なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「せんせー!我々は!なりきりシップに則り!正々堂々闘い抜くことを、ここに誓いまーす!」
はてさて、場所は戻って競技場。
選手側の代表として、舞台の上で選手宣誓をするマシュの姿に、観客席から再び大きな歓声が上がる。
現在舞台の上に立っている彼女の服装は、いつもの普段着であるパーカーではなく
……まぁ、端的に言ってしまえば、いわゆるインナーのみの状態だ。
これから行うのは戦闘ではなく、あくまでも運動であるために、他者との不意の接触によって、相手に無用な怪我を生じさせかねない鎧部分は宜しくない……ということで、彼女自身が選んだ格好である。
実際原作の方でも、トレーニングの時などにはこの姿になっているようなので、今回の運動会にも十分適している服装だと言えるだろう。
……うん。なんというかこう、見た目が凄いなーって思うこと以外は、だけど。
関連作におけるリヨぐだ子が、彼女のことをなすびちゃん*1などという風に称していたが。確かになんというか……色々すげぇ、となる服装だと思う。
マシュの格好をする一般のコスプレイヤーさんとか、あの姿をよく衆目の前で見せられるなぁ……と、ちょっと感心してしまう気分になるような、わりと際どい服装だと思う。
……いや、実際には素肌じゃなくて、中に肌色のタイツとか着込んでたりするのかもしれないけれども。*2
でもほら、なりきり郷の中でこういう服装をするのと、外で衆人環視の中で同じ格好をするの……どっちがアレかって言うなら、そりゃ外でやる方ってなるじゃん?
周囲を見回して見ると、
……平時はこんな格好じゃないとしても、原作での戦闘服が『服の用をなしていない』キャラなんて、それこそ星の数ほど居るこのなりきり郷で。
周囲と似たような格好をしていても、対して恥ずかしくはないはずだ。まさに、なりきりだから恥ずかしくないもん、である。
「あとで男女も別れるし、余計にね」
「そうだよねぇ。……まぁ、だからと言って、まさか指定服が
ゲストに近い扱いなので、他の一団とは微妙に離れた位置にいる私とシャナ(と、今は舞台上のマシュ)。
小さい声で交わしあうのは、今の自分達の格好について。
……うん。原作の戦闘服が云々、って話をちょっとしてたけど。……それが『普通の運動向きではない』という人は、結構居るわけで。
例えば──なのはちゃんとか。
制服を模した服の上に、鎧などを追加していく形のあの戦闘服は、空を飛び回ることを前提としているからこそ成り立つ服装であり、ゆえに普通に地を走り回ったりするのには、到底向いていないと言える格好だろう。
マシュの着ているインナーや、
まさしくその制限に引っ掛かったシャナとか、そもそも戦闘服って形での区別がない、いわゆるファンタジー系の人……こっちは私とか。
そういう人達には、運営委員会から指定の服装が無償で配布されている。それが、
「この御時世にブルマー、とはねぇ。……流石に原作でも着てただけあって、似合ってるねシャナ」
「それ褒め言葉なの?……それを言うなら、キーアだって似合ってるわよ、小学生みたいで」
「「…………」」
「……止めましょう、なんか虚しくなってくるわ」
「……そうね」
どちらからともなくため息を吐いて、会話を打ち切る。
……うん、今回の指定服は、ご覧の通りの体操服。……下は御丁寧にも、今は廃れてしまって久しいブルマー、であった。*8
こっ恥ずかしさではマシュのインナーを笑っていられない感じであるし、変に身長の低い私とシャナだから無駄に似合っている感もするしで、なんとも言えない疲れを誘発する服装である。
救いがあるとすれば、さっきの条件に合う人はみんな同じ格好なのと、男性陣の視線に晒されることはない……と言うことだろうか?
