なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はてさて、【俯視】に対しての対策に【俯視】が有効であること、そしてそれでも足りない分は私が対応するよー、というのが前回のお話。
……え、最後に愚弄されてただろうって?それを言ったら戦争だろうがよえーっ!
……おほん。
まぁともかく、なにが必要なのかについては説明したわけなので、今度は教えたことによる効率面の改善について話したいと思う。
「数倍以上の効率アップですからねぇ」
「極めればもっと効率アップするよ?まぁその『極める』ってのは並列思考覚えた上に、『視る』ことは干渉であるって深い実感を得た状態を指すわけだけど」
「化け物にでもなれと仰ってます?」
はっはっはっ、やだなぁ単に成長すると一種の魔眼みたいになる、って言ってるだけですよ?()
……実際、【俯視】を使い続けるとそっち方面に発展する、というのは本当の話。
自分だけの新しい見え方とは、まさに型月で言うところの『魔眼』のそれに合致する。
ゆえに、発展の仕方もそれに近しいモノになるわけだ。
無論、デメリットもそっちに準じるんですけどね(白目)
……そっちはまぁ、以前解説したんでその時の報告書でも読んでもろて。
「雑ですねぇ」
「とは言いますが、今から真面目に解説すると滅茶苦茶時間が掛かりますので……とりあえず覚えておくべきなのは、【俯視】は誰でも扱えるようになった魔眼みたいなもの、ということですかね、メリットもデメリットもほぼそちらに準じますし」
「ますますトラブルの種の予感しかしませんねぇ」
……まぁ、利便性云々から習得を強要している、とは思いがたいため、実際のところ『星女神』様達からこれほどまでに【俯視】習得を勧められているのは、偏にもう一つの特徴の方──
ただこれ、仮にそうだとすると例えば真人とかが敵で出てくる可能性を示唆している、ということになるのでまったく笑えない話になってしまうのだが。
そうでなくとも『魂の防御』なんてモノが必要な事態が限定的なのだ、想定されるトラブルも大概ヤバいものしか思い付かない。*1
ゆえに、その辺のことは流石に黙っておく私なのであった。
……それは伝えておけって?今からここの人間+数人が世界の命運を賭けた戦いに参加するかも知れません、なんて言われて冷静でいられる保証ゼロでは?
というかさっきも言ったけど、【俯視】習得前後はその当人の暴走に注意を払う必要があるのだ。
そんな状況下で思いっきり精神を不安定にするような事実なんぞ伝えられるか、って話である。
なので、正確には『落ち着いたらゆかりんとか交えて話す』となるわけだ。
その時まで、ここの面々達には【俯視】を使いこなせるように精進して頂きたい、と思う私である。
「ふふふふふ……!ふふふふふ……!」
「え、なんですかキーアさん。いきなり怖い」
「まるでメカクレ大好き海賊みたいな笑い方ね」
「その罵倒は流石にライン越えじゃねぇかなぁ!?」
あそこまでキモい笑みではないよ!?
そう叫ぶ私は、青空に半透明で浮かび上がりながらサムズアップをするバソの姿を幻視していたのであった……。
「それにしても~、効率アップしてなお多いですねぇ」
「まぁ、この世界中の菌類を全て集めた形だからねぇ。さっきと比べれば見ればわかる分、仕分け速度は格段に上がったけど」
分かりやすく例えると、入ったばかりの新人とベテランが行う検品速度の差、みたいな感じ?
一つ一つ丁寧に確認していく新人と、長年の勘と感覚で一瞬にして仕分けていくベテランの差、みたいな。
……そこまでやってなお、予想終了時間が合計
いやまぁ、その内十二時間程度は【俯視】無しの作業だったので、それを思えば遥かに業務速度は加速しているんだけども。
「おやつ休憩までの間にぃ~、進んだ量は多分~、半分も行ってませんでしたからねぇ~」
「半分どころか三割……いや二割くらいしか進んでいなかったからな。そう考えると同じ時間で八割終わらせられる計算だから、およそ四倍の効率アップだな」
「このレベルの効率アップは人事部の色が付くやつですねぇ」
コストカット大成功、みたいな?
