なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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山を削る、私が削る

 一足先に戻った琥珀さんに急かされるまま、『虚渦』を解除して再度掛け直す作業を行った私。

 額の汗を拭うような動作をする琥珀さんに苦笑しつつ、そのまま微生物の仕分け作業に戻ったわけだけど……。

 

 

「正直、『虚渦』で発生しうる変異なんか目じゃないくらいに変異してると思うけどね、ここのウイルス達」

「まぁ、そこは否定しないわよ。目に見える大きさにまで成長してたりするし」

「これ、人に感染できるのかなぁ……?」

 

 

 本来、病原菌と呼ばれるタイプの微生物というのは目に見えるような大きさではない。

 細菌とかならまぁ、モノによっては肉眼視できるかもしれないが……ウイルスの場合はその構造上、感染相手の細胞を利用して増えるために()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

 にも関わらず、である。

 私達の目の前にある病原菌達の山、その中には()()()()()()()()()()()()()が混じっているのだ。

 そりゃまぁ、なんじゃこりゃって気分になるのもおかしくはない。

 ……そもそも琥珀さんも叫んでたしね、さっき。

 

 

「……調べた結果、このウイルスは一種の囮のようなものであることがわかりました」

「囮?」

「見える大きさということはそれに注目する・されるということですよね?虫でもない、ホコリでもないなにかが視界の中に映るわけですから。……で、そうして視認した隙に周囲に散布されたウイルスが対象に押し寄せる……と」

「ねぇ?それ本当にウイルス?」

 

 

 明らかに自分の意思で戦略を駆使してない?

 

 彼女の説明を纏めると、次のようになる。

 まず、この視認できるウイルスはそれその物自体には感染力はない。

 

 そりゃそうだ、こんな大きさのウイルスが細胞の中に侵入できるはずもない。

 それに関してはウイルス側も承知の上らしく、このウイルスを構成する物体にはそもそも遺伝子とかが含まれてないのだとか。

 ……それをウイルスと呼称していいのかはわからないが、ウイルスが増える過程で生み出されるモノではあるらしいので一応ウイルスの一種、みたいな扱いになるらしい。

 

 ともかく、不要物を纏めて作られたようなものであるそれは、ある種の囮のようなモノであるのだとか。

 これに視線を集めさせたのち、周囲に漂う他のウイルスがつられた相手に殺到して感染する……と。

 

 聞いててなんじゃそりゃ、としか言えない話だが……どうやら異世界のウイルスであることがその理由の一端になっているのだそうな。

 

 

「魔力とか気力とか、いわゆる科学で説明できないけど確かにあるもの。……そういうものをこのウイルス達も持ち合わせているってことね」

「多分色んな種族に感染する中で、意思のようなものを形成す機会を得たんだろうねぇ」

「得たんだろうねぇ、じゃないんだが?」

 

 

 魔力・霊力・気力・精神力。

 さまざまな名前で呼ばれる非科学的なエネルギー達。

 そういうものが人ならぬものに意思を持たせる切っ掛けとなる、みたいな話は数多の創作物を見ていればよく触れることだろう。

 このウイルス達に関しても同じで、厳密には生物と言えないはずの彼らが生物的行動──群れを作ったり囮を用いたりという行いを自発的にできるようにする原因として、それらのオカルトパワーが用いられている可能性が非常に高いのだとか。

 

 ……話を聞いていると、誰かがウイルスに魔力とか注いで魔物にした、みたいなモノに聞こえるわけだけど、それに関しては是とも否とも言えない、という答えが返ってきた。

 

 

「ないとは言えないんですが、同時にこの世界でそれを誰がやるのか、という部分がですね?」

「あーなるほど、【星の欠片】の支配下なんだから普通の手段じゃ干渉も難s答え言ってるようなものじゃん!!

「ですよねー」

 

 

 この世界はささらさん(現在はジーク君)の統括する世界。

 ゆえに、その内部でなにかをすれば普通に察知されるはずであり、誰かが意図的にこのウイルス達を生み出したと考えるには少々問題がある……みたいなことを考えたところで、今しがた答えを口にしてるやんけと頭を抱えた私である。

 

 ……うん。ささらさん達がやったと考えるのもいいが、ここで考慮するべきはいつぞやかに私が言った言葉の方だろう。

 ええ、設定上存在するんですよね、()()()()()()()()【星の欠片】。

 さらにそれは、少なくともささらさん達より格的には(うえ)になる存在。……気付かれずにあれこれできますねぇ、ええ。

 

 一応、本来それを扱うことになる宿主──【星の欠片】は、無闇矢鱈に他者を害するようなタイプではないはずなんだけど……。

 ……はい、私が創造(かんそく)した通りになっているとは限らない、という一例が目の前に居ますね。

 その一例であるジーク君は首を傾げていたが……ささらさんの方は「あ~」と呻いて冷や汗を流している。

 

