なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
『
「……か、辛うじて読み取れなくもない……」
自身の身体を変化させ、こちらにコミュニケーションを取ろうとしてくる相手のウイルス。
しかしてそれは、本人の言うようにその行為を苦手としていることが見て取れるほどに拙いもの。
具体的には文字の順番が入れ換わっている。……タイポグリセミアかな?*1
「いや、単語の頭と尻も入れ換わってるから違うでしょ」
「そこで冷静にツッコまれても困るんだよなぁ……」
横のクリスが真顔で訂正してくるけど……いや、気にすべきとこ絶対そこじゃないよね???
……ともかく、こちらが困っていることを見かねてか、対話の姿勢を見せてくれたウイルスさん。
それはいいのだが……これ、なんて返事すればいいんだろうね?
「え?いや、別に普通に反応を返せば……あ」
「……向こうが歩み寄ってくれたといっても、問題は双方向にあるものだから解決するには片手落ちなんだよね……」
クリスがなに言ってるの、とばかりにツッコミを入れようとしてくるけど……その途中で私がなにを言いたかったのかに気付いたようで、思わずとばかりに固まっていた。
……うん、相手側からの発言?を受け取ることはできるようになったけどね?
それでこっちから相手に伝える手段ができたのか、と言われるとノーなわけでして。
素直にボディランゲージで返せばよいのでは?とか言われそうだが、そもそもボディランゲージというのは
つまり、視界を持つのかどうかわからない今の彼相手に使っても、到底意味があるとは思えないのである。
いやまぁ、こうして伝えてきている以上はなにかあるんじゃ?
……とも言いたくなるが、そこで問題になるのがタイポグリセミア……もとい、順番の入れ換わった単語の存在。
「見えてるならその辺修正できるでしょ、というべきかな。一応単語の意味は理解できてるっぽいけど……だからこそ余計に変な文章になってるのが問題というか」
「なるほど……それこそ無限の猿的な話なのかも、ってことね」
それに加え、相手は【星の欠片】である。
無限のリソース・無限の試行回数を重ねることで、相手から望む反応を引き出せるパターンを引っ張り出してきただけ、という可能性も否定はできない。
……わかりやすくいうと、意味を理解して今の形に変化してるのではなく、相手がこっちにわかる動きをしてくれる動作パターンを探してきただけなので、根本的に会話ができる状態ではない……みたいな?
ともかく、現状ではどう対処していいのかわからない、というのは事実。
無論このまま静観するのはありえないので、なにかしらの反応を返さなければならないのだけれど……。
「……うーん仕方ない。本当に仕方ない」
「えっちょっ、なんか嫌な予感がするんだが!?」
「あっはっはっ。現状なんともならんので、どうにかなるようにするねー☆」
「ぎゃー!?嫌な予感のしすぎで鳥肌立ってきたんだがー!?」
「あっはっはっ。──短縮詠唱、『星解』」
「あ゛」
『われらがかみ そのじだい うわさにはきいてました おあいできてこうえい です』
「あっはっはっそれはどうも」
「ぎもぢわるい……」
はてさて、最近気軽に『星解』ぶっぱしすぎな気もするなー。
的なことを考えつつ、でも便利だから仕方ないんだよなーとも思う私である。
ともあれ、『星解』で一旦リセット掛けた後に繋ぎ直す、という過程を踏んだことによりウイルス君の言語回路は比較的マシになったようで。
こうしてこっちに話し掛けてくるのだけれど……あっはっはっキーアんなに言ってるのかわかんなーい☆()
……いやうん。性能の便利さに反比例するかのように、本来多用するもんじゃないってことをその都度強調するの止めてくんないかなー、というか?
