぎ接ぎ】でもあるとのこと。
そのうえで、『妖精さん』としての性質はあくまで【継ぎ接ぎ】によって後天的に付与されたものであり、本来の妖精さん達と比べると周辺の認知操作に必要な人数(?)も多くなってしまう傾向にあるのだとか。
そもそもの話、ごく狭い範囲ではなくなりきり郷全土にその影響を伸ばさないといけないこともあって、とてもじゃないが十五程度では足りてないとのことであった。
うーん、こんなとこでも労働力不足の嘆きの声が……。
まぁ、その辺りの世知辛い話は置いとくとして。
ともかく、彼らが集まることにより、ここら一帯は不思議なことが起こりやすい環境下になっている。
それを妖精王の名において制御し、『気温調節炉』の出力を大幅にアップさせるように方向性を調整している……と。
「まぁ、じっさいのところこのろをどうこうというよりは、かるしふぁーさまにちからをおくっている、というほうがつよいのですがにゃ。……あっ、そうしてあがったぱわーにたえられるようにする、てきなこうのうもあるとおもいますにゃ」
「なるほど……まぁ確かに、幾ら出力が上がったって炉が耐えられなきゃ意味ないよねー」
で、彼らの補助が及ぶのは主に二つ。
カルシファーへのエネルギー供給と、そうして上がった火力を受け止める炉の補強だ。
前者はわかりやすく、カルシファーにエネルギーを送ってその火力を底上げする、というのが本分。
気温の調節は主に熱せられた空気を各地に送ることで行っているので、そのためのポンプになるものを動かすのに必要なエネルギーが、カルシファー単体だと賄えないから……ということになるらしい。
後者の方は、この炉がそもそも古いものである、というところが大きい。
下手に最新のものにすると妖精達との相性が悪い、ということでこうして古いものが使われているわけだが……。
古いということは劣化しているということ、及び脆いということ。
そのため、強化されたカルシファーの火力をなんの対処もなしに受け止めると、普通に壊れてしまうのだそうな。
で、それを防ぐためにも妖精さんパワーが使われている、ということになるわけで。
……こうして話を聞くと、このシステムを刷新しようとかそういう話にならないのはなんで?
というような考えが頭を過るのだけれど……。
(……その場合彼らをどうするのか、って部分が難しいんだろうなぁ)
その場合、ここに集まった猫妖精達をどうするのか?……という疑問も湧いてきてしまう。
ただでさえ『妖精さん』の要素が混ざっているのだ、下手なところに集めてしまうと大変なことになるのは間違いない。
かといって無責任に解散、なんてこともできないだろう。
……というか、そもそもここの子細をこっちは知らなかったのだから、オベロンがその辺りの情報全部止めてたことは疑いようがない。
それはつまり、そこら辺の問題によって彼らがどうなるかわからない……ということをオベロンは知っていて、こちらに意図的に隠していたということ。
……変に頭を突っ込んで、現状のシステムを変えた方がいいとか主張した日には、ほぼ確実に彼からキレられること間違いない、ということでもある。
要するに、その辺りの問題は現状見てみぬふりをした方が遥かにマシ、ということになるわけで。
なんというか世知辛いなぁ、と思いつつ小さくため息を吐く私である。
……ともあれ、一応の彼らの役割が判明したのは確かな話。
となれば、あとは実際に炉が稼働している姿を確認して終わり……。
「……なるほど。何故
「んんっ!?」
「そうですにゃ。別に隠していたわけではないのですが、よく気付きましたにゃー」
「んんんんっ!?」
いつの間にやら考え事をしていたらしいアンデルセン氏が、降ろしていた顔を上げ徐に吐いた言葉。
思わず私が困惑する中、なんてことはないとばかりにあっさりそれを肯定するホワイト君……。
……いや、いきなり人の情緒を滅茶苦茶にするの止めない君達???
「なんだ、気付いてなかったのか?お前の目なら、早々に気付いていたものだと思っていたのだが」
「いや、そんな失礼なことできませんよ……」
「お前今、遠回しに俺が不躾だと言わなかったか?」
「一言も言ってませんよそんなことぉ!?」
被害妄想で人を叩くの止めて貰えますぅ!?
……いやマジで。
ともかく、彼の言葉を聞いて改めてホワイト君達を見たところ、確かに彼らの属性に『星の子』が含まれていることを確認。
……ということはつまり、彼らがカルシファーに補助を行えるのは妖精さんだからというだけではなく、彼らが本質的には同族だからというところが大きい、ということになるのだろう。
まぁ、言われてみれば納得である。
というか、なんなら彼らの中から一人が選ばれ、カルシファーになったのだとする方が辻褄が合うような気すらしてくるというか。
「にゃ。そのあたりはおいおい、そろそろはじまりますにゃー」
「おおっと」
とはいえ、その辺りのことをもっと深く考える前に、当初の目的である炉の稼働見学がスタートすることになったのだが。
……タイミングいいね、と思うのは穿ち過ぎなのだろうか?