なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「わ゛だず、ごごの゛オ゛ーナ゛ーじでる゛モ゛ノ゛でず。気゛軽に゛『ゾンビぢゃん゛』どでも゛お゛呼゛びぐだぜぇ」
「こ、これはこれはご丁゛寧゛に゛……」
「キーアさんキーアさん、話し方が
「おおっと」
ゾンビ訛り……とでも言えばいいのだろうか?
発声しにくいんだろうなぁ、ゾンビだし……みたいな感じのダミ声が混じった、多分どこかの方言だと思われる言葉遣い……といえばいいのか。
そんな感じでにこやかに話し掛けて来る、ゾンビ少女ことゾンビちゃんである。
まぁ、自動翻訳機能的なのがそういう風に聞こえるようにしているだけ、という可能性もないではないが。
ささらさんに確認したら、一々こっちの言葉を覚えさせるよりその辺をオートで反映させた方が速いですよね、みたいなこと言ってたし。
「オート翻訳、ですか?」
「ええ。この世界そのものがささらさんの──もとい、【星の欠片】の影響を強く受けたモノである、というのはわかりますよね?」
「それはまぁ。他の世界との時間の遅れも、ある意味それによるものなのでしょう?」
「そうですね。【星の欠片】が励起状態であるために、内部が外界から隔離されているのに近い状況に陥っているため、自然と外と時間がずれていくわけです。……逆を言うと、時間遅延はあくまで副作用であって、その主目的は別のところにあるわけなのですが」
「なるほど。その内の一つが『内部での言語による意志疎通の円滑な運行』であると?」
「そういうことになりますね」
この世界が向こうの世界と比べて時間の流れが遅い、というのは何度も説明した通りだが。
その理由というのは、この世界が【星の欠片】によって管理されているから、というのがとても大きい。
私たち【星の欠片】が無限概念であることはもはや周知の事実だが、ゆえに
あれだ、方向性的には
「まぁ、正確に説明するのならこっちは無限の試行回数を強いるのではなく、どのタイミングでも常に無限が存在する……すなわち一秒が無限に分割されていると判別されるから、という感じになるのですが」
一つの世界を他の要素から保護する場合、結界などで覆うのが普通だろう。
この世界もその例に漏れず、【星の欠片】による結界の保護下にある、という風に見なすことができる。
……できるのだが、知っての通り【星の欠片】とは原則無限にある【星の欠片】を組み換えて目的の現象を起こす、というもの。
ということはだ、結界を作ると言ってもバリアーみたいなものを作って終わり、ではなく。
対象となる部分に【星の欠片】を必要分注ぎ込んで内を満たす……みたいなやり方になるのだ。
何故かって?一般的な結界術のように『内と外を分ける』ように状態を再現するのが難しいため、である。
「正確には難しいって言うより、やることが煩雑になりすぎるって方が近いかな。できなくはないんだけどそれをするなら中身を【星の欠片】で満たす方が遥かに速い、というか」
「はぁ……?」
何度か説明している通り【星の欠片】による技能の再現は、原則『無限数なので無理が通って道理が引っ込む』タイプのモノである。*1
通常の能力者のようなスマートなモノではない、とも言い換えられるだろうか?
