なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……印籠みたいなもの?」
「まぁ、端的に言いますと……」
はてさて、唐突に土下座?し始めたささらさんに対し、何故彼女がそんな行動に及んだのかを周囲に説明し始めた私なのですが……。
直前に『水戸黄門』を例に挙げたのがまさに答え、という感じにそれを説明に使ったわけでして。
水戸黄門といえば、時代劇の中でも長期シリーズとして有名な作品。
水戸藩主・徳川光圀公がその身分を隠し、諸国を行脚し世を乱す者達を懲らしめる……という展開を基本骨子としたその作品は、定番かつ安定して見れるとして広く親しまれたものである。
まぁ、安定しているということは展開がマンネリということでもあり、刺激的なストーリーを求める層には受けなかったわけなのだが……。
「なんかこう、最近の流行り廃りを見ると案外今なら今で受けそうな気もするんだよね、最近の人はそこまで驚きを求めてないみたいな話を聞くし」
「……話がずれてるぞ」
「おっと失礼」
まぁともかく、決まったストーリーラインに乗せられた作品だった、ということは間違いあるまい。
で、その中でも特にお約束として語られるのが、ストーリー終盤に挟まれる『従者が主の身分を示すもの──ここでは印籠を周囲に見せ、相手を平伏させる』というシーン。
いわば権威によって相手の否を認めさせるシーンということになるわけだが、今のささらさんはそれに近い状態にあるわけで。
「……察するに、先ほどの『星解』とやらが
「まぁ、そうなりますね……」
正確には三種の神器とかの方が正解なのだが、『それを見せることで相手を問答無用に平伏させる』という点では印籠の方が正しいため、このような例え方になったというか。
ともかく、通常の【星の欠片】にとって、『星解』が持つ意味というのは絶大。
その辺りまだ教えられて無さそうなジーク君はともかく、ささらさんの方は完璧に理解しているため思わず平伏してしまうのも宜なるかな、ということになるわけで……。
「いや、それだけではないな」
「……なんで、そうだと?」
「単に平伏しているだけには見えませんからねぇ。ガードって貴方も言ってたじゃないですか、これ明らかに自分の身を守ってますよ?」
「…………」
そこまで話したところで、アンデルセン氏から違うだろ、みたいなツッコミが飛んでくる。
それに合わせるように、ジェイドさんまで援護射撃をしてきて。
「……あの、僭越ながら顔色を御伺いしようかと思ったんです。そしたらなにか小声で呟いているのが聞こえて……耳を澄ませて見ると『死にました死にました私死にましたここで終わりです私はおわりです色々ミスりました』という言葉を、延々と呟き続けていらっしゃるようで……」
「……はぁ。ええとまぁ、印籠扱いなのは間違いないです。ただこう、想定している相手がより
「ん?上?」
極めつけにはるかさんのこの発言である。
……できればその辺りには触れたくなかった(≒触れなくても一応の説明はできた)ので、
「現状、『星解』が使える条件は一つ。
「同じ?誰とだ……いや待て、その言い方から察するに」
「ご想像の通りです。──
「うわぁ」
……まぁうん。
わかりやすく説明すると、近所に住んでるおじさんが弓の名手と聞いて、教わりに行ったら名手どころか実は星座になるレベルの腕前だった、みたいな話というか。
……え?わかりにくい?じゃあ近所に偉いおじいさんが居ると聞いて話を聞きに行ったらご隠居した前天皇様だったとか、まぁそういう感じである。
なんにせよ、敬ってはいるものの精々自分から数えて一つ二つ程度上くらいのものだと思っていた相手が、その実一番上の実力者だった……みたいな衝撃を受けただろうことは事実。
それゆえに今彼女の脳裏に過っているのは、先輩と軽く声を掛けに行ったつもりが社長に馴れ馴れしくお願いをしていた、というのと同義であるという怯え。
ナンバースリーならお願い事聞いてくれるかなー、なんて思ってたらナンバーワンにお願いしてたのと同じだと気付いたことによる一時的なショック状態である。
……ほら、ささらさんの名誉的には隠しておいた方がいい、ってなるでしょ?