 

「……で、でもぉ~。その辺『月の君』様はぁ~なにも言ってませんでしたのでぇ~、大丈夫だと思いますよぉ~?」

「その震えた声に信憑性があると思ってるのなら笑ってあげますよ」

ですよねぇ~……

 

 

 流しつつ、それでも反論してくるわけだけど……『月の君』様の現在の性格である『他者に積極的に試練を投げてくる』というのを思えば、絶対に無いだなんてことは言えないため声が震えていた()

 

 ……なにが面倒臭いって、本人その物ならともかく生み出したモノから【星の欠片】の関連を疑うのは難しい、ってのがねぇ……。

 

 

「ダメなの?」

「ダメっていうか、関わり方が間接的過ぎて辿りきれないというか……ウイルスにしろ病原菌にしろ、その存在のサイクルはとても短いもの。だからこそ耐性菌とかが問題になるわけだけど、同時に【星の欠片】による干渉も何代前にやったもんだかわかったもんじゃないから、確認するのに時間が掛かりすぎるんだよね……」

「……なるほど」

 

 

 生物の変化の起点、みたいなものは遺伝子とかに刻まれていて、見方さえ知っていれば意外と辿ることができるという。

 じゃなきゃ今では化石くらいしか残っていない生物達の現代との繋がり、なんてものを解明することは夢のまた夢、みたいな感じになってしまうため当たり前と言えば当たり前なのだが……それはあくまで遺伝子を見ればわかることに関しての話。

 

 私達【星の欠片】は言うまでもなく遺伝子より小さく、ゆえにその干渉の痕跡というのも遺伝子より小さい。

 そのため、単純にやり方を流用しても変化の兆しを読み取ることはできないのである。

 というか、【星の欠片】の場合干渉した場所とそれが影響を及ぼす箇所がまったく別……みたいな可能性もあるため、()()()()()()()()()()という部分から手探りになるパターンも多い。

 

 つまり、現状の用意では私達に【星の欠片】の関与を疑うことも調べることも不可能、ということになるわけだ。

 やりたいんならまた『星解』を使うくらいしかない、というか?

 

 

「なおその場合、対象をこの世界全体に広げる必要があります」

「ハァ?」

「さらに、中に居る人にも効果が及びます」

「ハァ??」

「さらにさらに、そこまでしても痕跡が見付かるかはわかりません」

「ハァ???……って、最後に関してはなんでよ?!」

 

 

 なんだ今のネコミームみたいなクリスの反応。

 あれか?ネラーの本領発揮的な?

 

 ……それはともかく、ツッコまれた最後の話について説明すると。

 さっきも言ったように、【星の欠片】による干渉は直接的でなくても意味がある場合がある。

 このパターンをわかりやすく説明すると……あれだ、伝染病シミュレーションゲーム。*1

 あの作品では伝染病に変異を促すことができるが、その変異は特定の地域にだけ発生するモノではなく、現在世界中に広がる全ての同型の伝染病に()()()()()()()()ようになっている。

 

 本来、病原菌の変異というのはその菌・およびそこから増えたモノにのみ伝播するもの。

 ゲームのように全ての菌類に同じ特性が()()()()()()()()、なんてことはありえない。

 仮にそんなことが起きうるのであれば、一度耐性菌が生まれてしまうとなし崩し的にその菌類によって滅ぼされてしまいかねない。

 

 これと同じようなことが、【星の欠片】による干渉の場合発生しうるのである。

 そう、この世界じゃないどこか他所の世界でウイルスに干渉した結果、遠く離れた異世界でも同じ変異が発生する……みたいな。

 そもそも『星女神』様の干渉手段自体そんな感じなのだから、もっと小規模でいいのなら他の【星の欠片】にだって真似できようというもの。

 

 そうして発生した変異というのは、その菌類を調べても原因が判別できない。

 表面上は()()()()()()()としか言い様のない状態になるため、『星解』で調べても無駄足になりかねないのである。

 ……まぁ一応、突然起きたと結果が出るならば、そこから疑う切っ掛けにはなるわけだが。

 

 

「偶然か必然か判別できないってだけで、『突然起きた』ことは事実だからね。一応、そこから警戒することはできるってわけ」

「我がことながらぁ~面倒ですねぇ~こういう時ぃ~」

「そうだねぇ……」

 

 

 私達(星の欠片)相手に常識を語ることほど無意味なこともないよねぇ、とささらさんと顔を見合わせ。

 その後、深々とため息を吐いたわけだが……うん、どうしようかねぇ本当に。

 

 

*1
『Ndemic creations』作成のゲーム『Plague Inc』シリーズのこと。ウイルスの側に立ち世界中に感染を促し、人類を滅亡させることを目的としたゲーム。作中ではスキルとして病原菌の変異を促すことができるが、この変異は特定の地域だけではなく全世界に波及する、という恐ろしい特徴がある

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