まぁ、どんな計算式にも『1+1+……』を使っているようなものなので、スマートさと無縁なのは仕方のない話なのだが。
ともかく、私たち【星の欠片】がなにかを再現しようとする時、基本的に大抵の計算式を『四則演算に無限を放り込む』ことで対処している、というのは事実。
それは見方を変えると、なにかしらの条件が出る度に無限を多用している、という風にも考えることができるわけで。
「結界術──外と内を分ける、というそれを【星の欠片】で再現しようとすると、『内と』『外を』『分ける』で最低でも三回、無限を放り込まないといけなくなるんですよね」
「……なにかしらの条件が発生する度、というのはそういうことか」
内側がどこまでを指すのかの定義に一回。
外側がどこまでを指すのかの定義に一回。
更にそれらが別物・混ざらないことを定義するのに一回。
最低でもその三回分、無限を投入する必要があるわけだ。そりゃまぁ、【星の欠片】的にも効率悪っ……てなるわけである。
これを簡易化する場合、一番簡単なのが『特定範囲内に無限を放り込む』ことになる。
特定範囲とは言うが、今回の場合は世界が器であるため『範囲の指定に無限を用いる必要がない』。
そのため、必要となる無限は一回分で済むわけだ。
……ただこれ、簡単な分それなりに副作用が出てしまう。
「その副作用っていうのが、内部の存在に対して【星の欠片】の影響が強く出る、ってやつだね。最初に示した三回分のやり方だと、範囲の定義の際に細かい指定も合わせてするのが普通だから、少なくとも
「時間の流れの差だの、そういうものが発生するのはおかしいということか?」
「再現する結界の性質にも依るけど……単純に『内と外を分ける』ことにのみ着目した結界を【星の欠片】で作る場合は、そういうのは発生しないのが普通だね」*2
より正確に言うのであれば、そういった差は結界の存在に気付かれる要因であるため無くすように調整するのが普通……みたいな?
まぁともかく、複数回無限を投入するようなパターンの場合、計算式の煩雑さはともかく出力される結果自体は綺麗なものに仕上がる、というのは本当の話。
ゆえに、一回しか無限を投入しないようなやり方の場合、最終的な結果はちょっと見映えが悪くなるのである。
その見映えに当たるのが、今回の場合だと(疑似)結界内のあれこれに対する【星の欠片】の影響だ。
「まぁ、言い方を変えると全体に影響するような設定を付与しやすい下地がある、ということにも繋がるわけですが。三回パターンの場合、内部と外部のモノそれ自体には触れてませんからね」
丸を描いて一部分を囲うのと、同じく丸を描いて中を塗り潰すのの違い……みたいなものだろうか。
前者は線を引いてその内と外を区分けしているわけだが、あくまで区分けしているだけなので内部にも外部にも、触れているのはその線の両側のみ。
対して後者は、塗り潰しているため内側はその丸に触れている。
ゆえに、内部にも干渉できる余地がある、ということになるわけである。
まぁ代わりに、あらゆる干渉が全体に波及してしまう弊害もあるわけだが。
前者ならピンポイント干渉もできなくはないが、後者でそれをしようとすると一回分の無限ではどうしようもない、という事態に陥るわけだし。
……え?そのパターンなら前者も投入回数は一回増えるだろうって?
ともかく。
適当に無限を放り込むだけのパターンの場合、【星の欠片】の影響を強く受けやすい≒強く干渉しやすいのは事実。
そこで発生するのが、内外の時間経過のずれであり……、
「干渉方面で行われているのが翻訳作業である、と?」
「そういうことですねー」
範囲が世界全体なので、その範囲内に『言語を日本語に翻訳する』と設定すると、そこにいる全ての存在がコミュニケーションを取る際日本語を使うようになる、というわけだ。
……全ての存在なので、仮に草木が話し掛けて来た時もちゃんと日本語になる。
とまぁ、そんな感じでこの
「な、なんだと……!?」
「な、名前を言ってはいけないあの人みたいなものだったと……!?」*3
「翻訳者の癖が出ているだけで、彼が片言であるわけではないということなのですか……!?」
「……ええと、そこまで愕然とすることなの、それ」
いやまぁ、オート翻訳と言ってもなんの根拠もないわけでもなく、当人の話し方そのものに
その辺は目の前のゾンビ少女も同じかなー?
「……あ゛、ぞごでわ゛だずに゛話゛が戻゛っでぐる゛ん゛でずね゛。ぞの゛ま゛ま゛ズル゛ーざれ゛る゛の゛がど」
「いや、そもそも貴方の解説のために始めたものだし、そりゃ戻ってくるでしょ?」
(……初対面ながら、なんかずれてる人っすなー)
……あれ、おかしいな?
なんか今の一瞬で、ゾンビちゃんからの視線まで生暖かくならなかった?
思わず訝しむ私に、ゾンビちゃんは「ぞん゛な゛ごどな゛い゛っずよ゛ー。ゾン゛ビだげに゛」とか返してきたのだった。
……小粋なゾンビジョーク!?*4