なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「ぐすっ……こんないいオークがこの世に一人しかいないなんて……」
「ええ、こんなに酷いことはないでしょう」
「業腹だが同感だ。こいつが孤独に死ぬのは流石の俺も耐えられん」
「滅茶苦茶絆されとる……」
落ち着かせようと思ったら更なる
なんつーのかな、危ない宗教に嵌まった人達みたいになってるというか?
便宜上トップに立つのがオーク君なので問題ないとは思うけど、それがイコール彼が困らないか、と言われるとノーである()
「ほら見なさい!オーク君明らかに困ってるでしょ?!そんな風な扱いを彼は求めてないんだから自重しなさい!」
「そ、それもそうですね……オーク様に迷惑を掛けちゃダメですよね……」
「それは確かに。オーク様が失われるなど、この世の損失ですからね」
「同感だ。俺は基本的に人間嫌いだが……
「キ、恐縮デス……」
「……──短縮詠唱、倫理解放『星解』」
「「「え゛っ」」」
「……はい、正直クッソ面倒くさかったので一旦流れを切らせて頂きました。頂きましたが、結果として別の問題が発生しました(白目)」
へぇい、正直すまんかった(短縮詠唱)
……いや、言い訳をさせて欲しいんだけどね?
三人をあのままにしておくと、そのうちエスカレートして本当にオーク君を崇める宗教でも作りかねなかったわけで、それを止める役目は彼らにそれを選択させてしまった(?)私にあるわけで。
そりゃもう、なにをおいてもそれを解決する必要がある、ってわけなのです。
でもほら、世の中には『信仰の自由』ってもんがあるでしょ?
周囲に迷惑掛けないのならなにを信じててもいい、みたいなやつ。
それを前提にすると、真っ当な手段で彼らに信仰を捨てさせるのは不可能に近いわけで。
「ゆえに、一時的に因果を全て解きなににも繋がっていない状態にする『星解』を利用して、一回彼らの信仰心をゼロにする必要があったってわけ。実際それは上手く行ったし、過剰な持ち上げが減った結果オーク君も安心したように胸を撫で下ろしてたわけなんだけど……」
そう言いながら、私は視線を下に──正確には目の前の地面にあるモノを見るように下げる。
……そこにあったのは、見事な土下座……みたいな感じでしゃがんだうえ、重要な部位を守るように両手で頭を抱えているささらさんと、その横で同じように低姿勢になっているものの、微妙に状況に付いていけてないジーク君の姿。
わかり辛いのでもう少し簡単に説明すると、かりすまガードしてるささらさんとその横でおろおろしているジーク君である()
「……ええと、これはどういう?」
「使う技間違えた……」
「はい?」
正気に戻った()はるかさんが、この惨状を見たうえで私に話し掛けてくる。
それに私は額を押さえながら答えを返したわけなのだが……いやうん、間違えたというのは正しくない。
「あのタイミングで問題を解決するなら『星解』しかない、ってのは間違いないわけよ。あれ余分な機能が一切ない、ただ『あらゆる繋がりを一旦全て解除する』って効果の技だから。食らった相手に変な悪影響を残さないって点で、これ以上にさっきの問題を解決するのに向いた技なんてないのよ」
「はぁ……?」
今持っている信仰を捨てさせる、というのは言葉以上に難しいものである。
海外ならそれは『道徳を捨てる』ことと同義なのでわかりやすく、日本でも『カルト宗教に嵌まった人間をマトモにするのは難しい』という点で理解しやすい。
では何故そうなってしまうのか、という本質的なところを話すと……人は原則
わかりやすく言うと『単に生きるのならなにも考えず獣のように行動する方が楽』、みたいな感じになるか。
いやまぁ、実際に獣みたいに生きるのが簡単か、と言われるとそうじゃないわけだけども。
ここで言う『簡単』とは、『思考しなくていい』という面が大きい。
──時に自身に不利な条件も受け入れ、したくもないことを嫌々でもやれる理由、とでもいうべきか。
「その大本は貨幣制度だけど、見方を変えると
「……ああなるほど、人間らしい生活とはすなわちどこまでも
「まぁ、大まかに言うとね」
言い換えるとルールが必要、となるか。
……道徳にしろ貨幣制度にしろ、それらは基本自然界に存在しない『人が生み出したもの』である。
つまり思考の果てにあるもの。ゆえに人は常に
とはいえ、人だって端からそういう感じに思考を回せていたわけではない。
言語を持たなかった頃の人間達はどうやって意志疎通をしていたのか?
