なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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一先ずそれは置いといて

「で、結局ゾンビちゃんは【星の欠片】だったのか?」

「んー、能力の原理的には似てたけど、無限概念ではないっぽいから違うっぽい?」

「ぽいぽい言いすぎだろうお前」

 

 

 このままではソロモンの悪夢になってしまう!*1

 ……え?ぽいぽい言うから夕立は安直というか、最近の人には伝わらないネタ系に近い?*2

 

 それはともかく。

 一応一般異世界人(?)であるらしいゾンビちゃんにいつまでも拘る必要もなく、食事を負えたのち早々に店の外に出てきた私達である。

 この街唯一の料理屋なこともあって、食べ終わったのに居座ってると問題になるからね、仕方ないね。

 

 

「こっちは向こう(なりきり郷)と違うから、仕事の邪魔しちゃ悪いものね」

「……?あちらは仕事の邪魔をしてもいい、という風に聞こえましたが?」

「ああいや、言葉の綾と言うか……って、その辺りの話まだ聞いてない感じですか?」

「はい?」

 

 

 向こうなら食べ終わった後も店内で駄弁ってたりするんだけどね、的なことを言うクリスに対し、不思議そうな顔で質問を投げ掛けてきたのはジェイドさんである。

 いや、なんでそこで不思議そうな顔を?……と思わず考えてしまった私だが、そういえばこの人今日『逆憑依』になったばかりの人だったわ、と考え直した。

 

 っていうか、そうでなくとも元々エージェントの類いであった人物。

 言い変えるとはるかさんと同じと言うことであり、ゆえに向こうでの飲食・宿泊は普通に実費が掛かるタイプの人物なわけで。

 そりゃまぁ、なりきり郷特有の感覚には疑問が湧いてくるよな、みたいな感じになったというか。

 いやまぁ、今の口振りからするに彼等の元となった人物は、こっちに仕事しに来たのは今回が初めて……って感じでもあるんだけどね?

 一回でも来たことがあれば、その辺りの事情については知っているはずなのだし。

 

 

「……そういえば、あちらは一つの施設で生産と消費が完結している一種のアーコロジーなのだったか。その恩恵として、内部で発生する金銭が必要な行為のほとんどが無償で提供されているとかなんとか」

「おっと、アンデルセン氏はご存知でしたか」

「又聞きだがな。そもそも眉唾物だとも思っていたが」

「まぁ、確かに。なりきり郷のそれは自己完結どころか外に外貨獲得手段として放出できるレベルですからね」

 

 

 その言葉を聞いて、思い出したようにアンデルセン氏が小さく唸っていた。

 ……自己完結の時点で嘘臭いのに、その上内部で作ったモノを外に売り出す余裕まであるとなれば、ホラ話の類いだと疑われるのも仕方あるまい。

 

 とはいえ、その辺りはリアルならぬリアリティ、とでもいうか。……現実的じゃないモノが絡めば変なことも実現できるわな、みたいな?

 そんなわけで、なりきり郷内ではお金が掛からず生活できる(こともある)ということになるわけなのであった。

 

 

「……ああなるほど。今の私達は利用できますが、はるかさんのような場合だと普通に金銭が必要になるわけですか」

「ぬぐっ、それはそうなんですけどなんで今(言葉のナイフで)刺してきたんですか?」

「ああいえ、そういうつもりでは」

 

 

 はっはっはっ、と笑うジェイドさんと小さく唸るはるかさんを横目に、領主の屋敷への道を戻る私達。

 まぁ、そうして戻りながら、微妙に憂鬱な気分になってきたわけだけど。

 

 

「……そっか、不思議な料理のお陰で忘れてたけど、戻ったらまた微生物の選別が始まるのかぁ……」

「まだまだ山が残ってるからね……」

 

 

 その理由に関してはご想像の通り。

 終わるまで待ってるとどれほど掛かるかわからない、ということで昼休憩に出てきたけど、それはつまり戻れば作業を再開する必要があるということ。

 すなわち、再びの病原菌確認作業である。

 

 なにがあれって、適当なことをすると漏れなく酷いことになるのが目に見えているため、休憩挟みながらでも終わらせなければいけないってのがね……。

 そもそもの話、『虚渦』の効果時間も気にしなきゃいけないし……。

 

 

「え、あれって永続効果というか、キーアさんが解除するまで続くとかそういうあれじゃないんですか?」

「『星女神』様がやるんならともかく、私がやる分には制限時間付きだよ。まぁ、その理由は単に変な変異を起こさないように、って意味合いが強いけど」

変な変異ってなんですかっ!?

 

 

 そんな私の言葉に、慌てたように声をあげるのが琥珀さんである。

 ……まぁうん、相手を停止させて集めるって効果なのに永続じゃないの?って疑問が出てくるのはわからんでもない。

 ただ、それに関しては()()という面の方が強いというか?

 

 先に説明した通り、『虚渦』は対象となる存在を特定の場所に留めおくモノである。

 で、その『留めおく』という状態を保つために、副次的な効果として()()()()()()()()()こともできるようになっている。

 これは、その場に留めおくために相手が逃げることを(実質的に)禁じているがゆえに起こるモノ、ということになるわけなのだが……そこに落とし穴がある。

 

 どういうことかと言うと、『停止させた相手を集めている』のではなく、『集めた相手を停止させている』がゆえに効果の主体とそれに対する抵抗の計算が別物なのだ。

 

 

「……はい?」

「例えば、相手を時間停止状態にしてから一所に集める、となった場合に『一ヶ所に集められる』こと自体に相手が抵抗できるか?……みたいな感じ?」

「なるほど。つまりあれだな、一つの行動で二つ以上の効果を得ようとしているからこそ、それに対する反発も強いと?」

「雑にいうとそういうことになりますね」

「なんで今の説明でわかるんです……?」

 

 

 うーん、マシュとは別方向の超速理解。

 あれだな、専属通訳として雇いたく……え?殺人事件の被害者になるつもりはない?

