なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
ある意味静謐ちゃんが増えた、みたいな?
そんな冗談にもならないような冗談が脳裏を過る状況。……一体どうすりゃいいんだろうね?
一応、病原菌の対処自体は私がいれば事足りる。
さっき説明した通り、大抵のウイルスや細菌は
結局、彼らの面倒臭さはそのほとんどが
言い方を変えれば、見えないのでピンポイントに対処できない……みたいな感じだが、ともかく逆を言えば『見えれば問題ない』のも事実。
究極的には病原菌を死滅させられればよいのだから、見えている彼らにレーザーでも照射して跡形もなく焼き尽くす、とかでも問題はないのだ。
というか、【星の欠片】による対処はまさにそんな感じだし。
「下手に欠片を残してしまうとアレルゲンのようになる……というやつですね?」
「欠片でも免疫は反応しますからね。実際、ワクチンは似たような原理のはずですし」
あれだ、ウイルスに細工して増殖できなくしたものとかがワクチンとして使われるので、原理としては『わざと免疫を刺激する』になる、というか?
まぁその辺りはともかく。
現状でも対策方法自体はある。あるのだが……それが【星の欠片】のみ、というのは大問題だろう。
そりゃそうだ、だって【星の欠片】を持ち出しておいて、解決できない話の方が少ない。
無論、
……うん、小さな世界とか得意分野にもほどがあるので、幾ら強毒化しようが繁殖力が増そうが、私にはお茶の子さいさいでしかない。
とはいえ、それは見方を変えると
他の手段がないため、突発的なアクシデントにより私が関われないような事態に陥った場合、その時点でアウトになる、という風にも考えられるわけだ。
そりゃまぁ、琥珀さん的には問題でしかないだろう。
「そうですね~。科学者としてのプライドとかもなくはありませんが、なによりこのまま向こうと繋がるとここで起きていることが更に加速する恐れもありますし~」
「あ、そうか。人種の多様性を言うのなら、向こうも相当でしたね……」
はぁ、とため息を吐く琥珀さんに、はるかさんが思わずとばかりに言葉を漏らす。
……確かに。ここいら一帯の病原菌がおかしなことになっているのは、偏に突然変異を起こしやすい環境が整っていたから。
感染先にバリエーションがあること・それが本来なら絶対に関わりを持つことのない相手であることなどが災いし、彼らは前代未聞の変化を遂げた。
ということは、だ。
こちらよりも『逆憑依』という形で
起こるのは、更なる進化の加速だろう……と、危惧するのはわからないでもない。
なにが面倒って、それが起こらないと断言できないのが、ねぇ?
今の体調から極端に良くなることもなければ、極端に悪くなることもないというのが、『逆憑依』達の持つ共通の特徴であるが。
これ、単なる風邪くらいなら普通に罹患してしまう、という意味でもある。
多分だが、話の切っ掛けとして『風邪を引いた』というのが多用されるものだから、というところも大きいのではないだろうか?
病気にはなりたくないと思うのが人の常だが、しかして話の切っ掛けに『病気になりました』から始まるものがあるのも事実。
ゆえに、重篤になり辛い『風邪』が話題提供として使われることが多い……みたいな?
……今のは『逆憑依』が風邪になる理由だが、これをもう少し深く考えてみると……、
「……なるほど、極端に悪くもならないというのは、大病であれ罹患したのちある程度の期間を以て完治する、ということ。……
「まぁ、そうなりますね」
例えば、今のはるかさんは感染しないように完全防御されている。
これが『逆憑依』も同じであるのなら、特に問題はなかったのだ。
感染しないということは体内に入らないということ。
多種多様な環境を体験することが病原菌の成長に繋がると言うのなら、そもそも感染しないというのはその成長の機会を奪う──与えないことに繋がるわけだ。
ところが、『逆憑依』のシステムをよーく見ると、あくまで『重篤化しない』という形に収まっている。
どんな危険な病気に掛かっても命を落とすことはない、というのは確かに利点だが……同時に、病原菌に『感染した』という事実を残すのはよくない。
「まぁ、どれだけ『逆憑依』に感染しようが、結局『重篤化しない』耐性を抜くことは不可能だからあんまり意味はないんだけど……」*1
「それはあくまでも対『逆憑依』に関しての話。仮にそうして『逆憑依』に感染したのち、死滅せずに残った病原菌が外に出たら……」
「最悪パンデミックですね~。世界が滅ぶかは不明ですが、この子達がそのまま外に出たらまず間違いなく死人が出ますねぇ~」
「うわぁ」
……これである(白目)
うん、『逆憑依』の体質上病気を甘く見やすいのが完全に裏目に出る形、というか?
少なくとも、ここでこの病原菌達を持ち帰るなんてことになってしまえば大問題である。
なので、安全面を考えるとここでこの病原菌達は完全に処分してしまうのが一番なのだが……そこで待ったが掛かるのも当たり前、というか。
「はい?」
「人は真の意味では忘却できない、だったかな?……ともかく、彼らの存在を知り得てしまったことが別種の問題?を生むってこと」
「そうですね~。ここまで変異しているものを見るのは初めてです~。そして初めて、というのは
「……今ここでこの病原菌を死滅させたとして、再度別の場所から同じようなモノが現れないとも限らない……?」
「その通りです☆」
その理由は、彼らを完全に死滅させることは、別に人類の益にならないということ。
それが何故かと言われれば、変な言い方をすれば
……いわゆる悪魔の証明、というやつだ。
それも、普通のそれより面倒臭いパターン──未来永劫類例が発覚しないことを証明できるか、というもの。
この『未来永劫』というのが曲者で、猿がタイプライターを*2~じゃないが、それが起こらない可能性は決してゼロにはならないのである。
「その危険性も含めて、大抵のウイルスは感染を引き起こさないように注意しつつ、サンプルとして保管されているのが大半ですね~」
「問題には常に備え続けなければ意味がない、というわけか。民衆はそれを無駄だと言うが、その無駄を続けなかったがゆえに失われたものもある……」
「その辺はまぁ、未来を視れない以上仕方ない話だからねぇ」
失敗や損を極端に嫌うがゆえの弊害、ということにもなるか。
……まぁともかく、下手に絶滅させるのも悪手、ということがわかれば問題ない。
となると、ここでやるべきことはサンプルを取ったのち、それ以外の病原菌を全て死滅させる、ということになるのだけれど。
「……サンプル幾つ必要?」
「はい?その質問はどういう……」
「いやね?今しがた琥珀さん達が悲鳴を上げてたでしょ?……それ、あと何回やればいいんだ、みたいな?」
「えっ」
……うん。
一度のサンプル採取で必要なもの全部集められてたらいいんだけど。
生憎病原菌は目に見えないもの。……つまり、取り零しの可能性は常に付きまとう、ということでもある。
より簡潔に言えば、この世界内を全て歩き回り、そこいら中(地面とか空気中とか水の中とか木々や生き物の体内とか)からサンプルを取りまくらなければいけない、ということになるか?
……うん、終わるのかなそれ?
「一応、病原菌の死滅だけなら『虚焦』で纏めて吹き飛ばすのも可能だよ?可能だけど……」
「その口ぶりだと、例外なく全てを吹き飛ばす類いの技、ということか。……サンプルを残す必要のある状況ではまさに悪手だな」
「そういうことー」
つまり、これから私たちが行わなければならないのは、地道な諸国行脚とサンプルの確保。
……見えないものの確保がこれほど面倒だとは、と思わず天を仰ぐ羽目になった私たちなのでありましたとさ。