なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はてさて、私が思ったより高貴な人である……みたいなことになってしまい、ささらさんが恐縮しきりなわけだけど。
とはいえ、それで縮こまられてもこっちとしては困ってしまうわけで。
「ふむ……元々そのつもりでやって来たのに、これだと話がそこから進まないというわけか」
「まぁ、そうなりますね……次のとこに行くにもさっさと終わらせたいというか?」
現状、私たちはささらさんとこの世界にただやって来ただけ。
ここから色々と前準備をしたのち、私たちの世界と繋ぐ必要があるのだ。
……言い換えると、今はまだなにも始まってすらない状態。
ここでささらさんが使い物にならないと、話が終わらず次に行けなくなるのである。
「そういうわけなので、仕方ないから緊急手段」
「ほう、緊急手段」
「──ささらさん、
「は、はいぃ~!!」
「本当に緊急手段でしたね……」
仕方がないので奥の手。
上司命令で『気にするな』と伝えるという、よくよく考えると矛盾した言葉により彼女の気後れを解消したのであった。*1
うーん、我ながら力押しにもほどがあるやり方……。
ともあれ、これでようやく落ち着いて話ができる。
オーク君から始まった騒動も一段落、これにて解決や!
「……なーんて風に思ってたお前の顔はお笑いだったぜ(白目)」
「世界に最後の一人がこんなに多いとはな……」
なんて風に思ってた数分前の私をぶん殴りたい()
……ささらさんが落ち着いたところで、琥珀さんが若干申し訳なさそうに告げたのは「じゃあ今から健康診断、始めますね~?」の言葉。
そういえばそうじゃん、防疫の観点から繋ぐ前にちゃんと検査しないとって言ってたじゃん……と思い出した私達は、琥珀さんの臨時助手として彼女の手伝いをし始めたのだけれど。
「まさか今日に限って他の医者達が誰も捕まらないとは……」
「連絡取れたお方も、今日は外せない用事があるなんて仰ってましたものね……」
その手伝いがこれほど重労働になろうとは、欠片も予測していなかったというか。
まず、琥珀さん一人だけに任せる予定ではなかったのが、結果的に彼女だけが医者……みたいなことになってしまった。
その理由は今しがた述べたように、他の医者達がみんな他の用事で手が回らなかったため。
具体的には、ブラックジャック先生は隔離塔の定期検診・かつ今回は鉱石病に関するあれこれだったため、寧ろこっちを手伝って欲しいのだが?……とか言われる始末だったこと。
一応この後見学する予定の場所でもあったため、それまで待って貰えるようにお願いしておいたが……。
変わりにこっちを手伝って貰う、というのは不可能であった。
何故かといえば、単に面会に行くのならともかく、中にいる人達の検診のためとなると、その前と後に必要な処理の負担が重すぎるためである。
「確かそこには静謐のもいるのだったか。それに合わせ、対峙しただけで危険と言いたくなるような存在達の宝庫……『逆憑依』にはほとんど効かないとは聞くが、効かないだけであって原因が付着しないというわけでもあるまい」
「その辺、BBちゃんがやらかしたこともあって厳しくなってるから……」
「ん、なんだ?あの
「あーうん、アンデルセン氏が思ってるようなやつじゃないですよ?」
「?」
無自覚なキャリアーになる可能性が、『逆憑依』全員にあるのだと気付かされたというか……。*2
ともかく、隔離棟にはそういう危険のあるものが複数存在するのだ。
そのため、入る時にも出る時にも執拗なまでの除染作業が必要となっている。
その作業が煩雑かつ短いスパンに何度も受けられるようなものでないこともあり、ブラックジャック先生は現在迂闊に外に出られないのだ。
仮に出るのなら、ちゃんと隔離棟内の検診が全て終わってから、というか?
