なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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だって慣れ親しんだ土地の方が……

 はてさて、検査後駄々を捏ねているというささらさん。

 その目的が新居──もとい古巣をこっちに引っ張る、もとい()()()()()()()()()のだろうと告げたところ、はるかさんから返ってきたのは意味が分からない、というような反応であった。

 

 まぁ確かに、単に『古巣』とか言われてもなんのこっちゃ、となるのは仕方なかろう。

 だがしかし、ここに『それを言っているのがささらさん』、もとい『この間のホワイトデーに問題を引き起こした』人物である、という情報を加えると話が違ってくる。

 

 

「要するに、あの時一時的に繋げてた()()()()()を、恒常的にこっちに置いときたいって言ってるんだと思うんですよね」

「恒常的……???」

 

 

 ……あ、はるかさんの視線が『なに言ってるかわからん(話の内容がわからん、的な意味で)』じゃなくて、『なに言ってるかわからん(こいつ馬鹿なんじゃねーの、的な意味で)』に変わった。

 その気持ちはわからんでもないけど、露骨に顔に出すのは宜しくないですよ、と一応注意しておく私である。

 

 

「……いや、こんなの顔に出すなというのが無理なのでは?それってあれでしょう?私は生憎現場ではなく、あくまで調書を拝見させて頂いただけですが……【星の欠片】の影響を過大に受けた結果、他の世界と時間の流れがずれているうえ、さらに終わった世界から最後の一人となった存在達を迎え入れているとかいう、あれですよね?」

「うん、それだね」

馬鹿なんですかその人?

「うん、あちらさんの所属だった時にも見れなかったようなキレのある罵倒ありがとう」

「ぶふっ!?」

 

 

 一応はるかさんってば、敵対してたのが離反してこっちについた、みたいな経歴をしているわけだけど……。

 その時の言動と言えば、普段のすっとぼけた感じかはたまた囚われの女騎士か、みたいなモノだったわけで。

 

 それを思うと、今みたいなドストレートな罵倒は逆に新鮮だなーとか思わないでもない私である。

 指摘した結果、顔真っ赤にしたはるかさんにぽかぽか殴られる羽目になったんですけどね。

 

 

「なにをイチャイチャしてるのか、というツッコミは一先ずおいておくと致しまして……」

してませんがぁ!?イチャイチャなんてしてませんがぁ!?

「はいはい、そういうことにしておきましょう。……又聞きしただけなのであまり偉そうなことは言えませんが……噂の方、とても迷惑な方なのでは?」

「んー、そうとも言いきれんのですよねー」

「ふむ?」

 

 

 まぁ、このままはるかさんが元に戻るまで待つのもあれなので、そのまま放置して話を進める私達。

 

 ジェイドさんが今までの会話を聞いたうえで、簡単な所感を述べてくれたわけだけど……確かに、外から聞いただけだと迷惑千万我が儘放題、ささらさんはなりきり郷にとって毒……と言えてしまいそうな感じだけど。

 決してそれだけだとは言えないのだ、と私が告げれば彼は興味深げにこちらに視線を向け直して来たのだった。

 ……このまま私が説明してもいいんだけど……。

 

 

「なんとなく、アンデルセン氏はもうわかったみたいなので、代わりに彼から説明して貰いましょうか?」

「なんと?」

「……お前、単に自分で説明するのを嫌っただけだろう?大方説明が大回りだとかなんだとか言われ過ぎて、ちょっと傷心気味……とか、その辺りなのだろうが」

「なななななんのことだかキーアんわかんなーい☆(震え声)」

(すさまじくわかりやすいですね……)

 

 

 なななななんのことやら。

 別に毎回毎回どっからか『説明がくどい』とか『話があちこち飛びすぎ』とか言われてなんかねーし。『知識をひけらかしたいだけ』とか『説明に託つけて自身の情報を整理してるだけ』なんて考えてもねーし。

 単にアンデルセン氏がさっきから壁の花だなーとか、ちょっと出番をあげないと空気になりそうだなーとか思っただけだし。

 ……え?彼に喋らせると一部の人が困るだろうって?誰ですかその困る人って?(すっとぼけ)

 

 ……まぁともかく。

 アンデルセン氏がさっきから黙ってたのは事実。

 それが状況把握のために考えごとをしていたのだとすれば、こっちの考えについて既に見当は付いているだろうと予測したわけである。

 

 