「とはいえ、あっちはあっちでふんどし姿とかも居るから、正直どっちがマシ……ってこともないんでしょうけど」
「流石に指定服ではないみたいだけど、ちょくちょく肌色が見えるのはなんなのかしらね……」
遠い目をするシャナの視線を追ってみれば、離れた位置にいる男性陣の集まりが。
その中には、上半身裸で下はズボンな者や、ふんどし姿の者・衛士強化装備を着用した者・プラグスーツを着ている者などなど、女子に負けず劣らずな露出度の者達が、垣間見えていた。
……げに恐ろしきは、人の裸体への飽くなき探究心……ということなのだろうか。
ゲスト席に戻ってきたマシュに労いの台詞を投げ掛けながら、人類の業の深さに思いを馳せてしまう、私達なのであったとさ。
選手宣誓も終わり、男女も別れたあと。
芝生の上で体を解しつつ、はてさて今日はどういう予定だったか?……と思考を巡らせる私。
乱暴な言い方をしてしまえば、これから行われるのは運動会である。
ウマ娘の名前を肖っているために、トリを飾るのは徒競走になるものの、それ以外は秋の風物詩である運動会・ないし体育祭の内容と、さほど変わりはない。
出場者に関しては、見た目の老若男女を問わずに集っているものの、基本的には『運動をしにきた』のは変わらず、ゆえに大きな問題が起こることも、早々ないだろう。
ゲスト枠として唐突に招集された身ではあるものの、変に大事にはならないだろう、というのは一種の安心要素と置き換えてもよさそうだ。
とはいえ、運動とはいえ競走は競争、本気でぶつかってくる人はいるだろうし、ある程度は警戒しておくべきか。
みたいなことをつらつらと考えつつ、飛んでいた思考を軌道修正。……えっと、これからするのはなにか、だったか。
入場時に手渡されていた進行表を取りだし、内容を確認する。
……えっと、上から順に……。
「入場に選手宣誓、男女に別れて集合……の次だから、騎馬戦かな?」
「そう、最初の戦いは騎馬戦。三人一組でチームを組み、他のチームのリーダーからはちまきを奪う……まさに、アイドルであるこの私にぴったりの戦いと言うことね!」
表を確認し、これは私達ゲスト組で騎馬を組む感じになるのかなー、なんてふうに考えていると。
そこに響く、少女の美しき声。……ふむ、この声は──。
「この声は……エリちゃん!」
「正解よ、子ネコ。そう、私こそがこのヒト娘ワイルドダービーの
「何度も出てきて恥ずかしくないんですか?」
「げふぅっ!?」
現れたのは、体操服に着替えたエリちゃんであった。……微妙にネロちゃまの後追いなのもあって、微妙に対応が雑になる私に、彼女は思わず血を吐いていた。……えっと、エリちゃんに謝れ、みたいな?*9
「ち、血の伯爵婦人である私に、逆に血を吐かせるだなんて。中々やるわね、子ネコ」
「いや別になんでもいいんだけどさ。……最近fate組のお話が多い気がしないでもないから、ごめんけどエリちゃんには自重して貰いたいんだよねー」
「なにその意味わかんない断り方っ!?幾らなんでも雑すぎじゃない!?エリちゃんよ私?!」
まぁ、なんかfate組が多いのもあって、今回はスルーしたい感が凄いのだけれど。折角戦闘とか関係のない運動
具体的にはレギュラーがいないところとか?
「くっ、これがバラエティの洗礼ってやつなのね!?でも私は負けないわよ、もっとビッグになって、必ず帰って来てやるんだからー!!からー!からー!」
「……ご自分でエコーを掛けながら、悔しそうに走り去って行ってしまわれましたね……」
「あのバイタリティの高さは、素直に凄いと思うわ」
沈痛な顔をするマシュと、感心半分呆れ半分、といった感じの視線を向けているシャナに見送られ、エリちゃんは他の選手達の方に走り去っていく。
……あの様子だと、本当にネロちゃまを捕まえてコンビを組んだりしそうである。……その場合、誰が
などと胡乱な事を考えつつ、ストレッチを続ける私達。……なお、マシュはさっきのインナーのままである。
本当は、マシュも体操服を着たかったらしいのだけれど、デミサーヴァントとしての身体能力を発揮するのに、最低限必要な格好があのインナーであるらしく。
普通の体操服だと、普通の女の子くらいのスペックまでしか出せなくなってしまったため、泣く泣く諦めた……という裏事情があったりする。
なお、体操服を着たがった理由は、羞恥心からではなく「一人だけ服装が違うと言うのは、悪目立ちしているのではないでしょうか!?」という理由からだったりする。
……ああうん。なんかこう、この格好のマシュの両サイドに私とシャナが立っていると、「35億」という数字が思い浮かぶというか。……え?違う?*10
ともあれ、幾ら悪目立ちしようとも、マシュがレベル5らしく振る舞うには、その姿で居るしかないので仕方ない。
……いやホントに?作中でも霊衣とかでわりと好きな格好してなかった?と思わなくもないのだけれど……。
あれは単なる服ではなく、かなり特殊な製法によって生み出されたものであるがゆえに、戦闘に向いていないような服装でも戦うことができる、というわりと凄い技術なのだそうで。
……まぁ、なにが言いたいのかと言うと。ミス・クレーンなりハベにゃんなり連れてこい、ということである。
もしくは服飾関連で、魔術的なものを編み込める人。……正直、すぐにすぐ見つけられるような人材でもないのは確かであるが。
「ともあれ、私達のはちまきが一千万ポイント、とかにならないことを祈ろうか」*11
「……いや、そもそも私達、そういうのなくても挑まれる側でしょ?」
シャナとそんな軽口を言いあいつつ、私達は開始場所に走っていくのでした。