なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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いいオークの再エントリーだ!

「というわけで、早速向こうの世界にみんなを連れてきましたー」

「軽い物言いに反して、やってること大概ですよね☆」

「ふっ、よせやい照れるだろ?」

「褒めてませんよ?」

 

 

 こうして繋いだんだし、折角だから観光でもしてみる?

 ……ってな感じに、一足先にそこにいた面々を連れて向こうの世界へとやって来た私達。

 

 前回と同じく周囲になにもない、いわゆる牧歌的な風景の中に足を踏み入れたわけだけど、前回とは違ってのぼり──『キーア様ご一行大歓迎』の旗はなくなっていた。

 

 

「言い換えると異物がなくなって完全に海外の田舎にしか見えない、ってことになるはずなんだけど……ささらさん?」

「はいぃ~?なんでしょうぅ~?」

「つかぬことをお伺いするのですけど。……向こうの空に見える()()はなんです?」

「あれですかぁ~?あれは新しい住人さんですぅ~」

 

 

 じゃあ、言い換えると殺風景ってこと?

 ……となりそうな私達の思考に待ったをかけたのが、向こうの空……具体的には前回領主の屋敷があった辺りの上空部分。

 

 気のせいでなければ、そこには空を優雅に泳ぐアマツマガツチの姿が……。

 

 

ってなんでやねん!?まぁ百歩譲ってドラゴンがいるのはまぁええわ!なんやかんやいって海外っぽい風景イコール中世ヨーロッパ的異世界、ってのはお約束なテンプレートだからね!でもそこにモンハンモンスターがおるんは別方向の話なんよ!多分それ現代入りとか異世界蹂躙とかそういう傾向の話なんよ!!」

「お、落ち着いてくださいキーアさん」

これが落ち着いていられるかぁ!?街とアマツマガツチとか考えられる限り最悪の組み合わせやんけぇ!?」

「ライズ的に考えて、という奴ですねぇ」*1

 

 いやまぁ、モンハンの大型モンスターなんて大概街にとっては災厄以外の何物でもないけどね?!

 それでもほら、程度の違いがあるというか!

 少なくとも、周辺区域に大嵐を巻き起こしなにもかも根刮ぎ吹き飛ばしていく嵐龍はダメでしょ、って気分にならない方がおかしいというか!

 

 ……とまぁ、熱く危険性を語ってしまったわけなのだけれど。

 

 

「ああ、それに関しては大丈夫だ」

「なんでぇ?!」

「どうにも彼には、俺が同族(古龍)に見えているらしい。そもそもここにいるという時点で、彼自体も最後の一匹──取り残された者でしかないからな」

「あ゛」

 

 

 ……なるほど、例えモンスターであれ世界の法則からは逃れられないと。

 

 モンハンのモンスター、特に古龍といえば寧ろ自身がルールとばかりに我が物顔しているイメージが強いが、それも今しがたジーク君が言った台詞によって説明が付いてしまう。

 

 ……つまり、彼処で飛んでる嵐龍は取り残された個体、かつ恐らくは幼体にあたる存在で。

 ここでただ空を飛んでいるのは、この世界を支配しているのがジーク君──すなわち()であることから、向こうはここが()()()()()()だと認識(かんちがい)している、ということになるわけだ。

 

 ──うん、なんだその奇跡的な噛み合い方?

 

 

「というか、新しい仲間って言うけどいつの間に迎え入れたの?こっちの世界に迂闊に触れると同期するから自重してた、って話だったと思うんだけど?」

「それに関しては、俺が彼女の役割を引き継いだ結果、ということになるのだろうか」

「はい?」

「単にこの世界に意思を向けるくらいなら、わざわざ接点を持たなくても可能になったんだ。ステータス画面?とやらに似ているらしいが」

「あー……意識だけの時間移動なら認められる、みたいなやつかー」

 

 タイムリープの話をした辺りで説明したこともあったような?

 人間の自意識というのは、それを他人や第三者が証明するのは難しい、みたいな話がある。

 いわゆるクオリア問題というやつだが、それゆえに意識のみの時間遡行はパラドックスを引き起こさない、という論説が存在するのだ。

 

 その実例とでも言うべきものが、今隣で呆然とアマツマガツチを見上げているクリス……もとい、彼女の原作で語られた主人公の能力である、と。

 

 

「……意外なところから私に話が飛んできたんだが?」

「ほら、ちょっと前に言ったけど空気になってる相手に積極的に話題を振るのが私の役目なので」

「初めて聞いたがその話???」

 

 

 ともあれ。

 ジーク君が言いたいのは、概ねそんな感じ。

 繋がりの観測が行われると世界の同期が始まるわけだが、証明の難しい意識のみの繋がりであれば、それを世界が認識することも叶うまい。

 

 ゆえに、こっちにいながらもジーク君は、こちらの世界の異変などについては知り得ていたと。

 そしてその中で、今までのささらさんと同じように世界から取り残された存在を保護するきっかけがあった、と。

 

 ……そうだとすれば、あのアマツマガツチが大人しく空を飛んでいるだけ、というのもなんとなく理解ができる。

 保護当時のジーク君は精神のみの存在みたいなもの(正確には違うが、こっちには意思のみを繋げていたので、少なくとも対峙した相手からはそう勘違いされてもおかしくはない)。