ジェイドさんの言葉にそう冗談を返しながら、手元の菌類をひょいひょい分けていく私達。
……しかしまぁ、本当に速くなったなぁとしみじみ。
一応その二割も限定付与の【俯視】で補助をしていたわけだけど、それを踏まえてなお全体の二割程度しか終わってなかったわけだから、本格付与の【俯視】の効率ときたら……みたいな感じというか。
まぁ、それも仕方のない話ではあるのだが。
限定付与の【俯視】はそれを限定にするために、効果範囲などを絞る以外にも間に【虚無】を挟む、という行程を付け加えてあった。
そうしないと使ってる内に【俯視】が馴染んで外せなくなる……言い方を変えれば琥珀さんがイヤだイヤだと駄々を捏ねたから付け加えた枷になるわけだが、この枷というのが作業効率を下げていた、ということにもなるわけで。
「分かりやすく言うと、レーシックとかICL*2とかで視力を回復したにも関わらず、わざわざ曇りガラスを通してモノを見ている……みたいな感じ?」
「なるほど、それは確かに勿体ないですねぇ」
「遠回しに私のことを責めるのは止めません?」
まぁ、そんな状態で【俯視】の利便性を正確に認識するのは無理だよなぁ、みたいな意味合いもなくはないというか。
無論、その辺を理解した結果ズブズブと依存症に沈む、みたいな可能性も決してゼロではなく、琥珀さんはそれを警戒していたのだろうけども。
……ともかく、【俯視】の利用で格段に作業速度が上がったことは事実。
その辺を理解しつつ、再びの休憩タイムである()
いや、実はあれこれぐちぐち言ってる内に三時間くらい普通に経過してたんですよね……。
「ついさっきおやつを食べたような気がするんだけど、気付いたらお腹空いてたんだよねー」
「眼精疲労?……的なものも感じるし、適度な休憩は必要よね」
「な゛る゛ぼど、ぞれ゛でま゛だう゛ぢに゛来゛だん゛でずね゛ぇ」
そんなわけで、再びの『ゾンビの飯処』、再びのゾンビちゃんの登場である。
街唯一の飯屋の実績(?)は伊達ではなく、昼間もそうだったが夜も大盛況……と言った感じの店内は、この街の人々達が楽しげに飲み食いをしている姿が見受けられるのであった。
「結果、こういうファンタジー世界ではよくある話──鶏肉食べる
「人魚が魚を食べたり……みたいなやつですね」
なお、その客達の中には以前見掛けた人物──泳ぐハーピィやら空泳ぐ人魚やらも含まれている。
というか、見た感じこの二人親友とかそういうあれなのかな?肩組んで樽型のコップを掲げてなにやら歌ってるし。
その歌に関してだけど、少なくとも日本語ではない。
世界全土に張り巡らされた翻訳機能が働いていないのか、はたまた歌を訳すのは別の話だろうということなのか。
ともかく、聞きなれない謎の言語が使われていることだけは確かである。
……なんかこう、意味を理解できたら引き摺られそう感があるよね、というか。
「……ああ、セイレーンですか?半人半魚、ないしは半人半鳥の姿を持つとされるギリシャ神話の怪物であり、歌声によって周囲の船を引き寄せ沈没させる……などという」
「ハーピィと人魚の組み合わせで歌ってるとなると、なんとなく想起したりしない?」
「気持ちはわからないでもないですねぇ」
まぁ、ここは陸の上、さらには彼女達は人じゃなく料理を食べているわけなんだけども。
……そんな感じで駄弁りつつ、頼んだ料理に舌鼓を打つ私達。
基本的にメニューは昼間と変わらないのだが、流石に真っ昼間から酒を飲んだくれる人はそうおらず。
ゆえにこそ夜はその反動?でお酒を頼んでいる人も多い様子。
「ゆえに私も飲む!お酒うめぇお酒うめぇ!!」
「うわ
「あ゛っばっばっばっ、気゛持゛ぢい゛い゛ぼどの゛飲゛み゛っぷ゛り゛っずね゛ぇ」
「本当にねぇ……ちょっと待てなんだ今の発音?」
なお、夜なので客足が多いということもあり、現在店内にはゾンビちゃん以外の店員の姿も見受けられる。
具体的にはゾンビちゃんよりちょっと(?)露出の多いメイド服を来た店員がちらほら、みたいな?
……こういうのってファンタジー世界だと手付きの悪い客とかもセットなのだが、見る限りそういう狼藉を働いている客はいなさそうだ。
「それはそうですよぉ~、この子達はぁ~みんな一人きりの仲間なんですからぁ~」
「なるほど、オーク君みたいなのが大半と。……そりゃまぁ、治安はいいでしょうねぇ」
流石にオーク君レベルの聖人がぽこじゃか湧いたりはしないだろうが、そもそもの境遇的に彼らは取り残された者達。
同じような相手に失礼なことはしない、という認知が共有されているのだろう。
そういう意味で、人間達の酒場より遥かに安全面はしっかりしている、ということになるのであった。
「つまり、そうして酒を飲んで騒いでいるキーアさんは迷惑な側、ということですね?」
「今さっき思いっきり歌ってる二人を視界に入れてたよね?」
なお、その結果私一人が騒いでいる、みたいな言葉が飛んできたが……流石にそれは幾らなんでも無理がない?
と、私もツッコミ返しながら夜は更けていくのであったとさ。