なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「あーもー面倒臭い!こうなりゃ最後の手段、『虚渦』!」
「うわぁ!?なんですかこれ!?いっぱい粉みたいなのが集まってくる!?」
「微生物を対象に、この世界に存在するそれらの存在を全部ブラックホールに吸い込むように集めてるのです」
「最初からそれやればよかったのでは!?」
「
「……なるほど」
騒がしいねこの人たち(一番騒がしいやつの戯れ言)。
ともあれ、流石にこの世界を回って病原菌を集めるのは(幾らこっちの時間の流れが遅いとはいえ)些か無理があるのは事実。
……というわけで、ちょっとだけズルをさせて貰う。
まぁ今しがた述べた通り、あくまで各地を回る時間を短縮できるだけで、この中から私たちが対処すべきものについて選り分ける手間は掛かるわけだが。
それでも大幅な短縮であることは間違いなく、ゆえにさくさくとサンプル取って確認していく私たちなのであった。
「……驚く暇がないと言いますか、生物多様性がエグいと言いますか……」
「あーもう……見てるだけで頭が痛くなってくる……」
「流石の束さんもこの量はちょっと見飽きてきたよー」
──数時間後。
ひたすら病原菌を選り分けてきた私たちだけど、流石に集中力が途切れてきた。
さもありなん、有効なサンプルだけって言っても数千どころではない数が集まるのだ。
一応、一時的な【俯視】の付与で作業効率は上げてるけど、小さなものを見続けることによる眼精疲労はどうしようもない。
……え?なんで一時的な付与なのかって?
本格的に付与するのは嫌です、って琥珀さんが駄々を捏ねたからですね(すっとぼけ)
「捏ねるに決まってるじゃないですか!?私【星の欠片】案件には極力関わりたくないって言いましたよね!?」
「えー?そんなこと言ってましたっけー?」
「じゃあ今言いました!極力関わりたくないです~!!」
「やだ、思ったよりすっごい嫌がってる」
まぁ、ただでさえ珍しい一例として『星女神』様に注目されてたりする琥珀さんなので、これ以上余計なものを背負いたくないのだろう、多分。
ってなわけで、ちゃんと覚えると【星の欠片】的素養というか思考パターンというかが身に付く【俯視】、琥珀さん的にはノーセンキューだそうである。
え?他の面々?琥珀さんに続いて『一時的でいい』って謙遜してましたね(すっとぼけ)
「押し売りかなにかですか?」
「でも便利ですよね?」
「押し売りかなにかですか?」
「やだ頑な」
そんなに嫌がらなくてもいいのに。
っていうか、最悪『星女神』様に目を付けられたら嫌でも覚える羽目になりますよ?
影響があるって言っても【俯視】はどちらかといえば道具系統の技能、さっくり覚えて便利に使うのが一番だろうし。
……そういう意味では琥珀さんに関しては無駄な足掻き「無駄じゃないですー!!」はいはい。
まぁともかく、そんな感じでずっと微生物観察してたわけなのです。
……にしても、数時間経過と来たか。あっという間に過ぎてったね、なんか。
「そうですね……目の前に鎮座する微生物の山を見てたら、頑張らないと終わらないのが手に取るようにわかったのも理由かとは思いますが」
「……原稿以外でこれほど追い詰められる羽目になるとは思わなかったぞ……」
「精魂尽き果ててますねぇ。かくいう私も暫く小さいものに神経を尖らせたくない感じですが」
はるかさんが私の言葉に反応を返しつつ、目の前にある山を見る。
……『虚渦』により集められた微生物は、限定的な引力に捕まっておりそこから移動することができない。
その結果どうなるのかというと、塵が集まって山になる……みたいな見た目になっているのである。
私たちはこの山から微生物達を掬い、顕微鏡とかで確認をしているわけだ。
なお、本来なら相手がどういう細菌なのかという知識判定を必要とするのだが、限定付与状態の【俯視】の効果を絞ることでその辺りを対応している形となる。
具体的には、特に人間に対して害がなければ青・場合によってはなにかしらの害を及ぼす場合は黄色・あからさまに危険な場合は赤、みたいな感じに色が付いて見えるわけなのだが。
それならわざわざ顕微鏡で確認せずともなんとかなりそうな気がするが、生憎限定付与だと【俯視】の効果範囲が文字通り限定され、分かりやすく言うと拡大しないと何色かわからない……みたいな感じになってしまうのである。