 遠回しに大楯で殴り倒されたくない、って言うの止めません?

 

 まぁともかく。

 今しがたアンデルセン氏が述べたことを参考に説明し直すと、『虚渦』は『一ヶ所に集める』ことを主目的とした上で、そのついでに『相手の動作を封じる』効果もある……みたいな感じの技となる。

 言い換えると『集める』ことと『封じる』ことが一纏めになっている、ということになるか。

 

 対し、先の説明に使った例──『止めてから纏める』方は、『止める』効果に『纏める』効果はない。

 ゆえに、極端なことを言うと『相手を止めた』あとの動きに関しては、別に実際に背負って目的の場所に持っていく──みたいなやり方でも問題はない。

 

 そのやり方だと労力が増してない?

 ……みたいな話になりそうだが、これは無限概念である【星の欠片】が対象の話。

 労働力はそもそも幾らでも用意できるため、『一つの無限(労力)に対して掛かる目的(仕事)の数』方が問題になるのだ。

 

 無限であるということを一旦脇に置くと、先の話は一つの労力に対して『纏めて』『止める』という二つの目的を背負わせているということになり。

 後者の方は一つの労力に対して『止めた』あと他の会社に仕事を任せた、みたいな感じになるというか。

 一つの会社に負担を纏めすぎ、みたいな認識でもいいのかもしれない。

 

 そしてそれゆえに、出てくる問題も似ている。

 一つの会社でなにもかも賄おうとすると首が回らなくなる、みたいな感じで。

 

 

「つまり、制限時間ってのはつまり『仕事が多くて現場がパンクしかかっているから』それを解消するためのもの、ってことだね。仮に一ヶ所に纏めるだけなら私でも制限時間はなくなるよ?その場合『虚渦』じゃなくなるから、結果としてウイルス同士が食いあうみたいな予期しないことが起きる可能性は否定できないけど」

「なるほど……山になるほど近くに集められているのですから、そういった別方向の問題が起きる可能性もあるんですね……ところで、変な変異の方は……?」

「ああ、わざと制限時間を設けてる、みたいな発言の方ね?そっちはもっと単純。あくまで副次的な効果として停止させてるだけだから、判定としては『動こうとして止められてる』になるんだよね」

 

 

 さて、制限時間が付けられている理由は明らかになったけど。

 その前に私が言った『わざと制限時間を設けている』みたいなものの方の説明は終わっていない。

 なのでそっちに触れると……答えとしては単純。

 さっきのが『相手からの抵抗』に関しての話なら、こっちは『こちら側が相手に与える影響』の方の話。

 もっとわかりやすく言うと、【星の欠片】そのものの性質についての話である。

 

 

「【誂えよ、凱旋の外套を(エスコート・ステート)】の原理については知ってるでしょ?【星の欠片】との戦闘を強制的・かつ永続的に発生させることで相手のレベルを上げる、っていう。これ、【星の欠片】が弱いからこそ起こることなんだけど……わざわざ技という形にしなくても、普通に発生しうる状況なんだよね」

「……ああなるほど。つまりはこういうことか、完全に相手の動きを止めているのではなく、あくまで相手の動きを阻害する……という方式であるがゆえに、結果としてその【誂えよ、凱旋の外套を】とやらと同じ効果が局所的に発生している、と」

「……なにやってるんですかキーアさん!?」

「いや、やろうと思ってやったことじゃないんだって……」

 

 

 本来『虚渦』にそんな効果はないのだ。

 言い換えると、未熟者な私が使っているからこそそんな副作用が出てきてしまった……というか。

 まぁ、例えに出した【誂えよ、凱旋の外套を】と同じ様に経験値獲得判定もあくまで『虚渦』の判定が残っている間だけ。

 そもそもレベルアップを主目的にしたものでもないので、それによって上げられたレベルも技が終われば元に戻る……という時点で、そこまで問題とはいい辛い。

 

 まぁ、裏を返すと一部問題になる可能性がある、ということでもあるのだが。

 例えば『虚渦』の停止効果を上回れるくらいにレベルが上がった場合、消えるはずの経験値がそのまま残る可能性も否定しきれないというか……いや、経験値っていうよりはそれを成した(文字通りの)経験、みたいな?

 

 その辺が『予期せぬ変異』に当たり、そういうのを起こさないためにも制限時間は必須というか。

 そんな感じのことを説明した結果、琥珀さんは悲鳴をあげながら真っ先に屋敷へと飛んでいってしまったのであった。

 

 ……一応まだ制限時間に余裕はあるんだけどなぁ。

 

 

*1
『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』に登場するキャラクター、アナベル・ガトーの異名(ソロモン宙域で活躍したことから、敵側によって付けられたもの)。ソロモン(宙域)()悪夢を見せる者、の意

*2
上記のネタに肖って付けられた『艦これ』のキャラクター・夕立の異名、及び彼女の口癖『~ぽい』から。夕立という艦がは第三次ソロモン海戦において武勲を上げていたことからのパロディの一種。夕立本人が『ソロモンの悪夢、見せてあげる』と言ったからこその関連ネタでもある。なお、アズールレーンの夕立も彼らに肖ってなのか、スキルの名称として使用している(他にもタイトル名にも使われている)

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