「……まぁよかろう。俺としても積極的に発言をし、本来の俺との差異を自覚すべきだと思っていたところだからな」

「よっ、流石は大将!」

「誰が大将だ、誰が。……まずこの話で注目すべきは、件の女がこいつ(三番目)について言及した部分。確か『怒られる』だったか?それについてこいつも否定はしなかった、だがその上でそいつの主張を否定しきらなかった。……であれば、ここでそいつが言いたいことは一つ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、だ」

「益を、」

「見出だせる用意?」

 

 

 アンデルセン氏がまず触れたのは、私が『怒られる』というささらさんの主張を否定しなかったこと、およびそのうえで『迷惑なだけとは言えない』と私が主張したこと。

 これはつまり、私が彼女を怒ることとは別に、そのあと彼女のお願いを聞くつもりがある……ということに繋がるのだ。

 

 それが何故かといえば、普通怒るというのは相手の行動に否があるか、はたまた()()()()()()()からである、という部分に理由がある。

 ……この場合の『否』はしてはいけないことのこと。

 そして『悪いこと』の方は、迂闊に行うと危険なこと。

 これらが意味することは、つまり……。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、というのが近いか?言い換えるならば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、となるか」

「……ええとつまり、件の世界を繋ぐのを彼女がやるのは問題ですが、」

「キーアさんがやる分には問題がない……?」

「概ねそのようになるな。もっと言うなら()()()()()()()()()()()()()となるか」

 

 

 そう、いきなり現れて勝手に繋ぐ分には問題だが、それを私などの監督役がやるのであれば問題はない……そういう話になるのであった。

 

 

 

 

 

 

「……ふむ、となるとやはり、件の世界の利用価値というのは」

「察しの通り、というやつだ。──時間の流れの違い。下手に繋げばこちらごと巻き込む地雷源だが、上手く使えば宝の山というわけだな」

「い、いや待ってください。確かあちらの世界はこちらと断絶しているからこそ時間の流れが違う、という話だったはず。恒常的にこちらと繋ぐとなれば、その時間差も是正されてしまうのでは?」

「そこでそいつの出番というわけだ。……恐らくだが、お前が変換器の役割を果たすのだろう?」

「その通りでーす」

 

 

 はてさて、ささらさんの世界の利用価値が時間の流れの差である、ということがわかったわけだけど。

 しかしてその差ははるかさんの言う通り、あくまで件の世界が概念的に他の世界と繋がっていないからこそのもの。

 ゆえに、こちらとの繋がりを恒常的に持とうとすれば、まず間違いなくそれらの差の是正・およびそれに伴う周辺区域への過大な影響を発生させかねない。

 

 ……のだが、そんな世界とこっちの世界を跨いで状況を確認していた奴がいたこと、忘れてないだろうか?……そうだね私(とキリア)だね。

 

 繋がりがあると、とは言うけどあくまでその辺りの判定が出るのは【星の欠片】として()()()()()()()と判別できるタイミングのみ。

 言い換えると、【星の欠片】として自身より小さな存在が繋がっていたとしても、それを本人は認識できないのである。

 

 

「その辺りはまぁ、【星の欠片】の共通概念だね。小さなモノが起こしたことは大きなモノには判別できない。……この間は成立直前の【星の欠片】の前だったからあれだったけど、安定しきった今なら問題ないしね」

 

 

 時間軸の同期、というのも結局その繋がりを認知できなければ発生しないのだ。

 前回のホワイトデーの時は、成立直前・および引き継ぎ直前の【星の欠片】の影響下であったため話が違ったが、そうでなければその辺りを気取られずに繋ぐのなんてわけがないのが私(とキリア)の【虚無】なのだ。

 

 

「……でしたら、わざわざキーアさん(三番目)に限定せずとも、『星女神』さんやそれこそキリアさんでも良いのでは?」

「その辺りは単純に、その二人に頼むのは気後れする……とかそんなところだろう。そいつに怒られるのとそっちに怒られるのは別物、とも言えるかもしれんが」

「……なるほど」

 

 

 で、その前提からすると私より下の人達に頼むのでも問題ないんじゃ?

 ……みたいな話になりそうだが、そっちはもっと単純。

 社長に頼むのと部長に頼むのとどっちが簡単か、みたいな話でしかないのだ。

 そもそも私、なんでかトップスリーにいるけど新参も新参だからねぇ。

 そりゃまぁ、話しやすさは比べ物にならないでしょうよ。……そもそもささらさん自身、立場的にはぺーぺー*1だしね。

 

 そんなわけで、ささらさんの主張は肯定されうるものだと証明されたのだった。

 

 

*1
新人、新米・未熟者と言うような意味の言葉

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