なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「てなわけで、続いての見学先はこちらになりまーす」
「ちょっとキーアさん???」
「はい?なんですかはるかさん、そんな怖い顔して」
「次とかそんな軽いノリで選ぶ場所じゃあないですよねここ???」
「……その様子ですと、ここはなにやらワケありの場所、ということになるようですね」
オベロンの居城を後にした私達。
はるかさんの疲労が酷かったので暫しの小休止を挟み、再びエレベーターに揺られて数分。
到着した場所にて、私は新人二人に声を掛けたのだけれど……彼らがそれに反応する前に、はるかさんが凄い勢いで私に詰め寄ってきたのだった。
なんならその勢いのまま、私の襟を掴んで揺さぶってくる始末である。
で、そんな私達のやり取りを見て、ジェイドさんがなにかを悟ったように声を掛けてくるのだけれど……やだなぁ、そんなに警戒しなくてもいいじゃないですか。
「単に『腕クーラー』の点検のついでに色々見て回ろう、ってだけなんですから」
「……
「あはは~その方達が噂の新人さんですかぁ~?(白目)」
「ぬぉっ!?」
おや、驚くアンデルセン氏は初めて見たかも?珍しいものを見れたなーあははー。
……うん、ここまでくればみんな気付くと思うけど。
現在私達が居るのは地下千階、先ほどの場所とは別の意味で入ることを躊躇させる場所──隔離塔の存在する区画である。
あ、ついでにブラックジャック先生にも挨拶しておくべきかな?()
……色々言いたいことはあるかもしれないが、私の話を聞いてほしい。
別に私も、なんの考えもなくただ嫌がらせのためにこの場所を次なる見学先に選んだ、などということはない。
まず第一に、先ほどの見学の際に使った『腕クーラー』の保守点検が必要である、という部分が大きい。
これは琥珀さん謹製のひみつ道具だが、その実ドラえもんの道具をそのまま作り出したわけではなく、現状使える技術で再現したというのが近い。
それがなにを意味するのかというのは、前回の説明でなんとなく理解できるだろう。
「本来のひみつ道具は『子供の夢を叶える』もの。……言い換えれば『科学』という言葉をある種の万能素材として扱っているわけだが……」
「この世界におけるひみつ道具はそうじゃない、実際に存在する『科学』を使って作られている。……もっとわかりやすくいうと、夢と現実くらいの違いがあるというわけですね」
そう、ドラえもんにおける『科学』とは、尤もらしい説得力を付与するための舞台装置のようなもの。
それゆえ、その実態は現実の科学とは掛け離れたものとなってしまっている。
ゆえに、それを現実の科学で再現しようとすると、どうしても現実ゆえの制約に引っ掛かってしまうのだ。
今回の場合は、
そしてその結果、ひみつ道具に掛かる負担も相応に大きくなってしまっているのである。
「無理矢理周囲を冷やしているわけですからね~。そりゃまぁ、使う度に点検しないとどんな不具合が待ち受けているものですやら~」
「なるほど……確かに、本来物を冷やすのであれば冷媒などが必要。となれば、そういうものが表面上見えないこのひみつ道具も、それを実現させるために使われている技術的に半ばオーパーツである、と……」
あれだ、最悪触ってないのに勝手に周辺が冷却されたりする、みたいなことが起きる可能性も?
ただでさえ精密機械なのだ、今回みたいに長時間使用した時には念入りに検査が必要というわけである。
で、二つ目。
その点検のためにここまで出向く必要性があるのは、結局それを行えるのが琥珀さんしかいないから。
……となると、他の『琥珀さんにしかできないこと』を纏めて終わらせた方が効率がいい、というのも理解できるのではないだろうか?
「彼女にしかできないこと?」
「ええまぁ……いつの間にかこのポジションに据えられて、そのままトップとしてずるずると……みたいな感じなんですけどね~?」
「健康診断とか能力調査とか、琥珀さんが担当してること結構多いんですよねー」
その『彼女にしかできないこと』というのが、なにを隠そう健康診断──それもステータス確認レベルの詳細なやつ、というわけである。
この辺り、『星女神』様からもお墨付きを貰っていた彼女の特殊性ゆえのもの、みたいなところもあるみたいだけど……まぁその辺は長くなるので割愛。
ともかく、彼ら自身いきなり現れた『逆憑依』であることに変わりはない。
となれば必然、他の面々と同じように診断の必要性が出てくるというわけで……。
「なら、その診断のついでに琥珀さんの仕事の見学もしてしまおう、という話になったのです」
「話になった、というと……」
「はるかさんが休憩してる間に、裏でゆかりんと話しておきました☆」
「その辺ちゃんと共有して欲しかったんですが!?」
「あはは~まぁ~たキーアさんが怒られていらっしゃいますぅ~」
「笑い事じゃないんですよぉ!?」
はっはっはっ。
……ところで、さっきから琥珀さんもといマジカルステッキが常に折れ曲がってるんだけど、この人まーた徹夜してんな?
通りで発言がどことなく虚ろなわけだ。またクリスに怒られても知らんぞぅ?