そんなわけで、判断はしやすくなっているものの、流石に私が処理する速度には叶わない……みたいな感じになっているのでしたとさ。
「それでもまぁ、危険度振り分けはできても既にサンプル取ったかどうかはわからないから、その辺琥珀さんに投げなきゃいけないんだけどね」
「危険のないものは一先ず無視できますので、それだけでも助かってますけどね~」
うん、これが『星女神』様ならもうちょっとスマートに片付けられるんだけどねー。
その辺は所詮はナンバースリー、ということかなー。
「ええと、『星女神』さんですと、もっと短時間で終わらせられるのですか?」
「ええまぁ。私たちは自分で仕分けてますけど、『星女神』様なら微生物達に
「それは確かに早いですね……」
こっちは『
まぁようするに、対象に対して
あれだ、『統一言語』を【星の欠片】の規格で行っている感じ、というか。
あれと違うのは、『統一言語』が世界に聞かせるみたいな感じなのに対し、こちらは
まぁともかく、もっとスマートな解決手段があったことは事実。
無論、私にそれを使用できるだけのレベルが足りてないということでもあるため、まさに無い物ねだり以外の何物でもなかったりもするのだが。
「……それをわざわざ今聞かせた理由は?」
「使える手段はなんでも使うべきでは、というお誘いですかね」
「し~つ~こ~い~で~す~よ~???」
なおこの辺りの話は全て、琥珀さんが【俯視】をちゃんと覚えてくれればもうちょっと早くなったんですよ……ということを遠回しに勿体ないと告げるためのものでしかなかったりする。
いやだって、ねぇ?私だって自分の未熟さに臍を噛んでる*1のになー(棒読み)
それを自分の我が儘だけで果たしてる琥珀さんはいいのかなー(棒読み)……みたいな?
まぁここまで主張してなお、琥珀さんは『絶対に嫌!』の姿勢を崩さなかったのだけれど。うーん強情。
「え、え~とぉ~。とりあえずぅ~お昼にしませんかぁ~?」
「おっとそういえば休むって話だった。……お昼はいいんですけど、ここって外食できる場所とかあるんです?」
「ありますよぉ~。ゾンビの飯処とかおすすめですぅ~」
「なるほどゾンビの飯処……ゾンビの飯処!?」
それ腐った食材とか腐敗臭とかで食事どころの話ではないやつでは?!
そう思い聞き返すも、ささらさんはにっこり笑って「行けばわかりますよぉ~」の一点張り。
……というか、横のジーク君に確認したところ、そもそもこの街において食事処はその『ゾンビの飯処』以外存在しないらしく、嫌でもそこを選ぶしかないとのこと。
「まぁ、騙されたと思って付いてきてくれ。悪いことにはならないから」
「看板が食欲減衰させるんですがそれは」
いやまぁ、別に腐ったモノを食べても大して体調を崩さないけどさぁ、『逆憑依』。
だけど好き好んでわざわざ不味いものを食べたいわけでもない……というか?
とはいえここまで勧められると気になるのも事実。
仕方がないので、先導する二人の後を追い掛け、件の飯処へと向かう私達である。
「ここがぁ~噂のお店ですぅ~」
「え、ここが?」
「そうですがぁ~?」
「……いや、本当に?なんかすっごく綺麗じゃない?っていうかなんなら中世的空気感に似合わぬ最近のお店って感じじゃない?」
そうして案内されたのは、都会のおしゃれな料理屋と言われても通りそうな、小綺麗な店舗。
……あまりに小綺麗過ぎて、周りの家とかから浮きに浮きまくってるんだけど……え、ここがゾンビの飯処?
もしかして『ゾンビ』って、なにかの隠喩とかだったりする?
「いいえぇ~?ここの店主は由緒正しいゾンビですよぉ~?」
「嘘だぁ、匂いもしてこないっていうか、普通に美味しそうな匂いしかしないよ?」
「まぁまぁ~モノは試しに入って頂いてぇ~」
「むぅ……まぁ入り口で大勢屯ってるのも営業妨害以外の何物でもないでしょうし、入りますけど……」
うーん、なんだか狸にでも化かされてるような感覚……。
どうにも違和感しかないが、ともあれ店の前で騒いでいては邪魔にしかならないだろう。
ゆえに意を決し、店内へと歩を進めた私たちは。
「あ゛、い゛ら゛っじゃい゛ま゛ぜぇ~。何゛名゛様゛でじょう゛がぁ~?」
「うっわすっごいダミ声の……ダミ声の……美少女?」
「や゛だな゛美少゛女な゛ん゛で、わ゛だず照゛れ゛でじま゛い゛ま゛ずぅ」
「更に若干訛ってる?!」
フリフリのメイド服を着て、こちらを出迎えた少女の姿に、思わず驚く羽目になるのであった。
……え、もしかしてこの美少女ゾンビなの?見えねー!?