……なんて問題が存在していたりするが、私はそれに関して『互いに通じるもの』が概念として・それから言葉として磨かれていった結果が今なのだ、と考える。
存在を知らないものはそもそもそれについて考えることもできない、みたいな話になるだろうか?
昔の作品における未来は今の世界と全然違う、みたいなもので
これは、赤ちゃんが言葉を覚えていく過程にも似ている。
周りに教えてくれる相手がいるからこそ、目の前の物の名前と意味を理解できる。
そうでなければ、赤ちゃんが覚えられるのはあくまで自身の反応で起きた現象だけだろう。
モノを投げれば壊れた、が『これは投げて壊すもの』という認知になってしまいかねないというか。
それらを前提と置く時、宗教の意味は原則『倫理の道筋』である。
体験しなければ理解できないモノを、言葉という擬似体験において賄うもの。
その中ですべきでないこと・推奨すべきことを学び、可能な限り『はじめて』に対しての失敗を減らすもの。
わかりやすく言えば、『宗教』は生きるための説明書・解説書なのだ。
ゆえに、それを捨てろと言うのは即ち
……まぁ、日本の場合宗教が担うそれを他の手段で代替しているわけだが。
「この説明書・解説書としての性質がポイントでね。大抵の宗教は死後のことについて触れるけど、それらは基本事前に知ることができず・かつ知ったあとに戻って来られないもの。──言い換えると、『宗教』が一番力を発揮しやすい場所なんだよ」
予め知らせることで、可能な限り失敗を減らすものというのが『宗教』の本質。
そしてそれゆえに、死後を絡めることであらゆる現世での行動を戒める効果も持ち合わせている、というわけである。
悪いことをしたら地獄に落ちるよ、みたいなのはまさにそれだろう。
「だけど同時に、そういう性質を持つからこそややこしいことになる、って面もあるわけ。──『宗教』において『死後』の信憑性を高める役割を持つのは、それ以外のあらゆる教え。
どっこい、死後を語るからこそ『宗教』に別の意味が付随してしまう、というのも事実。
それはある種の神秘性、神聖さ。
間違いを減らす≒間違いを犯さないための教えであるそれらは、そもその時点である程度の信仰を集めるもの。
そのうえでさらに『死後』という未明を用いて教えを説くのだから、最終的に『宗教』そのものが特別なモノであると
カルト宗教はその辺りのシステムを悪用したもの、ってことになるわけだけど……今回の話には関係ないので省略。
ここで必要なのは、そうして『宗教』を特別なものだと思ってしまってる相手から、信仰を取り上げるのは不可能であるという部分。
「言い方は悪いけど洗脳されてるようなものだからね。それを解こうとすると
「そしてそれらが相手を傷付けない保証はない……と?」
「ここでの一番の問題はそこですね」
なにかの熱狂的なファンが、ひょんなことから裏切られたような気持ちになり凶行に及ぶ……みたいな話というか。
信仰を捨てるというのは、少なくともその時の人間にとっては命を捨てるのに等しいもの。
ゆえに生半可なやり方ではそれを成すことは不可能に近く、仮にできても深刻な禍根を残しかねない……。
私が言葉での説得を諦め、『星解』による解決を選んだ理由もなんとなく察せられるのではないだろうか?
「……でも、それで別種の問題を引き寄せたんですよね?」
「…………」
「露骨に目を逸らしていますねぇ」
「というか、結局今なにが起きている?」
「……水戸黄門、みたいな?」*1
「「「は?」」」
……相変わらず自己弁護が長いって?
しゃーないでしょまさかこうなるとは思ってなかったんだもん!!言われてみればそうなるよな、って感じだけど!
でもはるかさん達にオーク教諦めて貰うにはこれしかなかったんだもん!!
泣き言を言う私に対し、はるかさん達はわけわからん、とばかりに首を傾げていたのだった……。