「今回はクリスさんも一緒なんですよねぇ~」
「一緒?」
「みんな徹夜中ですぅ~」
「oh……」
……いや、なんでそんなことに?
基本的にはクリスは抑え役、ゆえにその辺の無茶はやる方じゃなくて止める方。
そんな彼女までやらかす方に回るとストッパーがいなくなる、ってことはクリス自身が一番分かっていて、ゆえに彼女が徹夜する状況というのが想像できないのだけれど……。
なんて風に思っていたところ、微弱な視線らしきものを感知。
その視線を負うと、そこには頭の部分をこっちに向けたマジカルステッキの姿が……って、
「……ええと、もしかして見られてます?なんなら睨まれてます私???」
「ええ~まぁ~。どうもこの間は束ちゃんと一緒にあれこれ暴れまわってくださったみたいでぇ~()」
「あっ」
……いや嘘やん。あれ一月上前のことやで?
それが四月の今になるまで尾を引いてるってこと?ウッソだぁー……。
思わず苦笑いと冷や汗を流してしまう私だが、状況が好転する予感はまったくなし。
つまりこれはあれですね?ホワイトデーの騒動で迎え入れたささらさん達のあれこれが、こっちではまだ終わってないということですね?(白目)
「……おい、ささらというのは誰だ?音声合成ソフトの類いか?」
「ああいえ、さとうのささらさんのことではなく、確か【星の欠片】のお一人だったかと。この間のホワイトデーの際にここの住人になった、と窺っていますが……」
「……ああ、なんとなくわかった。厄介事の類いだな」
裏でなにやらこそこそ話している二人は置いといて。
……ささらさん達がこっちにやってきたのはホワイトデー、現在はそれから大体一月ほど経過した辺り。
となれば、今までと同じスケジュールであれば、既に彼女達の検査などは終了し、今頃住み処を探してあちらこちら……みたいな状態であるのが筋だと思うのだけど。
「ええ、検査は予定通りに終わりましたよ~」
「なんだ、じゃあ私が睨まれる筋合いは……」
「その後、『ここに住みます』と駄々を捏ねられたんですけどねぇ~」
「!?」
「なんでそんなことに、って詳しく聞いたのですけど、どうやら『
「 」
……ふふふふ。
なるほどそりゃ私のせいだ(白目)
……うん。あれだよね、『三番目』って多分
で、それを言っているのがささらさん──【星の欠片】の一人であることを思えば、それが意味するのは『トップスリーの三番目』なわけで。
ええはい、【星の欠片】において現状『三番目』を強調して呼ぶべき相手、なんてのは私しかいませんよね?自分で言うのもなんだけど。
……つまり私に怒られるとか邪魔されるとか、そういって駄々を捏ねてるのだ、あの人。
とはいえ、その発言を額面通りに受け取るのは宜しくない。
なにせ彼女、こっちに来てジーク君をまともに成立させるに辺り、私を体よく使っていたのだから。
……ってことは、怖がってるとか怒られるとかは口から出任せ、もとい自身の発言を通すための言い訳に過ぎないのだ。
「いやまぁ、徹頭徹尾そうってわけでもないとは思うんだけど。……予想が間違ってないなら、そりゃ怒られるというかあれこれ言われるのは当たり前なことをしようとしているわけだし」
「あ、やっぱりそうですか?だと思って許可しなかったんですよねぇ~。まぁキーアさんがその辺りのこと今の今までまっったく気付いてくれてなかった、ということも今証明されてしまったわけですけど」
「ぬぐっ」
……まぁ、はい。
こうしてちょっと考えれば答えが出てくる以上、要するに私がさっさと様子を確認しに来なかったからこそ琥珀さん達に無理を強いてしまった、ということも合わせて確定するわけで。
いやでもさぁ、それをいうならクリスがさくっと私に言ってくれればよかったんじゃないかなぁ?!
なんなら束さんでもいいよ!ささらさんを抑えるだけなら琥珀さん一人でも足りるんだし、他の面々で私に連絡に来ればよかったじゃんかぁ!!
「ジークさん」
「……oh」
そんな私の訴えも、琥珀さんの一言であえなく撃沈。
……うん、本来のジーク君ならともかく、ここにいるのは色々総合した結果そうなった人物。
ということは、だ。……基本的にささらさんの味方であることを崩さないのだろう、ここの彼。
ってことは、駄々を捏ねるささらさんに琥珀さんを、それに追従するジーク君にクリスと束さんを宛がわないと止められなかった、ということになるわけで。
……うん、どうしようもないね?(白目)
「あの、キーアさん?」
「はい?なんですかこのダメダメ女になにかご用辞でも?」
「(こ、心が折れている……)ええと、ささらさんは一体なにを目的にされているのでしょうか?」
「ああ、それは簡単です。
「はい?」
そうして思わず項垂れる私に、はるかさんが声を掛けてくる。
内容はささらさんの目的についてだったので、私はそれが予測(※ほぼ確定)であることを前置きしてから、自身の考えを口にしたのだった。
……そりゃ色々言われるよなぁ、という目的を。