まぁその辺りは気にするだけ無駄なので、とりあえず彼からの事情の聞き取りに専念することにする私である。
『わたし は よばれました』
「呼ばれた?」
『はい ほしのこえ とものこえ ともにきこえ ここまできました』
「……あー、やっぱり『虚渦』で止めっぱなのよくなかったかー」
まず、彼がここに現れた理由について。
そこに関しては当初の予想通り、集められた大量のウイルス達に【星の欠片】による停止状態を強いたのがよくなかった、というので間違いないようだ。
特に、完全な時間停止じゃないのが余計に……というべきか。
とはいえその辺りに関しては、【星の欠片】を利用しての完全時間停止だとそもそも他の人がウイルスの選別を手伝えない……みたいなことになるので最初からやり方としては考慮の外だったわけだけど。
「あと、悪かったみたいなこと言ってるけど、その実彼が来てくれたのは寧ろ良かった、みたいな面もあるんだよね」
「良かった面……?」
『わたし は かれらの おう ゆえに かれらを じゆうにうごかせます』
「なんと?」
ただまぁ、彼が来てくれたのは不幸中の幸い・もしくは結果オーライの類いだと思われるのも事実だったりする。
何故かと言えば、彼が
わかりやすくいうと、彼が【星の欠片】として司っているもの自体が『ウイルス』なのである。
「ウイルスの死と新生、進化と分化……そういったものを原理として動く【星の欠片】。彼、『
「……ええと、つまり?」
「彼一人いれば、他のウイルス全部滅ぼしてもいいレベルのウイルスの博物館」
「なんと!?」
『できれば ともがらを いじめるのは やめてほしい』
今はまだ生まれてない変異型のウイルス、遥か昔に滅ぼされてしまったウイルス。
それから、ウイルスによって起きた変異などなど、ウイルスや細菌が関わるような物事全てを記録しているのが、今ここにいる彼だということ。
それゆえに、さっきまで私達がやっていたウイルスの選別作業も、こうして彼と対話ができるようになった時点で無用の産物と化したわけである。
なにせ、彼一人(?)いればあらゆる病気の研究ができるからね!
あと、本人はあまりやりたがらないだろうけど、生き物の体内で暴れてるウイルス達を直ちに外に出てくるように指示する、とかもやろうと思えばやれちゃったりする。
まぁ、通常の【星の欠片】が人に対して取る態度と同じモノを、彼はウイルスに対して取っているためお願いしても中々やってくれないだろうけど。
ウイルス達が進化していくのを楽しみにしている、みたいなノリだろうし。
「……え、確か【星の欠片】って人間に対して不利益なことは基本やらないんじゃなかったっけ?」
「彼にとっての人間はウイルス達ってこと。……いわゆるフラクタル構造的な話というか?」
「な、なるほど……?」
なお、クリスからは今まで伝え聞いてきた【星の欠片】の原理に反しているのでは?
みたいなツッコミが飛んできたが、彼の場合存在がとても古い──原始的な存在であること、及び彼にとっての人類に当たるのがウイルス達である、みたいな説明を返しておいた。
生き物の起源は隕石に乗ってやってきた微生物である、みたいな話があるが……それを拡大解釈したもの、とも言えるかもしれない。
まぁ、ウイルス達を優先しやすいってだけの話であって、一応普通の人間達にも優しいというか、無視したりすることはないわけだけど。
……大きな人間の中に小さな人間がいっぱい住んでる、みたいな見方をしている的な?はたらく細胞みたいなかんじというか。*4
ともかく、彼が来たことはわりととんでもないことだけど、それによって得られる状況は寧ろこちらによい結果をもたらす、というのは間違いあるまい。
であるならば、確認すべきことはあと一つ。
「え、まだなにかあるの?」
「あるんだなぁこれが。呼ばれたって言ってたでしょ、呼んだのはここにあったウイルス達だろうけど……」
「……それを受けて彼がどうするつもりなのか、ってこと?」
「そういうことー」
彼がここにやってきたのは、ここにいたウイルス達に呼ばれたから。
そして、ここにいたウイルス達は私達によって選別される真っ最中。
……ということはだ、なにを思って彼を呼んだのか、って部分に問題を抱えていると言ってもおかしくないわけで。
今現在は仲睦まじく?会話をしているけれど、その内容如何によってはここから大戦争勃発、みたいな事態に転がりかねないわけである。
はてさて、本来ただの祈祷文なのにも関わらず、二次創作では微妙に物騒な意味を付与されたりもする『
思わず固唾を飲む私達の前で、彼が告げたのは。
『え なにもありませんが』
「「ずこーっ!!」」
なにもない、という台詞なのであった。
……なんでや!?