……ある意味こっちと状況は同じであるため、仕方なく彼の助力は諦めることになった。
で、他の面々に関してだけど……ロー君は何処にいるのか不明。
トキさんはなにやら取り込み中で、電話が途中で切れた。
というわけで、仕方なく私が増えてかつ琥珀さんと同期・実質的に彼女を増やすという暴挙により、医者の数を確保する羽目になったのであった。*3
まぁ、それだけなら私の負担が増えた、というだけで済ませられるので問題はない。
色々目を逸らしてる感が凄いけど、どうにかなる目は十分にあっただろう。
──その予想が覆されたのが、次の理由。
それは、この世界に集められた人間種の種類が思った以上に多かった、というもの。
「……いやまぁね?私のやり方が反則なのは知ってるよ?一つ一つ対象を指定して弾くんじゃなく、自分以外の全てを弾くってやり方だから例外を生まないわけだしね?」
「本来そのやり方では漏れが出るのが普通ですが、【星の欠片】相手だと基準が『より小さいもの』ですから漏れはほとんどでない、というわけですね」
「その漏れも、私がやるならキリアか『星女神』様か、って感じになりますからね」
話題にあげるのは、現在はるかさんに掛けられている防御膜のこと。
これは彼女に振りかかる異世界からの脅威を、それを脅威と知らせる前に弾くもの。
普通の防御は
まぁ、これが凄いのはジェイドさんの言う通り、【星の欠片】基準でやるからこそ……みたいなところが強いのだが。
あれだ、網の隙間を溢れるのが脅威だとするのなら、【星の欠片】で作った網から溢れるモノなんてほとんどない、みたいな?*4
そのレベルじゃなきゃ、一般人を軽率によその世界に連れていくなんてしない、って話でもあるんだけど。
ともかく、現状はるかさんには全く被害が及んでいない。
……だからこそ、気付くのに遅れたというべきか。
「まさか、この世界に集められた人達の特異性が、周囲にある病原体にも影響しているとは……」
「本来集うはずのない者達の集まりだからな。そうなれば、本来出会うはずのないものは人だけに留まらないというわけだ!」
そう、この世界に漂う病原菌。
これ、どうやらこの世界の人々に多重感染した結果、誰も見たことのないようなヤバいものに変異してしまっているのである。
いやまぁ、ここの人達にはなんの問題もないみたいなんだけどね?
病原菌の進化の過程で彼らにも何度か感染してるから、結果として抗体ができてるみたいだし。
そもそも、病気と言えど【星の欠片】より小さいなんてことはない。
いやまぁ、病気タイプの【星の欠片】ならあれだけど、そういうのはここにはいない。
……ということはだ、仮に重篤な症状に陥ったとしても、ささらさんが看ればそれで治せてしまうのである。
白血球の役割を彼女が満たすことができる、というべきか。
「しかもその場合、【星の欠片】共通の『対人外』特攻が普通に機能するから……」
「なるほど、どれほど強い病原菌であれ、普通に退治されてしまうと」
「体のどこかに隠れる、みたいなのも不可能だからね」
本来のささらさんがどこまで到達しているのかは不明だが、【星の欠片】として成立している以上自己の掌握は終えているはず。
ということは、だ。仮に他者の体に(小さな端末として)侵入した場合、その体の持ち主ではない存在の探知が普通にできてしまうはず。
つまり、体のどこかに隠れて増殖したのち、そこから体全体に爆発的に広がる……みたいな性質の病原菌すらすぐに発見できる、ということ。
結果、そういった徹底的な治療に晒される病原菌達は、知らぬ間に結構なレベリングを行っていたということになり……。
「ぎゃー!?なんですかこの数値!?普通の人に感染したら即死しますよこれ!?」
「あははー、こっちなんてあれですよー?腎臓に隠れてそこの機能を強化してくれるんですけど、変わりに大脳皮質が滅茶苦茶ダメージを受けます。なんですかね、アルコール摂取の速度を上げて宿主を自滅させようとかそういうあれですかねー?(白目)」
「怖い……怖い……遺伝子が分裂に必要なウイルスのはずなのに、細菌みたいになにもなしに分裂して、しかもその度に五倍に増えてる……」
「あははーなんなんですかねこれー私の目がおかしくなったんですかねー?これ目に見えるくらい大きくないですー?」
「ど う し て こ う な っ た」
「医学は専門外だが、俺にも言えることはある。(人生の)締め切り三秒前と見たー!!」*5
増えた琥珀さんが……みんな白目を剥いている……。
手伝ってる束さんやクリスはそこまでではないけど、やっぱり計測結果とかを見て青白い顔をしている。
……うん、なんだこの強毒病気パラダイス……(白目)