「え、ええと……キーアさんが気にされていないのでしたら問題ないのでは……?」
「私が良くても周りはどう、って話でね。……いやまぁ、実際に『星女神』様もキリアも許してくれるとは思うけど、他の【星の欠片】から白い目で見られるのは避けられんし……」
フォローのためにはるかさんが口を開くも、正直今回の場合は焼け石に水。
物理的な死を免れたとて精神的な死を免れるとは限らない状況であるため、寧ろ笑ってあげた方が幾分マシかもしれない状態なのである。主に諦めが付くという意味で。
「なるほど、盛大に笑ってやれと。ではそのリクエストに答えるとしよう!バカめ!!」
「指差して大笑いしてやがる!?」
……まぁ、だからってアンデルセン氏みたいに即座に笑い者にするのもそれはそれでどうなのか、という気持ちもなくはないのだが。
笑われて気が済むのならそっちの方がいい?それはそう。
「……はい、私はとんだ大馬鹿者ですぅ」
「元気を出せささら。生きてればいいことあるさ」
「ありますかねぇ~……」
さっきまでに比べれば持ち直した感のあるささらさんを前に、ぽりぽりと頬を掻く私である。
……元々『星女神』様に頼むのは畏れ多いので、最近トップに駆け上がったばかりのナンバースリーに頼もう……くらいの軽い気持ちで行われたはずの今回の我が儘。
しかしてその実態は、結局『星女神』様本人に頼むのと大差ない話だった、というオチである。
とはいえそれも仕方のない話。
一体どこの誰が【星の欠片】になって実働三年にも満たないのに『星女神』様と(一時的にでも)同位にたどり着けると思うのか、というか。
そういう意味でも、私からささらさんに含むところはないのである。
「……【星の欠片】とやらには詳しくないが、実働期間が重要なのは他のモノと変わらないのか?」
「おっと、『星の死海』の話をしていらっしゃいますか?残念ですがあれは試験会場、試験勉強は他の場所でしなければいけないんですよ」
「ほう、お前にしてはわかりやすい例えだな」
「……人のことなんだと思ってます?」
「とにかく囀ずらずにはいられないお喋りな小鳥、といったところか」
なんだその評価()
……まぁうん、今のは個人的にもわかりやすい例えだったなぁ、とは思ったけど。
時間の流れが止まる場所である『星の死海』みたいな場所があるのに、実働時間が重要視される余地があるのか?……というのが先ほどのアンデルセン氏の質問の意図だろう。
確かに、無限に近い時間・無限に近いリソースがあるのに成長速度が実働時間に縛られる、というのは意味がわからないとなってもおかしくはあるまい。
とはいえそれは、
実際、大抵の物事は無限のリソースで無茶苦茶やれるのが【星の欠片】だが、こと【星の欠片】に必要な物事については別なのだ。
「基本的に
「なるほど……無限のリソースが前提だから必要な経験値もそっちに批准するのですね」
「まぁ、そういうこと」
さらに、『星の死海』はそもそも試験を受ける際にしか利用できない。
となれば、時間の無限は使えずリソースの無限は相殺する……という形で、他の技能と同じく実働時間を成長の指標とする他ない、という形に落ち着いてしまうというわけだ。
まぁ、無限の時間に関してはしのちゃんみたく、それがあっても上手く成長し辛いパターンもあるのだが。
……そういう面も含めて実働時間がやっぱりわかりやすいというか?
「その前提で行くと、高々三年しか経過してないような新米の【星の欠片】がナンバースリーになる、ってのが信じられないのもわかるでしょ?実際、そうなった理由の半分は『星女神』様の贔屓があったというのも間違いないわけだし」
元々、私がナンバースリーまで引き
まさに見た目だけ・お飾りの地位でしかなかったわけなので、その時の話を聞いていたのなら(言い方は悪いが)侮る方が普通、というか。
……まぁ、そこに引き
「なるほど……
「や~め~て~く~だ~さ~いぃ~……」
なお、その辺りを子細に語った結果ささらさんが顔を真っ赤にして俯いてしまったが、その辺は必要経費ということで……。