 それを前にした嵐龍は、ジーク君のことをこう認識したに違いない。──意識のみの状態ですら、一つの世界を想像しうる存在だ、と。

 

 

「……そう、なのだろうか?」

「まぁ、その時のそれが勘違いだったとしても、こうして保護された結果実力が違いすぎる……みたいな別の勘違いを誘発してる可能性は否定できないけどね」

「なるほど……」

 

 

 こちらの言葉に、ふむと考え込んでしまうジーク君。

 ともあれ、ここで突っ立ってても意味はないのも確かな話……と彼に告げた私は、そのまま街に向かって移動を開始したのであった。

 

 

 

 

 

 

「オ久シブリデス皆サマ方。ソレカラ大事ナイデショウカ?」

「そういうオーク君は元気そうだね。領主の不在の間、頑張ってたってことかな?」

「オ恥ズカシナガラ、他ノ皆サマカラハ代理ノ領主トシテ扱ワレテオリマシテ……」

 

 

 はてさて、街へと向かい領主の屋敷にたどり着いた私達を迎えてくれたのは、前回と同じくオーク君。

 彼は人好きのする笑みを浮かべながら、こちらに歓迎の言葉を述べてくれたのだった。

 

 その謙虚さは相も変わらず健在のようで、どうやらささらさん達が不在の間は領主代理として働いていたらしい。

 人は見た目によらないというが、彼に関してはまさにその通りだと言えるだろう。

 

 なお、彼に初めて会った面々はほんのり引いていたが、彼はそれを気にするどころか「オーク相手デスカラネ、仕方ナイデス」とそちら気遣っていた。

 これには思わずオークだからと引いていた面々も反省し、今では普通に会話をしているのだった。

 

 

『良かった。彼が誤解されているのは、私としても心苦しい』

「イエ、ソウイウノガ寧ロ普通デスカラ。下手ニ私ヲ基準ニサレテモ困ル、トイウ面モナクハナイデスシ」

『確かに。もっとも、それはここにいる大半の存在に当てはまる話でしょうが』

「言エテマスネ」

 

 

 ははは、とアメリカンホームコメディみたいな笑い*2が響く屋敷の中。

 はてさて、さっきから脳裏に直接響いてくるこの声はなんだろうか?正解は会話に混ざるアマツ君の言葉である()

 ……古龍にしては、意外と気さくですね?

 

 

『先に説明されていたかと思いますが、まだまだ若輩者の身ですので。そもここはさるお方のお膝元。行儀よくできねば次の瞬間自身の首が飛ぶ……なんてこともあり得るでしょう?』

「ナイナイ、我等ガ領主様ハソウイウノトハ無縁デスヨ」

『ははは、かもしれませんねぇ』

 

 

 ……うん、このノリキツいな!?

 オーク君は純粋にささらさん達を尊敬しているのだろうが、アマツ君の方は保護された時のシチュエーションが後を引き、どっちかといえば畏怖の方に感性が振れてしまっている。

 結果、二人のすれ違いコメディみたいなことになってしまい、付き合わされる側からしてみれば苦笑するしかないなんてことに……。

 

 なにが問題って、話題の中心のはずのジーク君は「うんうん。周囲の輪に溶け込めているようで俺は嬉しい」とか微妙にズレた感想を述べているのが……。

 ささらさんに至っては、そんな彼を見てうんうんと嬉しそうに頷くばかり。

 

 これでは軌道修正など望むべくもないというか、寧ろ下手に触れると変な方向に飛んでいく可能性大というか。

 ついでに問題として、他のみんなも同じようなことを考えているのか、自然と私の方に視線が集中している気がするのががが。

 

 ……いや、なんでもかんでも私に投げるの止めない?

 ほらそこ、『なんでもではなくお前になら解決できると踏んでのことだが?』みたいな顔をしない!

 それとそこ!『なんと、思考が読めるのですか?それは不味い……』とか、下手な死亡フラグを立てるんじゃありません!私は理不尽上司じゃないんですよ!?*3

 

 そんなぐだぐだした会話は、ジーク君が本来の目的を思い出して咳払いするまで続いたのであったとさ。

 

 

*1
『モンスターハンターライズ』の追加コンテンツ『サンブレイク』において復活したモンスター、アマツマガツチに関する話題。追加モンスターとして復活した身でありながら、扱いはストーリーのラスボスという厚遇を受けている。その結果、このモンスターは作中人物にとって『不倶戴天の敵』として扱われるようになった

*2
アメリカにおけるホームコメディにおいて定番の演出。作中人物以外の笑い声がギャグ展開などの時に響く、というもの。実のところアメリカのホームコメディは一般客を観客席に迎えセットの上で芝居をする、という形式であることが多く、それらの笑い声や拍手などは彼らが行っているものでもある。日本人には吉本新喜劇など(の演劇)が感覚としてわかりやすいだろうか

*3
『鬼滅の刃』より、パワハラ会議()内の無惨達のやり取り。元々無惨が血を分け与えて鬼となった存在達は、その思考を無惨に読まれてしまう。ゆえに起こった可哀想な()一幕。ここで死ぬ奴らに豪華声優陣が割り振られたことでも話題

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